74 / 88
第73話 ヨシュア、戦場に潜り込む。
しおりを挟む
街の外から、街全体に聞こえるほどの大きな楽器の音が聞こえた。
それを……僕とウィスドムさん、ファンロンさんは案内された部屋で聞いていた。
その音を聞いていた静かに本を読んでいたウィスドムさんが顔を上げると……。
「戦いが始まったわ」
「えっ? この音が、そうなの……ですか?」
「ええ、馬鹿みたいって思うでしょうけど宣戦布告されたから奇襲ってわけには行かないみたいで、こっちも攻撃しますっていうのを教えるための楽器の音ね」
「そ、そうなんですか?」
面倒でしょ? と何処か呆れたようにウィスドムさんが言う。
僕はどう答えたら良いのかわからず、眉を寄せるけれど……ファンロンさんが反応した。
「人間面倒アルね。ファンロン達普通に元の姿に戻って、ブレスをブーーッ!アルよ?」
「あんたのは規格外過ぎるの……。と言うか、龍が大群で現れたら天変地異の前触れかって思うわよ」
「そうアルか? ファンロン、子供でそう言うの未経験だから分からないアル」
うーん、ファンロンさん……いったいどう言う意味なんだろう?
僕には良く判らないや。
そう思っていると雄叫びが響いた。
人々の雄叫び、それと……モンスターの雄叫びが。
怖いと思うと同時に……僕はある事を思っていた。
「……僕が怖いんだから、街の人も怖いと思ってるんだよね?」
「そうね。怖いと思ってるかも知れないわ……」
「そうアルか? ファンロン、ちっともこわくないアルよ?」
「そう言うものなの、あんたと違って人間は弱いんだから」
「わかったアル」
勇者としての本能、なのかも知れない。
誰かが怖がっている。助けたい、そう心の中で叫んでるように聞こえた。
だからだと思う。僕は立ち上がって……窓の外を眺める。
「ウィスドムさん……あの――「駄目よ」――え」
「ヨシュアのことだから、助けたいって言うんでしょ? だから、その答えに対してわたしは駄目と言わせて貰うわ」
「どうして……」
「どうしても何も、王様も言ったように今のヨシュアは実力が足りないし、戦闘も足りていない。そんなあんたが行ったとしても何の力にもならない。
それどころか、あんたを庇って逆に人が傷つくかも知れないの」
…………ウィスドムさんの言葉はもっともだった。
だけど、それでも……。
「それでも、僕はこの戦いを早く終わらせて、怖がっている人を笑顔にしたいんだっ!」
「ヨシュア?」
「よしゅあ、かっこいいのだ」
「…………と思う」
格好良く言ったけれど、本当にそうなのか分からなくてちょっと不安ながらにそう付け加える。
すると2人は転びそうになっていた。
うぅ、不甲斐無くてゴメン……。そうガクッとする2人に心で思いながら謝る。
「……はあ、ヨシュアが甘いっていうのはわかってたから、こうなるんじゃないかと思ってたわ。でも、どうやってあそこまで行くつもり? 今入口は騎士が護っているから、安全と同時に出ることが不可能よ?」
「う、えっと……、戦場行きますって普通に言えば……」
「そんなこと言ったら完全に閉じ込められるわよ?」
ウィスドムさんにそう言われて、僕はガクリと来る。でも、外に出るにはそうしないといけないと思うんだ。
他に出口と言ったら、大きな窓の先に立てる場所はあるけど……高さが大分あるから危険だって思う。
「よしゅあ、戦場行きたいアル?」
「え? は、はい、ファンロンさん。僕は、怖がっている人達が笑顔に戻って欲しいので、モンスターを退治したいです」
「なるほど、わかったアル。それじゃあ、ファンロン向こうまでヨシュアとウィスを連れて行くアル!」
そう言うとファンロンさんは大きな窓を開けて、立てる場所に歩いていく。
そんなファンロンさんに僕達はついて行くと、ファンロンさんは軽く体を伸ばし始めた。
「おいっちにー、さんしー。久しぶりに戻るから、感覚掴めるか不安アルよー」
「ファンロンさん?」
「うんっと、よしゅあ。ファンロン今から元に戻るけど、驚かないで欲しいアル」
「え? 元にって? え?」
元に戻る? それはいったいどう言う意味だろう?
そう思っていると、体を伸ばし終えたファンロンさんの体が緑色に輝き始めた。……って、えっ!?
「はあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!! ――グゥルゥアアアアアアアアアーーーー!!』
咆哮。そう言わんばかりの声がファンロンさんの口から放たれ、光りが周囲を覆った。
そして、光が止むと……そこにはファンロンさんの姿はなく、代わりに見たこともない緑色の鱗を持った巨大な蛇が居た。
どれくらい巨大かって言うと、僕が10人居て並べたとしても足りないくらいの長さだ。
あ、あれ? ファンロンさんは?
「あの、ウィスドムさん、ファンロンさんは何処に?」
「……まさか、本当に竜人か龍人って思ってたけど、本物の龍だったなんて……」
「ウィスドムさん?」
「だから、目の前のその龍がアホなのよ」
目の前の緑色の鱗を持つ蛇は、りゅうという名前みたいだ。
それよりも、目の前のりゅう? がファンロンさん?
上手く理解出来ない。ファンロンさんが目の前のりゅう、というのが結び付かないでいると……。
『よしゅあー、速く乗るアル。戦場向かうアルよー?』
「う、うわっ!? ほ、本当にファンロンさんだった……」
耳の近くで聞こえた大きな声に驚くけれど、その声は聞き覚えのあるファンロンさんの声だった。
そして、その声を聞いて僕はそうだったと思い出す。
「わ、わかりました! えと、ウィスドムさんは……」
「もちろんついて行くわ。……あんた達だけに任せると碌なことが起きないでしょうしね」
「あ、ありがとうございます……」
ウィスドムさんの言葉にどんな表情を浮かべたら良いのか困りつつ、僕はファンロンさんを見る。
「ファンロンさーん、どうやって乗れば良いですかー?」
『普通に飛び乗ってくれたら良いアルよー』
「わかりましたーっ! えと、ウィスドムさん、行きましょう!」
「ええ、行きましょうか」
ウィスドムさんの返事を聞いて、僕はファンロンさんにジャンプして飛び乗る。
……あ、そういえば普通にジャンプで飛び乗れちゃった。
レヴが上がって上昇したステータスの恩恵、っていうのかな? そう思っていると、ウィスドムさんも乗ってきた。
それを見届けて、ファンロンさんは「行くアルよー」と言ってゆっくりと空へと昇っていった。
―――――
・ファンロン(龍状態):
全長25メートル、胴回り3メートル
鱗の色:緑(風龍の証)
備考:現在成長途中
それを……僕とウィスドムさん、ファンロンさんは案内された部屋で聞いていた。
その音を聞いていた静かに本を読んでいたウィスドムさんが顔を上げると……。
「戦いが始まったわ」
「えっ? この音が、そうなの……ですか?」
「ええ、馬鹿みたいって思うでしょうけど宣戦布告されたから奇襲ってわけには行かないみたいで、こっちも攻撃しますっていうのを教えるための楽器の音ね」
「そ、そうなんですか?」
面倒でしょ? と何処か呆れたようにウィスドムさんが言う。
僕はどう答えたら良いのかわからず、眉を寄せるけれど……ファンロンさんが反応した。
「人間面倒アルね。ファンロン達普通に元の姿に戻って、ブレスをブーーッ!アルよ?」
「あんたのは規格外過ぎるの……。と言うか、龍が大群で現れたら天変地異の前触れかって思うわよ」
「そうアルか? ファンロン、子供でそう言うの未経験だから分からないアル」
うーん、ファンロンさん……いったいどう言う意味なんだろう?
