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isc(裏)生徒会

バトルバレー①

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【千星那由多】

目が覚めると、何故かビーチベッドの上で寝ていた。
俺確か海に落ちて…どうなったんだっけ?
身体を起こすと全員が何かを話しあっている。

「目覚めましたか。溺れていたところを華尻さんに助けてもらったみたいですね」

会長がにっこりとほほ笑む。
華尻が助けた?俺誰かに突き飛ばされたんだけど…突き飛ばしたの華尻じゃなかったのか?
混乱していた所に晴生が水を持ってきてくれたので、それを口に含んだ。

「体調大丈夫ですか?今から麗亜高校との勝負に備えてます。
調度向こう側のビーチにいたみたいで」

ああ、だから華尻がいたのか。
後で一応お礼言っとこ。

話について行けなかったので、ある程度状況を説明してもらうと、どうやら俺が気絶している間に麗亜高校と闘う事になったらしい。
そういや麗亜祭の時に鳳凰院が「次に会ったら敵同士だ!」とか言ってたな。

競技はビーチバレー、ビーチフラッグ、肝試しでのバトルになるらしい。
チーム分けが終わると、ブレスレットが光ったと同時に、全員のイヤフォンから声が聞こえてくる。
この通る声は鳳凰院だ。

『こちらの準備とチーム分けは終わったよ。そちらの準備はいいかい?』

会長がブレスレットを操作すると、会長の声もイヤフォンから響く。

「こちらも終わりました。来てくださって構いません」

『了解した』

イヤフォンからの通話が切れると、遠くに水着を着た女子の団体が見えた。
園楽さんが海パンなのは男なのでわかるけど、鳳凰院も何故か胸にさらしを巻き、海パンだった。
もちろん他の女子は女の水着だ。
下着の次は水着か…。
なるべく動揺しないように気を付けなければと思いながら、全員でビーチの中心地へと向かった。

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【神功左千夫】

麗亜の面々が現れた、この前資料として貰ったのは生徒会メンバーのものだけだったので知らないメンバーも居る。
先程の間に麗亜の能力については各々のブレスレッドにデータとして飛ばしておいた。
今起きたばかりの那由多君には晴生君が説明してくれるだろう。

そして、僕達は一列に並ぶ、戦闘の鳳凰院が握手を求めてきたので僕もその手を握り返した。

「良い勝負にしよう。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

腹の探り合いと言ったらいいのかここから戦闘が始まるとは思えないさわやかな笑みだった。

「それでは、まず、第一回戦、『バトルバレー』のルールから説明します。」

◆バトルバレー◆
・三ポイント先取
・基本はビーチバレーのルールに基づくがパスの順番等は好きにして良い。
・武器、能力の使用可能
・三回以上で相手コートに返らない、ボールを落とす、場外に出す、破壊した場合、相手に一ポイント
・ボールはこちらが指定したものを使う

「ト、言うことダ。
ナノデ、相手への攻撃も、武器でボールを叩くのもアリだ。」

麗亜高校のヒューマノイドのマリアと僕達のイデアが競技を説明していく。
なるほど、どうやら普通のビーチバレーではなさそうだ。
ネットで区切られた闘技場とでも思ったほうがよさそうだ。

「次は組み合わせダ。」

イデアがそう言った途端に空中にディスプレイが浮き上がる。
この辺りは九鬼と対峙したときと似ているな、と、思いながらそれを眺めた。

◆第一回戦◆

・第一試合 神功・九鬼VS鳳凰院・西園寺(水風船)
・第二試合 三木・幸花VS園楽・堂地(しゃぼんだま)
・第三試合 夏岡・日当瀬VS百合草・黒部(パチンコ球)
・第四試合 弟月・純聖VS電堂・不破(とげとげボール)
・第五試合 千星・天夜VS華尻・秋葉(鉄球)


「コートは用意してオイテやったゾ。存分に戦エ。
まずは、神功、九鬼。鳳凰院、西園寺コートにイケ。」

どうやらあちらも僕達同様初めに流れを貰う為に強い選手が出てきたようだ。
さて、それにしてもボールが特殊過ぎるなと思いながら僕は九鬼に視線を送ってからコートに向かった。

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【九鬼】

「会長・副会長同士の対決だネ~♪女の子だからって手加減しないヨ」

「当たり前だ。手加減など無用。」

鳳凰院はボクに視線も向けずにそう返答した。
左千夫クンとはガッチリ握手しちゃうのに、ボクには目もくれないとは。
男が嫌いだとは聞いていたけど、左千夫クンだって男なのに。

「サーブ権はコインで決めル」

コートの中へと入ると、イデちゃんがコインを手の平に乗せる。
小さな指でコインを弾こうとしたのが、その行為を止める。
試合を始める前に、ボクにはやる事があった。

「ちょっと待って、闘ってる間みんな暇でしょ?折角だし見てるみんなにも楽しんでもらおうヨ」

そう言うと砂浜へと両手をつけ能力を送り込んだ。
見る見る内に周りの砂浜から観客席ができあがり、ちょっとした競技場のようになる。

「飲み物とか食べ物はメイドが用意してくれるからなんでも言ってネ」

そう言って麗亜高校の女子達に向かってウインクを送る。
後方から左千夫クンのため息が聞こえたので、イデちゃんにコインを投げるように促した。
イデちゃんは力強くコインを弾くと、凄まじい速さでそれを空中で受け止める。
さすがヒューマノイド。しっかり見てても見えない程の速さだ。
これなら動体視力が良くても表か裏かはわからないだろう。

「闘いを挑んだのは僕達だ。そちらからどうぞ」

鳳凰院がそう言ったので、左千夫クンは礼を言うと「表」と答えた。
なので麗亜側は裏になる。
イデちゃんが手の甲に乗ったコインを見せると、見事に表だった。

「やったネ左千夫クン♪」

こういう時にはテンションというものも大事なので、左千夫クンとハイタッチしようとしたらうまくかわされてしまった。
もーほんとにお堅いんだから。

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【西園寺櫻子】

あちらはナンバー1とナンバー2が出てきたと言っても過言ではない組み合わせ。
どうやら仲は余り良くなさそうな感じです。
しかし、油断しないようにと気を引き締め私達はペンダントに手を当てる。

「しのぶさん、解除しときましょうか?」

「僕もそう思っていたところだよ。」

「「May God Bless You」」

私達のペンダントが展開されブレスレッドとして腕に巻き付く。
これでいつでも直ぐに武器を出せるようになる。
どうやらあちらもその形を採用しているようで地区聖戦用ともう一つ別のブレスレッドを腕に巻き付けていた。

