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第1章

おそろいの指輪

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ゲイルはメイリスの豊満な乳房に硬く勃ち上がった陰茎を挟み、ゆるゆると上下に動かした。
想像したこともない行為に戸惑うメイリスをよそに、ゲイルはひどく楽しそうに口元を緩めている。

「この画やば…興奮する…」
「なにやってるの…?!」
「こうやって擦るとキモチイイんだよ。お前を満足させる前にまずは1回ヌいておこうと思って」
「やっ…なに?ちょっと…ン…やめて…っ」
「あーお前の胸やっぱ最高…むちむちでキモチイイイ…。お前も興奮してきただろ?乳首勃ってきた」
「やんっ!アッ、やめ…!」
「止めて欲しかったら先っぽ咥えて。舌でチロチロ舐めて」
「なっ…?!」
「お前が手伝ってくれたら早く終わるから。な?」
「……」

ゲイルの口車に乗せられ、顎を引いて舌を伸ばす。
柔らかい傘の部分を舐めると、ビクッと反応して艶やかな吐息が降ってきた。
催促するように唇に先っぽをぐりぐりと押し当ててきたので、口を開いて招き入れた。
彼に促されるままに咥えたり舐めたりを繰り返していると、突然頭を掴まれて口の中に押し込まれた。
その直後、口の中いっぱいに生温かい液体がぶちまけられる。
驚いて口を閉じようとすると、ゲイルの指が入ってきて下顎を押さえた。

「ごめんごめん、びっくりしたよな。でも噛むのはなしな?」
「ンッ…ク、うく…」
「ほら、ここに吐き出して」

メイリスから陰茎を取り出したゲイルが、手のひらを向けてくる。
しかし一度口の中に入れたものを吐き出す方が恥ずかしくて、メイリスは苦痛に顔を歪めながらごくりとそれを飲み下した。
ゲイルの精液は苦くて少しどろどろしていて、何度か唾液を飲み込んでも喉に絡みつくような違和感がなくならない。

「う…コホ、コホ…」
「…まさか飲むなんて…」

信じられないものを見たような声を出すゲイルに非難の目を向けると、恍惚とした顔を近づけられてドキリとした。

「ありがとな…すごい嬉しい。調子に乗って好き勝手してごめん…お礼にたくさん気持ちよくする」
「いえ…おかまいなく…」
「ダメ。このままじゃ俺の気が済まないから」

ゲイルはちゅっと触れるだけのキスをすると、前戯だけでメイリスを数回イカせた。
胸だけではなく秘部も舌で愛撫され、初めての感覚にたっぷりと蜜を滴らせる。
色々な体位を試され、その度に感想を聞かれたが答えられなかった。
ゲイルは後ろからするのが好きらしく、しばらくメイリスの尻を持ち上げたまま挿入していた。
腰をくねらせて膣内を掻き回し、奥深くまで肉杭を打ち込む。
そのまま出されたかと思ったが、ゲイルはいつの間にか避妊具をつけていた。
わざわざ持参してくるなんて、初めからそのつもりだったに違いない。
行為を終えた後、ゲイルは力の入らないメイリスに腕枕をしながら髪を撫でた。

「お前とこういうことするの昨日が初めてなのに、すごくしっくりくる感じがするんだよな…」
「…そう?」
「もっと早くこうなれてたらよかったな。気が合うだけじゃなくて体の相性もいいなんて思わなかったし」
「やっぱり変態ね」
「そうだよ。俺はお前の前でだけ変態になんの。こんなに興奮するのも、何度も抱きたいって思うのも、メイスだけだよ…」
「はいはい、誰にでもそう言ってるのね」

