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企み
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メルとハウバが仲間になってから5日後にマリのレベルが22に、ジーナのレベルが20になった。考えていたよりもかなり良いペースだった。もっとも、うちの子達はレベルでだけでは測れないだろうが。定期馬車に乗って街に戻る。
予定通り帰る事にしたが伯爵からの連絡も無いので、2日ばかりゆっくりしてからという事にして情報を仕入れる為にギルドに寄ったのだが、特に目新しい事は無かった。
「問題は無いようです」
「そうだな。美味いもんでも食べに行くか」
「大賛成」
出口で獣人の冒険者とぶつかった。謝りもしないので、一言文句を言おうと振り返ると獣人は脇目もふらず並んでいる冒険者を押しのけ受付嬢の所へ行き、息を切らせながら言った。
「た、大変だギルド長、……に早く、言ってくれ……ま、魔物の大群が、やって来る」
ただならぬ雰囲気に受付嬢が慌てて2階に駆け上がる。
「美味い物は後回しのようだな」
「その様ですね」「残念です」
他の冒険者達が駆け込んで来た馬族の冒険者を、椅子に座らせ落ち着かせている。ギルド長が直ぐに降りて来た。
「何があった?落ち着いて話せ」
「俺達のパーティーはカゾッサ村のオーク討伐が終わったんで、帰る為に脇道を通って街道に合流したんだ」
「おう、それで?」
「直ぐウォルトの森があるだろ?」
「ああ、在るな」
「セダルの奴が森の様子がおかしいってんで。皆で見に行ったんだ。確かに様子が変だった。リスなど小動物の気配が全く無い。奥に進むと凄い数の魔物の群れが屯っていたんだ」
「数と種類は?」
「俺が見たのはゴブリンとオークが合わせて200頭ぐらいで、ハイオークとオーガもそこそこいた。従魔使いらしい連中が、あとから引っ切り無しに連れて来ていたぜ」
「従魔使いだと。この街を襲わせる気か?」
「セダル達は様子を見てる。俺は知らせに来たんだ」
「解った、よく知らせてくれたな。ゆっくり休んでくれ。パドラン、街にいる冒険者を出来る限り集めてくれ。リリアはベルガル子爵に連絡を頼む」
「解りました」「はい」
「皆、聞いての通りだ。協力して欲しい」
「おう、任しとけ」「やったるぜ」
「助かる」
「クロス様、協力するのですね?」
「ああ、吸血鬼が絡んでるかもしれないからな」
「腕がなるです」
「ジーナ、あまり調子に乗らないようにな」
「はいです」
冒険者達は正確な状況が判るまで待機する事になり、俺達は他の冒険者に混ざって入口近くの椅子に座って待つ事にした。
知らせを受けた領主の兵や騎士達も広場に到着し、街中は異様な雰囲気になって来た。
「あっ、虎のお姉さんだ」
凛々しい姿の虎族のあの女性だ。好感が持てる。
「貴方達も協力してくれるのかい?」
「はい」
「感謝する」
虎族の女は俺をチラッと見て会釈をすると、仲間であろう獣人達と2階へ上がって行った。ギルド長室に行くのか?気になるな。
「ちょっと聞きたいんだが、彼女は何者だい?」
「えっ?ああ、マリーナ様か。ここの領主、ベルガル子爵のお嬢様だよ。パーティー"烈風"のリーダーでもある」
「あっ、……そう。ありがとう」
こいつは驚いた。
「貴族のお嬢様だったのですね」
「カッコいいです」
「そうねぇ」
お転婆なお嬢様か、などと考えていたら慌てた男がまた飛び込んで来た。
「セダル!」
「ガルボウ、大変だ奴らが動き出した。Aクラスの魔物もいる」
「ホントか?ギ、ギルド長に言ってくる」
「いよいよですねクロス様」