私はネットに向かって右、しのぶさんはネットに向かって左を守ることになった。

愛輝凪は前を神功さん、後ろを九鬼さんが守るようだ。
九鬼さんがビーチボールくらいの水風船を持ってサーブの為にコート外へ出ていく。

九鬼さんの作ってくれた観客席のお陰で全員日陰で観戦出来ている。
体力の消耗を最小限に抑えるには良いだろう。

しかし、神功さんはこの炎天下、あの姿では熱いだろう。
彼はアルビノなので日光には弱いであろうが、それでこちらが有利になればいいと考えていたがどうやらしのぶさんはあれを儀式か何かと勘違いしているようだ。

どうして彼女が会長なのか。
そう、何度も思っているので私が副会長をしているのだが。

「さぁ、いつでも来たまえ!」

そう言って構える、しのぶさんは純粋に楽しそうだった。
勝負に対するこの姿勢だけは尊敬してしまうと思いながら私も構えの姿勢に入った。

「3ポイント先取で勝利です。それでは、試合、開始!」

私達のヒューマノイドの声がビーチに響く。
その声と共に九鬼さんがサーブの構えに入った。

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【九鬼】

「じゃあいっくよー♪」

サーブはボクが打つことになった。
水風船でバレーなんてやったことはもちろんない。
大きさはビーチボール並みにあるが、中はたぷたぷと大量の水が入っている上に、素材も薄手で手の平に乗せるのも少し恐ろしい。
まぁ考えてても仕方がないので、とりあえず打ってみればどうなるかわかるだろう。

「えい!!」

水風船を上へと放り投げ、サーブを打ち込む。
瞬間大きな破裂音がし、調度左千夫クンの頭上で割れた。
もちろん左千夫クンはびしょ濡れだ。
こうなることはちょっと予測してたんだけど。

「麗亜高校、1ポイント」

イデちゃんの起伏の無い声が響くと、頭から水を被った左千夫クンがこちらを振り返った。
爽やかに笑ってはいるがその笑みにはボクに対する殺気が込められている。

「ごめんごめん♪ちょっと力みすぎちゃった!結構簡単に割れるネ!」

両手を顔の前で合わすとイタズラに笑う。
ボクのせいで水風船が割れ、サーブは失敗となったので、サーブ権があちらへと移った。
次割ったら左千夫クンに本気で殺されそうだから気をつけよう。

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【神功左千夫】

予想しなかった…訳ではないが本当にやるとは。
水滴を払うように髪を掻きあげる、中身は海水だったのだろうべたべたする。
はやく終わらせてシャワーを浴びたいのだが、そんなに優しい相手では無いことも自覚している。

「いくぞ、神功君。」

本当は一ポイントごとにタイムを取ることもできるが今は必要ないだろう。
と、言うか僕は一歩も動いていない。

「いつでもどうぞ。」

僕がにっこりとほほ笑むと鳳凰院が水風船を高く上げ、手首のスナップを利かせる様にして打ち込んできた。
それにしても慣れている、もしかしてこう言う特訓を普段からしているのか、そういう競技があるのかどちらかは分からないが要領さえ掴めば出来ないことは無いだろう。

細心の注意を払いながらアンダーでレシーブする。
この辺りはバレーと変わらない。

「九鬼、トスを上げて下さい。」

流石に彼もトスなら失敗はしないだろう。
やんわりとしたトスが僕の頭上に上がる。
水風船なのでたわわと変な形にボールが変形している。

さて、いきなり流れを相手に上げるのは嫌なので僕は先手を繰り出すことにした。
ボールが僕の手に触れる瞬間、水風船を炎で包み込む。
勿論これは僕が作った幻の炎、そして、それをそのまま柔らかいスパイクで鳳凰院へと打ち返した。

炎に包まれる水風船。

そんな非現実的なモノが彼女に向かって行く。

「しのぶさん!幻術ですわ!気をしっかりと持って下さい!!」

西園寺櫻子の声が響くがそんな簡単なことでは僕の幻術はとけない。
炎の球が彼女へと向かって降りて行った。

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【鳳凰院しのぶ】

水風船でバレーというのも中々おもしろい。
やわらかい動作で打ちつけるが、思い切りたたきつけれないのが難点だ。
身長はもちろんあちらの方があるが、特殊なボールでの競技なためそう言ったハンデが響くような事はなさそうだ。

神功君が打ち返してきた水風船が炎に包まれたのが見えた。
彼は幻術使いだという事は知っている。
使ってくるだろうとは思ってはいたが、本物の炎と全く違いのないそれに笑みが零れた。

「大丈夫だ櫻子!こんなもの…熱くなどない!!!」

そもそも本物の炎に包まれれば水風船は跡形もなくなってしまうはずだ。
それがこちらに向かって来ているということは、あれはまがい物!!

アンダーの構えを取った僕はそのボールを受けた――が。
…熱い!想像以上の熱さだ!
まがい物だと頭では思っているはずなのに、その炎は僕の腕を焼き尽くしていく。

「――クッ!!」

眉を顰めながら身を挺して受け止めたが、炎の熱は僕の腕へと広がって行った。
なんとか跳ね返す事はできたが、水風船はあちら側に返る事なく地面へと落ち割れてしまう。

「しのぶさん!」

櫻子が心配して僕の元へと走ってくる。
熱さはボールが割れた事で無くなったが、焼けたような嫌な感覚が後を引いていた。
僕はあまり幻術が得意ではない方だが、これほどまでの幻術師には会った事はなかった。
さすが政府に一目置かれているだけある。

「……さすがだね、神功君!見事な幻術だ!気合いが入ったよ!」

櫻子の手を握り返すと、敬意を表して神功君にビッと親指を立てた。
大丈夫だ、まだ点数は1対1、ここからが本番だ。

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【西園寺櫻子】

流石ですわね、神功さん。

前回の千星那由多の時の幻術とは比べ物にならない精度。
あれが頻繁に来るとなるとこちらも少し苦しいかもしれない。

「左千夫くーん、ハイタ……ちょ、二度もスルーって酷くない!?」

あちら側では九鬼さんがまたかわされている。
唯一の弱点と言うとあの中の悪さくらい。
少し拗ねたようなそぶりを見せている九鬼さんが唇をとがらせている。
どうやらまた彼がサーブを打つ様子。

