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70 ■ FIRE 02 ■
しおりを挟む昼休み。
今日はブラウニーがクラスの友達と食べるらしいので、一人でプライベートルームに行って食べようと向かっている。
ほんとはクラスの友達と食べたいなって思ったんだけど、今は変な訪問者が多いからそのほうが無難だと思った。
せっかくのランチタイムに迷惑かけちゃうかもしれないし。
通りかかった中庭を見ると、仲良さそうに皆でお弁当広げたりしてる。
笑い声が聞こえる。楽しそう、うらやましい。
ふと、寂しくなった。
そんな気持ちを抱えて少し歩くと、廊下に子猫が落ちてた。
「み~…」
お、かわいい。
わりと生まれたばかりっぽい、小さい子猫だ。
お母さん猫が運ぶ途中に落としちゃったとか?
この辺に他の子猫隠してたりするのかな?
人間の匂いとかついても大丈夫かな……。
それとも放っておいたらお母さん探しに来るかな…。
「う……」
子猫が、私の足にスリスリしてきた。
……人間の匂いついちゃったな。
少し迷ったけど、放っておけなくて、私は子猫を抱き上げた。
「お母さん探そうか……それまでお前の名前はとんにゅらだよ」
子猫が一瞬ガーン!て顔した気がした。まあ、そんな馬鹿な、ね。
うーん、猫ってどこに隠して子供育てるんだろ。
いざ探すとなると、まったく見当がつかない。
抱っこしてたら子猫に胸をふにふにされた。
ああ、おっぱい探してるのかな、おなかすいてるよね。
気がつけば、ひとけのないとこまで来てしまった。
あまり使われてなさそうな納屋があった。
ああいう所とか猫利用しそう?
「みー」
子猫が納屋のほうをみた。
お。反応した。覗いてみるか。
そう思って、私が、納屋のドア前に立った時、後ろから結構な衝撃でドンっと押された。
「えっ」
私は子猫を守るように転がった。
すっごく痛い!!
「おほほほほほほほほ!! 引っかかったわね!!!!」
ジャスミンの声だ!
「こ、この声はジャスミン……いたたた…」
私は一旦子猫を手放して起き上がろうとした。
「そーよ!! あんたの事全部! 絶対絶対許さないんだから!!」
納屋の扉がいつの間にか閉められている。
うーん、魔力変質使えば出れるけど、こういう時は使っても良いのやら。
校則大丈夫かな?
自動回復で背中が癒えていくのを感じる。
……これは、さては魔力変質使って私を殴ったわね。
ジャスミンも魔力持ちか。属性はなんだろう。そして校則違反だよ~ジャスミン。
「あんたんとこの父親が! うちの家族を別棟に押し込めて! 財産も取り上げて!
ダンスパーティもいけなくなったし!
私達をこんなにひどい目に合せた原因のあんたを絶対許さないんだから!!」
これは言い返しても無駄なタイプだなぁ。
それでも言わざるを得ない時もあるけども……。
「この喧嘩はあなたが始めたことでしょ。それで負けただけ。負けて失うものを計算できなかったの? 私より長い間貴族令嬢やってるんでしょ? 私はもとは孤児だけれど今はあなたより身分が上。そんな私に喧嘩ふっかけて、タダで済むと思ったの? 知ってるのよ、あなただって平民上がりだって。というか、こんな事平民でもまずやらないよ」
「……! この卑しい孤児が!! 生意気なのよ!」
「あなたがオカシイんだよ。いい加減気がついたら? これは親切で言うんだけどね? これ以上こんな事したら、自分の立場がもっと酷くなるよ?」
アカシア口調が出てしまった。悔しい。
「なにそのムカつく口調!」
アカシア~ムカつかれてるよ~直したほうがいいよ~。
とりあえず、納屋の扉に手をかける。
うん、やっぱり開かない。
どうしよう? 校則が気になる。
そんな事を考えていた時、後ろから私を抱き寄せる、魔力変質した腕があった。
私はそのまま後ろに倒された。
「いたっ…!?」
見覚えのある顔が上に覆いかぶさって、私の両腕を抑える。
「ふふふ、プラム様……」
「あ、あなた、オリビアの婚約者の!!」
おまえらグルか!! 手をはなせ!
あれ! そういえば子猫(とんにゅら)がいない!!
「あなたの胸……やわらかかった……ところで、結構ありますね。年齡の割に意外と」
GYAAAAAAAAAA!!
