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甘い日々

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シエルが目覚めてから数時間後、ベンはシエルをベッドに残したままリビングに向かった。
ソファには昨夜泣き疲れて寝落ちした5人が眠っている。

「シエルの目が覚めました」

何となくエリックは起きているような気がしたので小声で話しかけると、彼だけでなくそこにいた全員が一斉に目を開けてベンに注目した。
ホラー映画のような光景に一瞬肩をびくつかせたものの、もう一度「シエルが…」と繰り返そうとした途端に、まるで徒競走のように我先にとリビングを飛び出していく。
その背中を見送って間もなく、家の中にいつもの騒がしさが戻ってきた。

(よかったな…シエル)

階段の下から2階を見上げながら笑みを零す。
劣等感から家族にも引け目を感じて孤独になっていた彼女はきっと、想像していた以上に自分が愛されていたことに気が付くだろう。
シエルの部屋に戻ってみれば、彼女は泣き笑いながら姉弟達に揉みくちゃにされていた。

それから2日後、ベンと一緒に登校したシエルは前を歩いていたセレンとデオに気付いて声をかけた。
悪魔の力によって石にされていた二人は外傷はなかったものの念の為昨日まで検査入院をしていた。
シエルが助かったことは病院を通して伝えていたが、今日登校するとは知らせていなかったのでかなり驚かせてしまった。
連絡しなかったことを水臭いと言われるだろうかと思ったが、セレンもデオも大袈裟なほど跳び上がって喜び、セレンは涙を流してシエルを抱きしめた。

「馬鹿っ!ばかシエル!心配したんだからね!!魔力が戻って本当によかった…っ!」
「ごめんね、セレン…。デオも…」
「…レメが無事ならいいよ。でもあんな無茶なことは二度とすんなよ!」
「うん。もうみんなに心配かけるようなことはしない」

シエルは晴れやかに微笑み、誓いを立てるようにひっしとセレンと抱きしめ合った。
彼女が前と同じように接してくれることに背中を押されたデオは、先延ばしにしてきたけじめをつける覚悟を決めた。

「……それからさ…、あの時はごめん!!レメの気持ち無視してあんなことして…」
「は?あんなことって何よ…もしかしてあんたもシエルに何かしたの?!」

シエルが言葉を返すよりも先に、セレンがデオの胸倉を掴む。
ここで隠して逃れようとするのは卑怯な気がして、告白しようと口を開きかけたとき――それをシエルが止めた。

「セレン、誤解なの。デオには何にもされてないから。だから手を離してあげて…」
「嘘!絶対なんかあったでしょ!」
「俺は!…ベンの気持ちを試そうとしたんだ。ただそれだけで…本当にごめん…」
「デオ、もういいの。もういいんだよ」

泣きそうに顔を歪めるデオは本当に後悔しているのだろうとシエルは思った。
ふるふると首を横に振って、気にしていないことを伝えるために笑みを浮かべる。
確かにあの時はとても悲しかったが、それは大好きなベンに他の異性とのキスを見られたからではない。
ベンとキスができないこと、叶わない恋なのだと思い知らされたのが苦しかったのだ。
だが想いが通じ合えた今となっては、デオとのことは彼女の中で言われなければ思い出せないほど些末な出来事に変わっていた。
柔らかく微笑むシエルに幼い頃の面影が重なる。
眩しさを覚えたデオが抱き締めようと腕を伸ばした時、二人の間に傍観していたベンが割って入った。
あまりに突然だったので、デオはシエルではなくベンに抱きつくことになった。

「おわっ?!なんだよいきなり…急に出てきたら危ねーだろ!」
「ワーオ。これはなかなか見られない図柄ね~」
「冗談でもやめろ!俺にそんなシュミは――」
「お前には前科があるからな」
「ああ?前科って…」
「今後一切、シエルには触れるな。少しでも触れたらその指を捻り潰す」
「――は?」

誰が聞いても独占欲丸出しの発言に、デオとセレンが息ぴったりに固まった。
奇怪な視線をぶつけられるのもお構いなしに、ベンはシエルの背後から腕を回して抱き締める。

「は…恥ずかしいよ、ベン…」
「そのうち慣れる」
「そういう問題じゃ…」

恥じらうシエルの頬にキスを落とし、非難の籠もった視線を受け止めたベンが愛おしげに目を細める。
その柔らかな表情に見惚れたシエルが頬を朱に染め、二人は至近距離で見つめ合った。
見ているだけで胸焼けしそうな光景があまりに衝撃的すぎて現実に戻って来られない。

(え…なに、どうしたの…?性格変わってない…?)
(おいおい…これ本当にベンか?ベンなのか?)

