彼の隣に私は似合わない

うさみ

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4月

新しい学校

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少しだけ大きめの新しい制服はまだ固くて着慣れない。

玄関でそわそわと前髪なんかを何度も直しながら大好きな人の迎えを待つ。

早く会いたいという気持ちと、待ってる間のもどかしさが混ざり合うこの時間が、私は好きだ。

新しい学校に慣れるまでの一ヶ月限定の彼との登校は胸を高鳴らせる。

いつまでも四月であってほしいくらいに。

ガチャリといきなり開く扉に背筋が伸びる。


「ごめん!待たせた?」

「全然平気!たった今靴履いたところだから。」


そっか!よかったぁ、とふわりと笑う彼に私もつられて笑ってしまう。


「じゃあ行くか!」


道迷ったりしないでよ?なんて軽口を叩きながら彼の横に並ぶ。


「クラス一緒になるかな?」


新学期らしい当たり障りのないセリフをなるべく自然に言いたかったが少し声が裏返ってしまう。

慌てて隣にいる彼の顔を伺う。


「声裏返ってる!緊張してんの?」


笑いながら問う彼の様子からしてあまり気にされていないみたいで少し安心。


「してないと思ったんだけど…してたみたい。裕太以外で仲良かった人とか他にいないし。」


同じ中学なのは私と彼と他数名。私も彼もその人たちとは特別仲がいいわけではなかった。


「あー確かに!黛も木下も名前知ってるくらいかもしれねぇ」


「私も。クラスさえ一緒になったことないもん。」


卒業前から黛くんも木下さんも同じ学校にいくことは知っていたが、あえて声をかけたりはしなかった。

彼の、裕太の友達は私だけという状況のほうが都合が良いと思ったとかでは決してない。
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