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第174話 さてと、待望の食事会です。
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前回のあらすじ:追加のおかわりは非常に素晴らしかったです。
フロストの町へと戻ったけど、何故か先に戻っていた領民達が出迎えてくれていた。いや、そういうのはいいから、メシの支度をしよう、メシの支度を。あ、先頭にいるのは陛下とリトン公爵か、あの人達は調理は無理だから暇なんだな、って、あんた達仕事あるでしょ? なんでここにおるん? そんなことを思っていると陛下が話しかけてきた。
「おう、侯爵、討伐任務ご苦労だった。で、どうだ? タップリと手に入ったか?」
「タップリと手に入ったと思いますよ。何せ自己修復持ちでしたからね。」
「おお、そうか! で、今回はどうするんだ?」
「もちろん、各グループでそれぞれ倒したのですから、肉はそれぞれのグループで出してくれれば良いかと思います。やはり自分達で狩った肉はどんなものであれ、いつもより美味しく感じるものです。」
「そうだな、で、素材はどうするんだ?」
「そちらも各グループで倒したのですから、グループごとに管理ですね。帝国の精鋭達で狩った素材は、帝国で管理してください。ただ、あくまで帝国内で流通させた方がいいかとは思いますが。」
「そこはリトン宰相に任せるから大丈夫だろう。」
「お任せ下さい。しかし、これほど大量に貴重な素材が手に入るとは思いもしませんでしたが。」
「・・・正直もっと来るかと思ったんですがね、、、。」
「ミャア!」「戦い足りないです!」「ピー!」
「今回はみんなは補助がメインだったからね、それは仕方がないかな。何せあれだけしか来なかったから。」
「・・・フロスト公爵、あれだけって、普通はあの規模で来たら国軍全体で対処しなきゃならん規模だぞ。」
「リトン公爵、そこは慣れですよ。でも、帝国軍として良い経験にはなったと思いますが、どうですかね?」
「そうだな。疲労困憊ではあったが、自分たちがこれだけ戦えるようになったと嬉しそうにしていたぞ。もちろん国を預かる身としては、頼もしいことこの上ないな。」
「そうだな、宰相。これからも、ここでの選抜訓練は続けていくべきだよな?」
「ですな、陛下。まだまだ続けていくべきでしょうな。・・・いっそのこと、こちらに執務室を。」
「それは謹んでお断り致します。そろそろ帝都で政務してくださいよ。」
「侯爵よ、それは無理な相談だ!!」
「フロスト公爵、陛下がこうおっしゃっておるからな、諦めろ。」
「メシ目当てなだけでしょうに、、、。しれっとそばに控えている料理長、頼みますよ。」
「善処する。」
「善処かよ、、、。」
まだしばらくは、こっちにメシをたかりに来るのか、、、と多少途方に暮れていると、大声で呼びかける声が聞こえてきた。
「おーい、アイスさん!! 礼のブツはまだか? みんな手ぐすね引いて待ってるぜ! って、これは陛下、失礼致しました。」
「いや、構わねぇさ。お前ぇさんらも、さっさと調理したくてたまんねぇだろうからな、ガッハッハ!」
「その通りなんでさ。ご領主が来てくれないと、俺らはすることがないんでね。」
「領民達から分けてもらえなかったの?」
「もちろん、分けてくれようとしたけどな、断ったよ! 自分たちで使いたいだろうからな!」
「いや、そこは少し分けてもらえよ!」
「そんなこと言ってもよ、一番余裕があるのは、ご領主であるアイスさん達じゃねぇか! ここは、一番余裕がある人からもらうのが筋ってもんだ!!」
「・・・まったく、、、。」
「いいじゃねぇか、侯爵、ケチくさいことを言わずたまには分けてやってもよ。」
「いや、基本的にいつもは私が分けているのですが、、、。」
「どうせ、在庫はまだタップリとあるんだろ? 細けぇことは気にすんな!!」
