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第43話 ほう、連携ではなく合体技ですな。

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 2体のドラゴンがこちらに向かってくる。途中で木をなぎ倒しながら迫ってきている。ん? こいつら本当にドラゴンなのか? 小説などでは圧倒的な存在感を持っていてその威圧感はハンパないようなことが書かれていたが、ここにいるドラゴン2体には威圧感は感じない。ただの黒い大蜥蜴にしか見えない。でも、ジェミニいわく肉はとても美味しいらしい。肉が美味しいなら頂くのが礼儀というもの。この2体が本当にドラゴンなら経験値もかなりのはず。そうすると収納レベルも上がってくれるし、弱くて経験値が多い敵は大歓迎だ。私は別に強敵と戦いたいわけでは無いから。


「では、作戦会議です。まずはマーブル隊員は左のやつを。ジェミニ隊員は右のやつを仕留めて下さい。私はさらに奥にいる大物を仕留めたいと思います。こいつらが本当にブラックドラゴンなら素材もいいでしょうから一撃で仕留められるなら一撃で仕留めて下さい。ライムは革袋に避難していて下さい、君の出番はその後ですから。」


「ミャッ!」


「わかりましたです、腕がなるです!!」


「わかったー、隠れてる-。」


「あ、アイスさん。こいつらは間違いなくドラゴンです。ドラゴンの素材は血ですら高値で取引されているほど捨てるところがないそうです。ですので、倒したら即時回収してから、奥のデカいドラゴンに行った方がいいと思うです。」


「そうなんだ、ジェミニ、ありがとう。では作戦を変更して、2人が倒した後、回収してから奥のデカいのに向かいます。」


 2人が敬礼、1人が垂直跳びで応える。いつみてもこの仕草、可愛すぎてタマラン。では、どうにかなるとはいえ、油断は禁物。こちらも準備しますか。


「バーニィ起動。では、作戦開始!!」


「ミャア!」「突貫です!」


 2人は元気よく飛び出してきた。ドラゴンもそれに合わせて1体1の状態になる。流石にドラゴンというのだろうか? 見た目に騙されずに今まで調子に乗って暴れていた状況から一変して様子を窺っている。一方のマーブルとジェミニはかまわず突っ込んでいく。ドラゴンが爪や尻尾で攻撃をしても問題なく躱していく。しばらくドラゴンが攻撃していたが、マーブルもジェミニも飽きてきたのかあっさりと首を切断していた。ドラゴンたちは一撃も与えられること無く倒された。血がこれ以上流れないように切断面を凍らせてから収納に入れる。うん、問題なく入ったな。さてと、あとはあのデカいのが入るかどうかが問題かな。


 あっさりと2体のドラゴンを倒したマーブルとジェミニはこちらの肩に乗ってきたので、ねぎらいをこめてモフモフしていった。2人にとってはねぎらいかもしれないが、それ以上に何もしてない私へのねぎらい以外の何物でも無かった。モフモフ最高。さて、次はあのデカいやつだな。カムイちゃんが言うには3体が倒されたら一旦退くと言っていたが、退くそぶりがないことから、まだ1体はゴブリン達が戦っているのだろう。被害はできるだけないように祈っておく。では、あのデカいのを仕留めましょうか。


「残るのは向こうにいるデカいの1体です。あれだけデカいので普通にやればあちこちが傷だらけになってしまって非常に勿体ないです。ところで、ジェミニ、あの黒いデカいのは鱗と肉と血はたかく売れるのはわかっておりますが、他にも使えるのはあるかな?」


「はい、恐らくですが、角と牙も高く売れるです。頭ごと残れば最高ですが、倒すのが先決ですよね。」


「そうだね、私のバンカーでは首をスパッとは無理そうですし、流石にあれだとマーブルもジェミニも無理そうだね。とりあえず頭部はあきらめて、角と牙だけでも綺麗に頂くとしますか。」


「はいです。流石にあの大きさのドラゴンですと、わたしたちでも無理です。」


「よし、では、作戦を説明します。今回は試してみたい連係攻撃がありますので、私がマーブル隊員とジェミニ隊員にそれぞれ合図をします。マーブル隊員、あのドラゴンを覆うだけの風魔法は放てますか?威力は必要ありません。恐らく威力重視だと魔法の抵抗を受けます。あの手のタイプですと、弱めの魔法にはわざと喰らって力関係をハッキリさせようとしてきますから。威力よりも対流重視でいきたいと思いますが、できますか?」


「ミャッ!!」


 もちろん、できるよと言っているかのように力強い敬礼だ。でも、カワイイ。


「よろしい。次にジェミニ隊員ですが、私とマーブルの連携魔法であのデカブツの動きを止めます。その後で合図しますが、このくらいの石の大きさを角と牙の根元に放てますか?」


