22 / 76
22 闇の住人
しおりを挟む
日の暮れた街を教会に向かって歩きながら考える。
あの時ギルドマスターが言った言葉
「指名依頼を出させてもらいたいと思っている、依頼内容は疾風の英雄とは別ルートで侵入して敵魔族の討伐だ」
それが何を意味するかというのは明白である。
「色々な情報を加味した結果、恐らくあいつらは失敗する。」
それは大いにありえることだ、あいつらの攻撃が通らず、持久戦に持ち込まれてしまったとしたら。
「最悪あいつらが敵に回るか」
「ああ、もしあいつらが殺されてアンデッドにされて敵に回ったとしたら」
「あの辺一帯は壊滅するか」
「そうだ、だからもしもアンデッドになりそうだったら頼む」
仮にあいつらがアンデッドになって暴れたとしたらどうなるか。
恐らくはあいつらが通った後の村は全て消える事になるだろう。
そしてそれを止められる人間はSS級以上の者だけだ。
止めるまでにどれだけの村人が騎士団が犠牲になるか、それは恐らく途方もない数になる。
ただ失敗して逃げ帰ってくるだけならまだいい、だがもし、そうなってしまったとしたら。
「分かった、引き受けるよ」
両親の墓のあるあの村も、世話になった孤児院もなくなってしまう。
その最悪の事態を避ける為に、首を縦に振るのだった。
その夜
「それじゃおやすみ」
「うん、おやすみなさい、おにいちゃん」
「「おやすみなさい」」
ルイス達と別れて寝室に向かう。
クウと一緒の部屋にはいり、眠りに入った、数刻後、不穏な物を感じて目が覚める。
「ん?なんだ?殺気とも違うが」
身体を起こすと真横で声が上がる
「んにゅぅ、ロイドお兄さん、どうしたの?」
身体に抱きついていたクウが目を覚まして寝ぼけ眼を擦っていた。
「わからないが、ルイスとリンを起こして一緒にいてくれないか?」
「うん、おにいさんは?」
「気になる事がある、少し周りを見てくる、頼んだぞ」
「うん」
剣と盾、道具袋を装備してクウをルイスの部屋に預けて外に出る。
ルイスの奴、「え?お兄ちゃん夜這い?」とかどこで覚えたんだよ。
妹を夜這いとかしてたまるか。
と雑念を持っていては不覚を取るかもしれないので目の前に集中して。
教会の外に出ると明らかに空気が違う。
重苦しく、澱んた空気は一種の重圧を感じさせる。
「アンデッドの気配か」
以前ソロで受けた依頼、吸血鬼の討伐の時に感じた気配に似ていた。
吸血鬼は吸血行動により、眷属を増やすA級のモンスターとされているが、その実体は玉石混合である。
下位の眷属はグール等のD級レベルの者から、知性のあるかもしれないドラウグル、知性のあるB級のハーフバンパイア、通常のA級のヴァンパイア、その上になるとヴァンパイアを従えるヴァンパイアロードやジュネラル、キングやクィーンといった国を作り上げ、その大元にはSSS級と呼ばれる始祖と言われる者がいるらしい。
もっとも始祖やその直下の配下は大して人間への敵愾心はなく、場合によっては友好的である。
なので敵対するのは一握りの者ではあるが、それでもそれなりの強さを持つ事を考えれば全体に対して戦いを挑めないのは理解出来ると思う。
知性はあるが、親の強制力には逆らう事が出来ないハーフヴァンパイア、恐らくそれがこの教会を囲む者の正体だ。
暗闇に赤い光が走る。
走りよりその光に身構え、あと10歩で激突する、その瞬間に別方向から殺気を感じ後退する。
その瞬間に風切り音が鳴り石を砕いて何かが突き刺さる音がする。
その音に弓の存在を認識するがそちらにばかり意識は裂けない。
目の前の敵が切り込んでくるのを盾を叩きつけることで地面に鎮める。
通常ならこれで沈黙するのだが。
「ガアアアアアアア!」
雄たけびと共に跳ね起きる勢いを使って蹴りを放ってくる。
その足を掴む、そして蹴りと同時に感じた殺気の片方に足を掴んだ相手を、逆の方に盾の防壁を当てる。
両の腕に感じる衝突の衝撃。
見ると右手に掴んだ男はぼろ雑巾のようにズタズタに打ち据え、射された状態で石畳に拉げていた。
迎撃と共に叩きつけた事でようやく沈黙したのだろう。
思っていた以上にタフな相手に恐らくA級相当の力があると舌を巻く。
そう思ったときには奴等は次の動きに入っていた。
左右の物陰から同時に素早く駆け寄る赤い光。