どうやら九鬼さんはまだ勝負に集中していない。
彼はこう言った特殊なルールを用いる戦闘には不向きなタイプの性格をしている。

……もしかしたら、不意を付けるかもしれない。

「じゃあ、次いくよ!そーれ!」

間延びした声を響かせながら九鬼さんがサーブを打つ。
その瞬間に私はブレスレッドを展開させ、私の武器である弓を高速で放った。

いち早く神功さんが反応したが、それは同時に展開させたしのぶさんが剣を投げつけたおかげで神功さんはその飛んできた剣を防ぐしかなくなってしまった。

私の弓に射抜かれた水風船は神功さんのコート、しかも彼の頭上で弾け飛ぶ。
当然その水はまた彼に掛ったので少し不機嫌そうなオーラが流れた。

勿論その機嫌の悪さはここで一番集中していない者へ向くだろう。
振り返った神功さんと視線が合った九鬼さんの顔が歪んだのが見えた。

「ナイスだ!櫻子!」

そして、こちらにもしのぶさんが来る。
皆の前で手の甲に口付けられ私は少し頬を染めた。

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【九鬼】

確かに攻撃も有りだけど、水風船に対して飛び道具ってずるいな。
そんな事を考えていたが、びしょ濡れの左千夫クンがこちらを見て来たので、まぁさっきのは攻撃してくるのを考えられなかったボクの失敗だったってことにする。
ボクの最初の失敗と今のもので2ポイント先に取られてしまったので、次取られたらもう試合は終わりだ。

あちらで見せつけるように西園寺ちゃんの手の甲へとキスをしている鳳凰院がむかつく。
ボクにだってあれぐらいさせてほしい。

「九鬼、前衛後衛、交代します」

そう言って何故か左千夫クンはボクに近づいて来た。

「えっ?何?キスー?やだなーもう…」

顔がぎりぎりまで寄ると左千夫クンがボクの耳を引っ張り、この後の策をボクの耳元で囁いていく。
ボクは頷かないようにし笑顔のままでそれを聞き終えると、左千夫クンの頬にキスを落として逃げた。
もちろん相手側に不審な空気がバレないようにという意味でのキスだったが、周りから黄色い声があがったのは言うまでもない。

「左千夫クンがほっぺぐらいならいいって言うからサ~♪」

彼は大きくため息を吐いたが、何も言わずに後衛の配置へとついた。
次はあちら側、鳳凰院からのサーブだ。
水風船が宙へと舞うと、音を立ててこちらへと飛んでくる。
何故か先ほどよりはゆるい打ち方だ。

その原因はすぐにわかる。西園寺ちゃんが弓を構えていた。
またすぐにあれで割られたらたまったもんじゃない。

「九鬼」

後ろで左千夫クンがボクの名前を呼ぶと、横で大量の砂が舞ったのが視界の端に見えた。
それは一直線に矢の元へと飛んで行く。
何も言われなかったが何となく意味はわかったので、舞っている砂を能力で硬く硬化させ、西園寺ちゃんが放ってきた矢の軌道を逸らした。
矢はコート外へと落ち、水風船は左千夫クンが相手側へと返す。

何度も同じ手を使われてはたまったもんじゃない。
そうして暫く相手を伺うようなラリーが続いた。

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【神功左千夫】

そもそも彼を後ろにしておいたのが間違いだった。
前からでは出来る指示が限られている。
砂で弓を逸らせたのは良いがここからだ、次はどうやって落とそうか。

僕は時間を稼ぐためにもう一度炎の球を打ち込んだ。
弓での攻撃を最小限にするためには第一打で返すしかない。
そうすると自ずと球筋がばれやすくなる。

「二度も同じ手は食わないぞ!神功君!!
いでよ、ユニコーン!!」

鳳凰院しのぶが再び剣を実体化させ、その剣で円を書く描く様にするとそこから眩い光と共に幻想の動物、ユニコーンが姿を現した。
西園寺櫻子も同じように円を描くとそこからはペガサスが現れた。

麗亜祭でも一度見たが能力は未知数だ。
そして、かなり大きい。

僕の放った炎の球はユニコーンの角の側面で打つように器用に返されてきた。
そして、こちらのコートに来ると直ぐにまた弓の嵐が降り注ぐ。
それを砂で交わしながら僕は再び水風船をあちら側のコートに押し込む。

「九鬼、壁をお願いします。」

「りょーかい♪」

彼はそれだけを告げると砂浜へと手を付く。
そうすると調度ネットの場所に空高く続く大きな砂の壁が出来た。
これでチェックメイトかと思ったが、ユニコーンがその角を使って砂壁を突き破ってきた、そして、それに続いてボールを押し込むようにしながらこっちのコートにペガサスも入ってくる。
なるほど、あの獣たちは彼女たちの能力なのでこちらのコートに入っても反則にはならないだろう。

僕は三叉槍を展開させ向かい打つことにした。
幸い、まだ砂の壁は健在しているので弓でこちらを狙うのは難しいだろう。

「九鬼、行きますよ。」

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【九鬼】

麗亜祭の時に見たが、間近で見ると本当にペガサスとユニコーンだ。
幻術でもなんでもない、あれは本物なんだろう。
さすがにボクには生き物は具現化できないので、ボクの能力ともまた違う。
左千夫クンが上で槍を出したのを見て、ボクもブレスレットを展開させるとグローブにし、それを両手へと嵌めた。
殴るつもりは無いが、一応。

「こっちまで入ってこられちゃかなわないよネ。二匹も飼えないヨ」

そう言って高く飛び跳ねると背中へと能力を送り込んだ。
これをつけるのは久々だ。

ボクの背中から真っ白い翼が一瞬にして生えてくると、宙を舞っていく。
追ってくるようにやってきたペガサスを飛び回りながら避けているが、中々しつこい。
その間にこちらへ水風船が飛んできたので、地上へと落下するよう滑り飛んで行くと、地面ギリギリでレシーブをかます。
ちなみにこの行動は壁があるせいであちら側からは見えていない。
ここから左千夫クンに耳打ちされた作戦が開始される。
ボクはひとつフェイクを仕込んだ。
それはこのボールがあちらへと行けばわかることだろう。

高く弧を描くように飛んだ水風船がペガサスに割られそうになったので、翼を両手で掴みそれを阻止すると水風船の行方を目で追った。
上では左千夫クンがユニコーンと対峙している。

「それ、入んなかったら打ち込んでネー」

暴れるペガサスの翼を掴みながら、左千夫クンへと言葉を放った。

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【西園寺櫻子】

砂の壁のせいであちらの様子を見ることが出来ない。

直ぐにコールが流れると思ったのだけれど、それは流れることが無かった。
そうしているうちに音を立てる様にして砂の壁が崩れていく。

其処の広がる光景に私は目を瞠った。

神功さんは暴れるユニコーンに跨り、こちら側にボールをスパイクした格好だった。
私のペガサスは九鬼さんの作った砂の檻に捕まっている。

私の前にボールが落ちてくる。
それはかなり緩やかなものだった。
違和感を抱えながらもそれをアンダーで掬うように上げようとした。

その時だった、私の手に当たった瞬間にそのボールは砕けた。
全てが砂に返って行ったと言う方が正しいか。

これはもしかして。

後ろでウインクしている九鬼の能力は確か具現化。
と、言うことは今のは偽物の水風船。
そう思っているともう一つの球が飛んできた。

「大丈夫だ、しのぶ!僕が取って見せる!!」

そう言ってその水風船にしのぶさんが飛び付いた。
しかし、何かを見逃している様な気がする。

もう一度私は敵陣を真っ直ぐに見ると、神功さんの瞳が赤く揺らめいている気がした。

……もしかして!!

