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 アンジェに見守られながら、目の前のルイスと目を合わせる。

 思っても見なかった状況に、顔は上気し、頬を染め、目を潤ませるその姿に鼓動が乱れる。

「すぅーーーはぁーーーー」

 震えそうになる声を静めるために深呼吸を一つして、腹を決める。

 肩膝を突いてルイスの手を取る。

「ルイス」

「うん」

 一緒に居るのが当たり前、生まれたときからそうだったから、これからもそうだって思ってた。

「お前のところに真っ先に来たのは、それしか考えられなかったんだ、異様な雰囲気を感じて、ルイスを失う不安に襲われた、そしたら気付いたらここに全力で走り出してた」

 でも、それを担保するものが本当は何も無かったと教えられた。

「ずっと兄妹として一緒にいて、それが当然で、居なくなるなんて思ったことなくて、兄弟じゃないって言われても変らないって、そう思ってたんだ」

 それでも大丈夫と思ってたけど、それは思った以上に大きな影響があって、すぐにその危機が訪れた。

「いなくなるかもしれないって、そんな事考えた事なくて、でも、そんな現実が迫ってきて、改めて思ったんだ、離したくないって」

 離れるのが考えられない、ずっと一緒にいたい、そう思ったから。

「だから、兄としてじゃなく、一人の男としてルイス、ずっと一緒にいてほしい、命尽きるまでずっと、一緒についてきてくれ」

 目を見て、気持ちを伝える、初めて自覚した、本当の気持ちを。

 それを聞いてルイスが笑顔になり、口を開く。

「ずっと」

 穏やかに話し始めるルイス。

「ずっと好きで、でも兄妹だからって、諦めてた、いつか誰かと一緒になって、兄妹でも一緒にいられなくなるんじゃないかって、邪魔になっちゃうんじゃないかって怖くって、一緒にいても大丈夫って言ってくれるアンジェと一緒になってもらおうとしてた」

 振り返るように話すその顔は少し曇って。

「でもあの日、兄妹じゃないって知って、嬉しかった、一緒になることが出来るって、けど怖かった、兄妹っていう理由がなくなって、一緒にいられなくなるかもしれないって」

 不安な色を見せる。

「そう思ったらどうしたらいいかわからなくなっちゃって、それであんな風にしちゃって、ごめんなさい」

 ごめんなさい、そう言って一拍置いて、自分の思いを自覚した眼差しを俺に向ける。

「私も、一緒にいたい」

 それは心からの願い。

「どんな時も一緒に歩いていきたい」

 ずっと持ち続けていた願い。

「だから」

 その思いのたけを口にする。

「一緒にいさせてください」





 お互いの思いを伝え合って見つめ合う。

 ただそれだけなのに、嬉しくて笑顔になる。

 溢れ出てくる感情はルイスも同じみたいで、お互い笑顔で笑いあう、そして

「これからもよろしくな」

「うん、改めて、これからもよろしくね」

 そう言って笑いあっていると声がかけられる。

「ルーイースー!」

「きゃ!アンジェ!?」

「良く頑張ったわね!褒めてあげるわ!うりうりうり」

「ちょっ!アンジェ!やめてったら!」

「やだ!これは私からの祝福だから甘んじてうけなさい!」

「そんなー」

 そう言ってルイスの頭を抱きしめて胸に押し付けるアンジェ、割と目に毒なのだけども……

「そうだ、ロイド様、約束覚えてますよね?」

 ルイスを抱えながらアンジェはにっこりと微笑む。

 その微笑に何故か背筋に冷たいものが走る。

「あ、ああ、勿論だ」

「よかった、忘れられていたらどうしようかと思いました」

 そう朗らかに言うのだけれども蜘蛛の糸に絡め取られたような、そんな感覚しかしない。

「むー、約束ってなによー」

 そういうルイスにアンジェが答える。

「貴方がロイド様にちゃんと接する事が出来なかったから心配されてたのよ、それで私に相談されたの、それを解決したら出来るお願いを#なんでも_・・・・__#聞いてもらえるっていう約束よ」