足で剣を跳ね上げ手に取ると右に突進をかける。
それに対して右の襲撃者は距離を保とうと急制動をかけ、若干の後退をかける。
反対の左は速度を増して強襲してくるが。
かかった、そう思った俺は左手に装着している盾に魔力を流し形状を変更。
制動をかけ、振り返る勢いを使いその盾を放つ。
止まった俺に好機と思い足に力を入れたその襲撃者が次の瞬間見たものは眼前に迫った鉄球のようなものだった。
衝突した瞬間に頭を粉砕した鉄球の重量増による慣性に乗って10メートルを飛ぶ。
飛び上がった瞬間に俺の居た所を通り過ぎる何か。
着地と同時に耐性を整え、逆の相手に身構える。
「逃げたか」
鮮やかな引き際である。
4人中2人が潰された事で勝てないと見て即撤退に移る。
これは指令を出す者がいるか、面倒な事この上ないな。
そう思い屍骸の回収をしようとしたとき。
教会の中から何かが壊れる物音が聞こえる。
その音に背筋が凍る。
無事でいてくれ、その思いと共に教会の中に入るべく扉に急ぐ。
ようやくたどり着いて扉を開ける。
「ルイス!リン!クウ!大丈夫か!?」
埃が舞い上がって暗闇に包まれて視界は利かない中、赤い光が不気味に光り唸り声を上げる。
「があああああああああああああ!!」
叫び声が響き渡った。
あの時ギルドマスターが言った言葉
「指名依頼を出させてもらいたいと思っている、依頼内容は疾風の英雄とは別ルートで侵入して敵魔族の討伐だ」
それが何を意味するかというのは明白である。
「色々な情報を加味した結果、恐らくあいつらは失敗する。」
それは大いにありえることだ、あいつらの攻撃が通らず、持久戦に持ち込まれてしまったとしたら。
「最悪あいつらが敵に回るか」
「ああ、もしあいつらが殺されてアンデッドにされて敵に回ったとしたら」
「あの辺一帯は壊滅するか」
「そうだ、だからもしもアンデッドになりそうだったら頼む」
仮にあいつらがアンデッドになって暴れたとしたらどうなるか。
恐らくはあいつらが通った後の村は全て消える事になるだろう。
そしてそれを止められる人間はSS級以上の者だけだ。
止めるまでにどれだけの村人が騎士団が犠牲になるか、それは恐らく途方もない数になる。
ただ失敗して逃げ帰ってくるだけならまだいい、だがもし、そうなってしまったとしたら。
「分かった、引き受けるよ」
両親の墓のあるあの村も、世話になった孤児院もなくなってしまう。
その最悪の事態を避ける為に、首を縦に振るのだった。
その夜
「それじゃおやすみ」
「うん、おやすみなさい、おにいちゃん」
「「おやすみなさい」」
ルイス達と別れて寝室に向かう。
クウと一緒の部屋にはいり、眠りに入った、数刻後、不穏な物を感じて目が覚める。
「ん?なんだ?殺気とも違うが」
身体を起こすと真横で声が上がる
「んにゅぅ、ロイドお兄さん、どうしたの?」
身体に抱きついていたクウが目を覚まして寝ぼけ眼を擦っていた。
「わからないが、ルイスとリンを起こして一緒にいてくれないか?」
「うん、おにいさんは?」
「気になる事がある、少し周りを見てくる、頼んだぞ」
「うん」
剣と盾、道具袋を装備してクウをルイスの部屋に預けて外に出る。
ルイスの奴、「え?お兄ちゃん夜這い?」とかどこで覚えたんだよ。
妹を夜這いとかしてたまるか。
と雑念を持っていては不覚を取るかもしれないので目の前に集中して。
教会の外に出ると明らかに空気が違う。
重苦しく、澱んた空気は一種の重圧を感じさせる。
「アンデッドの気配か」
以前ソロで受けた依頼、吸血鬼の討伐の時に感じた気配に似ていた。
吸血鬼は吸血行動により、眷属を増やすA級のモンスターとされているが、その実体は玉石混合である。
下位の眷属はグール等のD級レベルの者から、知性のあるかもしれないドラウグル、知性のあるB級のハーフバンパイア、通常のA級のヴァンパイア、その上になるとヴァンパイアを従えるヴァンパイアロードやジュネラル、キングやクィーンといった国を作り上げ、その大元にはSSS級と呼ばれる始祖と言われる者がいるらしい。
もっとも始祖やその直下の配下は大して人間への敵愾心はなく、場合によっては友好的である。
なので敵対するのは一握りの者ではあるが、それでもそれなりの強さを持つ事を考えれば全体に対して戦いを挑めないのは理解出来ると思う。