あの子猫! お前だったのか!! ブッドなんとか!!
セクハラだ!! 精神に酷いダメージを負った! 訴訟! 訴えてやる!!
てか、動物に化けれる魔法とかあるの!?
世の中反則多すぎでしょ!!!
「そして、ここで今から私と愛を語り合いましょう(脱ぎ)」
ブッドなんとかは服を脱ぎ始めた。
「何故脱ぐ!?」
「愛を語るから……フッ」
ブラウニー!! 助けてー!!!
「おほほほ! それにしても、こんなにうまくひっかかるとは思わなかったわ!!! 愛の火葬場で末永くお幸せに、そしてサヨウナラ!!」
愛の火葬場…火葬場!?
ボウッ!!
いきなりあたり一面が火の海になった。
「……う、あっ!?」
これ、魔法で火をつけたの!?
「な!! ジャスミン!! 話がちがうぞ!! なんだこれは!!!」
「あんたなんかにそのプラムを襲えるもんですか!!
あんたは、そいつを誘い込むだけの小道具よ!!
私の火で一緒に焼き尽くして同じ墓に入れてあげるわ!!
体中焼き尽くして醜い身体になって死になさい!! プラム!!」
「な…」
炎が強くなった!
ジャスミン、火属性だったのか。
たしか攻撃性の高い属性だったはず。
いや、火傷しても治るとはおもうけど……。
早く納屋からでなきゃ!
ちなみに随分あとで、どうしてこの二人が組んだのかって事情を知ったけど。
警備員に連れて行かれた警備室で意気投合したらしい。
「ちょ、ちょっとブットなんとかさん! どいて!」
私は校則なんて構ってられないと思って、魔力変質で身体を覆った。
「ほら、あなたも全身覆って!」
腹立つけど世話をやく。
「え!?全身なんて無理だよ!!」
そうなの!?
火がゴウ、とこちらへ薙いだ。
結構威力があって、私とブットなんとかさんは扉から更に奥に飛ばされた。
「いた……!! 熱!? え、なんで?」
魔力変質したのに!?
「ううああああっ……魔法の火だからですよ。普通の火とはちがう。小等部で習う事だよ? あなた実は馬鹿なのですか!? ジャスミンの火の魔力がプラム様の魔力変質を突き破ったん…だ…」
「……」
殴りたい。一言多いなこいつ!
しかし、良くわかった、悔しい。威力で負けたって事だ。
ジャスミンそんなに強かったの?
か弱い令嬢だとおもったのに、私も舐めてたかもしれない。反省。
ブッなんとかさんは何ができるんだろう?
そもそも属性すらわからないけど……魔力変質で体全体をおおうことすらできない人に、戦闘センスのない私になにか指示できるとは思えない。
そして今の薙いだ炎で、ブッなんとかさんは、酷い火傷を負った。
私は一旦魔力変質を解いて、以下ブーさんの傷を治した。
「あ……ありがとうございます。うっげほげほっ」
ブーさんはしおらしくなったけど、急に咳込みはじめた。
……空気がやばい。
私は魔力変質をさっきより強固なもので覆った。
ブーさんにも拡張できるかな。と思ってやってみたらできた。
しかし、火の薙ぎ方に意思を感じる、これジャスミンが操ってる?
ただ燃えてるだけじゃないっぽいなこれ!
ブーさんに肩を貸して扉に向かおうとするたびに、遊ぶように火が薙いでくる。
私の魔力変質は弱くはなかったけれど、それを越えようとするジャスミンの意思が感じられる炎がたまに襲ってきて、それに足を取られる。炎で殴られる。
ブーさんも守りながら、となると私には結構難易度が高い!!
扉、すぐそこなのに!
地面が熱い。
煙で前が見えない。
……目に火の粉入った、痛……っ。
空気が熱い。
吸い込んだ空気が肺を焼くようだ。
息が、できなくなっていく気がする。
空気は、どうにもできない……!
自動回復が追いついてない気がする。
そうだ、範囲回復を……でもそうすると魔力変質が…
……あれ…どうやるんだっけ…
『絶対圏』に接続すれば……
……でも学校なんかで使ったら……。
少し接続して……ブラウニー……呼べば……でも、ブラウニーに接続させたら、彼の身体に負担が……。
だめ……自分でなんとかしないと……
あ、やばい……意識 が
ホン トに使わな きゃ……
……ブラウニー…
……。
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