「もちろん、できるです! おまかせあれです!!」


「よし、それでは、改めてマーブル隊員、ジェミニ隊員、君たちは私の合図が出次第、それぞれ魔法を花って下さい。ライム隊員は今回も袋に避難していて下さい。」


 全員が敬礼でもって応える。よし、準備は完了だ。冥土の土産に連携では無く合体技を魅せてやりますか。では、偉そうにしているはた迷惑なデカブツ退治といきますか。ある程度の距離に近づくとデカブツが話しかけてくる。


「ほう、下僕とはいえブラックドラゴン達をこうもあっさり倒すとは、下等生物にしてはやりおる。」


「下等生物? その下等生物に好き勝手して『俺つえー』みたいな振る舞いをしているおたくは、更に下等な存在にしか見えませんが?」


「下等生物にしては骨がありそうだから、それに敬意を表してこのまま去ってやろうとしたが、気が変わった。」


「何をおっしゃいますやら。3体も倒されたからヤバイと思って本当は逃げたかったのでしょう、うん、わかりますよ。」


「とことん、舐めおって。そんなに死にたいならその願い叶えてやるわ。後悔するなよ。」


 デカブツは大きく吠えた、つもりのようだが、すでに水術の術中にはまっている。食糧事情でやむなくこちらを襲ってきているのなら、正々堂々戦うつもりだが、向こうはただの憂さ晴らしでしかなければ、正々堂々戦ってやる義理は無い。ということで、話をしている間に口の中を凍らせておいたので、声が出ていない。その間に周りを凍らせておく、というよりも水分を抜いている。


「な、なぜだ? なぜ咆哮が出ぬのだ? お主何かしたか?」


「ええ、しましたよ。弱いものいじめしか考えないゴミの存在のおたくにふさわしいやり方でね。」


「く、くそう、か、体が動かなくなっている、なぜだ?」


「それは、おたくが凍ってきているからですよ。ご安心下さい、凍死はしませんので。」


「き、貴様一体何者だ? 人間では無いな?」


「失礼ですね。どこにでもいる人間ですよ。魔力ないけどな(泣)。」


 デカブツは、思ってもいなかった状況にうろたえ出す。そうやってあがけばあがくほど事態は深刻になっているというのに。まあ、そうなってくれた方がこちらは楽ができるからありがたい。


「さてと、準備は整いました。覚悟はいいですか?」


「か、覚悟だと? どういうことだ?」


「どういうことも何も、おたくはこれから私達の素材となって生まれ変わってもらいます。そうすれば、みんなに感謝される存在になれますよ、よかったですね。」


「ふ、ふざけるな! 我はマスタードラゴンだぞ。貴様らは我の玩具に過ぎない下等生物だ。調子に乗るな!!」


「はいはい、言いたいことはそれだけですか? では、いきますか。マーブル隊員!!」


「ミャッ!!」


 マーブルが風魔法を放つと、デカブツをゆっくりと包み込んでいく。包み込むとあとは風がデカブツに対流していく。ある程度対流していくと、デカブツのあちこちが光り出した。不意に全身に喰らった雷に対処できずにマスタードラゴンの体が痺れている。


「ガ、ガッ」


 声も出せない状態になったデカブツに対して追撃を加えていく。


「よし、ジェミニ隊員、角と牙はお願いしますね。」


「了解です、喰らえです!!」


 ジェミニは土魔法を使えはするが、得意では無いので威力はそれほどでも無いが、逆に角と牙を極限まで抜けやすくしておけば、その分傷がつかずに折るというか、取り出すことができる。そう予想して作戦を立てたが、期待通りに角と牙の付け根に命中して根元から綺麗な状態で外すことができた。あとは、頭を吹っ飛ばして倒すだけだ。このころにはデカブツの痺れがとれてきたが、雷によるダメージはかなりのものだったみたいで息も絶え絶えだった。


「か、下等生物ごとき、が、こ、こしゃく、な、ま、真似を、、。」


「おお、お見事です。正直命乞いされたらどうしようかと正直あせりました。」


「な、舐める、な。こ、これ、くらい、の、き、傷で、き、貴様ら、をた、倒すのは、た、たやす、い。」


「そうですか、では、行きますよ。全開でぶっ飛ばす、バーニィバンカー!!」


 初めての全力でバンカーを下顎めがけて放っていく。流石に全開で放つと、自分自身が吹っ飛んだ。途中で水術でクッションをつくっておいたが、木にぶつかってしまい、止まったときかなり痛かった。幸いにも木が折れてくれたので傷は浅かったが、折れなかったらどれだけダメージを受けたことやら。デカブツを見てみると、少し吹っ飛んでいてひっくり返った状態だった。頭部は完全になかった。結構グロいな。


