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その癒し系男子は傷月姫を手に入れる。

25 ■ その傷月姫は癒し系男子の腕の中で眠る ■

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 アドルフさんが、私達の婚姻届けを提出しに、出掛けて行った後。

 ヴァレン君と私は二人でヒースの屋敷の庭になんとなく座っていた。
 荒野に夕日が落ちていく。

「……結婚することになってしまった」

 ヴァレン君が、花壇の端に座って真正面を向いたまま呟いた。

「うん」

 その横に座ってる私は頷いた。同じく真正面を向いたまま。

「え……嫁?」

 ヴァレン君がこっち見て、困惑するような顔で言った。

「うん」

 私は、ヴァレン君を見返して、また頷いた。

「……よ、よめ」

 カタカタカタカタカタ、とヴァレン君が震え始めた。
 え、大丈夫?

「うん、嫁だよ。よろしくね旦那様」
「……っ!!」

 私も戸惑っていたけれど、とりあえず微笑んで答えたら、ヴァレン君は勢いよく立ち上がった。

「嫁が! いきなり降って湧いた!!」
「!?」

 そのようにシャウトし、真っ赤になって荒野を走っていった。
 3時間くらい帰ってこなかった。

 その後、ヒース家の玄関前で魔力切れを起こして倒れているのが発見された。
 魔力使ってまで全速力で荒野を駆けてきたの!? 3時間も!

「なんだこれは新しいドアマットか。立体的だな」

 ブラウニーさん!! 黒い笑顔で踏もうとしないで!?

「あはは、兄さんなにやってんのー!」

 妹のルクリアちゃんが、その辺におちてた棒でヴァレン君をつついて、

「兄さん、ほら起きて。アイリス姉さんほったらかしだよ」

 ノア君が魔力を渡して助け起こした。

「中等部二年生……みなぎってんな」

 それをジト目で見ているアドルフさんがいた。

 中等部二年……若いってことかな?

 そして遅い晩ごはんを一人でぼーっと食べてるヴァレン君の横に私は座った。

「落ち着いた?」
「……おう。お前もちゃんと食べたか」

「うん、あまり喉を通らなかったけど、頑張ってできるだけ頂いたよ。せっかく作ってもらったものだもの。あ、やっとノア君とルクリアちゃんにも会えたよ」

「そうか。少し食べただけでも偉い」

「お部屋も貰ったよ。リアちゃんとルクリアちゃんの部屋の向こうにあった空き部屋。あとで見に来て」

「は?」
「え?」

「オレの部屋じゃないのか……!? いや、オレの部屋であるべきだろう!」

 既に同室にするつもりだった!?
 いや、籍はもう入ってるはずだから、おかしくはないけども!

「……違うと思います。一緒の部屋はちょっと早すぎると思います!」

「オレたちは夫婦だぞ……!」
「既に長年連れ添ったような言い方だ!? さすがに私もいきなり同室は戸惑うよ!?」

「オレは……平気だ!」

「そ、そうなんだね。えっと……でもお祖父様が最初に結婚式あげるまでは別室にするって仰ったから私が良いって言ってもきっとだめだよ?」

「クソ……ジジイが!」

「お祖父様は何も悪くないと思うよ……? むしろ常識的かつ紳士的対応だと思うよ……?」

「くっ……! 悔しいがその通りだ!」

 そのあと、ちょっと意気消沈した様子で、ブロッコリーを口に放り込んだ。

「でも、ヴァレン君。一つ……お願いがあって」
「ん?」
「……えっと、その。寝る時にスリープかけに来てほしいの」
「……あ」

 ヴァレン君はすぐに思い当たった顔をした。

 そう、おそらくきっと……しばらくは寝れない夜が続きそうだから。
 眠りの魔法をかけてほしかった。
 とくに、今日はトラウマになることがいっぱいあった。

「……そうだな、オレは浮かれすぎていたな。すまない」

「ありがとう。でも、浮かれてる君を見るのは嬉しいよ。
 だって私をそれだけ好きでいてくれるって事だから」

 私はそう言って、ヴァレン君の頬にキスした。

 自分からは平気でキスしてくるくせに、自分がされると真っ赤になるのは何故なの?
 面白いね……そして可愛い人。

「ま、まかせろ。絶対に起きれない程の深い眠りに落としてやる……絶対にだ」

「二度と目覚めなさそうな言い方だよ!?」
 

 その後、まだ何もない閑散とした私の部屋に寝る前に来てくれて、約束通り私を眠らせてくれたけど。

「なっ!?」

 ……朝起きたら私を抱きしめて寝てた!!!