「気を引き締めて当たるぞ」
「「「「「「はい」」」」」」
報告を受けて冒険者達は修練場に集められた。
現在この街には、クマ族のギルド長以外のSクラスの冒険者は他の依頼で西の山に行って、戻って来る事は出来ないらしい。
魔物の数は300頭程度。Aクラスと言っていた魔物はアラクネ、バジリスクだと言う事だ。
対して集まった冒険者は52名で12のパーティーになる。俺達以外は獣人達ばかりだ。どうやら他の国の者達は、ダンジョンの方に行きっぱなしらしい。
ギルド長はSクラスでAクラスのパーティーが2、Bクラスが4、残りがCとDの混合だ。因みに俺と年上組はCクラスでジーナがDクラスになっている。
1時間もすれば街に着くという事で、慌ただしく配置が決められた。
防壁内に騎士が20名、防壁の外側に兵士と騎士で40名。強弓兵10名と魔術に特化した冒険者達が10名防壁の上に陣取る。
ギルド長とマリーナ女史率いるAクラスのパーティーがアラクネやバジリスクなどの上位種を相手にし、俺達は露払い的な役目を果たすのが任務だ。しかし数が多いので、普通なら並大抵の事ではない。
マリーナ女史が俺の所にやって来た。
「その子達にあまり無理をさせないでくれ」
「気遣いは有り難いが、俺の仲間を安く見積もらないでほしいな」
「……そうか、ではよろしく頼む」
「ああ」
随分と子供好きなようだ。
「防壁からの先制の魔法攻撃の後、最初は魔物と入り乱れる形になるので威力の有る魔法は使えませんね」
「クロスさん、メルとハウバを呼び出してもよい?」
メルとハウバは公の場では魔石の中に入って、アンのアイテムBOXの中に入っている。
「やむを得ない時だけにしろ。あまり目立っては、アンにもよくない」
「分かった」
地鳴りが聞こえて来た。500m先の街道と脇の野原が動いている様に見える。
防壁の上の魔法特化の冒険者達が息を合わせて広域の攻撃魔法の詠唱を始めた。
魔物の群れが150m先に来た時、広域魔法デトネーションが炸裂した。
派手な闘いのゴングだ。
予定通り帰る事にしたが伯爵からの連絡も無いので、2日ばかりゆっくりしてからという事にして情報を仕入れる為にギルドに寄ったのだが、特に目新しい事は無かった。
「問題は無いようです」
「そうだな。美味いもんでも食べに行くか」
「大賛成」
出口で獣人の冒険者とぶつかった。謝りもしないので、一言文句を言おうと振り返ると獣人は脇目もふらず並んでいる冒険者を押しのけ受付嬢の所へ行き、息を切らせながら言った。
「た、大変だギルド長、……に早く、言ってくれ……ま、魔物の大群が、やって来る」
ただならぬ雰囲気に受付嬢が慌てて2階に駆け上がる。
「美味い物は後回しのようだな」
「その様ですね」「残念です」
他の冒険者達が駆け込んで来た馬族の冒険者を、椅子に座らせ落ち着かせている。ギルド長が直ぐに降りて来た。
「何があった?落ち着いて話せ」
「俺達のパーティーはカゾッサ村のオーク討伐が終わったんで、帰る為に脇道を通って街道に合流したんだ」
「おう、それで?」
「直ぐウォルトの森があるだろ?」
「ああ、在るな」
「セダルの奴が森の様子がおかしいってんで。皆で見に行ったんだ。確かに様子が変だった。リスなど小動物の気配が全く無い。奥に進むと凄い数の魔物の群れが屯っていたんだ」
「数と種類は?」
「俺が見たのはゴブリンとオークが合わせて200頭ぐらいで、ハイオークとオーガもそこそこいた。従魔使いらしい連中が、あとから引っ切り無しに連れて来ていたぜ」
「従魔使いだと。この街を襲わせる気か?」
「セダル達は様子を見てる。俺は知らせに来たんだ」