大声で呼んだのは、ほぼ毎日通っている屋台のおっちゃんだった。名前聞いてないけど、おっちゃんで通じるので問題ないね。ちなみに、この町で屋台をやっているのは、今いるおっちゃんを含めて7名。それぞれ扱っている品が違うので、肉を扱っていたら、肉のおっちゃんとかおば、、いや、おねぇさんとか、そんな感じで呼んでいる。基本扱う品はかぶらないからそんな呼び方でも全く問題ない。
ということで、引っ張られるように、いや、実際に引っ張られているか、屋台の方に連れてこられてしまった。屋台に到着すると、早速品物の催促だった。先程狩ってきた獲物を空間収納から出していく。肉を渡された屋台の面々は、大喜びで自分の屋台に戻り、調理をし始めた。
さて、私も準備しますか、と思って領主館へと戻ろうとしたら、カット男爵に呼び止められた。
「あれ? カット男爵、ご無沙汰です。どうなさいました?」
「フロスト侯爵、私は陛下の使いで来ました。ということで、陛下からの伝言です、『お前さん、今日は料理禁止な。』、以上です。」
「はい?」
「『料理禁止』だそうです。陛下が仰るには、『今日は、領内のみんなの様子を見てやれ。』だそうです。」
「一応聞いておくけど、その言葉って絶対陛下からじゃないよね? リトン公爵だよね?」
「・・・その通りです、、、。やはり侯爵はわかってらっしゃいましたか。」
「いや、だって、あの陛下だよ? あの陛下がそんな気の利いた言葉言うわけないじゃん、、、。」
「・・・それはそうなんですが、口には出しませんが、陛下は帝国の民のことをいつも気にかけていらっしゃることは間違いないです。」
「そこは疑ってないよ。そうでなければ、あの3ば、いや3大臣を罷免してリトン公爵を宰相に就けたりしないでしょ。今まではそんな気配なかったけど。」
「ですな。今までとはうって変わってしまわれたのですが、何かあったのですか?」
「そこまではわかるわけないでしょ、、、。カット男爵ですらわからないんですから。」
実は陛下がリアル神さまで、最近ようやく力の一部が開放されたからなんて、言えないし、言ったところで信じてもらえないだろうから、知らんぷりしておこう。リトン公爵ですらまだ知らないんだから、、、。
「まあ、勅命なら仕方がない。今日はおとなしく町を見て回ることにするよ。」
「そうしてください。それともう一つ。」
「? まだ何かあるの?」
「これは、個人的なものですが、フロスト侯爵、ドラゴン討伐という貴重な機会を頂き、誠に感謝しております! 一緒に戦ったメンバーも侯爵にお礼を言って欲しいと言われましたし、私個人としても、侯爵にどうしても伝えたくて!」
「それは、みんなの要望があったからだね。みんなにお礼を伝えるといいよ。」
「しかし、侯爵が首を縦に振らなければ、それは叶いませんでした。やはり侯爵にお礼を申し上げるべきなのです!」
「そこまで言うのであれば、素直に受け取っておくよ。ところで、カット男爵も、かなり自身が付いたのではないですか?」
「ええ! 緑龍はまだ無理でしたが、ワイバーンやブラックワイバーンは個人で仕留められるようになりました!」
「おお、そこまでに! とはいえ、先日のヒドラに比べれば楽勝だったでしょ?」
「まあ、それを言われてしまうとそうなんですけどね。しかし、これで侯爵に近づいたと思いましたが、改めて実力差というものを痛感しましたね。他の者達も、侯爵やマーブル殿達の強さこそ知っていたつもりでしたが、予想以上だったと驚いておりましたよ。侯爵、やはり才能の差、なんですかね、、、。」
「そんなことはないですよ。私にしろ、マーブルにしろ、最初はホーンラビット1体倒すのでも非常に苦労したものですよ。ジェミニはスタート地点から強かったと思いますけど、、、。」
「そうなんですね、正直信じられない気持ちで一杯ですが、、、。そういえば、フロストの町にいるあのウサギ達はなんなんですか!? あの子達、魔物でも最弱と名高いファーラビット達ですよね!? 何でファーラビット達が平然とドラゴンと戦ってるんですか? しかも倒してたし!?」
「訓練のたまものですね。ファーラビットだけでなく、ホーンラビットやベリーラビット達もヴォーパルバニーと呼ばれる野ウサギ族から直に鍛えてもらっているし、領民達と一緒に戦ったり模擬戦したりで日々精進してましたからね。」