「むぅ……」

 自分が原因とあっては何も言えないルイス。

 あ、これ絶対やばい奴だ。
 
 それが分かったところで俺には出来る事はない、せめてもの予防線だけでも張っておかないと。

「本当に出来る事だけだからな」

「もちろんです、ルイスも悲しまず、気まずい思いもせずに誰も、あ、お父様だけ悲しいかもしれませんが、誰も悲しい思いはしないお願いです」

 その言葉を発したと思ったら、急にルイスの肩を掴んで体勢を変えて目を合わせてアンジェの表情が真剣になる。

「ルイス、私も貴方と一緒にロイド様と歩んでもいいですか?」

「えっと、いいの?」

「ええ、貴方となら、上手くやっていけますから」

「アンジェがいいなら、私も歓迎する」

「ありがとう、ルイス、ということで、ロイド様、ルイスと一緒に私も貰って下さい」

 えっと、これ、どうしたらいいんだ

「ダメでしょうか……?」

 瞳を潤ませて泣きそうな顔をするアンジェに反射的に口が開く。

「だ、だめじゃない!だめじゃないけど、いいのか?」

「……はぁ」

「お兄ちゃん……」

 え、これ俺が悪いの……?

「何でもお願い聞くって逃げ道塞いでまでお願いしてるのに、いいのかはないですよ……」

「うん、流石にそれは私も……」

「す、すまない、余りにも予想外すぎて……」

 二人の言葉に狼狽する。

 そして二人は顔を合わせて。

「これから先が思いやられますね」

「まぁお兄ちゃんだから」

「そうですね、がんばりましょう」

「うん」

 そう言って意気投合している二人。

 なんだか置いてけぼりをくらった気分……

「これからもよろしくね、     お兄ちゃん」
「これからもよろしくお願いしますね、ロイド様」

「こちらこそ、よろしくな、ふたりとも」

 まぁいいや、こうやって3人で笑っていられるんだから。

 ずっと一緒に笑っていけるように、頑張ろう。

 そうして夜は更けていく。

 様子を見に来た近衛騎士がその空気に割り込む事もできずに、動作停止しているのを余所にして。

 3人がそれに気がつくまで、その近衛騎士は砂糖を吐いていたとかなんとか、嘘か本当か、真実は誰にも分からない。





アイ「ようやくか」
リリ「ようやくね」
アラ「長かったな」
アイ「ああ、我が息子ながら嘆かわしい」
リリ「主人公らしいヘタレっぷりよね」
アラ「おいこら、メタ発言するなって」
リリ「いいじゃない、おめでたいんだから、そうだ、今夜は赤飯たかなきゃね!」
アラ「おまえなぁ、赤飯どころか米も炊いた事ないだろうに……」
リリ「その辺は作者準拠よ」
アラ「だからメタ発言しない」
リリ「もう、硬いわね」
アイ「夫婦漫才はその辺にして、アンジェのこれ、予想できたか?」
リリ「んーなんとなく」
アラ「全然わからんかった……」
アイ「やはりその辺は男には分からんか」
アラ「しかし、重婚になるけど、いいのか?」
アイ「あー、この世界、重婚となると貴族ぐらいしかできないが、アンジェは皇女だからな、ロイドも既に戦果を上げてるから問題ないだろ」
リリ「もてるものの特権よね」
アラ「それならいいんだけどよ……」
リリ「結構周到に用意してるみたいだから大丈夫よ」
アイ「だな。さてこれからどうなるんだっけ?」
リリ「多分討伐フェイズになるんじゃないかしら?」
アラ「刺客の検証はいいのかね?」
リリ「その辺も動きがありそうね」
アイ「まぁ出たとこ勝負だろうな」
リリ「仕方ないわね」

ということで次回から討伐フェイズに入ります。
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