「しのぶさん!駄目です、それは幻じゅ―――!!!」

「愛輝凪高校、1ポイント。よって、2対2」

相手のヒューマノイドの声が響き渡る。
しのぶさんの手に当たった筈の水風船は見事にその存在を無くしており、私の足元で水が飛び散った。

どうやら九鬼さんが作った紛い物の影に紛れさせて本物の水風船を打ち込んでいたようだ。
神功さんが捕まっていたユニコーンから降りる、私のペガサスも檻を破ってこちらに戻ってきた。

大丈夫です、櫻子。
勝負が一からになっただけ。

私はそう自分に言い聞かせた。

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【鳳凰院しのぶ】

2対2か。
次を取ればどちらかが勝利する。
もちろん負けたくはない、男なんかには。

神功君と九鬼は仲が悪そうに見えたが、何故か妙に息が合っている。
仲の悪ささえも策略だと言うのだろうか。
いや、お互いが強いからこそ揺るがない信頼があるのだろう。
それは僕達だって同じだ。

気を引き締めるように頬を両手で叩くと、櫻子へと視線を送った。
彼女もどうやら精神を統一しているようだ。
その横顔は美しく、小さく笑みを零した後、相手チームをキッと睨みつける。

配置につくと相手のサーブは九鬼だった。
相変わらず余裕そうにニコニコと笑っているが、こいつはなんだかいけすかない。

「いくよー」

水風船のが宙へと揺れるように舞った。
次はどんな手でくるか。
そばにいたユニコーンが後ろ足を蹴ったその時だった。

凄まじい速さの水風船が僕と櫻子の間へと落ちた。
もちろん目で追う暇も無く、その水風船は何故か地面を抉る様に高速で回転して潜って行く。
あんなスピードで打てば割れるはずだ。ありえない。
……いや、これは九鬼の能力だろう。
水風船を硬化し打ちつける。
そして僕達は彼の打ちつける威力と速さに反応できなかった、ただそれだけだ。
水風船は割れる気配も無く、回転が緩まるとピタリと止まった。

「愛輝凪高校、3ポイント獲得。勝者神功・九鬼ペア。」

愛輝凪高校のヒューマノイドの声が響く。
同時に九鬼が神功君に抱き着きに行ったようだったが、軽くスルーされているのが見えた。
そんな二人を見て、負けたのに何故か僕は笑みを浮かべてしまっていた。

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【日当瀬晴生】

『愛輝凪高校、3ポイント獲得。勝者神功・九鬼ペア。』

大きな観戦用のディスプレイからマイクに通った声が響く。
流石会長。
アイツの中では既に二ポイント取った時点で勝負は決まっていたのだろう。
九鬼のことを信頼してんのかしてねーのか、その辺りは分からないなと思いながらさも当然のように返ってくる会長たちを見つめた。

観客席は九鬼のメイドがビーチパラソルを立ててくれたり、大きな団扇で扇ぐくれたりと至れり尽くせりだった。
流石に仰がれると落ち付かないのでそれは断り、俺はパラソルの下でジュースに口を付けていた。
ジュースも華が飾ってあり、いかにもハワイで出される様なトロピカルジュースだった。

「左千夫様、お疲れ様です。」

「やりましたね、会長!副会長!」

「すげーじゃん!左千夫!でも、どうして、九鬼の能力で初めからボールを硬化しなかったんだよ?」

皆が二人に近づいていく。
三木はタオルを会長と九鬼に渡していた。
夏岡さんの質問には会長が答えていた。

「いくら九鬼のボールが速くても警戒している中、打てば取られます。
あれは、緩やかなボール運びが続いていたからこそサービスエースを取れたんですよ。
所謂、切り札ですね。」

会長がいつものような笑みと共に回答する。
そう、会長は水風船は思いっきり打てないと言う事実を逆手に取ったのだろう。
会長の肩に肘を掛ける様にして乗り出してきている九鬼は俺のお手柄と言いたげにピースをしていたが…。
本当にあいつはお気楽だ。

「さて、ポイントも反映されましたし。
僕は一度シャワーを浴びてきます。
柚子由、幸花、僕も直ぐに戻りますが、怪我をしない程度に頑張ってください。」

会長はブレスレッドを確認した後近くに設置されているシャワールームへと向かった。

『第二回戦、三木、幸花。園楽、堂地コートへ。』

そうしている間にマリアとか言うヒューマノイドの声が響いた。
次のボールは確かシャボン玉。
シャボン玉をどうやって扱うのか、取り合えず俺の番が来るまで暇だなと頬杖をついた。

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【園楽あたる】

やれやれ、せっかく区域とは遠く離れた土地にバカンスに来ていたのに、こんな所で愛輝凪高校に出会うとは思ってもみなかった。
これも何かの縁ってやつなんだろうけど、少しは休みたかったな。
まぁ仕方がない。王子は一度決めたら絶対に引かないし、それに周りを巻き込むのはいつものことだ。

一回戦は惜しくも負けてしまった。
けれど王子も西園寺もとても楽しそうだった。
相手が神功左千夫と九鬼なのだから、負けても悔しさよりやりきった感があるのだろう。

次は俺と堂地先輩、相手は女副会長と少女二人のペアだ。

「がんばるにょ~!あたる!」

「ええ、頑張りましょうか」

俺は正直堂地さんとペアを組みたくなかった。
この人何考えてるかわからないし、無駄に身体も触ってくるから苦手なんだよ。
でも前会長という肩書は伊達ではない。…はずだ。

「よろしくお願いします」

愛輝凪高校の女副会長、三木さんが丁寧にお辞儀をしてくる。
側にいる少女、幸花ちゃん…と言ったかな。
その子はじっと俺達を見つめているだけだった。
俺もお辞儀を返すと、堂地先輩は早く試合を始めたいのかその場でぴょんぴょんと飛び跳ねていた。

暫くするとこちらのヒューマノイド、マリヤがコイントスの体勢へと入った。
次の主審はマリヤのようだ。
キンッと高らかにコインが舞うと、素早くキャッチする。
さっきは愛輝凪高校が先に選んだので、次は俺達にどうぞと三木さんが言ってくれた。

