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一章 葛藤
跳ねる胸
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俺の名前は佐野 斗真
今日は2年になるための始業式だったんだが、どうやら俺は一目惚れしちまったらしい。
しかも男子に。名前も知らないし声すら聞いたことがない。
でもそいつが友達に向けている笑顔があまりに眩しくて、気づけば堕ちていた。
同年代にしては低めな身長、頼りない肩幅、ふわふわしてそうな猫っ毛。
胸が張り裂けそうだ、呼吸も荒い。誰にもバレないうちにさっさと移動しちまねぇと
そんな俺を見かねてか同級生が話しかけてきた。
顔を見る。
例の男子だった。
「ねぇ君、大丈夫?顔赤いし息も荒くなってる。保健室、行ったほうが良くない?」
聞かれて俺は少し動揺しながら答える。
「あ、りがてぇけど大丈夫だ。」
「そ、ならいいけど。...君、名前はなんていうの?」
俺は少し落ち着いた。
「俺か?俺は佐野、佐野 斗真っていうんだ。あんたの名前も教えてくれよ。」
「僕の名前?僕は神薙 大和、よろしくね斗真くん。」
「あぁ、こちらこそよろしくな大和。」
大和が多少こちらを気にしながら自分の席に戻っていった。
期せずして好きな人の名前を聞けた挙げ句、声も知れた。しかも俺のことを心配してくれている。
こんなに嬉しいことがあるだろうか。
程なくして始業式が始まり、厳かな雰囲気の中粛々と式が進行していった。
そんなときだった、俺が異変に気づいたのは。
明らかにさっきよりも大和の顔色が悪いのだ。
俺は大和の後ろに立っていたからすぐに気付けた。
考えるより先に体が動いた。
「大和、あんた体調悪いの我慢してんだろ。」
囁くように告げる
「...体調はいいよ、大丈夫。」
一拍の間をおいて返ってきた言葉はあまりに弱々しく、また内容もすんなりと信じられるものではなかった。
「嘘つけ、あんた顔真っ青だぞ。保健室に連れて行く、いいな?」
有無を言わさぬよう力強く問うと大和は肩に掴まってきた。
「先生、神薙が調子悪いみたいなんで保健室連れていきます。」
「おぉ、佐野が行かなくても先生が連れて行くから戻りなさい。」
「先、生。僕は佐野くん、に連れてってもらいたいで、す。」
「俺去年保健委員だったんで大丈夫ですよ、先生。」
流れるように俺は嘘をついた。
「そうか、神薙がそう言うなら仕方ない。他の先生には俺から伝えておく。」
✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦
運が良いやら悪いやら、保健室の先生は今日は学校に来てないらしい。
「大和、大丈夫か?ベッド寝かすぞ。」
俺はできるだけ大和の身体に響かないようにベッドに身を横たえた。
「あり、がと。」
大和が喋ろうとするので俺は慌てて止めた。
「あんた体調悪いんだろ?無理に喋んなくていーよ。俺もう式に戻るから安静にしとけy」
言いつつ立ち上がろうとした俺のシャツに大和の指が絡みついていた。
「...俺、ここいた方がいい?」
「っ...」
大和は黙ってうなずく。
「そうか、わかった。ベッド座ってもいいか?」
「喋るなって言いながら質問ばっかりするのどうかと思う。」
静かに大和が笑った。
「あー...それもそうだな、すまん。」
いいよ、と言いながら大和は身を少し奥に滑らせた。
俺がベッドに腰掛けるやいなや大和が喋り始めた。
今日は2年になるための始業式だったんだが、どうやら俺は一目惚れしちまったらしい。
しかも男子に。名前も知らないし声すら聞いたことがない。
でもそいつが友達に向けている笑顔があまりに眩しくて、気づけば堕ちていた。
同年代にしては低めな身長、頼りない肩幅、ふわふわしてそうな猫っ毛。
胸が張り裂けそうだ、呼吸も荒い。誰にもバレないうちにさっさと移動しちまねぇと
そんな俺を見かねてか同級生が話しかけてきた。
顔を見る。
例の男子だった。
「ねぇ君、大丈夫?顔赤いし息も荒くなってる。保健室、行ったほうが良くない?」
聞かれて俺は少し動揺しながら答える。
「あ、りがてぇけど大丈夫だ。」
「そ、ならいいけど。...君、名前はなんていうの?」
俺は少し落ち着いた。
「俺か?俺は佐野、佐野 斗真っていうんだ。あんたの名前も教えてくれよ。」
「僕の名前?僕は神薙 大和、よろしくね斗真くん。」
「あぁ、こちらこそよろしくな大和。」
大和が多少こちらを気にしながら自分の席に戻っていった。
期せずして好きな人の名前を聞けた挙げ句、声も知れた。しかも俺のことを心配してくれている。
こんなに嬉しいことがあるだろうか。
程なくして始業式が始まり、厳かな雰囲気の中粛々と式が進行していった。
そんなときだった、俺が異変に気づいたのは。
明らかにさっきよりも大和の顔色が悪いのだ。
俺は大和の後ろに立っていたからすぐに気付けた。
考えるより先に体が動いた。
「大和、あんた体調悪いの我慢してんだろ。」
囁くように告げる
「...体調はいいよ、大丈夫。」
一拍の間をおいて返ってきた言葉はあまりに弱々しく、また内容もすんなりと信じられるものではなかった。
「嘘つけ、あんた顔真っ青だぞ。保健室に連れて行く、いいな?」
有無を言わさぬよう力強く問うと大和は肩に掴まってきた。
「先生、神薙が調子悪いみたいなんで保健室連れていきます。」
「おぉ、佐野が行かなくても先生が連れて行くから戻りなさい。」
「先、生。僕は佐野くん、に連れてってもらいたいで、す。」
「俺去年保健委員だったんで大丈夫ですよ、先生。」
流れるように俺は嘘をついた。
「そうか、神薙がそう言うなら仕方ない。他の先生には俺から伝えておく。」
✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦✦
運が良いやら悪いやら、保健室の先生は今日は学校に来てないらしい。
「大和、大丈夫か?ベッド寝かすぞ。」
俺はできるだけ大和の身体に響かないようにベッドに身を横たえた。
「あり、がと。」
大和が喋ろうとするので俺は慌てて止めた。
「あんた体調悪いんだろ?無理に喋んなくていーよ。俺もう式に戻るから安静にしとけy」
言いつつ立ち上がろうとした俺のシャツに大和の指が絡みついていた。
「...俺、ここいた方がいい?」
「っ...」
大和は黙ってうなずく。
「そうか、わかった。ベッド座ってもいいか?」
「喋るなって言いながら質問ばっかりするのどうかと思う。」
静かに大和が笑った。
「あー...それもそうだな、すまん。」
いいよ、と言いながら大和は身を少し奥に滑らせた。
俺がベッドに腰掛けるやいなや大和が喋り始めた。
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