「解った、よく知らせてくれたな。ゆっくり休んでくれ。パドラン、街にいる冒険者を出来る限り集めてくれ。リリアはベルガル子爵に連絡を頼む」
「解りました」「はい」
「皆、聞いての通りだ。協力して欲しい」
「おう、任しとけ」「やったるぜ」
「助かる」
「クロス様、協力するのですね?」
「ああ、吸血鬼が絡んでるかもしれないからな」
「腕がなるです」
「ジーナ、あまり調子に乗らないようにな」
「はいです」
冒険者達は正確な状況が判るまで待機する事になり、俺達は他の冒険者に混ざって入口近くの椅子に座って待つ事にした。
知らせを受けた領主の兵や騎士達も広場に到着し、街中は異様な雰囲気になって来た。
「あっ、虎のお姉さんだ」
凛々しい姿の虎族のあの女性だ。好感が持てる。
「貴方達も協力してくれるのかい?」
「はい」
「感謝する」
虎族の女は俺をチラッと見て会釈をすると、仲間であろう獣人達と2階へ上がって行った。ギルド長室に行くのか?気になるな。
「ちょっと聞きたいんだが、彼女は何者だい?」
「えっ?ああ、マリーナ様か。ここの領主、ベルガル子爵のお嬢様だよ。パーティー"烈風"のリーダーでもある」
「あっ、……そう。ありがとう」
こいつは驚いた。
「貴族のお嬢様だったのですね」
「カッコいいです」
「そうねぇ」
お転婆なお嬢様か、などと考えていたら慌てた男がまた飛び込んで来た。
「セダル!」
「ガルボウ、大変だ奴らが動き出した。Aクラスの魔物もいる」
「ホントか?ギ、ギルド長に言ってくる」
「いよいよですねクロス様」
「気を引き締めて当たるぞ」
「「「「「「はい」」」」」」
報告を受けて冒険者達は修練場に集められた。
現在この街には、クマ族のギルド長以外のSクラスの冒険者は他の依頼で西の山に行って、戻って来る事は出来ないらしい。
魔物の数は300頭程度。Aクラスと言っていた魔物はアラクネ、バジリスクだと言う事だ。
対して集まった冒険者は52名で12のパーティーになる。俺達以外は獣人達ばかりだ。どうやら他の国の者達は、ダンジョンの方に行きっぱなしらしい。
ギルド長はSクラスでAクラスのパーティーが2、Bクラスが4、残りがCとDの混合だ。因みに俺と年上組はCクラスでジーナがDクラスになっている。
1時間もすれば街に着くという事で、慌ただしく配置が決められた。
防壁内に騎士が20名、防壁の外側に兵士と騎士で40名。強弓兵10名と魔術に特化した冒険者達が10名防壁の上に陣取る。
ギルド長とマリーナ女史率いるAクラスのパーティーがアラクネやバジリスクなどの上位種を相手にし、俺達は露払い的な役目を果たすのが任務だ。しかし数が多いので、普通なら並大抵の事ではない。
マリーナ女史が俺の所にやって来た。
「その子達にあまり無理をさせないでくれ」
「気遣いは有り難いが、俺の仲間を安く見積もらないでほしいな」
「……そうか、ではよろしく頼む」
「ああ」
随分と子供好きなようだ。
「防壁からの先制の魔法攻撃の後、最初は魔物と入り乱れる形になるので威力の有る魔法は使えませんね」
「クロスさん、メルとハウバを呼び出してもよい?」
メルとハウバは公の場では魔石の中に入って、アンのアイテムBOXの中に入っている。
「やむを得ない時だけにしろ。あまり目立っては、アンにもよくない」
「分かった」
地鳴りが聞こえて来た。500m先の街道と脇の野原が動いている様に見える。
防壁の上の魔法特化の冒険者達が息を合わせて広域の攻撃魔法の詠唱を始めた。
魔物の群れが150m先に来た時、広域魔法デトネーションが炸裂した。
派手な闘いのゴングだ。
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