「じゃあ裏なのだ!」

俺が言う前に堂地先輩が先に答えた。
読み通りコインは裏を示していたので、サーブは俺達からになる。

「アタル、シャボン玉を作りなさい」

マリヤからそう言われると、どうやら俺の能力でこの競技に使うシャボン玉を作るみたいだ。
俺の能力は、あらゆる攻撃を跳ね返すことができるシャボン玉を作る事。
人を守るためのものなので、攻撃には向かない。
競技に俺のを使うなんて聞いていなかったが、まぁ俺しか適任はいないだろう。

「May God Bless You」

そう言うと首から下げていたロザリオがシャボン玉を吹くストローへと変わって行く。
大きさと形はトランペットのような物なので、トランペットストローと呼んでいる。
初めてこれを見た人は、こんなものでシャボン玉を作るとは思えないだろう。
トランペットストローを両手で掲げると、シャボン液を送り込むように左手をスライドさせ、一気に息を吹き込んだ。
ビーチボールぐらいの大きさになると、ふわふわとシャボン玉は宙に浮かび上がる。

「一応割れにくいようにはなってるけど、同じとこ叩きすぎると割れるかな。
あと、風に煽られやすいから気をつけて」

トランペットストローの先端でシャボン玉をぽんぽんと小突く。

「あたる!シャボン液おくれ!」

堂地先輩が手を出してきたので、手のひらにシャボン液を塗ってあげる。
一応俺も手にぬっておいた。

それにしてもこれ、あっちにはフリじゃないのかなぁと思いながら、サーブの立ち位置へと立つ。

「いきますねー!」

そう言ってトランペットストローで風だけを送り込むと、シャボン玉を軽く宙にあげる。
そして大きく息を吸い込み、あちら側へと飛ばす様に勢いよく息を放った。

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【三木柚子由】

今回の試合は場外が無い。
シャボン玉は風に煽られやすい為、ネットを境にして愛輝凪側で割れるか、麗亜側で割れるかでポイントが入っていく。
後、三回で返すと言うのも数えにくいので今回は無しと言っていた。
取り合えず、ネットより向こう側で割れば勝ちと言うことだ。

でも、私飛び道具じゃない…。

しゃぼんだま…普通に触ったら割れるけどどうなんだろ。
取り合えずは触れてみないと分からないなとふわふわと宙を舞うシャボン玉を見つめた。

「幸花ちゃん、私、先に触ってみてもいい?」

コクンと頷いた幸花ちゃんを見つめると私はアンダーレシーブの体勢に入った。
そーっとそーっとと意識しながら下から上に打ち上げる。

一瞬皮膚に付着する様な感触があったが、弾力性がある為に割れずに宙へと上がった。
少しだけだが。

「ごめん、幸花ちゃん。」

少ししか上げれなかったので幸花ちゃんがこっちに走ってくる。
これはどうやら息を吹いたり、武器を振り回した風圧でどうにかした方が良さそうだ。

私はイデアアプリを展開させ、左千夫様の槍の片側。
双又槍を取り出した。

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【幸花】

ふわふわと宙に舞ったシャボン玉を追いかける。
触ると割れてしまいそうだけれど、さっきの柚子由を見ていたらちょっとした刺激ぐらいでは割れそうにはないみたい。
鎖の風圧で返してもいいけど、うまく目指した方向へと飛んで行くとも限らなそうだ。

私は首から下げていたロザリオナイフで手の平を切り刻んだ。
麗亜高校の男がぎょっとしていたのが見えたけど、手を握りしめるとシャボン玉へと血液を付着させるように腕を振った。

そしてそのまま風を送る様にぐいっと腕を一気に下げる。
それと同時にシャボン玉もネットを越えてあちら側へとゆったりと落ちていった。

「打ち返すにょーっ!」

変な言葉遣いの女がその前に立ちはだかると、こちらへとシャボン玉打ち上げてくる。
力強く打ち込んでいるように見えるのに、シャボン玉はなぜか割れない。
すぐに柚子由がそれを槍の風圧で返そうと構えた。

もうすでにあのシャボン玉には私の血液が付着している。
相手には見えないように細い血の糸が張られたそれは、私が自由自在に操ることができるのだ。
柚子由はそれに気づいているのかこちらに視線を少しだけ向けると、空を切る様に槍を振った。
そのタイミングに合わせて腕を弧を描く様に動かす。

「先輩、俺が行きます!」

次は地味そうな男がトランペットのようなものを構えると、大きく息を吸い込んだ。
その息が吐きだされる前に腕を真横へと振ると、シャボン玉は左へと方向を変えた。
地味そうな男が一瞬たじろいだ隙をついて、再び地面へ向かう様に真っ直ぐと手を振りかざす。

「あたるのバカ者ー!」

変な言葉遣いの女がそう言って地面を蹴り、シャボン玉へ向かって走ってくる。
滑り込むように片手を伸ばし落ちるのを防ごうとしているが、そんなことをしても無駄。
今シャボン玉は私が自在に操ることができる。
すぐに腕を横へと振ると、誰もいなくなったガラ空きのコートへと一直線に落としこんだ。

一瞬跳ねたシャボン玉は、パチンと音を立てて弾けると、私がつけていた血の糸も切れる。
そして、ヒューマノイドの声が響いた。

「愛輝凪高校、1ポイント」

嬉しそうにこちらへやってきた柚子由に頭を撫でられる。
相手側はまだ私の能力をよく分かっていないみたいだ。
バレるまではなんとかなるだろうか。

-----------------------------------------------------------------------

【堂地保菜美】

にゃるほど、にゃるほど。
どうやら何か細工があるみたいにょろ。
と、言っても保奈美には全くわかんないが。

「あたる。分析。…若いものは頭を使え作戦だ!」

「普通逆でしょ!」と言う声が聞こえるがビシっとあたるを指差して言葉を続ける。

「とにかく、保奈美が全部拾う!なので、あたるはそっこーあっちのネットを超えさせることにゅ!
そして、解析!!」

そう言い切って、保奈美は定位置についた。
実は結構運動神経には自信がある!

前傾姿勢を取るといつもはだらんとしている顔を引き締めた。

愛輝凪のサーブが来る。

三木ちゃんのサーブは綺麗な弧を描いて保奈美の前に来た、が、保奈美がレシーブしようとした瞬間に急降下した。

「にゅん!!」

でも、これくらいは大丈夫だ。
予想するのではなくシャボン玉を見ていれば済むこと。
保奈美はかなりのスピードのトスをネット際に上げる、そして、それを即あたるが敵コートに押し込んだ。

「あたるー、解析まだかー!!」

「そんな短期間では分かりません!!」

言っている間に三木ちゃんだ槍を扇いで風圧を起こす。
それが真っ直ぐにこちらにきた。

おかしい。

風圧ってあんなに正確に飛ばせるにゅんか?

