61 / 149
61 ■ Physical Zamaa 06 ■
しおりを挟む
「あー? グランディフローラ? ……あ~あのおっさんとこか」
アドルフさんに、グランディフローラ家の事を聞いてみた。
心配かけたくないから、今日あった事は伏せたけど。
「アドルフさん知ってるの?」
「社交界行かなくなって大分経つから古い情報になるけどな」
「何か問題ある家なのか?」
「あそこはあんま評判良くないな、もとから。領民からとる税金は重たいし……その税金は領地整備やら領民に還元できるシステム作らないし、自分たちのお財布にナイナイしてる系のおうちだな。逃げ出す領民も多いから、違法に奴隷を買ってきたりして……タダ働きさせたりとか…まあ、当時の噂だ」
「それ、国のガサ入れとか入らないのか?」
「噂止まりなんだよ。噂が本当なら、弱いやつを黙らせて働かせて、国に収める税金とかだけはキッチリ入れてるんだろうな。国の方も、キッチリ調査する労力に対して、あの領地から得られる旨味がないんじゃねえのかな……あそこは今や大した特産品もないしな。何代か前は花農家が多かったはずなんだがな~。たしか経営で下手打って他の領地にそのお株を奪われてたはずだ」
「ひどいね」
「国民の声っていうのは上の方には届かないもんだ、な」
アドルフさんは気がついたら食べ終わっててコーヒーを飲んでいる。
結構喋ってたのに食べ終わるの早っ。
「……関わらないほうが良さそうだな。プラム。お前からは絶対接触するなよ」
ブラウニーが釘を刺してきた。
「え……」
「……お前、謝ろうかな…? とか思い始めてただろ」
「なんでわかるの!?」
「教えない」
!?
「ん? 謝るってなんだよ」
ああっ、アドルフさんに心配かけないようにと思って、喋りたいと思いつつ黙ってたのに!
ブラウニーが事情を説明した。
「……プラム」
「はい」
「あっはっは。よくやった!」
頭ぐしゃぐしゃされた。
……。
思ってた通りの反応をだった。
こういうのって叱られたほうがいいんじゃないかなって思ったりするけど……
アドルフさんにはこういう反応されたかったから、嬉しい。
彼の片目の瞳は穏やかで優しい。……落ち着く。
「確かに破天荒な事をしちまったけどな。概ねリンデンの言う通りだよ。逆にリンデンとリーブス閣下が伯爵家潰しに行かないか見張っといたほうがいいぞ、それ」
「潰す!?」
「グランディフローラはさっき言ったみたいに……おそらく真っ黒だ。公爵家を怒らせたら、簡単に潰れるぞ」
うわ……なんか急に不安になってきた。
私のせいで、伯爵家が潰れるとか!
「おまえのせいじゃない」
「私喋ってないよね!?なんでわかるの!?」
「教えない」
どうしてよ!?
意地悪な顔してる!! そして何故か軽く鼻をつままれた!
ぶらうにーーーー!!!
「はいはい、ご飯中にいちゃいちゃするんじゃないわよ~お行儀悪いわよ~」
アドルフさんがニュース紙を見ながら言った。
「だってお母さん!!! ブラウニーが!!!」
「しっかりしろプラム、そいつはお父さんだ」
「そいつ扱いされた!?(がーん)」
楽しい。
リーブスも嫌いじゃないけど、こんな賑やかな食卓は有りえない。
私の居場所はここでありたい。
早くここへ帰りたい。
ご飯を食べ終わって片付けをしていると、なんとギンコが向えにきた。
「思ったより帰りが遅いから向えに行ってくれと頼まれた」
「お兄様に使われてる!? ……てか、遅くなっちゃってごめんなさい」
「ちゃんとオレがマロで送る予定だったぞ」
ムスッとしてブラウニーが言った。
「み」
ブラウニーの肩でマロがウンウンと縦に首振ってる。可愛い。
「……ブラウニーに送らせると、今度はブラウニーがそのまま帰らないでプラムの部屋に居座るかもしれないからと」
「チッ…」
「ブラウニー!?」
「ははは! 読まれてるな、ブラウニー?」
アドルフさんがブラウニーの背中をバシバシした。
「……」
「な、何か言えよ……(おどおど」
アドルフさん……。
「じゃあ、帰るね。……夕飯ごちそうさま。また来るねアドルフさん。ブラウニー、また明日ね」
「おう、いつでも来い、お父さんは待ってるぞ」
「うん、明日。約束のとこでな」
ブラウニーに会えるなら、辛いことがあっても明日が待ち遠しくなるのが不思議。
ギンコが風の精霊にのせてくれて、飛び立つ。ジンって名前らしい。姿は見えない。
あっという間にヒースが小さくなる。
「今日はトラブルがあったそうだな」
「やだ、ギンコさんにまで伝わってるの?」
「リンデンとリーブス氏とリーブス夫人が騒いでたぞ」
「……心配かけちゃったなぁ。あ……そういえば、ギンコさんはいつ旅立つの?」
「そろそろ、と思っているが。……少し、心配をしている」
ギンコが横目で私を見た。
え? 私を心配してくれてるの?