「朝まで一緒にいなくていいよ!?」
「オレはお前のハズバンド。添い寝して何が悪い……!」
「悪くはないけど、せめて断って!?」

 そして、彼が添い寝をやめることはなかった。

 実は、寝てる間に私が結構泣いたり、うなされたりしていて心配だったらしい。
 それならそうと素直にそう言ってくれたらいいのに。

 でも、そのおかげで、私が眠れない夜はなかった。

 私のトラウマ解消は順調にレールに乗った。
 安心できる腕の中で毎日眠れるのは、とても心地よかった。

 君は正真正銘、癒し系男子だった。
 ――ありがとう、ヴァレン。


※※※

 
 私は、学院を卒業するまでは傷だらけのまま、過ごす事にした。
 学院を卒業して、あまり人の目に触れなくなってから治してもらう予定だ。

 いきなり治ると、ヴァレンやプラムさんが欠損を治せることが広まってしまうし、治った事がわかったら、うちの両親がまた何を言い出すかわからない、と思ったから。

 クラスでも最初はビックリされたし、ヒソヒソされた。
 
 いわゆるガチガチの貴族の家の子達には、『傷月姫』とあだ名された。

 傷もの…傷付き、私の髪の色と合わせて傷月と。

 そういうのに対して特に心が痛むことはなかったけれど。 

 この傷は、私の世界を変えるための代償だったと思うことにしている。
 傷月姫……蔑称、おおいに結構。

 私は私の欲しいものが手に入り、行きたい場所へいくことができたのだ。

 この傷を治してもらえる学院卒業後が待ち遠しいだけの話しだ。
 彼らはこの傷に隠れた私の幸せを知らない。

 しかし、新年を迎え、ヒースに住むのに慣れてきた頃。
 ヴァレンとお祖父様が二人で欠損をごまかすための人工皮膚を作ってくれた。

「やった……、全然わかんねぇ」

 脱力したように、椅子でのぞけるヴァレン。

「え、すごい! ありがとう!」

 人工皮膚を欠損部分に取り付けると、すっと馴染んでまるで本物の肌のようだった。

「よくやったぞヴァレン、アイリス、ヤツをもっと褒めてやってくれ。オレは手伝っただけで、ほとんどこいつがやったんだぞ」

 お祖父様によると、ヴァレン君はちょくちょくお祖父様の作業部屋を訪れては、人工皮膚を作ってくれていたらしい。

「ごめんなさい、わたしが我が儘で治さないっていうもんだから、苦労かけちゃったね。でもありがとう、うれしい」

「当たり前だ、オレはおまえのハズバンドだからな……! それにそれは我が儘ではない! 戦略だ!」

 その後、私がそれをつけて学校に通うことにより、宣伝になりヒースはまたその将来に一つ、需要ある商品を増やすことになるのだった。



※※※


 中等部3年になった春。

 相変わらず、ガラスの温室で、私達は今日も一緒にランチする。

 この温室も少しずつ手入れが進み、スペースの半分くらいの花壇ができた。
 魔法を使わないで、ちょこちょこやってきたこの温室。手がかかっているだけに愛おしい。
 もうすぐ色々植えた花が咲きほこりそうだ。 

 いつものテーブルでお弁当を食べながら話す。

「花が咲いたら、温室に花を見に来てくれる人いるかな」

「来るだろうな。ただ、オレは来てもらわなくて構わないがな……!」

「ヴァレン。ここは園芸部であって、私達の秘密基地ではないんだよ……?」

「まあな。オレたちももう中等部3年だ。この部活は嫌でも秋には終わる。そろそろ部員を受け入れても構わない」

「え、まさかだけど、今まで入部希望者いたの? 私聞いてないんだけど」
「……」
「ヴァレン……?」

 そっぽ向いて目を逸した!!

「ごめんなさい。アナタとここで二人ですごせるのが好きでした」

「……もう、しょうがないな。でも……私も君と二人でここですごすのは大好きだったよ」

 そう言うと、ヴァレンが肩に手を回して抱きついてきた。
 私は彼の頭を撫でた。
 
「そういえばアイリス。人工皮膚の話しも結構広まったし、もう欠損は治しても問題ないんじゃないか」

 私の頬の欠損あたりを見ながら言う。

「あ……そうか。こんなにわからないなら、もう治してしまってもいいよね。何か言われても人工皮膚使ってるって言いはればいいし。……じゃあ、お願いしようかな。わあ、嬉しい」

 早めに欠損を治してもらえることになった。
 素直に嬉しい。

「早速一つくらい治すか。まずはその頬の――ん?」

 彼の伸びてくる手を私は掴んで微笑んだ。
 嬉しくて、最近考えていた事を伝えたくなった。

「ヴァレン。私と……君の誕生日の2月14日に結婚式挙げてください」
「えっ」
「具体的な日付、まだ決めてなかったよね。私は夏に15歳になるし、君はその日に15歳になるでしょう」
「えっ えっ」