僕には良く判らないや。
そう思っていると雄叫びが響いた。
人々の雄叫び、それと……モンスターの雄叫びが。
怖いと思うと同時に……僕はある事を思っていた。
「……僕が怖いんだから、街の人も怖いと思ってるんだよね?」
「そうね。怖いと思ってるかも知れないわ……」
「そうアルか? ファンロン、ちっともこわくないアルよ?」
「そう言うものなの、あんたと違って人間は弱いんだから」
「わかったアル」
勇者としての本能、なのかも知れない。
誰かが怖がっている。助けたい、そう心の中で叫んでるように聞こえた。
だからだと思う。僕は立ち上がって……窓の外を眺める。
「ウィスドムさん……あの――「駄目よ」――え」
「ヨシュアのことだから、助けたいって言うんでしょ? だから、その答えに対してわたしは駄目と言わせて貰うわ」
「どうして……」
「どうしても何も、王様も言ったように今のヨシュアは実力が足りないし、戦闘も足りていない。そんなあんたが行ったとしても何の力にもならない。
それどころか、あんたを庇って逆に人が傷つくかも知れないの」
…………ウィスドムさんの言葉はもっともだった。
だけど、それでも……。
「それでも、僕はこの戦いを早く終わらせて、怖がっている人を笑顔にしたいんだっ!」
「ヨシュア?」
「よしゅあ、かっこいいのだ」
「…………と思う」
格好良く言ったけれど、本当にそうなのか分からなくてちょっと不安ながらにそう付け加える。
すると2人は転びそうになっていた。
うぅ、不甲斐無くてゴメン……。そうガクッとする2人に心で思いながら謝る。
「……はあ、ヨシュアが甘いっていうのはわかってたから、こうなるんじゃないかと思ってたわ。でも、どうやってあそこまで行くつもり? 今入口は騎士が護っているから、安全と同時に出ることが不可能よ?」
「う、えっと……、戦場行きますって普通に言えば……」
「そんなこと言ったら完全に閉じ込められるわよ?」
ウィスドムさんにそう言われて、僕はガクリと来る。でも、外に出るにはそうしないといけないと思うんだ。
他に出口と言ったら、大きな窓の先に立てる場所はあるけど……高さが大分あるから危険だって思う。
「よしゅあ、戦場行きたいアル?」
「え? は、はい、ファンロンさん。僕は、怖がっている人達が笑顔に戻って欲しいので、モンスターを退治したいです」
「なるほど、わかったアル。それじゃあ、ファンロン向こうまでヨシュアとウィスを連れて行くアル!」
そう言うとファンロンさんは大きな窓を開けて、立てる場所に歩いていく。
そんなファンロンさんに僕達はついて行くと、ファンロンさんは軽く体を伸ばし始めた。
「おいっちにー、さんしー。久しぶりに戻るから、感覚掴めるか不安アルよー」
「ファンロンさん?」
「うんっと、よしゅあ。ファンロン今から元に戻るけど、驚かないで欲しいアル」
「え? 元にって? え?」
元に戻る? それはいったいどう言う意味だろう?
そう思っていると、体を伸ばし終えたファンロンさんの体が緑色に輝き始めた。……って、えっ!?
「はあああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!! ――グゥルゥアアアアアアアアアーーーー!!』
咆哮。そう言わんばかりの声がファンロンさんの口から放たれ、光りが周囲を覆った。
そして、光が止むと……そこにはファンロンさんの姿はなく、代わりに見たこともない緑色の鱗を持った巨大な蛇が居た。
どれくらい巨大かって言うと、僕が10人居て並べたとしても足りないくらいの長さだ。
あ、あれ? ファンロンさんは?
「あの、ウィスドムさん、ファンロンさんは何処に?」
「……まさか、本当に竜人か龍人って思ってたけど、本物の龍だったなんて……」
「ウィスドムさん?」
「だから、目の前のその龍がアホなのよ」
目の前の緑色の鱗を持つ蛇は、りゅうという名前みたいだ。
それよりも、目の前のりゅう? がファンロンさん?
上手く理解出来ない。ファンロンさんが目の前のりゅう、というのが結び付かないでいると……。
『よしゅあー、速く乗るアル。戦場向かうアルよー?』
「う、うわっ!? ほ、本当にファンロンさんだった……」
耳の近くで聞こえた大きな声に驚くけれど、その声は聞き覚えのあるファンロンさんの声だった。
そして、その声を聞いて僕はそうだったと思い出す。
「わ、わかりました! えと、ウィスドムさんは……」
「もちろんついて行くわ。……あんた達だけに任せると碌なことが起きないでしょうしね」
「あ、ありがとうございます……」
ウィスドムさんの言葉にどんな表情を浮かべたら良いのか困りつつ、僕はファンロンさんを見る。
「ファンロンさーん、どうやって乗れば良いですかー?」
『普通に飛び乗ってくれたら良いアルよー』
「わかりましたーっ! えと、ウィスドムさん、行きましょう!」
「ええ、行きましょうか」
ウィスドムさんの返事を聞いて、僕はファンロンさんにジャンプして飛び乗る。
……あ、そういえば普通にジャンプで飛び乗れちゃった。
レヴが上がって上昇したステータスの恩恵、っていうのかな? そう思っていると、ウィスドムさんも乗ってきた。
それを見届けて、ファンロンさんは「行くアルよー」と言ってゆっくりと空へと昇っていった。
―――――
・ファンロン(龍状態):
全長25メートル、胴回り3メートル
鱗の色:緑(風龍の証)
備考:現在成長途中
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる