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⑤無人島生活2日目01● 山の頂上へやってまいりました

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「わ、すごーい!!」

 私は今、ミーシャに連れてきてもらい、島の一番高い山の頂上にいる。
 頂上でヤギとか飼ってるらしいから、見せてあげる、と言われて。


 山の頂上は、割りと平坦な野原になっており、可愛らしい花が咲き乱れていた。
 もうこの島、メルヘン島って名前でいいんじゃないっすかね!

 この頂上へは、大鷲のような白い魔物の背に乗って飛んできた。

 驚いたことに、ミーシャは一部の魔物とも意思疎通しており、その白い大鷲とも懇意にしているようだった。

 前世でそういえばハクトウワシっていたよな。あれがもっと大きくなったやつだなこれ。

 これは……動物や魔物と意思疎通できるスキルも所持してるなこの子……。
 調査ツールがないから、なんとも言えないけれど。

 
 それはともかく。

 私は花畑をかけめぐり、花輪を作ってミーシャの頭に乗っけた。
 うん、イケメンだからよく似合うよ。腰ミノだけどね!


「わ、おねえさん。なにこれ綺麗だね!」
「ふふふふー」

 いやー、前世でやりたかったんすよ! こういう花畑を走ったり、花輪作ったり!!

「でね、あそこ、僕が作ってるお庭……畑?」
「おおお!!」

 花畑の向こうに、小さな池があり、その傍にミーシャの作った畑があった。
 畑にはとうもろこしやら……あれトマト!? ……きゅうり!?
 
「野菜の種類結構あるね。よく種が手に入ったね」
「実は、たまに海岸に流れ着くものがあって。そこにね、やさいのたね、って書いてあった袋があったの」
「なるほど!!」

「ふふ」
 ミーシャが笑って、さっき私が作って被せた花輪を私の頭にのっけてきた。

「おねえさんのが似合うね。可愛い」
 ちょっとドキリとした。
 イケメンだなあ。中身は子供だけど。

「そ、そーかなー」
「あ、そうだ。おねえさん。ここにいる間、少し文字を教えてほしいの。流れ着くものの中に、運良く濡れてない本とか、乾かしたら読める本とかあったんだけど、たまに読めない所があって……」
 
 なるほどね。確かにそれは教えてくれる人がいないと読めない。

「いいよ! やろう!」
「ありがとう。ちゃんと本が読めるようになるの、たのしみ……」

 この子はお勉強好きだな。良い子だ。

 ドミニクス殿下なんて、王妃様や私やその他側近がどれだけ飴とムチを繰り返しても、なかなか勉強しない王子だ。
 したがって、私にしわ寄せが来ていたのだけど。
 私は王妃教育を終えたけれど、その後でドミニクスが勉強すべきことまで追加で覚えさせられるハメになった。
 陛下と王妃様には申し訳ないと頭を下げられてはいたけれども。


「おや、あっちに結構立派な小屋があるよ……あれ、柵で囲まれてる? ……本格的なおうちじゃない!?」
「うん、作ったの。あれがね、ヤギさん飼ってるとこ。柵の中で何匹か他の動物もいるよ。あと雨宿り用」
 いや、見事なログハウス。すごいなこの子。

「これは……立派じゃない。どうして昨日の樹のほうに住んでるの?」
「ん……たしかにこっちに住みたくて作ったんだけど。ここね、天候がわるいと雷が怖くて……ほら、あそことかあそこの木……」
「うわ」
 原っぱの真ん中でぽつんと立ってただろう樹が燃え尽きている。

「見晴らしも良すぎて、魔物とかに遠くから見つかっちゃうし」
「なるほどね」

「それにしてもよく、こんな小屋……」
「流れ着いた本にね、小屋の色んな部分の絵が描いてあるのがあったの。それを見て……だから本当にこれで作り方合ってるかはわからないんだけど……」

 たしかに、細かい部分は、プロが作ったものとはいえないかも。
 けれど……いや、十分な出来だよこれは。

 小屋に近づくと、でっかい白い……狼がヌッとでてきた!

「狼だ!?」
 私は身構えた。
 狼は走ってきて、ミーシャに飛びついた!

「みーいしゃああああ!!!」
 私は慌てた。

「はっはっはっ(ぺろぺろ)」
「あはは、おはよう!」
「え……?」
「大丈夫だよ、おねえさん。ともだちなの。ここの小屋のヤギとかウサギとか……弱い子たちを守ってくれてるの」
「ば、番犬……!!」
 いや、ホントでかい。小屋の影に隠れて見えなかったけど、前世でいうセントバーナードの3倍くらいありそうだ。

 てか、これ手なづけて……テイムしてますよね!?
 なんなのミーシャ。あんたサバイバルチートじゃん? さすが王位継承権第一位。

「ごくろうさま」
 ミーシャはほのぼのした顔で干し肉をオオカミにやってる。
「わん」
 ……わん。グルル……とかじゃないんだ。

「そういえば、この子といい、さっきの大鷲といい。名前あるの?」
「えっと、この子はペロって呼んでる。ペロペロ舐めてくるから」
 スタンダードだな。

「へえ、白くてきれいな子だよね。よろしくね、ペロ」

 私がそういって、私より身の丈が大きいオオカミを見上げると、オオカミは私の頬をペロ、とした。
 ……警戒されてないな。 あと、ありがとうって言われた気がした。
 ミーシャが私に気を許してるからかな?

「大鷲さんの名前は?」
「ぴえーって鳴くから、ピエールって呼んでる」
 ピエールゥゥゥ(舌巻いて)!!

「肩の子は?」
「ああ、この子は名前あるけど、僕以外教えちゃだめなんだって、この子に言われてる」
「……話できるんだ」
「話するっていうか……うん、なんかわかるの」
 ……そういえば王様の神鳥もたしか名前の発表されてないな。
 そういう事か。
「不便だから、鳥さんって呼ぶね」
「ふむ、わかったよ」
 ミーシャの肩で、白い鳳凰がコクリ、とうなずくのが見えた。
 人語理解してやがる……。

 柵の中には少数の草食動物がノンビリしていた。
 ウサギとヤギと……羊がいる。あと鶏も。
 なるほど、ベッドの下のウールはこの羊から取ったものかな。
 しかし、素材はあるけど腰ミノってことは、この子は紡績技術はないんだね。

  私も紡績は門外漢だなあ。
 ざっくりとした知識はあるけれど細かい部分がわからない……せめて知識書が欲しい。
 この島が暖かい島で良かったけれど、それでも、衣類やタオル……リネン関連は数点欲し……ってまるで長居するみたいに考えている!

 でも……もし、ミーシャがここに残る場合はそういう設備は作ってあげたい気もする。

 ミーシャの身体を見ると、あちこち細かい傷跡がある。
 服を着せてあげたい。
 私が島を脱出したあと、何かしら持ってきて上げる、という方法はできるかわからない。
 あんなでかいタコの魔物がでる海域だし……。

 ミーシャはオオカミと花咲く野原を駆け回って遊んでる。
 とても純朴な笑顔。なんだここは天使の庭園か。
 ……守りてぇ、その笑顔。
 ただし腰ミノはなんとかしたい衝動にはかられます、はい。

 海岸に衣類は流れ着いたりしないかな。
 あ、そうだ。
 私がここへ流れ着いたってことは、豪華客船から物資がこれから色々流れ着くかもしれない。

 見に行きたいけど、あいつらが……どこにいるかわからないからちょっと不安だな。
 ミーシャにもあいつらのこと言って、気をつけてって言っておかないとね。

 
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