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作戦会議(2)
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その夜、セレンは親友の家のリビングでお茶を飲んでいた。
リアが寝る前にと淹れてくれた蜂蜜入りのレモンバームティーだ。
もちろん一人でリビングのソファに座っているわけではない。
隣にはリア、向かいにエリック、エリックの隣にはベンが座っている。
ある意味一番親しいベンとの距離が一番遠いのは、リアとエリックの配慮からだろう。
セレンとしても、誤解が解けたとはいえシエルとの件が解決するまではベンの顔は極力見たくなかった。
「突然のことで驚いたでしょう。うちは家族も多いし色々不便だとは思うけど、少しの間よろしくね」
リアは熱いハーブティーを一口飲んでほう、と息を吐くと、セレンににこやかな笑顔を見せた。
驚いたのはきっと彼女も同じだ。
自分の妹が2度も襲われて、一命は取り留めたが意識は戻らないままだ。
それでもこうして気にかけてくれるのは、彼女の優しさに他ならない。
シエルと同じく、リアも相当なお人好しのようだ。
「こちらこそ、大変な時にお邪魔してしまってすみません。しばらく御厄介になります」
「お邪魔なんて思ってないわ。むしろ大歓迎なんだから。シエルもきっと、あなたが傍にいて安心していると思うの」
話し合いの後、学校はお昼で休校となった。
一旦自宅に荷物を取りに戻り(送迎と荷物持ちにベンがついてきたのは非常に不愉快だったが)、夕方に家のチャイムを鳴らしてドアを開けたときから彼女は明るく振る舞っていた。
ずっとこんな調子だから、セレンにはそれが空元気のように感じていた。
「あ、でもお喋りができなくて寂しがってるかも知れないわね」
とクスクス笑う彼女にどう返事をしようか迷う。
同調してノリ良く返すのがいいのか、彼女の根底にある不安を慰める言葉をかけた方がいいのか。
だが、その冗談にいち早く反応したのはセレンの困惑を目敏く察したエリックだった。
「セレンが泊まり続ければ、案外早く目が覚めるかも知れないな」
「そうね。シエルはああ見えて結構寂しがり屋だし」
「それ、お前には言われたくないだろうな」
「あら。私はそんなに寂しがり屋じゃないわよ?」
「寂しがり屋だよ、お前は。今だってシエルがいなくて寂しくて寂しくて仕方ないって顔してるぜ」
正鵠を射た指摘に、リアは反論ができずティーカップの中を覗き込むように俯いてしまった。
一方、エリックは黙り込んでしまった彼女をじっと見つめて返事を待っている。
セレンはそんな2人の様子をハラハラしながら見守るしかできない。
「…そうよ。シエルがいなくて寂しいわ」
しばしの沈黙の後、リアは俯いたまま漸く本音を溢した。
「シエルがいなくて、すごく…すごく寂しい。だって可愛い私の妹だもの。シエルといると安心するし、楽しいし、癒されるし。誰かさんの所為で、最近はゆっくり話せなかったし…」
「……」
その誰かさんを見やれば、彼は黙って目を伏せた。
「いつだってシエルは私達のことを守ってくれるのに、私はシエルを守りきれなくて。それが歯がゆくて、悔しくて…その気持ちを伝えることもできなくて!」
リアの声は徐々に力強さを増し、興奮で身体が小刻みに震えていた。
「そうよ!私は姉らしいことを何にもできていない癖に、妹がいなくて寂しがってるの!悪い?!」
勢い良く顔を上げたリアの両目は、真っ直ぐにエリックを射抜いていた。
その目から透き通った涙がいくつも零れ落ちて、誰かがはっと息を呑んだ。
「悪いとは言ってないだろ」
エリックは苦笑いを浮かべて、呼吸を乱すリアを優しげに見つめる。
だが感情を昂らせた彼女は、彼の真意を疑って食ってかかった。
「責めるような言い方だったじゃない!エリックはいつもそうよ!自分だけいつも冷静で、こうやって簡単に取り乱す私のことをいつも馬鹿にする…!」
「馬鹿にしてるわけじゃない。誤解させたんなら謝るから、とりあえず落ち着け」
「何よ…!元はと言えばあなたが私を嗤うからでしょ?!」
「嗤ってない。俺だって言わないだけでお前と同じくらい寂しいと思ってるんだよ。俺にとってもシエルは可愛い妹だからな…わかるだろ?」
「俺、も…?」
リアが驚いたように聞き返すと、彼は頭を動かすだけで頷いた。
エリックの言葉に毒気を抜かれたのか、涙は止まり、強張っていた肩から力が抜けていく。