普段自分の気持ちをはっきり口に出すことも、感情を表に出すことも少ない彼が取るとは思えない行動に唖然とする。
学園の敷地内で堂々といちゃつく二人に通りすがりの生徒達がちらちらと好奇の目を向けているが、ベンはともかくシエルは全く気が付いていない様子だ。
表情の薄さが売りのクールな幼馴染の変貌ぶりに、デオとセレンは瞠目したまま横目で視線を送り合う。

(えっと…俺まだ寝ぼけてんのかな。展開についていけてねーんだけど…)
(私もよ。でも相手がシエルなら…ねぇ…)
(だな…。相手がレメだし、な…)

無言のやり取りの中、同じ結論に辿り着いた二人は揃って苦笑いを浮かべたのだった。


*


晴れて恋人関係になってから、ベンとシエルは当たり前のように何度も体を重ねていた。
お互いの部屋に交互に泊まり、今夜はベンの部屋だ。
ドアに鍵をかけて部屋全体に防音の魔法を展開してから半刻。
ベンはうつ伏せに寝そべったシエルに重なるようのしかかり、愛液でとろとろになった蜜穴に剛直を根元まで押し込んでいた。
両手のひらはマットレスとシエルの間に差し込み、豊満な乳房を無造作に揉みしだいている。
時折乳首に指先を引っ掛けるように擦れば、シエルの声が大きくなるのと同時に肉壁が気持ちよさそうにひくひくと痙攣した。
一定の緩やかな速度で抽挿を繰り返すことでシエルの感度は高まり、絶頂するかしないかのギリギリを試すように焦らされていた。
抜けそうになる限界まで引いた後、ゆっくりと時間をかけて格納していく。
突き当たった壁にぐぐっ刺激を与えた瞬間、何の前触れもなく外へ圧し出すような収縮が始まった。
その強烈な快感に抗えず、ベンはそのまま奥深くに溜めにためた白濁をぶちまける。

「ぁ…っく…!出る…!」
「ふぁァあぁあ!あっ、ひ、んッ…!!」

快感に咽ぶシエルの膣内で数回しごきながら、最後の一滴まで流し込む。

「ん…ふぁ…赤ちゃんできちゃう…」

余韻のキスの合間に悩ましい表情でつぶやかれて、ベンは一瞬思考を止めた。
可愛い顔をして凶悪な台詞を放ったシエルのせいで、脳内は一気に劣情で埋め尽くされる。
喘ぎっ放しで疲れを滲ませているシエルにこれ以上は酷かと思ったが、ベンの下半身には再び力が漲っていた。

「できるまでやるか?」
「あっ…?!まだだめぇ…!イったばっかりだからぁ…!」
「それはどっちのダメかわからないな」

くすっと笑みを零してシエルの両足を肩に抱え上げると、早くも硬さを取り戻した肉棒を突き入れる。
先程とは違う角度で亀頭が擦れて気持ちいい。

「ハァ…シエル…」
「あ、は、おっ、お、なか…っあ…!」
「ああ…コツコツ当たってるな。気持ちいいか?」
「ぁ…!うぅ……」

妖艶に笑うベンに見下ろされ、胸をときめかせたシエルは言葉の代わりに膣内を痙攣させて答える。
理性を手放し、頬を上気させ、口元をだらしなく開きながら快感の波に呑まれている時のシエルは最高に可愛い。
無自覚に興奮を煽ってくるシエルに容赦なく腰を叩きつける。
スパートをかけると蜜壷から泡立った精液と愛液が掻き出され、力の抜けたシエルの体はベンと同じ動きをして上下に揺れた。