そして、また保奈美の目の前に来た、同じように手を出すと今度は右に大きくそれた。
これも大丈夫だ。
なにか、ひっぱられてる様な感じだが、こんなスピードならついていける。

「にょん!」

今度はダイレクトに返した。
そう言えば、これって、あれで返した方が速くないか?

また、三木ちゃんが槍をふったので保奈美はネット際に走った。
そして、そのままブロックして相手のネット際にシャボン玉を落としたやった。

「一点だにゅー………!!!?あれ?」

そのまま、相手コートに落ちる筈のそれは妙な動きと共に宙へと再び浮き上がった。

…………おかしいにょん。

-----------------------------------------------------------------------

【園楽あたる】

シャボン玉の動きが明らかにおかしい。
絶対に動かしているはずだ。
ただ、それがなんなのかわからない。

槍の風圧で打ち込んで来る三木さんを見ていたが、多分彼女ではない。
となると、最初に自分の手の平を切った時に血液を飛ばしていた幸花ちゃんの方だろう。
血液でなんでも操れたりするのか?
シャボン玉に意識を集中する。
どこかに付加がかかっているはずだ。

あちらのコートに落ちそうになったシャボン玉を、次は幸花ちゃんが手の風圧で返してくる。
またあれを受ければ別方向へと操作されるのは確実だ。

ふわふわと飛んでくるシャボン玉。
一点だけ何かに引っ張られているような感覚がある。

「堂地先輩!!あのシャボン玉は受けずに聖杯出してください!
シャボン玉の後ろ、叩き斬る感じで!!」

「おっけーだにょん!May God Bless Youー♪」

堂地先輩がロザリオから武器の聖杯へと展開させた。
彼女の武器はでかい聖杯だ。
身長以上に大きな聖杯を頭の上で一周させると、堂地先輩は地を蹴った。
聖杯は男の俺でも扱う事が難しいくらいに重い。
それをあの小さな体で意図も簡単に振り回してしまうのは、さすがと言った感じだ。

「やってやるにょーーーっ!」

地面へ叩きつけるように、聖杯をシャボン玉の後ろへと一直線に落した。
地面が揺れるほどの威力で砂煙と共にシャボン玉も上へと舞い上がる。
先ほどまで一点にかかっていた力が無くなったのがわかると、幸花ちゃんはまた血液の流れている手の平をシャボン玉へと向けたのが砂煙の向こうに見えた。

「堂地先輩!また来ます!!」

「んもーう!先輩を酷使させちゃいけない……――にょっっっ!!!

堂地先輩は地面に聖杯を叩きつけている体勢からすばやく宙へと飛び上がる。
見た目では考えられない運動神経だ。
そして、幸花ちゃんが血液を付着させるよりも早く、でかい聖杯を振り回し、その風圧でシャボン玉をあちら側のネットギリギリへと叩きつけた。

「麗亜高校、1ポイント」

マリヤの声が響くと、堂地先輩は宙に浮いたままピースサインをし、地面に……。
華麗に舞い落ちるかと思ったら俺の上へと降って来る。
背中に堂地先輩の重みと聖杯の重みを感じながら、俺は砂浜へと真正面から突っ伏した。

-----------------------------------------------------------------------

【三木柚子由】

「にゃははー、あたるぺっちゃんこ!!!」

敵コートで楽しそうな声が聞こえる。
折角幸花ちゃんが策を講じてくれたのに一点しか取れなかった。
敵を睨みつけたまま難しい顔をしている。

「ごめんね、幸花ちゃん…私、演技下手だったかな…」

駆け寄った私に、幸花ちゃんは首を振ってくれる。

「柚子由のせいじゃない……。
それに、破られた訳じゃない…このまま、私の能力で戦う。
柚子由、フォローして。」

「うん、分かった。」

そうだよね。たとえ幸花ちゃんの能力がばれたからってシャボン玉に血液を付着させれなくなる訳じゃない。
私は余り、幸花ちゃんが手を切るのが好きじゃないのでなるべく早く終わらせたかったんだけど、上手くいかないな。
そして、私達はまたコートに戻った。

次は麗亜からのサーブ。

「いっくにょー!!そーれ!!」

堂地さんのサーブから始まった。
ふわっと園楽君からシャボン玉が製造されたと思った瞬間ものすごい速さでまるで本物のバレーボールのようにシャボン玉が飛んできた。

「わッ!」

駄目、焦っちゃ駄目。
シャボン玉はシャボン玉。

そのまま直接アンダーで受けるのでは無く、シャボン玉で濡れた手を最小限に触れさせることと風圧でシャボン玉を空高く上げた。

「ナイス…柚子由…」

「凄いにょろー!」

幸花ちゃんと、堂地さんの声が一緒に響く。
その後はまた、幸花ちゃんが血液を付着させてくれて、そのまま相手コートに返したけど、園楽君の指示でそれが直ぐに切られてしまう。
それでも気を付ければ堂地さんの球は受けれないことは無かったのでそのままかなりの時間ラリーが続いた。

決定打が無い。

多分、それはあっちも同じなんだろうけろ。
砂浜に足を取られることと、炎天下に晒されている為体力の消耗が激しい。
サーブを始めてから数十分経過したがあちらは落とす気配が無かった。

-----------------------------------------------------------------------

【幸花】

暫くラリーが続いている。
変な言葉遣いの女がちょろちょろしてて正直鬱陶しい。
だけど、それに対抗することができないのも確か。

シャボン玉はふわふわとあっちのコートとこっちのコートを行き来し、いつまで経っても割れることはなかった。

「カウントダウン開始します」

「あい了解!」

あちら側からそんな掛け合いが聞こえた。
カウントダウン?
何か仕掛けてくるのかと、柚子由も身構えたので、私も相手の動向に注意する。
地味な男がトランペットでシャボン玉を大きく上へとあげると、数を数え始めた。
その瞬間に血液を針状にしたものを飛ばしたけれど、それはまた変な言葉遣いの女の武器に防がれる。

「もう見切ってるにょん!」

そう言って後ろへと聖杯を振りきったが、風を起こす気配がない。
どんどん男のカウントダウンは進んでいく。

「5…4…3……先輩打ち込んでください!」

「あいにょーーーっ!」

男の合図で女は止めていた聖杯を思い切り振った。
物凄い風圧で押しこめられたシャボン玉が私を目がけて飛んでくる。
受けるしかない。
そう思いレシーブの構えを取った時、地味な男のカウントダウンが調度終わったのが聞こえた。