「……心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ」
この人の事だから、なにか罪滅ぼししたいとか思ってそう。
「ギンコさん、もう十分に色々してくれた。……今ではもう感謝しかないよ。本当にありがとうね」
「そうか……」
私はうんうん、と頷いた。
「ところで……」
「うん」
「ギンコ、でいい」
「え、でも」
「いいんだ」
おう……こんな厳格な大人である妖精さんを呼び捨てにしていいのだろうか。
でも、本人がそうしたいっていうなら、断る理由もないしなぁ。
「うん、わかった。……ギンコ」
遠慮がちに名前を呼んでみたら、ギンコは優しく笑って頷いた。
※※※※※
「うおおおおおお!!! プラムうううう!! なんてひどい目に合わされたんだ!!」
「しんっじられないわ!!! 伯爵家が! うちの娘に!!! わたくし、絶対許せませんわ!!!」
「……潰れてもおかしくないよね、あの家。うん、もともと潰れそうだったしね。うん、潰そうよ?いいよね?」
またエントランスで囲まれた!!!
そしてリンデンが闇落ちしてる!
ギンコは騒がしくなりそうだからこれで、と退散してった!
送ってくれてありがとう!
「……えっと。ご迷惑とご心配をお掛けしてすみませ」
がばっとお母様に抱きしめられる。
「もう本当よ!帰ってくるの遅いし!ずっと待ってたのよ!」
あ……。
「ご、ごめん、なさい……お母様」
いい匂いする。そして柔らかくて……。
なんだろう、ジーンとする……。
私はお母様の背中に手を回してギュッっと抱きついてしまった。
彼女のおろした綺麗な水色の髪…柔らかくてサラサラしてる。うう、なんて心地いいの。
そして、もっとギュッと抱きしめてくれた。
わ、わあ……。
私はなんだか赤面してしまった。
「リーブスを敵に回した落とし前はつけてもらおう」
「そうですわね。そもそも領民も酷い有様と聞きますし、今まで手を出す名目もなかったので見てみぬフリをなさっていたのですよね、あなた」
「うむ」
「じゃあ決まりだね」
なんて物騒な家族会議をエントランスで!!!
「あ、あの……落とし前ってどうなるんですか? 私のせいで、とか思うと心苦しいんですけど……」
あの一途なフリージア様が頭に浮かんだ。
彼女なんて何も悪いことしてないのに巻き添えになっちゃう…。
「プラム。あなたがそう思うのも無理ないわ。でもね、グランディフローザの領主代理は酷い人なのよ。……そろそろフリージアちゃんも助けてあげないと。あなたは、ちょうどいいキッカケを作ってくれたのよ」
「えっ?」
「プラム、今のグランディフローザの領主は代理なんだ。本当ならフリージアが正統な領主なんだよ。未成年だから、入婿の父親がその座について代行しているんだよ。フリージアの母親がグランディフローザの正統な後継者だったんだが……亡くなったんだ…で、彼のその、浮気相手とその娘が我が物顔をしているんだ」
お父様が詳しく説明してくれた。
「父親は実際、経営を何もしてないのに領主気取りなんだよね。君を血筋で馬鹿にしたジャスミンこそ……その母親は元娼婦なんだよね~」
なんだそれー!