色っぽく耳元で囁いてくるゲイルを軽くあしらうと、彼は呆れた顔をした。

「まーたお前は。素直に嬉しいって言えないのか?」
「別に嬉しくないもの」
「本っ当かわいくないな!」
「あら、それが好きだって言っていなかった?」

いつものように軽口を叩いて笑い合う。
メイリスにとってゲイルとこうして過ごす時間は、この上なく幸せな時間だった。

それからしばらく経ったが、ゲイルは「付き合おう」とは言わなかった。
ただ毎日のようにしていたメールが毎日になり、電話をかけてくる回数も増えた。
デートも以前より頻繁に誘ってくるようになり、外では必ず手を繋ぎたがった。
スキンシップも格段に増して、体に触れられることにも慣れてきた。
ただ彼は時々人目を憚らずいちゃつこうとするので、それが目下の悩みでもあった。

珍しく休みが被った日の前日、ゲイルが泊まりにやってきた。
夕食を食べた後、それぞれ好きなことをして寛いでいると、彼がある提案をしてきた。

「なあ、メイス…指輪買いに行かないか?」
「指輪?」
「うん。お前も俺を自分のものだって証明したいだろ?」

回りくどい言い方だが、要するに彼は「メイリスを俺のものだと証明したい」「お揃いの指輪をつけたい」と言いたいのだろう。
男のプライドなのか照れ臭いのか知らないが、彼のこういうところが時々面倒くさい。

「…ゲイルが欲しいなら」
「よし。じゃあさっそく明日買いに行こう」

我ながら可愛くない答えをしたとは思いつつも、彼は気にした様子もなくニコニコと機嫌良さそうに笑った。

翌朝、メイリスはゲイルに連れられてショッピングモールにやってきた。
ホットドッグの美味しいカフェでモーニングセットを食べてお腹を満たし、アクセサリーショップへ向かう。
二人で指輪コーナーに移動すると、程なくしてゲイルがピンクゴールドのペアリングを勧めてきた。
クロスラインで、女性用には表面に小さな深紅の石が3つはめ込まれている。

「お前、赤が好きだろ?瞳の色にも似てるし、絶対似合うと思う」
「素敵ね…」
「気に入った?」
「ええ。でもあなたはこれでいいの?もう少しシンプルな色の方がいいんじゃない?」
「俺もこれが気に入ったから、いいんだよ。お前がよければこれにしよう」

試着してみればサイズもぴったりで、そのまま着けて帰ることになった。
会計もゲイルがあっという間に済ませてしまっていて、メイリスは何か腑に落ちないものを感じていた。
空のリングケースだけを持って店員さんに笑顔で見送られながら、上機嫌なゲイルに疑問を投げかける。

「元々こうするつもりだったの?」
「なにが?」
「なんだか出来すぎている気がして。初めからこれに決めていたんじゃない?」
「さあな。お前がそう思うならそうなんじゃないか?」
「はっきりしないのね」
「気になるならずっと気にしてろよ。お前も少しは俺のことで頭がいっぱいになればいいんだ」

そういうゲイルは自分のことで頭がいっぱいなのだろうか。
彼の言葉の裏を考えて頬を赤らめたメイリスは、顔をニヤつかせているゲイルから逃れるように顔を背けた。

「ところで、これからどうする?」

指輪を買った後の予定は特に決めていなかった。
寄りたいところはあるかと聞かれたメイリスは、僅かな間思案して、思いついたことを素直に答える。

「そうね…シャンプーが少なくなってきたから買っておきたいわ。洗濯洗剤と、あと朝食用のビスケットも」
「日用品の買い物か。メイスらしいな」

ゲイルが可笑しそうに笑い出したので不思議そうな顔を向けると、彼は愛おしげに髪を撫でてくる。
その手のひらに安心感を覚えたものの、通路の向こうから人が歩いて来るのが見えて慌てて手を振り払った。

「ちょっと…!人がいるところでしないでって言っているでしょ?どうして撫でるのよ?」
「お前がかわいいこと言うからだろ?」
「どこが?ただあなたが撫でたいだけじゃない」
「正解。大丈夫だよ、みんなそんなに人のこと気にしてないって」
「知り合いがいたらどうするの?」
「そんな偶然ばったりなんて、早々ないよ」
「――ゲイル先輩?」