「2…1………君が触れるまでに、そのシャボン玉は――――割れる!!!」

そう言いきった瞬間だったろうか。
シャボン玉は私の腕に当たる前に、パチンと音が鳴り、目の前で綺麗に弾けてしまった。

「……っ……!?」

「麗亜高校、1ポイント。只今の点数、2対1。麗亜高校リード」

ヒューマノイドの声が響く。
連続で一点取られてリードされてしまった…。

「ごめんね、ラリー続け過ぎたらこうなる事は予測できてたから。
そっちで割れるようにタイミング見計らってたんだ」

地味な男が変な言葉遣いの女に抱き着かれながら、私たちへと言葉を落とした。
シャボン玉のスペシャリストとでも言いたいのだろうか。
鬱陶しい。

-----------------------------------------------------------------------

【三木柚子由】

「すいません、タイムいいですか?」

「はいどうぞ。」

どちらかにポイントが入った後にはタイムを取ることが許されている。
さっきのラリーはかなり長かった。
だからこそ、シャボン玉の持久力が無くなって割れちゃったんだろうけど、そこまで読めなかったこちらが悪い。

本当に、私役に立ってない。

「幸花ちゃん…」

「謝らない。」

びしっと言われてしまったので心の中でごめんなさいと告げて置く。
そして、私達は自分サイドにある休憩用のスペースに戻った。

……そう言えば、手、使っちゃうと折角ついたシャボン液が取れちゃう。

どうしようかとおどおどしていると天夜君が気づいてくれた様子。

「あ。三木さん達、手使えないんだよね。那由多、飲み物持っていってあげて、僕タオル持っていくね。」

そう言って天夜君はメイドさんから貰った飲み物を千星君に預けて、更にタオルを取りに行ってくれてる。
那由多君は二人分の飲み物を持ちながらこちらに降りてきた。

「ごめんね、千星君」

「おーい、幸花!いっつもの威勢の良さはどーしだんだよ!
負けてんじゃねーか!左千夫を見習え、左千夫を…!!」

「黙れ、純聖。」

純聖君も励ましにきてくれてるのかこちらに降りてきていた。
勿論、幸花ちゃんに思いっきり睨まれていたけど。

それにしてもどうしようか。

長期戦に持ち込んでも堂地さんの体力は落ちそうにない。
そして私達にはシャボン玉が割れるタイミングが分からない。
千星君がこちらに向かってきている間に私達は作戦を練る。

「柚子由、耳貸して。」

幸花ちゃんが私の耳に小さく言葉を落とした。
なるほどそれなら行けるかもしれない。

-----------------------------------------------------------------------

【千星那由多】

本当に二人は頑張ってると思う。
堂地さん、見た目では想像つかないくらいに運動神経もいいし、園楽さんも元々シャボン玉が武器なようなので、不利と言えばこちらが不利だろう。
でも三木さん達は負けないと俺は信じてる。

「ほら、幸花、ジュース」

三木さんに耳打ちしている幸花に、ジュースを飲ませようと顔に差し出した時だった。
急に振り返った幸花の顔にグラスが当たり、着ていた上着にぶちまけてしまう。

「ちっ……気持ち悪い…」

「うっわ!ごっごめん!拭くから脱いでって、脱げないのか…」

グラスを横に置き、急いで上着を脱がせようと首まで詰めているジッパーを降ろしていく。
素肌が見えている部分に無数の傷痕がついているのに一瞬ためらったが、幸花は別に気にも止めていないようなので、そのまま上着を脱がしてやる。

巽が持ってきてくれたタオルで、上着の下まで濡れてしまっていた肌を拭いていた時だった。
後ろから声が聞こえた。

「あ、左千夫クンおかえりー」

「着替えを取りに来ただけです」

どうやら会長がシャワーを浴びて一度戻ってきたようだった。
その声がした瞬間だっただろうか、身体を拭いていた幸花の身体が急に硬直すると、俺の顔面を裏拳で思い切り殴りつけてきた。

「――――触るなッ!!!!!!」

吹っ飛ばされた俺はベンチから落ち、鼻の下を伝った生ぬるい物を拭った。
いてえ……鼻血……でた、し。

「…い、いきなりなんだよ!?」

そう言い返したが、幸花は三木さんの後ろに隠れるように逃げると、何故か顔を真っ赤にしていた。
周りにいた奴等が俺に痛い視線を落としてくる。

「え、いや、俺何もしてないし!誤解だって!!」

ほんっとーに何もしてない。
ただ身体拭いてただけだし変なとこも触ってない。
それに最初平気な顔してたじゃねーか!

「ごめんね千星君…私の上着、幸花ちゃんに着せてもらっていいかな?」

困った様に笑った三木さんが、俺にそう指示してくる。
それはますます困る。
逆に三木さんの上着を脱がせる方が俺に取っては変な意味で苦痛だ。

「ナユタえろいから俺脱がせてやるよー」

純聖が尻もちをついている俺の腹の上を踏んづけながら、三木さんの元へと向かい上着を脱がし始めた。
えろ…ッ!?まぁ、否定はしないけど…。
晴生が俺に濡れたタオルをくれたので、顔に当てると少し離れた場所へと座りなおした。

俺、なんか悪い事したのかな…。

三木さんの上着を着せられた幸花は、顔を覗かせ何かを確認した後、ほっと息を吐いていた。

-----------------------------------------------------------------------

【堂地保菜美】

なかなか、あの千星と言う男、ロリコンだったとは、保奈美の目は間違いなかった。
幸花ちゃんは上着を脱ぐのが恥ずかしいのか三木ちゃんの上着を着ている。
と、言うことは三木ちゃんは水着姿だ。

目の保養、目の保養。

「なんまいだー、なんまいだー。」

「先輩!なにしてるんですか!?」

合掌している保奈美にあたるが声を掛けてくる。
てへっと笑ってごまかしておいた。
さて、次は愛輝凪からのサーブだ。

「いきます。」

あたるの作ったシャボン玉が麗亜側へと流された。
そして、三木ちゃんがサーブの構えを取る。
注意して幸花ちゃんを見たけど、うーむ、今のところ異変は無い。

そして、三木ちゃんの手から放たれたシャボン玉がこちらに飛んできた。

楽勝!!

