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48 増援
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「人間如きにこの俺様を愚弄されるなど、許せぬ、許せぬぞおおおおおおお」
デルクはそう叫び怒り狂うが、そのままでは同じ事の焼き増しとなるのが分かるのか対峙したまま硬直状態となる。
今度はこちらから攻める、そうしようとしたときに誰も予想していなかった事が起こる。
黒く、澱んだ瘴気が辺りを包み始めたのだ。
「おい!」
デルクが不意に呟く。
「おい!っつってんだろ!何の真似だ!!!」
その言葉と共に腕を振り斬撃を放つがそれは空を切る。
しかしそれに応える声があった。
「あらあら、様子を見に来てみたら失敗しそうになってるからお手伝いしてあげようと思ったのに、つれないじゃない?」
野太い声が響き渡る。
そして少し小高くなっている場所に立てられている十字架の上にどこからともなく現れた蝙蝠が集まってくる。
「んなこた関係ねえ!なにしにきた!アルベ!!!」
「可愛いデルクちゃんが失敗しないようにお手伝いにきたのよ、いるでしょ?お・て・つ・だ・い」
その声と共にそれは姿を現した。
濃い臙脂色のブーツに、同色の肘までの薄い手袋をし、頭にも同色のベレー帽、そして身に纏うのは赤いレオタードのようなびっちりとした衣服。
それを身に纏う、筋肉ムキムキの2メートルを越す巨体、その顔にはバッチリとメイクがされているのだが、その顎にはぼつぼつと青黒い物が生えた。
「お前なんてお呼びじゃえーんだよ!このくそガマ!」
その言葉に空気が凍る。
「あーら、酷い事言うのはこのお口かしら?それともー?」
そういってにっこりと手をワキワキさせながら近寄ってくるアルベに表情が凍る。
「や、やめろ、やめてくれ……ア、アアアアッーーーーーーー!!」
なんかおぞましい事が行われているが、うん、なかった事にしよう。
呆気に取られているのは私だけではない。
お父さん達もなにあれ?って顔してるし、アンジェは苦笑い。
リンちゃんも不思議そうな顔をしている……あっ、口に魔力溜めてる。
クウちゃんの情操に悪いから見えないようにしてるからクウちゃんは何が起きているかわかってないけどね。
しかしそのドタバタは長くは続かない。
「さて、貴方達、ここからはこれまでのようにいかないわよ?」
そう言って右手にピクピクと痙攣しているデルクを持つアルバは。
「もう!しっかりしなさいよこのスカタン!」
デルクを地面に叩きつけて叩き起こす。
「誰のせいだ!」
そう言って食ってかかるデルクをニヤっとした笑いで黙らせる。
「そんなことはいいから、早く任務を達成して帰るわよ、四柱が二人揃ったんだから失敗は許されないわ」
「チッ」
そういって戦闘体勢に入る。
「待たせたわね!ここからは私も参戦させてもらうわ、4柱の一人、妖艶なるアルベがね!」
呆気に取られて攻撃し忘れてしまってただけなんだけど……
そんなことは我知らずとばかりに鞭を構えるアルベ。
魔力と瘴気を身に纏い並び立つ姿はデルクと比べて見劣りしない。
いや、それどころか巨体の分だけ威圧感がある分強そうに見える。
「まずいな」
「そうね、これはちょっと荷が重いかも」
そう話すお父さんとお母さんの姿に気を引き締める。
しかしそれをどうするかを話す暇もなく、戦闘は再開される。
「さあ、いくわよ!デルクちゃん!GO!」
「だあああ!指図するなあああああ!!」
そのなんともしまらない言葉と共に戦闘は再開された。
しかしその言葉とは裏腹に、バンパイア達は凶悪な戦闘力を発揮する。
さっきと同じようにデルクにお父さんがぶつかり、そこにお母さんが魔法をかけるが。