知性はあるが、親の強制力には逆らう事が出来ないハーフヴァンパイア、恐らくそれがこの教会を囲む者の正体だ。
暗闇に赤い光が走る。
走りよりその光に身構え、あと10歩で激突する、その瞬間に別方向から殺気を感じ後退する。
その瞬間に風切り音が鳴り石を砕いて何かが突き刺さる音がする。
その音に弓の存在を認識するがそちらにばかり意識は裂けない。
目の前の敵が切り込んでくるのを盾を叩きつけることで地面に鎮める。
通常ならこれで沈黙するのだが。
「ガアアアアアアア!」
雄たけびと共に跳ね起きる勢いを使って蹴りを放ってくる。
その足を掴む、そして蹴りと同時に感じた殺気の片方に足を掴んだ相手を、逆の方に盾の防壁を当てる。
両の腕に感じる衝突の衝撃。
見ると右手に掴んだ男はぼろ雑巾のようにズタズタに打ち据え、射された状態で石畳に拉げていた。
迎撃と共に叩きつけた事でようやく沈黙したのだろう。
思っていた以上にタフな相手に恐らくA級相当の力があると舌を巻く。
そう思ったときには奴等は次の動きに入っていた。
左右の物陰から同時に素早く駆け寄る赤い光。
足で剣を跳ね上げ手に取ると右に突進をかける。
それに対して右の襲撃者は距離を保とうと急制動をかけ、若干の後退をかける。
反対の左は速度を増して強襲してくるが。
かかった、そう思った俺は左手に装着している盾に魔力を流し形状を変更。
制動をかけ、振り返る勢いを使いその盾を放つ。
止まった俺に好機と思い足に力を入れたその襲撃者が次の瞬間見たものは眼前に迫った鉄球のようなものだった。
衝突した瞬間に頭を粉砕した鉄球の重量増による慣性に乗って10メートルを飛ぶ。
飛び上がった瞬間に俺の居た所を通り過ぎる何か。
着地と同時に耐性を整え、逆の相手に身構える。
「逃げたか」
鮮やかな引き際である。
4人中2人が潰された事で勝てないと見て即撤退に移る。
これは指令を出す者がいるか、面倒な事この上ないな。
そう思い屍骸の回収をしようとしたとき。
教会の中から何かが壊れる物音が聞こえる。
その音に背筋が凍る。
無事でいてくれ、その思いと共に教会の中に入るべく扉に急ぐ。
ようやくたどり着いて扉を開ける。
「ルイス!リン!クウ!大丈夫か!?」
埃が舞い上がって暗闇に包まれて視界は利かない中、赤い光が不気味に光り唸り声を上げる。
「があああああああああああああ!!」
叫び声が響き渡った。
10
お気に入りに追加
783
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】
僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。
そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。
でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。
死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。
そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
旅の道連れ、さようなら【短編】
キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。
いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。
固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる
名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。
冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。
味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。
死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる