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第25話 ほう、呼び出しですか。面倒ですねぇ。

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 街に入ってまっすぐ冒険者ギルドを目指す。といっても大物があるので裏口に向かう。裏口に向かうといつものオッサンがいた。


「おう、今日もあの植物か。数えるから出してくれ。」


「はい、こちらです。」


 当たり前のようにスガープラントを出していく。


「・・・お前さん、荷台があるとはいえ、それだけ多くのスガープラントを毎回持ってきているが、自分で引いてきているんだろ? 体、しんどくないか?」


「傍目から見たら、かなり重そうですよね。でもスキルで工夫しているからほとんど重量を感じないんですよ。」


「まじか。とりあえず確認しておくか。・・・確かに10個だ。昨日のやつもそうだが、今日のやつもデカいし質もかなりいいな。ほれ、木札だ。ニーナにそれを見せてくれ。」


「ありがとうございます。ところで、魔物も狩ったのですが、ついでに解体してもらっていいですかね?」


「おお解体か、いいぞ。そこに出してくれ。」


 他の職員数名がスガープラントを回収していき、その場所に先程狩ったオークやゴブリン、グラスウルフ達を置いていく。オッサンだけでなく周りの職員も唖然とする。


「おいおい、その荷台どれだけ入るんだよ、、、。」


「そこは企業秘密ということで。」


「企業秘密? 企業って何だ? まあいい。それでこれらは全部買取でいいか?」


「はい、買取でお願いします。」


「討伐報告の木札は出してやるが、この数だと査定は今日中は無理だから明日でいいか?」


「問題ないです。お手数ですがお願いしますね。」


「わかった。とりあえず、ゴブリン5体とグラスウルフ7体、オークは4体確認した。では、これが木札だ。これもニーナに渡してくれ。面倒だが魔物の査定額はエリルに伝えておくからクエ受注のときに話があるだろう。」


「ありがとうございます。では報告してきます。」


 ソリを馬車置き場に置いて、ギルドの通常入り口に入り、手続き窓口に向かう。ニーナさんがいた。


「あ、アイスさん、クエストの報告ですか?」


「ニーナさん、お疲れ様です。達成報告です。」


「はい、確認しますね。ギルドカードとボマードさんから受け取った木札を出してください。」


 あのオッサン、ボマードっていうのか。とか思いながらカードと木札と常駐依頼の薬草をニーナさんに渡す。


「はい、ではこれがカードで、これが木札で、あとは薬草10束です。確認してください。」


「では確認しますね。最初に薬草を確認します。確かに10束です。内容と中身は、と、いつもながら状態がかなりいいですし、全部薬草ですね。次に木札ですが、まずはスガープラントは、と、10個の納品を確認しました。状態は最良と書かれています。もう1枚ありますね。こちらの方は、、、、え? ゴブリン5体とグラスウルフ7体とオーク4体ですか? アイスさん今日Eランクに昇格したばかりですよね? しかもマーブルちゃんがいるとはいえパーティを組んでいないんですよね?」


「はい、その通りですが、私は魔の大森林出身なので、この位の魔物でしたら大丈夫ですね。マーブルもいますしね。」


 そう言いながらマーブルを撫でる。マーブルも気持ちよさそうに「ニャン」と鳴く。


「はぁ、マーブルちゃん可愛いです。うらやましい。ではなくて、ゴブリン5体はともかく、グラスウルフ7体ですとEランクの冒険者個人では厳しいんですよ。しかも無傷ですし。」


「そうなんですか?」


「そうなんですよ。それはともかくとして、アイスさんは常駐依頼しか受注されてませんので、申し訳ありませんが、薬草10束とゴブリン5体の分しか評価対象になりませんが、よろしいですか? 本来ならグラスウルフの集団やオークも評価対象になるんですけど、受注依頼を受けていないと評価の対象にならないんですよ。」


「そうですか。それは構いませんよ。ついでに倒しただけなので。」


「ついでで集団のグラスウルフやオークは倒せるものじゃないんですけどね。ただ、評価の対象にはなりませんが、ギルドから報奨金は出されます。依頼ではないのでわずかですけどね。」


「それでもかまいません。素材の買取が目当てですので。」


「わかりました。では集計いたします。薬草が10束で銀貨3枚、ゴブリン5体で銀貨2枚と銅貨5枚、スガープラント10個で金貨6枚ですが、スガープラントについては最良の評価ですので2枚上乗せで金貨8枚の合計が金貨8枚と銀貨7枚と銅貨5枚となります。報奨金は少ないですが、グラスウルフとオークの討伐で銀貨2枚です。これが木札です。これをいつもの受取窓口へ持っていってください。」


「ありがとうございます。あ、ニーナさん。おすすめの防具やってあります?」


「防具やですか? 武器やではなく?」


「武器は職業の関係で通常のやつって使いこなせないんですよ(泣)。」


「そ、そうでしたね。防具屋ですと、大通りから少し離れたところに革専門の職人がやっているところがあります。金属製品でしたらその革職人さんの店の2軒隣にありますよ。簡単な地図を書きますね。」