「なるほど、確かに。私達もたまに、ここの訓練所にお邪魔して訓練してもらっておりましたが、効率、といいますか、強くなった実感がもの凄くありましたね。」
「それはよかったです。」
「それだけでなく、訓練後の食事も非常に美味かったですし、何よりビールが最高ですね! あ、私はジェミニビール派です!」
「いや、それは聞いてないから、、、。」
そんな話をしてから、カット男爵は陛下の所へと戻っていった。私は言われたとおりに領内を見て回った。マーブル達は私の定位置でちょこんと座っていた。最初に向かったのは冒険者ギルドだ。一番最初にここに来たのは、重傷者が一番多いからだった。冒険者ギルドに入ると、普段食堂兼酒場として使用しているスペースに怪我人が横たわっていた。
彼らは領内を護る任務ではなく、名声を求めてやって来ているメンバーなので、ここで養生しているのだ。とはいえ、彼らは一通りライムなどの治療部隊の回復魔法を受けているので、命に別状はない状態まで回復はしている。ついでにまだ回復しきっていない冒険者達が数名いたので、ライムに回復魔法をかけてもらった。ライムはシスター帽を装着して嬉しそうに回復魔法をかける。動けるようになった冒険者はライムを拝んでいた。結構慣れてきたな、この光景に。
ちなみに、領民達や帝国兵達はアマデウス教会で治療を受けている。冒険者を否定する気持ちはさらさらないけど、冒険者は基本私の命令に従う必要がない。領民達は基本私の命令を従わなければならない立場だ。そういう普段の制約がある分、治療に関しては最大限こちらで提供する義務があるが、冒険者達はそういう普段の制約がない。そのためこういった扱いになっている。まあ、領民達はそれほど被害がないので、実際アマデウス教会で治療を受けている大部分は帝国の精兵なんだけどね。
その後は、差し入れとしてワイバーンと緑龍の肉を多少ギルド長に渡しておいた。
冒険者ギルドを出た私達は、次にアマデウス教会へと向かったが、怪我人は治療が完了しており、特にすることはなく顔出し程度になった。
アマデウス教会を出て、帝国兵が集まっている場所に行く途中、ウサギ広場でうどんを打っている戦姫と、それをジーッと見ている野郎共の群れが、、、。レオが飛びついて来たのでキャッチしてモフモフしながら話を聞くと、戦姫のうどん打ちは観戦希望が殺到したため、抽選で選ばれた者だけ観戦許可を出したらしい。道理で戦姫がうどん打ちをしているにも関わらず、この程度の人混みで済んでいるわけだ。いや、それでもこの人数だから、正直ウンザリだけどね。
うどん打ちに夢中なので声をかけるのもどうかと思い、この場を後にして、帝国兵の集まっている場所へと移動すると、一心不乱に調理をしている光景がそこにはあった。時折怨嗟の声が所々で聞こえていたけど、恐らく気のせいだろう。観戦希望の抽選に漏れてしまった腹いせでは断じてないと信じたい。
最後は領民達の集まっている場所へと行く。領民達は沢山のドラゴン肉を嬉しそうに調理していた。各家族やグループごとに捕まっては、やれアドバイスやら、新しいやり方やら聞いて来たので、答えられるだけは答えておいた。いくら以前いた世界の記憶があるといっても、所詮独り者の調理する食事なんだよ。そこまでレシピなんてあるわけが無いのだ。全く頼ってこないのも嫌だけど、ここまで頼られてしまっても困るのが正直なところ。
そんなこんなで、みんなの準備も整ったので、これから食事会である。一応材料の用意も、調理も各自で行ってもらったけど、実際食べるのは別にどれを食べてもかまわない。ドラゴン肉祭りなのだから。
さあ、一通り頂くとしましょうかね。
-------------------------
アバロン帝国斥候「申し上げます、フロスト領に侵攻してきたドラゴンがいなくなりました。」
アバロン帝国大使「な、なに!? もういなくなっただと!?」
アバロン帝国斥候「はっ! これで道中の危険はなくなりました。」
アバロン帝国大使「そうか、では、急いで向かうとするか。」
アバロン帝国斥候「急がれますと、復興前に到着してしまいますが。」
