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62 ■ Physical Zamaa 07 ■

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 私の部屋の前まで来た時、ふと気になった事を私はリンデンに訪ねた。

「ねえ、お兄様の身体が弱い原因ってなんなの?」
「ん? ……ああ。原因不明なんだけど、魔力の流れが悪いんだ。例えば魔法を使おうとすると、体の中でそれが発動しちゃう時があってね」
「ええ?大変じゃないそれ……」
「実は怖くて魔法が使えないんだ」

 ははは、と困ったように笑った。

「お兄様の属性ってそういえば?」
「水だよ。母上もそう。父上は皇太子殿下と同じ光。そういえば言ってなかったね」

「へえ…」
「最後に魔法使ったのは2年前くらいかなぁ。肺とか呼吸器官に水が溢れて、自分の力で水に溺れて死ぬとこだった」

「それ、良く助かったね!?」
「結構奇跡に近かったと思うよ。でも学校の魔法学の授業中だったからね、学校内に聖属性の先生もいたし、フリージアがその場にいて、応急処置してくれたんだ」

「魔法を使わなければ普通の身体なの?」
「それがそうでもないんだよね。魔力が滞ってるのが原因なのか…たまに身体が腫れたり、重かったりまあそれで最近は心臓が……」
 リンデンは黙った。

「まあ、定期的にドクターに見てもらってるから大丈夫!」

 ……フリージア様、こんなか弱いお兄様をこの間ハグして気絶させてたな……回復してたけど……。
 フリージア様と結婚したら、お兄様毎日死ぬのでは?


「そのドクターでは完治しないんだね」
「うん、多分聖女様クラスにならないと駄目かなーってドクターは言ってるね。聖女様はお忙しいし、もうかなりお年寄りだし……ちょっと頼めないっぽいんだよね。僕が例えば王位継承権1位とかにでもなれば、してもらえると思うけど。まあ、ないよね」

「……その、ブラウニーと『絶対圏』を使えば…」
「だめだよ、プラム。そりゃ確かに本音はお願いしたいよ? ……でもね。だめだよ」
「どうして? それこそ公爵家の力で使えばごまかせたりしない?」


「……例えばね、聖女の力はホントに貴重なんだ。今だって国中に一人しかいない。しかももういつ亡くなるかわからないお年寄りだ。そんな状況でプラムが力を使って僕を治してバレたりしたら、国の宝として位置づけられて、もう二度と自由は得られないと思う」

「う……」

「ブルボンス家で使った君たちの力もちゃんと観測されてる。事件だっただけに本当にちゃんと観測されてる。あの時、君達が使った魔力は、さほど目立たない数値で問題になってないけれどね。聖属性にしては質が良すぎる、という話も出たんだよ。
 遡ればレインツリーで使った力と同じだと特定されるかもしれない」

 そこまで調べられるんだ!? 特定技術すごいな!?
「ひえ……」

「それなのにリーブス家で力を使ったらどうなるかな? ……証拠、証明が揃って言い逃れできないと思う。
『絶対圏』なんて力は、王家や神殿が絶対に放っておかない。ブラウニーにもちゃんと言っておくんだよ」

「そっか……。わかった…」
 またこの気持ち……なんてもどかしいんだろう。
 助けられる力はあるのに、それを手段にできない。


「そんなに心配しないで。もし計測されない方法でも考えついたら、絶対にお願いするから。良い子だね、プラム」
「……そうだね、そこが解決すればいいんだもんね。私もブラウニーやアドルフさんに相談してみるね」
 うんうん、とリンデンは頷いた。

「そういえばライラック殿下の話は聞いたけど、ココリーネってどうなったの?」
「ああ……。遠くの修道院だよ。うちの間者もココリーネがブルボンスを出立したのを確認してる。既に王都にはいないよ」

「……そっか」
 すでにあの運命(ゆめ)のスタート地点に立ってるかもしれないのか、ココリーネは。

「ただ……」
「ん?」
「皇太子殿下がココリーネを城に呼び出して一度面会してるんだよ。婚約破棄の件もあったんだろうけど……。ココリーネが余計な事を殿下に言ってなければいいんだけどね」

「うあ……怖い!」
「ああ、寝る前に余計な話しちゃったね、ごめんね」

 リンデンは私の頭をヨシヨシした。
 ありがとう、お兄様。でもさすがにこの不安はヨシヨシでは相殺できないな……。

「さて」
 リンデンは私の手の甲にキスを落とした。

「それじゃそろそろ部屋に戻るね! おやすみプラム」
「おやすみ~…お兄様」

 リンデンは自分の部屋へ向かった。
 ……それにしても色々複雑な気分だ。

 私は部屋に入ると、お風呂に入って色々考えた。

 ジャスミンを殴ってしまったこと。リンデンの身体のこと……。
 リンデンの身体のこと、アドルフさんにも相談してみようかなぁ。何か知ってるかな…。
 ああ、そうだ。
 明日から皇太子殿下のお手伝いもあったんだ……。
 ……なんか考えることいっぱいあるな。

 だめだ、もう寝よう。今日は疲れた。
 夢はみないでぐっすりと眠りたい。
 どうかアカシアのところに接続しませんように、おやすみなさい……。





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