「ありがとうございます。助かります。」


「いえいえ、気に入ったものが見つかるといいですね。」


 受注窓口を離れて受取窓口へ向かう。受取窓口で木札を渡して報酬をもらうと、窓口の職員から思ってもみなかったことを言われた。


「あ、アイスさん。ギルド長が来て欲しいと言っておりました。」


「ギルド長が? 何の用でしょうかね。」


「さあ、アイスさんが来たらギルド長のところに来て欲しいとしか言われてませんので。ギルド長は2階のギルド長室にいます。こちらの職員が案内しますね。」


「わかりました。では、お願いします。」


「では、こちらです。ついてきてください。」


 案内されるがままに2階のギルド長室に向かう。階段は上だけでなく下にもある。地下室があるのだろう。2階へと上がると、さらに上への階段がある。2階がギルド長室ということは、3階はギルド職員の宿舎みたいなものがあるのだろう。2階もなかなかの広さだった。1階とは違い人はおらず長い廊下が一直線にあり、それぞれドアが左右に並んでいた。一番奥まで進むとそこがギルド長室と書かれたプレートがドアの上方に貼ってあった。


「ギルド長、アイスさんをお連れしました。」


「おお、来ましたか。入ってもらってください。」


「失礼します。」


 ギルド職員に案内されてギルド長室に入る。かなりの大きさっぽいが、部屋の大半は棚のようなものが占めていて事務処理用の机と少し大きめの机と椅子があるだけの簡素なものだった。


「イルムさん、案内ご苦労様。」


「はい、では失礼します。」


 案内してくれた職員さんが部屋を出る。


「アイスさん、とりあえずこちらに座ってください。」


「はい、では失礼して。」


 とりあえず勧められた場所に座る。ギルド長は女の人か。かなりの美人だな。これで男だったら怖い。っとそれよりも用件が気になる。


「改めまして、私はギルド長のアイシャと申します。突然お呼び出しして申し訳ありませんね。」


「いえ、Eランク冒険者のアイスと申します。肩に乗っている猫はマーブルです。」


「ミャー。」


「あらあら、猫ちゃんもご丁寧に。マーブルちゃんと言うのね。」


 ギルド長の目尻が下がる。恐るべし、マーブルの魅力。


「っと、今回あなたを呼んだのは、いくつか聞いておきたいことがあるからなの。」


「聞きたいことですか? とりあえず答えられることならお答えしますが。」


「そんなに構えなくてもいいですよ。最初に、あなたは魔の大森林出身だと聞いているけど本当ですか? 魔の大森林は人が生活するのが大変なほど魔物にあふれているのだけど。ひょっとしたら転移者か何か? どうしても答えられないのであれば、答えなくてもいいのだけど。」


「別に隠しているわけでは無いのでお答えしますと、私は転移者ではなく転生者です。前世でいつの間にか死んでいて、気がついたらここに飛ばされた次第なので、どうやってここに転生したのかは不明です。転生先が魔の大森林でして、そこで数ヶ月生活しておりましたので、魔の大森林出身というのは間違いないです。」


「そうだったのですか。転移者ではなく転生者ですか。どちらにせよこのことは秘密にしておきます。知られると何かと面倒事が起きますので気をつけてくださいね。それで、この事を知っているのは他にいらっしゃるのですか?」


「南門にいるモウキさんは一発で見抜きましたね。彼も他の人には言わないと言っておりましたが。」


「なるほど。彼も知っているのですか。彼ほどの実力者なら知っていても不思議ではないし、彼が黙っているというのであれば黙っているのでしょうね。また、彼が警戒してないところを見ると、あなたは問題ない人物のようですね。」


「モウキさんって、そんなに凄い人物なのですか?」


「ええ、彼はこの街の守備隊の副隊長を務めていますが、実力でいうとこの街一番といえるでしょうね。もちろんこの私よりも強いです。本来はこの街の領主、いえタンヌ王国の親衛隊長に推薦されるほどの実力の持ち主ですが、本人はそういったものを嫌がっており、なんとかお願いして副隊長を務めてもらっています。」


 モウキさんってそれほど凄いのか。ただ者ではないと思っていたけど。


「それはそうと、次に聞きたいことは、ポーターという職業についてです。ポーターは運び屋や荷物持ちといった役割が強いのですが、職業として現れたのは今までにないことです。これも答えたくなければ答えなくてもいいのですが、どういうステータスでなれるものなのですか?」


「ああ、職業ですか。これは普通の人はまずなれません。というのは言える範囲で言いますと、私のステータスって魔力0の器用さ5といった、普通の人ではありえないステータスなんですよ。恐らく通常の職業に就けないものへの救済措置ではないかと考えています。現に、登録するときポーターしか選ぶものがありませんでしたし。まあ、レベルも上がりやすいですし、重量軽減という便利なスキルも手に入るので悪いことばかりではない、と信じたいですね。」


 とはいえ、アマさんがこの職は私にしか就けないと言っていたのでこれ以上被害者はでないでしょう。でないよね? ジジイ、信じているからな!