「甘いわよ!」
そう叫んでその魔法を鞭の一振りで消滅させると。
「ほらほら、そんなところでモタモタしない!」
とデルクと競り合うお父さんに向けて鞭の先を向ける。
それにリンちゃんが左手で応戦するが、今度はそこに標的を変えてリンちゃんの左手を強かに打ち据える。
苦痛に顔を歪ませるリンちゃんに喜悦の笑みを浮かべるのだが、そこに矢が飛来してアルベは後退するのだが。
「ぐ、くそ!」
お父さんだけではデルクの相手は荷が重いようで、徐々に押されていく。
そこに錬金術師のお姉さんが横合いから切りつけるが、察知されていたのかデルクは後退して距離が開く。
晴れたはずの暗雲が立ち込めてくるのが見えた。
「そろそろね」
その言葉と共に変化は訪れる。
何があるのか、そう身構える私達をニヤニヤと見つめるアルベの前でその変化は起こる。
ガシャ
重たい物が地面を叩く音がする。
その先に目をやるとお父さんが膝をついて息を荒げている。
隣に立つお母さんも脂汗をかきながら息が荒い。
「いくらデルクちゃんの束縛から抜けてもやっぱりアンデッドなのよね、貴方達、それなのに聖属性なんて、無茶がすぎるのよ」
そういって歩いてきて腰に手をやり、仁王立ちをするアルベ。
「まだだ、まだ負けるわけにはいかねえ」
そうやって苦しげに立つお父さん、だけどちからは余り残っていないのが見て分かる。
「美しい親子愛に免じて見逃してあげたいけど、そうもいかないのよね、悪く思わない事ね」
そういって鞭を構えるアルベ、突撃体勢を取るデルクに対してお父さんも身構える。
脂汗を流しながら苦痛をこらえてお母さんも詠唱を唱え、苦虫を噛み潰したようなお姉さんに痛みを堪えながら構えるリンちゃん。
アンジェも形成の悪さに苦悩しており、困憊しているクウちゃんも前に出ようと身構える。
私も何かしないといけない。
残り少ない魔力を振り絞り、出来る事を考える。
考えたところで答えなど出るはずもなく、不利な状況のまま私達は再度ぶつかり合う事になる。
決着の時は近い。
デルクはそう叫び怒り狂うが、そのままでは同じ事の焼き増しとなるのが分かるのか対峙したまま硬直状態となる。
今度はこちらから攻める、そうしようとしたときに誰も予想していなかった事が起こる。
黒く、澱んだ瘴気が辺りを包み始めたのだ。
「おい!」
デルクが不意に呟く。
「おい!っつってんだろ!何の真似だ!!!」
その言葉と共に腕を振り斬撃を放つがそれは空を切る。
しかしそれに応える声があった。
「あらあら、様子を見に来てみたら失敗しそうになってるからお手伝いしてあげようと思ったのに、つれないじゃない?」
野太い声が響き渡る。
そして少し小高くなっている場所に立てられている十字架の上にどこからともなく現れた蝙蝠が集まってくる。
「んなこた関係ねえ!なにしにきた!アルベ!!!」
「可愛いデルクちゃんが失敗しないようにお手伝いにきたのよ、いるでしょ?お・て・つ・だ・い」
その声と共にそれは姿を現した。
濃い臙脂色のブーツに、同色の肘までの薄い手袋をし、頭にも同色のベレー帽、そして身に纏うのは赤いレオタードのようなびっちりとした衣服。
それを身に纏う、筋肉ムキムキの2メートルを越す巨体、その顔にはバッチリとメイクがされているのだが、その顎にはぼつぼつと青黒い物が生えた。
「お前なんてお呼びじゃえーんだよ!このくそガマ!」
その言葉に空気が凍る。
「あーら、酷い事言うのはこのお口かしら?それともー?」
そういってにっこりと手をワキワキさせながら近寄ってくるアルベに表情が凍る。
「や、やめろ、やめてくれ……ア、アアアアッーーーーーーー!!」
なんかおぞましい事が行われているが、うん、なかった事にしよう。
呆気に取られているのは私だけではない。
お父さん達もなにあれ?って顔してるし、アンジェは苦笑い。
