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第66話 ほう、次はこのタイプですか。

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 ギガントサイクロプスを倒してから少し休憩する。私やマーブル、ジェミニは連戦が可能だけど、戦姫の3人にとっては激戦だったと思う。私の今回の任務はあくまで護衛であり、この戦いは彼女たち優先で行う必要がある。そして何より肉が手に入らないですからねぇ。休憩時間の間何をしているかというと、マーブル達とオニキスを含めて4人で遊んでいるのを眺めていた。何をして遊んでいるかというと、ライムとオニキスがボールになってそれぞれマーブルとジェミニがボールになったライム達をリフティングしていた。これが何とも可愛らしくて非常に癒やされる。戦姫の3人もかなりほっこりしていた。


「ああ、何と可愛らしいのでしょうか。見ているだけで疲れが癒やされますわね。」


「はい、これならもう少しで回復完了しそうです。でも、まだこの光景を見ていたい、という気持ちも強いです。」


「うん、可愛い。ずっと見てたい。攻略どうでもいい。」


「いやいや、それはマズいでしょ。名残惜しいでしょうが、もう少ししたら先に進みましょうか。」


 戦姫の3人(特にルカさん)は渋々うなずいて次へ進む準備を進めた。


 最初の間から進んでいくと、それほどかからずに次の間が見えてきた。やはり敵は待ち構えていた、というかいた。鑑定結果はワイバーンだ。ってか、こんな場所にワイバーンが飛べる広さがあるんかい。何このダンジョン。意味がわからない。とはいえ、実際にワイバーンが飛んでいるのだ。そういうものだと割り切るしかないかな。ちなみに数は15体ほど。


「マーブルから敵探知の報告がありました。敵はワイバーンで数は15ほどです。」


「ワイバーンですか? しかも15体も? 本当なら災厄クラスですわ。大丈夫ですの?」


「恐らく大丈夫でしょう。アンジェリカさん達はワイバーンは初めてですか?」


「ええ、もちろん初めてですわ。話には聞いたことがありますが、その話によりますと、ワイバーン10体に襲撃された街があって、何とか撃退したものの死傷者は数知れず、街は壊滅状態になったそうですの。しかも今回は15体ですわよね? 不安しかありませんわ。」


「なるほど。ハッキリ言いましょう。楽勝です。正直、素材が手に入らないのが不満でしょうがないほどですよ。ちなみに、街が壊滅状態になったのは、迎撃した人達との戦力差もありますが、ワイバーンの的確な倒し方を知らないことの方が大きいかもしれません。飛び道具も魔法も要は使い方なのです。」


「そうなんですの?」


 アンジェリカさんだけでなく、セイラさんもルカさんも不安そうだ。正直、この3人だけでもいけると思いますが、イメージが先行しているっぽいですな。


「では、今回は空を飛ぶ魔物の倒し方をワイバーンで練習してみましょうか。ご承知だと思いますが、空を飛ぶ魔物は撃ち落とすのが基本です。落ちたときにまだ生きていればとどめを刺せばいいのもご理解しておりますよね?」


「ええ、そのくらいは。ですが、ワイバーンですわよ。仮に落とせても攻撃が通らなくてはそれも難しいのではなくて?」


「そうです、普通はそう考えますが、倒せそうもなければ、頭部を狙ってぶん殴ればいいのです。衝撃で気絶させれば、しばらくは動けません。一撃が無理ならそういったことをして数で補うのです。撃ち落とすのが不可能な敵なら、攻撃が通用していないのでそれは無理かもしれませんが、撃ち落とすことができる敵であれば、攻撃は通用しているので、そうやって倒していくのも可能なのです。」


「それって、アイスさん達じゃないと無理だよ。普通はそこまで考える余裕全く無いし。」


「ありゃ、そうですか。まあ、ものは試しです。早速やってみましょうか。まずは、私が手本を見せます。最初の1体は普通に頭部を狙って一撃で仕留めます。次の1体は翼の部分を攻撃して撃ち落としてから仕留めますので、参考にして下さい。それを確認してもらいましたら、今度は戦姫の3人に倒してもらいます。15体いるとはいえ、少しずつ倒していく方針ですので、安心して倒す練習をしてください。もし危なくなったらこちらで援護しますので。」


「わかりましたわ、やってみます。」


「では、今回は空飛ぶ魔物を倒す訓練です。先程言った通り、最初に私が手本として2体ほど仕留めますので、次の5体は3人にお願いします。具体的には私が2体倒した後、生き残りの連中は1体以外は動きを制限しておきますので、自由に動ける1体に攻撃をしてもらいます。セイラ隊員とルカ隊員はその1体の翼を狙って攻撃して下さい。お2人でしたら一撃でも命中させるだけで撃ち落とせるはずです。アンジェリカ隊員はその落ちたワイバーンにとどめを刺してください。恐らく一撃で倒せると思いますが、一撃で倒せなかったら頭部を石突き部分でぶん殴って下さい。ほぼ間違いなく気絶するはずですので、気絶させたら3人で仕留めてみましょう。」