なんというブーメラン。
……なんか謝らなくてもいいかって気がしてきた。
「まあだから余計に君に嫉妬したのかもね。同じ平民出身なのに君のほうが良い家柄に恵まれた、みたいな」
「……その嫉妬の理屈が理解できないな…私と彼女は全然関係ないのに」
「世の中自分とは全く関係ないのに嫉妬する人ってのはいるものだよ」
そうなんだ。
十人十色って言葉が思い浮かんだ。
人間って、複雑でさまざまな思いを抱えるものなんだね。
「フリージアちゃんのお母さんとはわたくしね、学生の頃に、少し交流があったのよ。
とても良い人だったのにあんな男にひっかかっちゃって……ほんとにもう……。
フリージアちゃんを残して死んでしまうし……ねえ、リンちゃん、フリージアちゃんと結婚しない?」
お母様がいきなり爆弾発言した。
「それいいな」
お父様がそれに乗る。
「唐突になに!?」
リンデンが悲鳴のような声をあげた。
「だってだって、フリージアちゃん、ちゃんとしてる子だし、聖属性だからあなたの身体も整えてくれるだろうし……何よりあなたのことが大好きだし……可愛いし。グランディフローザの跡継ぎはあそこの親戚筋をひっぱってくればいいんじゃないかしらね。」
確かに、いじらしくて一途だったなぁ。
「女性の言う可愛いは男性の可愛いと違うと思います!!」
リンデンが力いっぱい叫んだ。
「……」
何故かお父様が黙った。何か思う所があるんですか。
「あなただって、実は感謝の気持ちとかあるんでしょう? 最近までココリーネ令嬢を追いかけていたようだけれど、フリージアちゃんのことも、嫌いではないんでしょう?」
「嫌いではないですけどね……。と……とにかくその話はまた今度で…僕はそろそろ失礼しますね。プラム、部屋まで送るよ」
「え、あ……とと」
リンデンに割りと強引気味に手を引っ張られて、私達はその場を後にした。
アドルフさんに、グランディフローラ家の事を聞いてみた。
心配かけたくないから、今日あった事は伏せたけど。
「アドルフさん知ってるの?」
「社交界行かなくなって大分経つから古い情報になるけどな」
「何か問題ある家なのか?」
「あそこはあんま評判良くないな、もとから。領民からとる税金は重たいし……その税金は領地整備やら領民に還元できるシステム作らないし、自分たちのお財布にナイナイしてる系のおうちだな。逃げ出す領民も多いから、違法に奴隷を買ってきたりして……タダ働きさせたりとか…まあ、当時の噂だ」
「それ、国のガサ入れとか入らないのか?」
「噂止まりなんだよ。噂が本当なら、弱いやつを黙らせて働かせて、国に収める税金とかだけはキッチリ入れてるんだろうな。国の方も、キッチリ調査する労力に対して、あの領地から得られる旨味がないんじゃねえのかな……あそこは今や大した特産品もないしな。何代か前は花農家が多かったはずなんだがな~。たしか経営で下手打って他の領地にそのお株を奪われてたはずだ」
「ひどいね」
「国民の声っていうのは上の方には届かないもんだ、な」
アドルフさんは気がついたら食べ終わっててコーヒーを飲んでいる。
結構喋ってたのに食べ終わるの早っ。
「……関わらないほうが良さそうだな。プラム。お前からは絶対接触するなよ」
ブラウニーが釘を刺してきた。
「え……」
「……お前、謝ろうかな…? とか思い始めてただろ」
「なんでわかるの!?」
「教えない」
!?
「ん? 謝るってなんだよ」
ああっ、アドルフさんに心配かけないようにと思って、喋りたいと思いつつ黙ってたのに!
ブラウニーが事情を説明した。
「……プラム」
「はい」
「あっはっは。よくやった!」
頭ぐしゃぐしゃされた。
……。
思ってた通りの反応をだった。
こういうのって叱られたほうがいいんじゃないかなって思ったりするけど……
アドルフさんにはこういう反応されたかったから、嬉しい。
彼の片目の瞳は穏やかで優しい。……落ち着く。
「確かに破天荒な事をしちまったけどな。概ねリンデンの言う通りだよ。逆にリンデンとリーブス閣下が伯爵家潰しに行かないか見張っといたほうがいいぞ、それ」
「潰す!?」
「グランディフローラはさっき言ったみたいに……おそらく真っ黒だ。公爵家を怒らせたら、簡単に潰れるぞ」
うわ……なんか急に不安になってきた。
私のせいで、伯爵家が潰れるとか!