アバロン帝国大使「何、それが狙い目よ。」
彼らはフロストの町が無傷であることを知らない、、、。
フロストの町へと戻ったけど、何故か先に戻っていた領民達が出迎えてくれていた。いや、そういうのはいいから、メシの支度をしよう、メシの支度を。あ、先頭にいるのは陛下とリトン公爵か、あの人達は調理は無理だから暇なんだな、って、あんた達仕事あるでしょ? なんでここにおるん? そんなことを思っていると陛下が話しかけてきた。
「おう、侯爵、討伐任務ご苦労だった。で、どうだ? タップリと手に入ったか?」
「タップリと手に入ったと思いますよ。何せ自己修復持ちでしたからね。」
「おお、そうか! で、今回はどうするんだ?」
「もちろん、各グループでそれぞれ倒したのですから、肉はそれぞれのグループで出してくれれば良いかと思います。やはり自分達で狩った肉はどんなものであれ、いつもより美味しく感じるものです。」
「そうだな、で、素材はどうするんだ?」
「そちらも各グループで倒したのですから、グループごとに管理ですね。帝国の精鋭達で狩った素材は、帝国で管理してください。ただ、あくまで帝国内で流通させた方がいいかとは思いますが。」
「そこはリトン宰相に任せるから大丈夫だろう。」
「お任せ下さい。しかし、これほど大量に貴重な素材が手に入るとは思いもしませんでしたが。」
「・・・正直もっと来るかと思ったんですがね、、、。」
「ミャア!」「戦い足りないです!」「ピー!」
「今回はみんなは補助がメインだったからね、それは仕方がないかな。何せあれだけしか来なかったから。」
「・・・フロスト公爵、あれだけって、普通はあの規模で来たら国軍全体で対処しなきゃならん規模だぞ。」
「リトン公爵、そこは慣れですよ。でも、帝国軍として良い経験にはなったと思いますが、どうですかね?」
「そうだな。疲労困憊ではあったが、自分たちがこれだけ戦えるようになったと嬉しそうにしていたぞ。もちろん国を預かる身としては、頼もしいことこの上ないな。」
「そうだな、宰相。これからも、ここでの選抜訓練は続けていくべきだよな?」
「ですな、陛下。まだまだ続けていくべきでしょうな。・・・いっそのこと、こちらに執務室を。」
「それは謹んでお断り致します。そろそろ帝都で政務してくださいよ。」
「侯爵よ、それは無理な相談だ!!」
「フロスト公爵、陛下がこうおっしゃっておるからな、諦めろ。」
「メシ目当てなだけでしょうに、、、。しれっとそばに控えている料理長、頼みますよ。」
「善処する。」
「善処かよ、、、。」
まだしばらくは、こっちにメシをたかりに来るのか、、、と多少途方に暮れていると、大声で呼びかける声が聞こえてきた。
「おーい、アイスさん!! 礼のブツはまだか? みんな手ぐすね引いて待ってるぜ! って、これは陛下、失礼致しました。」
「いや、構わねぇさ。お前ぇさんらも、さっさと調理したくてたまんねぇだろうからな、ガッハッハ!」
「その通りなんでさ。ご領主が来てくれないと、俺らはすることがないんでね。」
「領民達から分けてもらえなかったの?」
「もちろん、分けてくれようとしたけどな、断ったよ! 自分たちで使いたいだろうからな!」
「いや、そこは少し分けてもらえよ!」
「そんなこと言ってもよ、一番余裕があるのは、ご領主であるアイスさん達じゃねぇか! ここは、一番余裕がある人からもらうのが筋ってもんだ!!」
「・・・まったく、、、。」
「いいじゃねぇか、侯爵、ケチくさいことを言わずたまには分けてやってもよ。」
「いや、基本的にいつもは私が分けているのですが、、、。」
「どうせ、在庫はまだタップリとあるんだろ? 細けぇことは気にすんな!!」
大声で呼んだのは、ほぼ毎日通っている屋台のおっちゃんだった。名前聞いてないけど、おっちゃんで通じるので問題ないね。ちなみに、この町で屋台をやっているのは、今いるおっちゃんを含めて7名。それぞれ扱っている品が違うので、肉を扱っていたら、肉のおっちゃんとかおば、、いや、おねぇさんとか、そんな感じで呼んでいる。基本扱う品はかぶらないからそんな呼び方でも全く問題ない。