自信満々に言い切った時、ゲイルの推測を覆すように一人の女性が話しかけてきた。
振り返った先には数名の男女がいて、ゲイルと顔見知りのようだった。
それ見たことかとジト目を向けると、彼は苦笑して頭を掻いた。

「前に集まった以来ですよね。今日は彼女さん?とデートですか?」
「あらー前に連れてたグラマー美女とは別れちゃったんっすか?上手くやれてそうだったのに」
「また凄い気の強そうな美人捕まえましたね、先輩!」
「……お前らな、彼女の前で失礼だろ。そういうのは俺一人の時に言え」
「それもそうっすね。スミマセン!悪気はないんで!」

お調子者そうな青年が拝むように手を合わせてきたので、メイリスはいつもの調子で返した。

「構わないわ」
「……」
「ごめんな、メイス。今聞いたこと気にしなくていいから」
「別に気になるようなことはないから、気にしようがないわよ。ところで彼らはあなたとどういう関係なの?」
「え、ああ…悪い。こいつらは職場の後輩なんだ。他の奴も一緒に大勢で飲みに行ったり、夏は海に行ったりしてたんだよ」
「そう。前にそんな話をしていたのをなんとなく覚えてるわ。慕われているのね」
「……」

目を細めて微笑むと、何故かゲイルも後輩達も全員が口をぽかんと開けて銅像のように固まっていた。

「…どうしたの?」

つられて呆気に取られてしまいながら尋ねると、ゲイルが口元に手を当ててそっぽを向いてしまった。
何か悪いことでも言ってしまっただろうかと不安になる。

「破壊力やば…」
「これは先輩がコロッとイカされちゃうわけですね」
「あ、あの、でも先輩と付き合うのって大変じゃないですか?!」

ボソボソと青年2人が囁き合う中、後輩の女の子が頬を染めて、ムキになったように話しかけてきた。

「先輩って女性に人気ありまくりですし!職場でも狙っている人結構いるんですよ。誰にでも優しいし、カッコよくて頼りになるし、彼女になったら気が気じゃなさそう!」

なんとなく牽制されたような気がしたが、そんなことは百も承知なメイリスは笑顔で受け流した。
もしかしたら彼女はゲイルに少なからず気があるのかも知れない。

「そうね。こんなに可愛らしいお嬢さんを好きにさせるんだもの。罪な男よね」
「へっ?!」

慰めるように頭を撫でると、返り討ちにされた女の子は真っ赤になって、ぱくぱくと金魚のように口を動かすだけになってしまった。

「これが勝者の余裕ってやつ?」
「カッコイイ…惚れそう…」
「そうだろ?俺のメイリスは最高にカッコイイんだ」

先程まで黙っていたゲイルが誇らしげに言って、メイリスの肩に手を乗せた。
ちらりと様子を伺えば、目敏く気付いた彼に流し目を送られてドキリとする。
「これ以上話すな」と言われた気がして、大人しく口を噤む。

「そ、そうだ先輩!最近みんなで遊んでいませんよね?今度のお休みにまた先輩の家に集まってわいわい騒ぎませんか?」
「どこかに行くのはいいけど、俺の家は無理だな。その気がなくても家にこいつ以外の女性を上げないようにしてるんだ。ついでに酒も控えてるから、しばらく飲みはないな」

下心半分、社交辞令半分のような後輩からのお誘いを、ゲイルは真面目な顔をして断った。
メイリスは彼の行動を制限する気は全くなかったが、自分の気持ちを汲んで尊重しようとしてくれているのだとわかって嬉しくなる。
少し前までは何とも感じなかったことも、最近では胸が痛いくらいにときめくようになってしまった。
一緒の時間を過ごせば過ごすほど、ゲイルをどんどん好きになっていく自分が少し怖い。
断られて残念そうな顔をする女の子に、青年達は同情の色を浮かべてその肩を叩いた。

「もうやめとけよ。どう見たって先輩、彼女にベタ惚れなんだから」
「勝算はマイナスです」
「うるさいっ」

仲良く何を囁き合っているのかは、メイリスの耳には届かなかった。

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