「おまえのせいじゃない」
「私喋ってないよね!?なんでわかるの!?」
「教えない」
どうしてよ!?
意地悪な顔してる!! そして何故か軽く鼻をつままれた!
ぶらうにーーーー!!!
「はいはい、ご飯中にいちゃいちゃするんじゃないわよ~お行儀悪いわよ~」
アドルフさんがニュース紙を見ながら言った。
「だってお母さん!!! ブラウニーが!!!」
「しっかりしろプラム、そいつはお父さんだ」
「そいつ扱いされた!?(がーん)」
楽しい。
リーブスも嫌いじゃないけど、こんな賑やかな食卓は有りえない。
私の居場所はここでありたい。
早くここへ帰りたい。
ご飯を食べ終わって片付けをしていると、なんとギンコが向えにきた。
「思ったより帰りが遅いから向えに行ってくれと頼まれた」
「お兄様に使われてる!? ……てか、遅くなっちゃってごめんなさい」
「ちゃんとオレがマロで送る予定だったぞ」
ムスッとしてブラウニーが言った。
「み」
ブラウニーの肩でマロがウンウンと縦に首振ってる。可愛い。
「……ブラウニーに送らせると、今度はブラウニーがそのまま帰らないでプラムの部屋に居座るかもしれないからと」
「チッ…」
「ブラウニー!?」
「ははは! 読まれてるな、ブラウニー?」
アドルフさんがブラウニーの背中をバシバシした。
「……」
「な、何か言えよ……(おどおど」
アドルフさん……。
「じゃあ、帰るね。……夕飯ごちそうさま。また来るねアドルフさん。ブラウニー、また明日ね」
「おう、いつでも来い、お父さんは待ってるぞ」
「うん、明日。約束のとこでな」
ブラウニーに会えるなら、辛いことがあっても明日が待ち遠しくなるのが不思議。
ギンコが風の精霊にのせてくれて、飛び立つ。ジンって名前らしい。姿は見えない。
あっという間にヒースが小さくなる。
「今日はトラブルがあったそうだな」
「やだ、ギンコさんにまで伝わってるの?」
「リンデンとリーブス氏とリーブス夫人が騒いでたぞ」
「……心配かけちゃったなぁ。あ……そういえば、ギンコさんはいつ旅立つの?」
「そろそろ、と思っているが。……少し、心配をしている」
ギンコが横目で私を見た。
え? 私を心配してくれてるの?
「……心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ」
この人の事だから、なにか罪滅ぼししたいとか思ってそう。
「ギンコさん、もう十分に色々してくれた。……今ではもう感謝しかないよ。本当にありがとうね」
「そうか……」
私はうんうん、と頷いた。
「ところで……」
「うん」
「ギンコ、でいい」
「え、でも」
「いいんだ」
おう……こんな厳格な大人である妖精さんを呼び捨てにしていいのだろうか。
でも、本人がそうしたいっていうなら、断る理由もないしなぁ。
「うん、わかった。……ギンコ」
遠慮がちに名前を呼んでみたら、ギンコは優しく笑って頷いた。
※※※※※
「うおおおおおお!!! プラムうううう!! なんてひどい目に合わされたんだ!!」
「しんっじられないわ!!! 伯爵家が! うちの娘に!!! わたくし、絶対許せませんわ!!!」
「……潰れてもおかしくないよね、あの家。うん、もともと潰れそうだったしね。うん、潰そうよ?いいよね?」
またエントランスで囲まれた!!!
そしてリンデンが闇落ちしてる!
ギンコは騒がしくなりそうだからこれで、と退散してった!
送ってくれてありがとう!