「ミャーーッ!!」「アイスさん!!」


 マーブル達が心配してこちらに飛びついてきた。


「ありがとう、マーブル、ジェミニ。大丈夫だよ。」


 うーん、いいモフモフ。さてと、回収しますか、って回収できるかな。かなりデカい。試してみると普通に収納できた。では、エーリッヒさん達は大丈夫かな? 行ってみますか。


「では、任務完了です。お疲れ様でした。これからゴブリンのみんなに合流します。」


「ミャッ!」


「了解です! ゴブリンのみんなはこっちです!!」


「みんなのところにいくー。」


 ジェミニの案内で残りの1体のところへ行くと、まだ戦闘は続いていた。ゴブリン達は多少の傷を負ってはいるが、それでもブラックドラゴンを圧倒している。役割分担や連携が上手くいっている。見事としか言いようがない。休憩も兼ねて、大人しく観戦しておく。


 しばらく様子を見ていると、ブラックドラゴンが弱りだしてきた。その隙を見逃す3人では無い。エーリッヒさんが自部隊に大きく広がった傷口に魔法をぶつけると、その傷口に射撃部隊がしっかりと攻撃を当てていく最後に近接部隊が追撃をかけて、のこったハインツさんが渾身の突きをドラゴンに決めて仕留めた。


 ドラゴンを倒したゴブリンのみなさんは、しばらくは疲労が大きく息を整えていたが、ある程度落ち着いてくると、こちらに気付いた。


「おお、アイスさん。無事だったか? というか、もう倒していたのか。相変わらず凄ぇな。」


「いえ、ハインツさん始め皆さんの連携本当にお見事でした。惚れ惚れするくらい見事に連携が取れていましたね。しかも通常じゃ、あの装備だとまともにダメージを与えられないと思うのですが、それでも倒してしまうのですから。」


「でも、これでドラゴンの素材が手に入ったわけだから、火力も上がるよな。楽しみだぜ。」


「そうですね。でも、加工が大変と聞きましたが、それは大丈夫ですか?」


「そこはゆっくりやっていけば大丈夫じゃないかな。普通はこんなドラゴン出てこないからな。」


「確かにそうですね。」


 ハインツさんと話していると、エーリッヒさんとエルヴィンさんがこちらにやってきた。


「おお、アイスさん、そっちも任務が完了したようだな。」


「はい、エーリッヒさんお疲れ様でした。」


「よし、ムラに戻るぞ!!」


「おーっ!!」


 帰りの道中で話を聞いたが、最初はやはりほとんど傷を付けられなくて大変だったそうだ。そのため、ブラックドラゴンがこちらを舐めていて、攻撃が緩かったのが幸いしたらしく、ある程度ダメージを喰らいだしたところで本気になったそうだが、時すでに遅く、ああいった感じになったらしい。怪我人こそ何人か出てきたが、死者はおろか、重傷者も出なかったそうだ。これはオークリーダー以上の皮を使った防具のおかげだそう。破損もなく今後も問題なく使えるそうだ。ドラゴンの死骸を台にのせて引っ張っていた。手伝いを申し出ると、気持ちはありがたいが、と断られた。自分たちで運びたいのだそうだ。


 ムラに戻ると、総出で出迎えられた。カムイちゃん達偵察組がすでにある程度伝えていたらしい。もちろん今日も宴会だ。しかも今回はドラゴンの肉だ。折角なので、こちらでもドラゴンの肉を提供する。最初はゴブリンの皆さんは貴重だし申し訳ないからと断っていたが、こちらが家族であることを強調するとしぶしぶこちらの提案を呑んでくれて、提供させてもらうことになった。こちらが提供するのはブラックドラゴンの肉1体の半分とマスタードラゴンの肉10分の1体だ。10分の1体ということで、ケチったと思うかも知れないが、量的にはこれでもブラックドラゴン1体丸々と同じ量なのだ。


 宴会は大盛り上がりだった。マーブル達は子供達に囲まれて一緒に遊んでいたし、ライムは準備から片付けまで大活躍だった。ライムがいなければ、こんなにあっさりと準備も片付けも終わらなかっただろう。ライムこそ影の功労者だろう。


 図らずも2日連続で宴会となってしまったが、これはこれで楽しかった。マーブル達も楽しんでくれたみたいだ。宴会も終わって家に戻り、いつものように洗濯と風呂と着替えを済ませて床に就く。いろいろと疲れたが心地よい疲れだ。マーブル達もかなり眠そうだ。


「おやすみ、マーブル、ジェミニ、ライム。」


 よほど疲れていたのか、返事がない状態だった。まあ、こんな日もあるよね。今日も一日ありがとう、明日もよろしくね。そう思いながら眠っていた。
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