ということで、引っ張られるように、いや、実際に引っ張られているか、屋台の方に連れてこられてしまった。屋台に到着すると、早速品物の催促だった。先程狩ってきた獲物を空間収納から出していく。肉を渡された屋台の面々は、大喜びで自分の屋台に戻り、調理をし始めた。
さて、私も準備しますか、と思って領主館へと戻ろうとしたら、カット男爵に呼び止められた。
「あれ? カット男爵、ご無沙汰です。どうなさいました?」
「フロスト侯爵、私は陛下の使いで来ました。ということで、陛下からの伝言です、『お前さん、今日は料理禁止な。』、以上です。」
「はい?」
「『料理禁止』だそうです。陛下が仰るには、『今日は、領内のみんなの様子を見てやれ。』だそうです。」
「一応聞いておくけど、その言葉って絶対陛下からじゃないよね? リトン公爵だよね?」
「・・・その通りです、、、。やはり侯爵はわかってらっしゃいましたか。」
「いや、だって、あの陛下だよ? あの陛下がそんな気の利いた言葉言うわけないじゃん、、、。」
「・・・それはそうなんですが、口には出しませんが、陛下は帝国の民のことをいつも気にかけていらっしゃることは間違いないです。」
「そこは疑ってないよ。そうでなければ、あの3ば、いや3大臣を罷免してリトン公爵を宰相に就けたりしないでしょ。今まではそんな気配なかったけど。」
「ですな。今までとはうって変わってしまわれたのですが、何かあったのですか?」
「そこまではわかるわけないでしょ、、、。カット男爵ですらわからないんですから。」
実は陛下がリアル神さまで、最近ようやく力の一部が開放されたからなんて、言えないし、言ったところで信じてもらえないだろうから、知らんぷりしておこう。リトン公爵ですらまだ知らないんだから、、、。
「まあ、勅命なら仕方がない。今日はおとなしく町を見て回ることにするよ。」
「そうしてください。それともう一つ。」
「? まだ何かあるの?」
「これは、個人的なものですが、フロスト侯爵、ドラゴン討伐という貴重な機会を頂き、誠に感謝しております! 一緒に戦ったメンバーも侯爵にお礼を言って欲しいと言われましたし、私個人としても、侯爵にどうしても伝えたくて!」
「それは、みんなの要望があったからだね。みんなにお礼を伝えるといいよ。」
「しかし、侯爵が首を縦に振らなければ、それは叶いませんでした。やはり侯爵にお礼を申し上げるべきなのです!」
「そこまで言うのであれば、素直に受け取っておくよ。ところで、カット男爵も、かなり自身が付いたのではないですか?」
「ええ! 緑龍はまだ無理でしたが、ワイバーンやブラックワイバーンは個人で仕留められるようになりました!」
「おお、そこまでに! とはいえ、先日のヒドラに比べれば楽勝だったでしょ?」
「まあ、それを言われてしまうとそうなんですけどね。しかし、これで侯爵に近づいたと思いましたが、改めて実力差というものを痛感しましたね。他の者達も、侯爵やマーブル殿達の強さこそ知っていたつもりでしたが、予想以上だったと驚いておりましたよ。侯爵、やはり才能の差、なんですかね、、、。」
「そんなことはないですよ。私にしろ、マーブルにしろ、最初はホーンラビット1体倒すのでも非常に苦労したものですよ。ジェミニはスタート地点から強かったと思いますけど、、、。」
「そうなんですね、正直信じられない気持ちで一杯ですが、、、。そういえば、フロストの町にいるあのウサギ達はなんなんですか!? あの子達、魔物でも最弱と名高いファーラビット達ですよね!? 何でファーラビット達が平然とドラゴンと戦ってるんですか? しかも倒してたし!?」
「訓練のたまものですね。ファーラビットだけでなく、ホーンラビットやベリーラビット達もヴォーパルバニーと呼ばれる野ウサギ族から直に鍛えてもらっているし、領民達と一緒に戦ったり模擬戦したりで日々精進してましたからね。」
「なるほど、確かに。私達もたまに、ここの訓練所にお邪魔して訓練してもらっておりましたが、効率、といいますか、強くなった実感がもの凄くありましたね。」
