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終章

黄金の祝祭(6)

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     ※  ※  ※


「どこへ行くんだ?」

 王宮の裏側に設置された小さな扉を出ながらアルフォンスはもう一度尋ねた。
 つながれた手にぎゅっと力が込められる。

 王宮は流行を取り入れた瀟洒な造りの建物だが、さすがにここは簡素な木の扉である。
 動かすたびに蝶番がキシキシと音をたてた。
 これは今のカインの立場をそのまま表しているのだろう。

 先王カインが起こした昨年のクーデターは失敗だったらしい。
 フリード王は生きていて玉座に返り咲いた──それが大方の見方である。
 そうなるとロイ以上にカインの立場は危ういものとなろう。

「フリードはお前の功を認めている。正式な声明を出せば疑惑はすぐに消えるはずだ。そうしたら前みたいに要職にだって就けるさ」

 先を行くカイン。「えぇ、まぁ」なんて言って煮え切らない。
 フリードの立場を慮っているのだろうか。

「まさかフリードが王だったとはな。何が《簒奪王》だ。とんだハッタリだ」

 悪態に、はじめてカインの表情が緩む。

「《簒奪王》じゃなく、身代わり王だったとでもいうか」

「上手くないよ」

 笑い声が重なる。

 王宮の通用口は、普段は使用人や出入りの商人が使っているのだろう。
 この混乱で見張りの兵もいない。
 潜り抜けるときに何気なく振り返り、アルフォンスは「あっ」と声をあげた。
 二階の窓に高く結った金髪を見つけたのである。

 リリアナである。
 向こうもこちらに気付いたのだろう。
 王宮を出ていく二人にブンブンと手を振ってみせる。
 ご機嫌な様子だ。
 うまくロイに会えたのだろう。

「リリアナ嬢はどうやらあなたに夢中なようですね。いつまで持つかは分かりませんが」

「妬くな、カイン」

 苦笑を返すアルフォンス。

「それよりリリアナ嬢はお前と婚約したと聞いたぞ」

「しませんよ、そんなの。あなたがいるのに」

「……そ、そうか」

 語尾が裏返ったことに、カインは不思議そうに立ち止まった。

「アルフォンス? 顔が赤い」

「なっ……」
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