「そうだったのですね。一応ギルド内で情報を共有しますがよろしいですか?」


「大丈夫だと思います。恐らく条件は魔力0だと思います。魔力0なんてそうそういないと思いますが。」


「そうですね。とはいえ万が一に備える必要もあります。で、次なんですけれど、マーブルちゃんって実は災厄級の魔物だったりします?」


「マーブルは元はデモニックヘルキャットという種類の魔物みたいです。当時何も知らなかったので、瀕死の猫を治療したところ、こうして懐いてくれたので飼い猫として一緒にいてもらっています。魔の森でかなりヤバイ敵とか出てきましたけど、この姿のまま戦ってましたよ。まあ、この姿の状態でもかなり強いことは確かです。それが気に入らなければこの街を出ていきますが? この世界で最初に会った人が人なので、この国には正直それほど期待はしておりませんので。ぶっちゃけ、マーブルとずっと一緒にいられれば別にそれでいいですしね。最悪この国、いや、この世界と敵対してでもマーブルとはずっと一緒にいますよ。」


「え? デ、デモニックヘルキャットですか? 災厄級とは思っていましたが、まさかそれほどのクラスだったのですか? デモニックヘルキャットクラスの魔物ですとプライドが高いのでこんなに可愛い猫になってまで人に懐くことはありえないんです。」


「そうなんですか? もし鑑定をお持ちでしたら鑑定してみてください。私は少し訳ありなので隠している部分はありますが、マーブルは大丈夫だと思いますよ。また、私の隠蔽部分を破って鑑定はやめておいた方がいいですよ。」


「そうですか、お言葉に甘えて鑑定させていただきます。アイスさんも鑑定持ちでしたら私を鑑定してくれて構いません。不公平ですからね。」


 こちらもアイシャさんを鑑定するとしますか。


-------------------------------------

 名前  < アイシャ >  種族  【 ハイ・エルフ 】

 年齢  < 278 >   性別  ♀

 レベル  65      職業  【 グランドスペルアーチャー 】

 腕力  17

 体力  17

 器用  25

 知力  25

 魔力  23

 幸運  18

 [スキル] 弓術 極、短剣術 9、火魔術 10、水魔術 10

       風魔術 10、光魔術 10、精霊術 極、投擲術 10

       気配探知 8、罠探知 7、罠解除 8、身体強化 8

       魔力強化 10、統率 6

 [称号] ギルドマスター、エルフを統べるもの、究極狙撃手、精霊の親友

      ドラゴンバスター

-------------------------------------


 エルフきたーーーーーーーーーーーーーーー!! ってか何じゃこのステータス。と驚いていると、アイシャさんの顔色が青ざめていた。あ、これ隠蔽破ったな。だからやめておいた方がいいって言ったのに。まあ、自業自得だしょうがない。


「あ、あのアイスさん? マーブルちゃんについては大丈夫そうだとわかりましたが、アイスさんのステータスは何ですか? 水術ですか? 水魔術ではなくて?」


 あー、スキルとステータスだけは破れたんだ。称号まで到達しなくてよかったですね。


「はい、水術です。魔力はないので(泣)。水を思い通りに操ります。水を温めたり凍らせたりもできますよ。あと、周りの水分を利用して気配探知などもできます。ギルドの職員さんに私がいつも大きな荷台を引っ張っていることを聞いたと思いますが、あの荷台は接地面を互いに凍らせているので、動かすのにも力はそれほど使いません。」


「そ、そうですか。とりあえずお2人についてはわかりました。マーブルちゃんを別にどうこうしようとは思いませんので安心してください。」


「そうですか。聞きたいことはそれだけでしょうか?」


「あ、まだ聞きたいことはあるのですが、時間も時間なので申し訳ありませんが、明日もギルドに顔を出しては頂けないでしょうか?」


「明日もですか? わかりました。で、いつ頃伺えばいいのでしょうか?」


「明日は一日中ギルドにいますので、いつでもかまいません。」


「そうですか。では、明日また改めて伺います。」


「では、お待ちしてますね。」


「では、失礼します。」


 そう言ってギルド長室を出た。明日も呼び出しか。面倒なことにならなければいいのだけど。まあ、面倒ならこの街を出ればいいか。定住する気はないし。


 そんなことを考えながらホーク亭に戻り食事などを済ませてねぐらに(以下略)してから、床に就く。


「お休み、マーブル。」


「ニャン。」


 いろんな意味で疲れたので眠かった。マーブルはもっと眠たそうだった。睡魔に呆気なく負けてこの日は終わったのだった。
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