「それはよかったです。」
「それだけでなく、訓練後の食事も非常に美味かったですし、何よりビールが最高ですね! あ、私はジェミニビール派です!」
「いや、それは聞いてないから、、、。」
そんな話をしてから、カット男爵は陛下の所へと戻っていった。私は言われたとおりに領内を見て回った。マーブル達は私の定位置でちょこんと座っていた。最初に向かったのは冒険者ギルドだ。一番最初にここに来たのは、重傷者が一番多いからだった。冒険者ギルドに入ると、普段食堂兼酒場として使用しているスペースに怪我人が横たわっていた。
彼らは領内を護る任務ではなく、名声を求めてやって来ているメンバーなので、ここで養生しているのだ。とはいえ、彼らは一通りライムなどの治療部隊の回復魔法を受けているので、命に別状はない状態まで回復はしている。ついでにまだ回復しきっていない冒険者達が数名いたので、ライムに回復魔法をかけてもらった。ライムはシスター帽を装着して嬉しそうに回復魔法をかける。動けるようになった冒険者はライムを拝んでいた。結構慣れてきたな、この光景に。
ちなみに、領民達や帝国兵達はアマデウス教会で治療を受けている。冒険者を否定する気持ちはさらさらないけど、冒険者は基本私の命令に従う必要がない。領民達は基本私の命令を従わなければならない立場だ。そういう普段の制約がある分、治療に関しては最大限こちらで提供する義務があるが、冒険者達はそういう普段の制約がない。そのためこういった扱いになっている。まあ、領民達はそれほど被害がないので、実際アマデウス教会で治療を受けている大部分は帝国の精兵なんだけどね。
その後は、差し入れとしてワイバーンと緑龍の肉を多少ギルド長に渡しておいた。
冒険者ギルドを出た私達は、次にアマデウス教会へと向かったが、怪我人は治療が完了しており、特にすることはなく顔出し程度になった。
アマデウス教会を出て、帝国兵が集まっている場所に行く途中、ウサギ広場でうどんを打っている戦姫と、それをジーッと見ている野郎共の群れが、、、。レオが飛びついて来たのでキャッチしてモフモフしながら話を聞くと、戦姫のうどん打ちは観戦希望が殺到したため、抽選で選ばれた者だけ観戦許可を出したらしい。道理で戦姫がうどん打ちをしているにも関わらず、この程度の人混みで済んでいるわけだ。いや、それでもこの人数だから、正直ウンザリだけどね。
うどん打ちに夢中なので声をかけるのもどうかと思い、この場を後にして、帝国兵の集まっている場所へと移動すると、一心不乱に調理をしている光景がそこにはあった。時折怨嗟の声が所々で聞こえていたけど、恐らく気のせいだろう。観戦希望の抽選に漏れてしまった腹いせでは断じてないと信じたい。
最後は領民達の集まっている場所へと行く。領民達は沢山のドラゴン肉を嬉しそうに調理していた。各家族やグループごとに捕まっては、やれアドバイスやら、新しいやり方やら聞いて来たので、答えられるだけは答えておいた。いくら以前いた世界の記憶があるといっても、所詮独り者の調理する食事なんだよ。そこまでレシピなんてあるわけが無いのだ。全く頼ってこないのも嫌だけど、ここまで頼られてしまっても困るのが正直なところ。
そんなこんなで、みんなの準備も整ったので、これから食事会である。一応材料の用意も、調理も各自で行ってもらったけど、実際食べるのは別にどれを食べてもかまわない。ドラゴン肉祭りなのだから。
さあ、一通り頂くとしましょうかね。
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アバロン帝国斥候「申し上げます、フロスト領に侵攻してきたドラゴンがいなくなりました。」
アバロン帝国大使「な、なに!? もういなくなっただと!?」
アバロン帝国斥候「はっ! これで道中の危険はなくなりました。」
アバロン帝国大使「そうか、では、急いで向かうとするか。」
アバロン帝国斥候「急がれますと、復興前に到着してしまいますが。」
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