そう思った時だった。

「先輩!!それ、嫌な感じがします!!俺のシャボン玉はそこにはありません!」

あたるが訳のわからないことを言う。
全く持って意味が分からない。
でも、あたるが無いと言うならここに無いんだろう。
だって、ヤツのシャボン玉だからな。

と、なるとどこにあるかだ。

保奈美は目を閉じて、シャボン玉の姿を探した。

ふわふわ飛ぶのでちょっと分かりにくかったけど、右斜め上になんかある。
保奈美はそれを柔らかく叩くとボインっと跳ねてネットに向かって行った。

うん。どうやら、シャボン玉に当たったらしい。

そう言えば、三木ちゃんは副会長。と、言うことは神功殿の幻術が使えるのか。
保奈美は目を閉じたまま神妙に何度も頷いた。

-----------------------------------------------------------------------

【幸花】

ナユタのせいで、ナユタのせいで。
左千夫に傷のいっぱいついた身体を見られたかもしれない。
昔は平気だったのに。
他の人ならどうでもいいけど、左千夫にだけは見られたくない。

柚子由がパーカーを貸してくれた。
左千夫はまたいなくなったようなのでよかったけど、ぶかぶかのスケスケだからちょっと動きにくい。

あの変な言葉遣いの女、柚子由の幻術を目を瞑る事で回避してる。
本当に鬱陶しい。
でも今の瞬間なら、血の針でシャボン玉を攻撃することができるかもしれない。

手を後ろでぐっと握ると、手の平から血の針を投げようと構えたが、地味な男がそれに気づいた。

「堂地先輩!目開けてください!」

「にょ!?」

ちっ、地味な癖して目ざといやつ。
女が目を開ける前に手を振り切ったけど、パーカーの丈に気を取られて軌道がそれてしまった。
血の針はシャボン玉のすぐ横を横切っていく。

ああ、動きにくい。
これも全部ナユタのせいだ。

私はベンチにいるナユタを睨みつけると、まだ左千夫が帰って来てないことを確認した。
堂地がこちらに打ちこんで来たシャボン玉を柚子由にまかせると、柚子由に借りたパーカーのジッパーを降ろした。

「柚子由、ごめん。借りたけど、脱ぐ」

バッと上着を横へと放り投げる。
無数の切り傷がついた身体が露出された。
左千夫が帰ってくるまでにさっさと終わらせてしまおう。

-----------------------------------------------------------------------

【三木柚子由】

幸花ちゃんは傷付いた肌を左千夫様に見られたくないんだと思う。
私も女の子だからその気持ちは少し分かる。
今のビキニ姿で居るのが少し恥ずかしい。

その分麗亜の人たちは凄いなぁとも思う。

「いくよ、幸花ちゃん!」

幸花ちゃんから託されたシャボン玉をまた槍の風圧で返す。

それと同時に幻術を使うと堂地さんはそれに気づいたようで瞼を落とした。
幻術が効く人には今は無数のシャボン玉が宙に浮いている光景が映し出されているだろう。
その中の一つだけが本物。
園楽さんは本物じゃないことが分かっても本物のシャボン玉がどこにあるかは分からないようだ。

これなら上手くいけばネットを越えた瞬間に幸花ちゃんの血液の針で撃ち落とすことができる。
堂地さんも気づくだろうから一瞬たりともタイミングを逃せない。

私に見える本物のシャボン玉がふわふわネットを越えようと飛んでいく。
幸花ちゃんと堂地さんが一緒に構えた。

「あ、左千夫くん、お帰りー。」

「すいません、長くなってしまって。二人とも頑張っているようですね。」

不意にくっきーさんと左千夫様の声が聞こえた。
今、幸花ちゃんは上着を着てない。

駄目ー……!!!

私は発動していた幻術を幸花ちゃんを砂嵐で覆う様なものへと変えた。
けど、よく考えたら左千夫様には幻術なんて効かないんだ。

-----------------------------------------------------------------------

【幸花】

柚子由が幻術で作ってくれたシャボン玉の群れ。
あちら側に本物のシャボン玉が入った瞬間に、血の針で割る。
そう思って身構えた時だった。

左千夫が帰って来た…。

思わず身体を隠そうとする前に、柚子由がシャボン玉を作っていた幻術を、私の身体を隠すような砂嵐へと変える。
けれど左千夫はこちらを見ていた。
絶対見えてる…!

その場にしゃがみこむように蹲った瞬間、変な言葉遣いの女がネット際のシャボン玉を押し返して来た。
まずい…!

「これで、決めるにょッッ!!」

押し返した後、即座に聖杯をシャボン玉へと投げつけてくる。
防ぎたい。防ぎたいのに身体を隠す手を離す事ができない。
柚子由も聖杯を阻止しようと槍を投げたが押し切られた。
そうして一直線に落下した聖杯はシャボン玉を割り、砂埃を巻き上げながら地面へと深く突き刺さった。
あっという間に勝負は決まってしまった。

「麗亜高校3ポイント獲得。勝者園楽・堂地ペア。」

……負けた。
負けてしまった。

私のせいだ。私が恥ずかしがったりしたから、柚子由にも迷惑かけた。
砂埃が舞う中私は蹲ったままだった。
柚子由がこちらへと向かってくる気配がする。
けれどそれより早く私の前へ現れたのは、左千夫だった。

柚子由に借りたパーカーを拾いあげると、柚子由にそれをかけてあげ、私には着ていたアロハシャツをかけてくれた。
左千夫の甘い香りに泣きそうになる。

「左千夫……」

「お疲れ様でした。」

ゆっくりと見上げた先の左千夫の顔は、いつものように笑っていた。
ごめんなさい、左千夫。
そう言いたかったのに、その笑顔だけで許されたような気がした。
顔を真っ赤にし再び俯くと、柚子由が抱え起こしてくれる。

「ありがとう、柚子由」

-----------------------------------------------------------------------

【神功左千夫】

僕は麗亜との勝負は修業の一環となればと思って受けた。
なので勝ち負けを特に気にしていない。
特に今日の競技は一ポイントずつしか無くならないので全て負けても三ポイントを失うだけだ。
那由多君も毎日挑みに来ている十輝央兄さんのポイントがあるので大丈夫だろう。

それに、どうやらこれは僕がタイミング悪く帰ってきたのがいけなかったようだ。

「二人ともシャワーを浴びてきなさい、九鬼のメイドに言えば着替えの水着も用意してくれるようですよ。」

僕はダイビングスーツから水陸両用のハイネックの長袖、長ズボンに着替えた。
サンダルも足が隠れるものを用意して貰い、炎天下の下だけ帽子とサングラスをかけるようにしたが、パラソルがあるし、競技中は掛けないので後者は必要なさそうだ。

メイドに一声かけてから二人をシャワー室へと送り出す。
そうして、一番上にある席へと戻る。

『続いて、第三回戦。夏岡・日当瀬、百合草・黒部コートへ。』

次の組み合わせが再度コールされる。

「おし、さっさと片付けちまいましょ!夏岡さん!!」

「おう!行こうぜ、晴生!」

柚子由の時も相手がシャボン玉使いだったので不利だと思ったが、どうやら今回も余りこちらにとってはいい組み合わせとは言えない。
なんにせよ、百合草の能力の解析が難しかったからだ。
いや、解析したが防ぎようが無いという結果だった。

そして、二人ともそれに嵌りやすい様な性格をしている。

スピード勝負になるかな、と、思いながら僕は日陰に腰を下ろした。 




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