「……えっと。ご迷惑とご心配をお掛けしてすみませ」
がばっとお母様に抱きしめられる。
「もう本当よ!帰ってくるの遅いし!ずっと待ってたのよ!」
あ……。
「ご、ごめん、なさい……お母様」
いい匂いする。そして柔らかくて……。
なんだろう、ジーンとする……。
私はお母様の背中に手を回してギュッっと抱きついてしまった。
彼女のおろした綺麗な水色の髪…柔らかくてサラサラしてる。うう、なんて心地いいの。
そして、もっとギュッと抱きしめてくれた。
わ、わあ……。
私はなんだか赤面してしまった。
「リーブスを敵に回した落とし前はつけてもらおう」
「そうですわね。そもそも領民も酷い有様と聞きますし、今まで手を出す名目もなかったので見てみぬフリをなさっていたのですよね、あなた」
「うむ」
「じゃあ決まりだね」
なんて物騒な家族会議をエントランスで!!!
「あ、あの……落とし前ってどうなるんですか? 私のせいで、とか思うと心苦しいんですけど……」
あの一途なフリージア様が頭に浮かんだ。
彼女なんて何も悪いことしてないのに巻き添えになっちゃう…。
「プラム。あなたがそう思うのも無理ないわ。でもね、グランディフローザの領主代理は酷い人なのよ。……そろそろフリージアちゃんも助けてあげないと。あなたは、ちょうどいいキッカケを作ってくれたのよ」
「えっ?」
「プラム、今のグランディフローザの領主は代理なんだ。本当ならフリージアが正統な領主なんだよ。未成年だから、入婿の父親がその座について代行しているんだよ。フリージアの母親がグランディフローザの正統な後継者だったんだが……亡くなったんだ…で、彼のその、浮気相手とその娘が我が物顔をしているんだ」
お父様が詳しく説明してくれた。
「父親は実際、経営を何もしてないのに領主気取りなんだよね。君を血筋で馬鹿にしたジャスミンこそ……その母親は元娼婦なんだよね~」
なんだそれー!
なんというブーメラン。
……なんか謝らなくてもいいかって気がしてきた。
「まあだから余計に君に嫉妬したのかもね。同じ平民出身なのに君のほうが良い家柄に恵まれた、みたいな」
「……その嫉妬の理屈が理解できないな…私と彼女は全然関係ないのに」
「世の中自分とは全く関係ないのに嫉妬する人ってのはいるものだよ」
そうなんだ。
十人十色って言葉が思い浮かんだ。
人間って、複雑でさまざまな思いを抱えるものなんだね。
「フリージアちゃんのお母さんとはわたくしね、学生の頃に、少し交流があったのよ。
とても良い人だったのにあんな男にひっかかっちゃって……ほんとにもう……。
フリージアちゃんを残して死んでしまうし……ねえ、リンちゃん、フリージアちゃんと結婚しない?」
お母様がいきなり爆弾発言した。
「それいいな」
お父様がそれに乗る。
「唐突になに!?」
リンデンが悲鳴のような声をあげた。
「だってだって、フリージアちゃん、ちゃんとしてる子だし、聖属性だからあなたの身体も整えてくれるだろうし……何よりあなたのことが大好きだし……可愛いし。グランディフローザの跡継ぎはあそこの親戚筋をひっぱってくればいいんじゃないかしらね。」
確かに、いじらしくて一途だったなぁ。
「女性の言う可愛いは男性の可愛いと違うと思います!!」
リンデンが力いっぱい叫んだ。
「……」
何故かお父様が黙った。何か思う所があるんですか。
「あなただって、実は感謝の気持ちとかあるんでしょう? 最近までココリーネ令嬢を追いかけていたようだけれど、フリージアちゃんのことも、嫌いではないんでしょう?」
「嫌いではないですけどね……。と……とにかくその話はまた今度で…僕はそろそろ失礼しますね。プラム、部屋まで送るよ」
「え、あ……とと」
リンデンに割りと強引気味に手を引っ張られて、私達はその場を後にした。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜
湊未来
恋愛
王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。
二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。
そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。
王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。
『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』
1年後……
王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。
『王妃の間には恋のキューピッドがいる』
王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。
「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」
「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」
……あら?
この筆跡、陛下のものではなくって?
まさかね……
一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……
お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。
愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる