幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。

【第５章】波乱と不安

設計監修とは

　設計監修とは、基本計画の段階から参加する、第三者専門家のことだ。
　建物の設計内容に対し、施主側に立って助言、場合によっては代替案を作って、施主の要求を満たすようにサポートを行うのが役目とされている。
　また、全体の工程を把握して遅延が発生しないように管理したり、工事費に対しての査定をおこなったりもする。言ってみれば計画全体に対するマネージャーのような役割である。

　その人員を新たに加えたい、と山根沢氏は言っているのだ。
　この計画の責任者である永森さんとしては、面白くないだろう。少し離れたところから見ていても、表情を押し殺している様子がうかがえる。

　だがここで「それは受け入れかねます」と返せば、氏が機嫌を損ねて、計画そのものが無かったことになってしまうかもしれない。この場の、山根沢氏以外の誰もが、同じ懸念を持っているはずだ。

　重苦しい沈黙が会議室を支配した。

　本音では断りたいに違いないが、結局のところ、永森さんは折れた。

「承知しました。第三者専門家を入れたいとおっしゃるのでしたら、お受けしましょう」

　はーっと、私と平川さんと六旗さんの、音にならないため息が会議室に満ちた気がする。

「ところで、ご知人とおっしゃる方のお名前をお聞きしても？」

「ああ。君も知っているはずだよ。野々原彰吾くんだ」