 やんわり頬が染まって、純粋そうな少年の顔で驚いている。
 なにその反応可愛い。

「ふふ、逆プロポーズ」
「あああ!!! くそ!! しまった……!! だが!」

 多分、自分がやりたかったから、悔しがっているけれど、それでも嬉しそうに抱きついてきた。

「いや、オレは結構ロマンチストなところがある。誕生日が結婚式とか最高だろう。それでいい。いや、それがいい」

 そういって彼は、私の欠損している頬にキスをした。

「まずはここから治す」
「お願いします、癒し系男子さん」

「おう、まかせとけ」

 春の優しい日差しの中、彼の温かい手が私の頬に触れる。
 優しい光に包まれた思い出が、私の中に宝物として、また一つ増えた、と思った。




―――Valen's Epilogue―――


 オレは今後、中等部を卒業したあと高等部へ行き、経済科に入り、同時に診療所を引き続き運営する予定を立てた。

 父さんは経済科に中等部から入っていたが、オレは中等部に入学する頃、ヒースを継ぐ決意が出来ていなかったから、普通科に行っていた。

 学生のまま結婚することにはなるが、高等部学生にはそういう学生は結構多い。

 アイリスは中等部を卒業したら、しばらくはじいさんの領主仕事の手伝いだろうな。
 じいさんがアイリスをめちゃくちゃ気に入っているから、色々教え込まえるかもしれない。

 ……とか思っていたら。
 アイリスが土魔法を使った建築がかなり堪能だった事が判明した。

 うちの壊れていた屋敷をたった2~3ヶ月で、リフォームしてしまった。

 壊れていた部屋、屋根。危なくて立ち入り禁止にしていた区域。

 そして建築デザインも本人はやったことなかったらしいのだが、向いていたようで、春になるころには、うちのボロ屋敷がなんてことでしょう、美しいお屋敷と化していた。

 こんなにいらねえよ、というくらい部屋数が増え、ダンスホール、何種類かの娯楽室と、庭には庭園、広場にプールまで作りやがった。

 食堂も綺麗に作り替え、キッチンがリフォームされ、食堂の一部にバーのようなカウンターが設置されたり。
 さらに今まで造られ無造作に倉庫に突っ込まれてた錬金術のアイテムを陳列する宝物庫のような倉庫まで……。

 ヒースの民にとってアイリスは助けた姫、愛でる対象みたいな位置付けだったはずなのに、逆にアイリスに頭が上がらなくなった。
 
「できる限りがんばってみたけど、素人だし……それにほら、全部土属性で作るものだから、木を使った温かみがないから、必要だったら木材を貼り直してさらにリフォームしなおしてほしいんだけど」

 ……と、遠慮がちに言ってた。

「素敵! 素敵! メルシー!! 孫嫁!!」

 じーさんが、狂ったように感動して、一番にダンスホールでアイリスと踊ってた。
 畜生。
 
 ただ、彼女は街の瓦礫には手をつけないで放置している。

「瓦礫は整地しないのか?」

「……ん。お祖父様がたまに、せつなそうに見ているから、あれは気付かないフリしてるの。屋敷は住む所だし、お祖父様自身がリフォームしようとされてるから、やらせてもらったの」

  ……散々、復興させてもオレのヒースじゃない、と言ってるじいさんを思い出した。
 オレの嫁は気遣いもできる。最高。
 
 そんな彼女を様子を見て、父さんに言ってみた。
 もし、アイリスが建築リフォーム関連の仕事をもししたいようなら、そういった部門を作ってくれないか?、と。
 そしてアイリス自身に話してみたら顔にやりたいと書いてあった。

 そんな訳で、アイリスは中等部3年生になってから、学業とは別に建築関係の勉強を始めた。

 楽しそうだ。
 オレは彼女が彼女のやりたいことが見つけられて嬉しかった。

 全てを失くした彼女に、こうやって一つ一つ、彼女の人生を豊かにしてやれるプレゼントを与え続けていきたい。

 
 ――そして。

 今夜もオレは彼女を寝かしつけて添い寝する。

 たまに流す涙を拭う。大丈夫だ、と声をかけ頭を撫でる。
 最近は、涙を流す回数も減ってきた。

 オレは決めた。
 
 この涙がいずれ流れなくなった頃、オレの方からも、ちゃんと彼女に結婚してくださいと伝える。
 身につける期間は短いだろうが、婚約指輪も自作したい。

 「アイリス、好きだ。結婚してください」

 練習のつもりで、腕の中のアイリスに小さくささやく。

 ――すると、寝ている彼女が少し微笑んだ。
 彼女の夢にオレの小声が届いたのだろうか。
 
 愛してるとささやくにはまだ早いオレたちの関係が、また少し距離が縮まった気がした。

 オレは彼女の手を取り、キスすると、今微笑んでいる彼女と同じ夢に行けたらいいのにと願いながら目を閉じるのだった。


      『その癒し系男子は傷月姫を手に入れる』―FIN―

                   
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