「承知しましたわ。」


「了解だよ。」


「うん、やる。」


「次に、マーブル隊員は闇魔法でワイバーンの動きを1体を除いて制限して下さい。それで、戦姫の3人が仕留めたら、次の1体を解除していく、という形でお願いしますね。」


「ミャッ!!」


「ジェミニ隊員ですが、万が一アンジェリカ隊員がワイバーンを気絶し損ねて反撃しようとしたら仕留めて下さい。反撃しようとしなければ不測の事態に備えて待機です。」


「キュウ(承知しましたです!!)!!」


「ライム隊員とオニキス隊員はいつも通り戦姫の護衛です。お2人でしたら、ワイバーン程度の突進は余裕で防げると思います。」


「わかったー! お姉さん達をまもるー!!」


「ぴーー!!」


「これでワイバーンは大丈夫だと思います。一応5体といいましたが、状況に応じてさらに倒してもらう予定です。残りはマーブル隊員とジェミニ隊員で協力して仕留めて下さい。」


 こんな感じで作戦が確定する。戦闘準備を整えてから次の間へと進むと、ワイバーンが待ち構えていた。


「では、作戦開始です。まずは私が行きます。」


 さてと、どれからいこうかな。あ、アレにしますか。というわけで、バンカーショットを3発程度放つ。流石に全弾命中は無理だったが、1発は見事に頭部に命中したので爆破。狙い通り頭は吹き飛んで1体終了、次に参りましょうか。ワイバーン達が騒ぎ出したので、一番うるさそうなやつに今度は5発放つ。左翌に3発、右翼に2発命中して爆破させると、ワイバーンが落ちてきた。落ちてきたところを気合一閃。バンカーを使わずに拳でぶん殴る。あ、むき出しの拳だと怪我するから水術で氷をまとっているよ。ワイバーンの動きが止まる。気絶したかなと思って次の攻撃に移ろうとしたら消えて魔石になった。


 それを確認したマーブルが闇魔法でワイバーン達を包み込む。叫び声がさらに大きくなりうるさくてかなわないので、その上を氷で覆ってやった。これで多少は静かになった。


「アンジェリカ隊員、セイラ隊員、ルカ隊員。あんな感じでやってみて下さい。」


「流石ですわね。威力はともかく、あれなら同じようにできますわね。」


「なるほど、ああやって撃ち落とせばいいのか、うん、あれならできるよ。」


「うん、あの程度だったら楽勝。」


 うんうん、理解してくれてよかった。実際戦姫の3人なら慣れれば15体でも対処できると思う。オニキスが護衛にいるから負ける要素はないかな。


 マーブルが1体を解除したので、私も氷を解除する。自由になったワイバーンの1体が叫びながらこちらを伺っている。奴らは私に意識が向いている。その隙を逃す戦姫達ではなかった。セイラさんは矢を、ルカさんは風魔法を放ち、狙い通りにワイバーンの両翼に大ダメージを与える。解放されたワイバーンはいきなり落ちていく状況に頭がついてきていないらしく混乱していた。落ちたワイバーンを待ち構えていたアンジェリカさんは頭部ではなく首を狙って突きを放ち、ワイバーンは魔石に変化した。


「3人ともお見事でした。この調子で次もお願いしますね。」


「「「了解!!」」」


 やり方がわかると、先程よりも効率よく倒していたので、マーブルに頼んで一気に2体を相手してもらったが、問題なく2体とも魔石に変わった。もう一度2体を相手してもらうが今度も危なげなく魔石に変えていた。もう大丈夫そうなので、作戦を少し変更した。


「もう大丈夫そうなので、作戦を変更して一気に殲滅します。マーブル隊員とジェミニ隊員はこれより攻撃側に加わってもらいます。ライム隊員とオニキス隊員は申し訳ないけど戦姫の援護です。」


 みんなが敬礼でもって応えた。氷を解除し、マーブルが闇魔法を解くと、いきり立ったワイバーン達残り7体が一斉にこちらに向かって来た。


 セイラさんとルカさんにそれぞれ向かって行った2体は撃ち落とされ、アンジェリカさんのとどめの一撃に沈んだ。アンジェリカさんに向かって行った1体がいたけど、オニキスが正面から突進して止めた。アンジェリカさんはオニキスが受け止めきるとわかった上での行動だね。うん、いい信頼関係を築けていますな。


 マーブルはこうなることがわかっていたらしく、火魔法を2つほど放っていた。1発はアンジェリカさんに向かったワイバーンに、もう1発はマーブルに向かったワイバーンにそれぞれ放たれて2体とも丸焦げになった後魔石に変わった。


 ジェミニは突っ込んで爪の一撃を放ってきたワイバーンに対して真っ向から応戦、爪を切り裂いた上に首をはねられて魔石に変わってしまった。私に向かって来たワイバーンはバーニィショットで頭を吹き飛ばして終了。


 残る1体はライムに向かっていた。ライムはワイバーンの攻撃を上手く躱すと、ワイバーンの頭部に張り付き、消化させていた。それほど時間もかからずワイバーンの頭部は消滅して魔石に変わってしまった。ある意味一番えげつないな、これ。でも、ライム、よくやった。お父さんは嬉しいです。


「みなさん、お疲れ様でした。では、只今をもって、対飛行タイプの訓練を終了します。」


 私の号令にみんなが敬礼(スライム達は何かコロネみたいな形になっていた。これはこれで可愛い。)をして完了。何か様式美みたいになってきたな。何だかんだいって、みんなノリが良くて助かるよ。ちなみに手に入れた魔石はソフトボールくらいの大きさだった。もちろん残さず回収しましたよ。


 さてと、休憩したら次の間に向かいますかね。果たしてどんな強敵が待っているのやら。


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