「こんなに締め付けて、本当に孕むかもな?シエル…!」
「あっあッ…!ぃ、ぁぁああぁあ―――!!」

半分意識の飛んだシエルは喉を逸らして啼き、ベンは思いのままに子種を最奥に注ぎ込んだ。


学校でもベンの溺愛は止まらない。
魔力コントロールの修業と称して防御魔法シールドを展開させながら体を繋げる。
B級棟の自習室で制服を着たままこんなことをしている背徳感から、ベンもシエルもいつもより興奮が高まっていた。

「魔力、ぶれてるぞ…シエル」
「んっ、ゃっ、はっ、むっ、り…っ!」
「破れたらお前の…っは……声が響いて、誰かに気付かれる…っ…かもな。俺は…構わないが」
「んっ…、んっ…んっっ……!」

シエルは壁に背中を押し付けられ、ベンに片足を持ち上げられた状態で容赦なく突き上げられていた。
必死にシールドを保ちながらガクガクと膝を震わせて崩折れそうになるシエルを、ベンがもう片方の足も抱え上げて腰を強く打ち付ける。

「はっ!ぁ……!」
「はぁ…これ、奥に当たってイイな…」
「ベン…ぁ…わたし…もう…っ」
「いいぞ、イかせてやる。だけどシールドが解けたらもう一回だ」

お約束のように絶頂と同時に魔力を安定できなくなってしまったシエルは、思うように体に力が入らないながらも命じられた通りの体勢を取った。
ベンは壁に両手を付いて尻を突き出すような格好をさせ、シエルの柳腰を掴んで性急に陰茎を捩じ込む。
愛液でぐっしょり濡れた膣内は多少狭くはなっていたものの、ベンを易々と奥まで受け入れた。

「っく…!締まる……!」
「ハァぁん!アっ、あッ、あっ…!」
「シエル…!シエル…ッ!」

肌と肌がぶつかって音が鳴るほど激しく腰を打ち付け、どこからか流れた汗が飛び散る。
愛しい人の呼びかけに応えるようにシエルが上体を仰け反らせてびくびくと震え、ベンは拷問のような射精感に耐えぬいた。
顔を振り向かせて舌を絡ませ合い一時休戦する。
再び抽挿を繰り返しながらコリコリとした陰核を指先で押し潰すと、一際大きく啼いたシエルが今度こそベンの精液を絞り尽くした。


そんなことを繰り返しているうちに、進級試験の時期が近付いてきた。
ベンは悪魔との戦いぶりを評価され、正式にS級魔術クラスへの所属が内定した。
他のA~F級と違ってS級は特殊で、主に外部から学園に依頼されてきた様々な任務をこなすので学生というより長期のインターンシップや研究生といったイメージに近い。
S級になるための試験はなく、日頃の講義を通して実戦で通用する実力があるかどうかを総合的に判断され、教員から推薦された生徒の中から1~2名が選ばれる。
任務の内容によっては難易度も危険度も格段に増すため、条件として有事に備えたパートナーを選ぶことが必須になっていた。
パートナー契約を結ぶと、魔力を消耗しすぎたり大怪我をするなどして命が脅かされるような状況に陥った場合に、契約した相手から魔力を享受できるようになる。
この契約は特例で認められているもので、書面での正式な手付きは必要になるが学園の卒業と同時に解消も可能な、保険のようなものだった。
契約者は同等かそれ以上の魔力量を持つ者が望ましいとされていて、基本的には家族や親族から選ぶのだが、ベンに血縁者はいない。
エリックはS級になる際、父親ではなく恋人のリアをパートナーに選んだ。
父親はブルームーン事件の影響で魔力量が乏しくなり、今も入院中でパートナーとして適格ではなかった。
両親を亡くしたリアも妹達がまだ幼かったこともあってエリックをパートナーにしていて、必ずしも血の繋がりは必要ない。
既にベンのパートナーを決めるために学園内では候補者探しが始まっていて、何人かA級の生徒の名前が上がっている。
その中でも有力候補として挙げられているのが、ベアトリス・フランクリンだった。

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