「ここにいる全員、シエルがいなくて寂しいと思っているし、今回の件で少なからず責任を感じてる。お前だけじゃないんだ」
エリックの言いたいことを理解したリアは、はっとして涙の跡を拭った。
同時にベンとセレンの存在も思い出したのか、今度は恥ずかしそうに頬を紅潮させて俯いた。
「ごめんなさい…」
「セレンや俺達に心配かけたくない気持ちはわかるけどな、お前の空元気はわかりやすいんだよ。暗い顔してる方がよっぽど扱いやすい」
「うぅ…」
「そうやって素直に泣いてる方がお前らしくていい。さっきの怒った顔もなかなかだったけどな」
さり気なく惚気が入ったが、そのことを突っ込める空気ではなかった。
ばか、と小さく毒づいたリアは、セレンの知るいつもの彼女に戻っていた。
「セレン、気を遣わせてしまってごめんね」
「いえ…リアさんがそう思うのは当然だと思います。カネルのこともまだ解決してないし…」
襲われるならシエルじゃなくあいつだって良かった、とセレンは不穏なことを考える。
ベンに好意を持っている者が狙われるなら、彼を好きだと言ったカネルも対象に入るはずだ。
シエルが標的になったのは、自分の責任ではあるが元はと言えばカネルの所為だと半ば八つ当たりのような怒りが生まれて来る。
セレンはその怒りを声に出すことなく、ハーブティーと一緒に飲み込んだ。
「シエルは、いまどんな状況なんですか…?」
隠しきれない憤りを纏わせて、セレンは静かに尋ねた。
和やかになった空気が再びピンと張り詰める。
こうして4人揃ってお茶を飲む理由が就寝前にリラックスするためだけでないことは、説明されずとも察しがついていた。
「命に別条はないってことでしたけど、本当はどうなんですか…?」
内心疑っていたことを口に出せば、リアの表情が強張る。
もうそれだけで、セレンにはこの疑問が杞憂ではなかったことを悟った。
「正直、危険な状況よ」
リアが溜め息混じりに答えた。
それは諦めからでも怒りからでもなく、震えそうになる声を誤魔化すためだった。
「2度目の魔力窃取でシエル自身の魔力はほとんど奪われてしまった。今はベンの魔力でかろうじて命を繋ぎとめている状態なの。最低限の生命活動は維持できているけど、ベンの魔力を自分のものに変換するだけの魔力は残っていないから、レイチェルから魔力を取り戻さない限り目を覚ますことはないわ」
「そんな…それじゃあ、植物状態ってことじゃないですか!」
「そうよ。シエルだけじゃなく、襲われた3人はずっとその状態のままなの。だからすぐにでもレイチェルを捕えたいんだけど、相手を屈服させられるような証拠がないのよ…」
「証拠がなくったって、疑わしきは罰せよで尋問すればいいじゃないですか!」
声を荒げるセレンに答えたのは、ここまで沈黙していたベンだった。
「そうしたいのは山々だが、相手がどんな手段を使うかわからない状況で強引に拘束するのは危険すぎる。今のところ何とか命だけは助かっているが、次は死人が出るかも知れない」
「だからって、悠長にしてらんないでしょ!」
「悠長に構えてるわけじゃない。落ち着いて考えろ。相手はシエルの魔力を持っている。それをいつでも利用できるとしたら、どうする?」
思いもよらない可能性に、セレンは雷に打たれたような衝撃を受けた。
シエルの魔力を利用される。
それはつまり、奪われたシエルの魔力が消失するということだ。
そうなったら、例え犯人のレイチェルを拘束できたとしても、シエルは、襲われた生徒達は魔力が戻らず助からない。
「前にも無差別に魔力を略奪する大事件があった。その事件で俺達は親を亡くしている。お前も被害に遭ったはずだ。知らないはずはないよな?」
それは決して昔の話ではなかった。
5年前、世界平和を謳う宗教団体によってこの町は魔力搾取の対象になった。
別名ブルームーン事件と呼ばれるその大事件で、決して少なくない人数の魔術師が命を落としている。
幸い犯人グループは捕らえられたが、もし解決していなければ今頃どうなっているのかと思うと、当時の恐怖を思い出したセレンはぞっとして両腕を抱えた。
「手段も人も違うが、起こっていることはあの時と同じだ。自分の身に危険が迫ったとなったら、奪った魔力を利用して何をするかわからない」
「焦る気持ちはわかるけれど、今度ばかりは慎重にならざるを得ないの…」
ベンの言葉を引き継いだリアが口惜しそうに顔を顰める。
自分と同じくらい、いやそれ以上に葛藤を抱えている彼らの姿を目にして、セレンはもう強気な姿勢を貫くことはできなかった。
リアが寝る前にと淹れてくれた蜂蜜入りのレモンバームティーだ。
もちろん一人でリビングのソファに座っているわけではない。
隣にはリア、向かいにエリック、エリックの隣にはベンが座っている。
ある意味一番親しいベンとの距離が一番遠いのは、リアとエリックの配慮からだろう。
セレンとしても、誤解が解けたとはいえシエルとの件が解決するまではベンの顔は極力見たくなかった。
「突然のことで驚いたでしょう。うちは家族も多いし色々不便だとは思うけど、少しの間よろしくね」
リアは熱いハーブティーを一口飲んでほう、と息を吐くと、セレンににこやかな笑顔を見せた。
驚いたのはきっと彼女も同じだ。
自分の妹が2度も襲われて、一命は取り留めたが意識は戻らないままだ。
それでもこうして気にかけてくれるのは、彼女の優しさに他ならない。
シエルと同じく、リアも相当なお人好しのようだ。
「こちらこそ、大変な時にお邪魔してしまってすみません。しばらく御厄介になります」
「お邪魔なんて思ってないわ。むしろ大歓迎なんだから。シエルもきっと、あなたが傍にいて安心していると思うの」
話し合いの後、学校はお昼で休校となった。
一旦自宅に荷物を取りに戻り(送迎と荷物持ちにベンがついてきたのは非常に不愉快だったが)、夕方に家のチャイムを鳴らしてドアを開けたときから彼女は明るく振る舞っていた。
ずっとこんな調子だから、セレンにはそれが空元気のように感じていた。
「あ、でもお喋りができなくて寂しがってるかも知れないわね」
とクスクス笑う彼女にどう返事をしようか迷う。
同調してノリ良く返すのがいいのか、彼女の根底にある不安を慰める言葉をかけた方がいいのか。
だが、その冗談にいち早く反応したのはセレンの困惑を目敏く察したエリックだった。
「セレンが泊まり続ければ、案外早く目が覚めるかも知れないな」
「そうね。シエルはああ見えて結構寂しがり屋だし」
「それ、お前には言われたくないだろうな」
「あら。私はそんなに寂しがり屋じゃないわよ?」
「寂しがり屋だよ、お前は。今だってシエルがいなくて寂しくて寂しくて仕方ないって顔してるぜ」
正鵠を射た指摘に、リアは反論ができずティーカップの中を覗き込むように俯いてしまった。
一方、エリックは黙り込んでしまった彼女をじっと見つめて返事を待っている。
セレンはそんな2人の様子をハラハラしながら見守るしかできない。
「…そうよ。シエルがいなくて寂しいわ」
しばしの沈黙の後、リアは俯いたまま漸く本音を溢した。
「シエルがいなくて、すごく…すごく寂しい。だって可愛い私の妹だもの。シエルといると安心するし、楽しいし、癒されるし。誰かさんの所為で、最近はゆっくり話せなかったし…」
「……」
その誰かさんを見やれば、彼は黙って目を伏せた。
「いつだってシエルは私達のことを守ってくれるのに、私はシエルを守りきれなくて。それが歯がゆくて、悔しくて…その気持ちを伝えることもできなくて!」
リアの声は徐々に力強さを増し、興奮で身体が小刻みに震えていた。
「そうよ!私は姉らしいことを何にもできていない癖に、妹がいなくて寂しがってるの!悪い?!」
勢い良く顔を上げたリアの両目は、真っ直ぐにエリックを射抜いていた。
その目から透き通った涙がいくつも零れ落ちて、誰かがはっと息を呑んだ。
「悪いとは言ってないだろ」
エリックは苦笑いを浮かべて、呼吸を乱すリアを優しげに見つめる。
だが感情を昂らせた彼女は、彼の真意を疑って食ってかかった。
「責めるような言い方だったじゃない!エリックはいつもそうよ!自分だけいつも冷静で、こうやって簡単に取り乱す私のことをいつも馬鹿にする…!」
「馬鹿にしてるわけじゃない。誤解させたんなら謝るから、とりあえず落ち着け」
「何よ…!元はと言えばあなたが私を嗤うからでしょ?!」
「嗤ってない。俺だって言わないだけでお前と同じくらい寂しいと思ってるんだよ。俺にとってもシエルは可愛い妹だからな…わかるだろ?」
「俺、も…?」
リアが驚いたように聞き返すと、彼は頭を動かすだけで頷いた。
エリックの言葉に毒気を抜かれたのか、涙は止まり、強張っていた肩から力が抜けていく。
「ここにいる全員、シエルがいなくて寂しいと思っているし、今回の件で少なからず責任を感じてる。お前だけじゃないんだ」
エリックの言いたいことを理解したリアは、はっとして涙の跡を拭った。
同時にベンとセレンの存在も思い出したのか、今度は恥ずかしそうに頬を紅潮させて俯いた。
「ごめんなさい…」