リンちゃんも不思議そうな顔をしている……あっ、口に魔力溜めてる。
クウちゃんの情操に悪いから見えないようにしてるからクウちゃんは何が起きているかわかってないけどね。
しかしそのドタバタは長くは続かない。
「さて、貴方達、ここからはこれまでのようにいかないわよ?」
そう言って右手にピクピクと痙攣しているデルクを持つアルバは。
「もう!しっかりしなさいよこのスカタン!」
デルクを地面に叩きつけて叩き起こす。
「誰のせいだ!」
そう言って食ってかかるデルクをニヤっとした笑いで黙らせる。
「そんなことはいいから、早く任務を達成して帰るわよ、四柱が二人揃ったんだから失敗は許されないわ」
「チッ」
そういって戦闘体勢に入る。
「待たせたわね!ここからは私も参戦させてもらうわ、4柱の一人、妖艶なるアルベがね!」
呆気に取られて攻撃し忘れてしまってただけなんだけど……
そんなことは我知らずとばかりに鞭を構えるアルベ。
魔力と瘴気を身に纏い並び立つ姿はデルクと比べて見劣りしない。
いや、それどころか巨体の分だけ威圧感がある分強そうに見える。
「まずいな」
「そうね、これはちょっと荷が重いかも」
そう話すお父さんとお母さんの姿に気を引き締める。
しかしそれをどうするかを話す暇もなく、戦闘は再開される。
「さあ、いくわよ!デルクちゃん!GO!」
「だあああ!指図するなあああああ!!」
そのなんともしまらない言葉と共に戦闘は再開された。
しかしその言葉とは裏腹に、バンパイア達は凶悪な戦闘力を発揮する。
さっきと同じようにデルクにお父さんがぶつかり、そこにお母さんが魔法をかけるが。
「甘いわよ!」
そう叫んでその魔法を鞭の一振りで消滅させると。
「ほらほら、そんなところでモタモタしない!」
とデルクと競り合うお父さんに向けて鞭の先を向ける。
それにリンちゃんが左手で応戦するが、今度はそこに標的を変えてリンちゃんの左手を強かに打ち据える。
苦痛に顔を歪ませるリンちゃんに喜悦の笑みを浮かべるのだが、そこに矢が飛来してアルベは後退するのだが。
「ぐ、くそ!」
お父さんだけではデルクの相手は荷が重いようで、徐々に押されていく。
そこに錬金術師のお姉さんが横合いから切りつけるが、察知されていたのかデルクは後退して距離が開く。
晴れたはずの暗雲が立ち込めてくるのが見えた。
「そろそろね」
その言葉と共に変化は訪れる。
何があるのか、そう身構える私達をニヤニヤと見つめるアルベの前でその変化は起こる。
ガシャ
重たい物が地面を叩く音がする。
その先に目をやるとお父さんが膝をついて息を荒げている。
隣に立つお母さんも脂汗をかきながら息が荒い。
「いくらデルクちゃんの束縛から抜けてもやっぱりアンデッドなのよね、貴方達、それなのに聖属性なんて、無茶がすぎるのよ」
そういって歩いてきて腰に手をやり、仁王立ちをするアルベ。
「まだだ、まだ負けるわけにはいかねえ」
そうやって苦しげに立つお父さん、だけどちからは余り残っていないのが見て分かる。
「美しい親子愛に免じて見逃してあげたいけど、そうもいかないのよね、悪く思わない事ね」
そういって鞭を構えるアルベ、突撃体勢を取るデルクに対してお父さんも身構える。
脂汗を流しながら苦痛をこらえてお母さんも詠唱を唱え、苦虫を噛み潰したようなお姉さんに痛みを堪えながら構えるリンちゃん。
アンジェも形成の悪さに苦悩しており、困憊しているクウちゃんも前に出ようと身構える。
私も何かしないといけない。
残り少ない魔力を振り絞り、出来る事を考える。
考えたところで答えなど出るはずもなく、不利な状況のまま私達は再度ぶつかり合う事になる。
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