「セレンや俺達に心配かけたくない気持ちはわかるけどな、お前の空元気はわかりやすいんだよ。暗い顔してる方がよっぽど扱いやすい」
「うぅ…」
「そうやって素直に泣いてる方がお前らしくていい。さっきの怒った顔もなかなかだったけどな」
さり気なく惚気が入ったが、そのことを突っ込める空気ではなかった。
ばか、と小さく毒づいたリアは、セレンの知るいつもの彼女に戻っていた。
「セレン、気を遣わせてしまってごめんね」
「いえ…リアさんがそう思うのは当然だと思います。カネルのこともまだ解決してないし…」
襲われるならシエルじゃなくあいつだって良かった、とセレンは不穏なことを考える。
ベンに好意を持っている者が狙われるなら、彼を好きだと言ったカネルも対象に入るはずだ。
シエルが標的になったのは、自分の責任ではあるが元はと言えばカネルの所為だと半ば八つ当たりのような怒りが生まれて来る。
セレンはその怒りを声に出すことなく、ハーブティーと一緒に飲み込んだ。
「シエルは、いまどんな状況なんですか…?」
隠しきれない憤りを纏わせて、セレンは静かに尋ねた。
和やかになった空気が再びピンと張り詰める。
こうして4人揃ってお茶を飲む理由が就寝前にリラックスするためだけでないことは、説明されずとも察しがついていた。
「命に別条はないってことでしたけど、本当はどうなんですか…?」
内心疑っていたことを口に出せば、リアの表情が強張る。
もうそれだけで、セレンにはこの疑問が杞憂ではなかったことを悟った。
「正直、危険な状況よ」
リアが溜め息混じりに答えた。
それは諦めからでも怒りからでもなく、震えそうになる声を誤魔化すためだった。
「2度目の魔力窃取でシエル自身の魔力はほとんど奪われてしまった。今はベンの魔力でかろうじて命を繋ぎとめている状態なの。最低限の生命活動は維持できているけど、ベンの魔力を自分のものに変換するだけの魔力は残っていないから、レイチェルから魔力を取り戻さない限り目を覚ますことはないわ」
「そんな…それじゃあ、植物状態ってことじゃないですか!」
「そうよ。シエルだけじゃなく、襲われた3人はずっとその状態のままなの。だからすぐにでもレイチェルを捕えたいんだけど、相手を屈服させられるような証拠がないのよ…」
「証拠がなくったって、疑わしきは罰せよで尋問すればいいじゃないですか!」
声を荒げるセレンに答えたのは、ここまで沈黙していたベンだった。
「そうしたいのは山々だが、相手がどんな手段を使うかわからない状況で強引に拘束するのは危険すぎる。今のところ何とか命だけは助かっているが、次は死人が出るかも知れない」
「だからって、悠長にしてらんないでしょ!」
「悠長に構えてるわけじゃない。落ち着いて考えろ。相手はシエルの魔力を持っている。それをいつでも利用できるとしたら、どうする?」
思いもよらない可能性に、セレンは雷に打たれたような衝撃を受けた。
シエルの魔力を利用される。
それはつまり、奪われたシエルの魔力が消失するということだ。
そうなったら、例え犯人のレイチェルを拘束できたとしても、シエルは、襲われた生徒達は魔力が戻らず助からない。
「前にも無差別に魔力を略奪する大事件があった。その事件で俺達は親を亡くしている。お前も被害に遭ったはずだ。知らないはずはないよな?」
それは決して昔の話ではなかった。
5年前、世界平和を謳う宗教団体によってこの町は魔力搾取の対象になった。
別名ブルームーン事件と呼ばれるその大事件で、決して少なくない人数の魔術師が命を落としている。
幸い犯人グループは捕らえられたが、もし解決していなければ今頃どうなっているのかと思うと、当時の恐怖を思い出したセレンはぞっとして両腕を抱えた。
「手段も人も違うが、起こっていることはあの時と同じだ。自分の身に危険が迫ったとなったら、奪った魔力を利用して何をするかわからない」
「焦る気持ちはわかるけれど、今度ばかりは慎重にならざるを得ないの…」
ベンの言葉を引き継いだリアが口惜しそうに顔を顰める。
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★コメントの返信は遅いです。
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♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
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