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第169話 さてと、餌付けみたいになってしまったがダイジョブだろうか?
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前回のあらすじ:龍肉を食べて、みんな元気。
ドラゴン肉祭り、もとい、エンシェントドラゴンのグレイルと協定を結んでから3日が経過して、高級肉の興奮が冷めてきた頃、ガブリエルから連絡が来た。グレイル達がこちらに向かって来ているそうだ。畑用に拡張した川沿いまでは、ドラゴンの姿のままで問題ないことも伝えてあるので、川沿いの辺りで迎えのものを出すように伝えておいた。
とはいえ、正直いきなりの訪問なので、フロストの町からそこに向かえる人物は限られている、ということでウルヴ・オン・アウグストでのお出迎えが急遽決定し、アウグストに乗ったウルヴが出迎えに向かうことになり、久しぶりに全力疾走できるアウグストは大はしゃぎであった。でも、片道だけだし、帰りは徒歩だよ。後日、走り回れるように機会設けるから、今はそれだけで我慢してね。
しばらくして、ウルヴがグレイルを連れて来たと報告が来たので、アマデウス教会で面会することにした。場所は大会議室ではなく小会議室で。簡単な通商内容の話し合いなので、それで問題ない。こちらからは、トリトン陛下とリトン公爵、および、フェラー族長である。向こうはグレイルと、人化したお伴数人と、ちっちゃいドラゴンを1体連れて来ていた。
グレイルを見たトリトン陛下は、最初は何か見覚えがあるな程度の反応だったが、しばらくして思い出したらしく、グレイルに破顔を向けた。
「おお、誰かと思えば、お前さんかい! お前さんも族長になったんだなぁ!!」
「ん? お主、いえ、あなた様は、、、。我の気のせいかも知れぬが、随分と変わられた感じがするのだがそれは一体?」
「ん? ああ、そうだな。お前さんと初めて会ったときとは雰囲気が変わっただろう? 最近力が少し戻ってきたらしくてな、こっちが本来の姿だと思ってくれればいい。」
「ほう、不思議なこともあるもんだな。流石は、か「おっと、それ以上は勘弁な!」。うむ、承知した。」
何だかんだ言っても、流石は両者である、か。
それから一通り自己紹介も終わり、通商内容を詰める話し合いが設けられた。集落側から提示されたのは、やはり食料関係が圧倒的に多かったが、予想以上に少ないことに疑問を持ったのだが、やはり人化している状態の時は、基本小食なのだそうだ。とはいえ、集落には100人前後の龍族が住んでいるので、住むには最高の環境らしいが、食料関係だけは非常に厳しい状態らしいので、この話は渡りに船だったそう。
食料の交換条件として、ドラゴンの鱗や牙が定期的にこちらに渡されることが決まった。というのも、基本あの集落に住む龍族は、宝石などを蓄える習慣はないらしく、そういったものしか提供できないことを改めて伝えられたからだ。また、龍族の素材が貴重なものであり、取引に仕えることは承知していたが、悪用されるのを恐れていたので、適当に処分していたらしい。
集落での話し合いもまさにそれだったらしいが、そんなものがなくても、集落でも最強クラスの2体が、瞬時に倒されたとあっては、別に利用されようがされまいが同じだという結論にいたり、それと同時にいくら力関係がはっきりしているとはいえ、一方的にもらうのは誇りとして許されない部分もあったそう。ただ、条件として、今いる集落を襲う道具としての使用はしない、ということを念押ししてきた。そんなことで向こうの顔を立てられるのであればこれ以上面倒なことにはならなそうなので、承知することにした。こっちもそんなことに使う気は毛頭ないので問題ない。
また、それとは別に、フロストの町に襲撃に来るドラゴン、あるいは、龍族の集落を襲撃する冒険者の扱いについてだけど、私達にしても、集落を襲うメリットはないし、集落としてもフロスト領に攻め入るメリットは存在しないので、仮に来ても、それは知ったことではないので、殲滅してもかまわない、という事で一致。報復はしないということで話がついた。
このことを改めて向こうから念押ししてきた。グレイルもある程度抑えてはいるのだろうけど、どうしても抑えきれない部分もあるのだろう、そのときはゴメンナサイ無理でした、と遠回しに伝えてきている。もちろんこちらも同じようなことは起こるだろう。こういうときは、お互い様ということで承知した。一緒に立ち会った陛下や公爵も承知していた。私達の名を出して、討伐しに来るような馬鹿がいても、無視して殺して構わないという言葉も添えて、グレイルに伝えた。
話し合いが終わった後、話し合いの内容を冒険者ギルドに報告しておいた。特に、我が領、いや、我が国からは国境の山脈にドラゴンの住み処があるが、その住み処に対して討伐依頼は出すことはないので、仮に冒険者がその住み処の討伐をする際には補助する必要はない、いや、補助してはならないことも含めて。ギルド長からは、承知したという返事が届いた。
冒険者ギルドは基本的には国からの通達を拒否できる国際組織であるが、フロストの町とトリニトの町にある冒険者ギルドは別で、ここの冒険者ギルドはフロストの町の意向が思いっきり反映されている。その代わりにギルド員の生活はフロストの町でしっかりと保証されているので、ギルド長始め、各ギルド員もそれに従って動いている、というのも、ここの冒険者ギルドは、名前こそ冒険者ギルドではあるが、フロストの町での素材などの取引施設としての認識が強く、ギルド員自体もそういう考えを持って行動しているからだ。
そんな状態なので、ギルド内では一応お情け程度に依頼こそあれども、基本的には狩りや採集などで手に入れてきた素材を売買することがメインで、ある意味、併設されている食堂の方がメインかもしれない。何せ、他国から見たら高級素材になる素材を惜しげもなく使った料理や飲み物を、一般の冒険者でも毎日食べていけるほどの安価で飲み食いできるのだ。
トリトン陛下は、リトン公爵とグレイル御一行を引き連れて、その冒険者ギルドの食堂へと向かった。向かう途中でグレイルを見た領民は最初こそギョッとしていたが、すぐに慣れていたが、その領民達はグレイルが一緒に連れているちっちゃなドラゴンに興味を持っていた。
トリトン陛下達と一緒に食事をしたグレイル御一行は、出された食事に最初はビックリしたものの、その味の良さにすっかり夢中になってしまったらしいが、本当に小食だったらしく、この程度の食事でむしろあれだけの巨体を維持出来る方が驚いたと、そのとき合流して一緒に食事したアンジェリカさんが言ってた。
私はどうしていたかというと、あの後は、マーブル達と恵みのダンジョンへと行って、ハニービーのシロップに会いに行ったりして、モフモフを堪能したり、猿達とキャッチボールを楽しんだりして非常に有意義に過ごさせてもらっていた。もちろん、途中で牛乳などの必需品を手に入れるのを忘れたりはしなかった。
グレイル達は食事を堪能した後、約束通り求めていた食料を受け取った後、集落に戻ったが、数日後に再びやって来た。何でも、フロストの町で食べた食事の味が忘れられずに来たらしい。メンバーはグレイル以外は全員違うメンバーであった。グレイル曰く、通商協定とは別に、向こうで採れる素材などでギルドで気軽に買い取れそうなものを持ってきて、売れたお金で、ここの食事を食べたいとのこと。
持ってきたものを見ると、山ならではの幸が目白押しだった。・・・ぶっちゃけ、それと交換でいいのではと思ったほどで、何なら、鱗や牙ではなく、そっちと交換で構わないと伝えると、それはそれ、これはこれなんだそうだ。また、こっちはここでの食事用として用意したものだからとも言っていた。グレイルは、こうしてちょくちょくこの町に来たいとも言っていたので、了承した。
ちょくちょくグレイル達龍族がフロストの町に来るようになり、最初は驚いていた領民達も今ではすっかり慣れており、特に一緒に来ているチビドラゴンに領民達はメロメロとなっていた。チビドラゴンも今では子供達はおろか、ウサギ達やコカトリス達と一緒に遊んでいるくらいだ。
また、来る度にお土産と称して、ある程度の食料を持たせるようにしたら、しばらくしてグレイルからお礼を言われた。何でも、食糧事情がかなり改善されたようで、集落のみんなも元気を取り戻してきているらしいのだ。今まで来ていたのは、ここの来られる程度の比較的元気な者を連れてきていたようで、今後はローテーションでこっちに遊びに来られると、嬉しそうに言っていた。その笑顔を見ると、お土産を渡してよかったと心から思った。
集落の龍族達もすっかり元気になり、グレイルの言葉通りに、フロストの町へと龍族の住民が来るようになってから数ヶ月後、ガブリエルからとある報告が届いた。サムタン公国が起死回生の策だといわんばかりに、その龍族をけしかけて今度はフロスト領を攻撃せんと画策してきたそうだ。正直、グレイル達がフロストの町を襲うことは考えられないし、仮に襲ってきたとしても別に問題はないからどうでもいいけど、一連の流れと顛末が気になるので、無理をしない程度にその件についての情報を集めるように指示しておいた。
最初は腕利きの冒険者を雇って、集落を探そうとしたのだが、もちろん賢明な冒険者はそんな馬鹿な依頼は受けないので、報酬に目がくらんだ三流以下の自称一流冒険者に頼んでいたが、悉く返り討ちに遭い、そのうち引き受ける者はいなくなったらしい。
次は、大量の金銀財宝を用意して龍族の縄張りに向かったらしい。自然の国境になるくらいだから、相当険しい山のはずだが、頭は大丈夫なんだろうか? しかも賠償金やら何やらで火の車の公国が、そんなことをしていて問題はないのか? アバロン帝国が虎視眈々と狙っている状況を理解しているのだろうか? まあ、そんなことに気付くくらいなら、こんな馬鹿なことはしてないよね。
結果はというと、龍化して取り囲むという、最上級の龍族の歓迎を受けて、一応口上は何とか伝えたようだが、フロスト領を攻撃してくれという内容に、取り囲んだ龍族達はかなり怒ったらしく、用意した金銀財宝を置いて逃げてしまったらしい。龍族達はお詫びの印としてそれをこっちに持ってきたので、それは龍族への貢ぎ物だろうから、そっちで好きに使って構わないことを伝えて治めてもらった。
後日、大勢の龍族の者達がやって来て、そのお金で食事やらお土産やらを買って帰ったのは笑えた。ガブリエルも流石に龍族の細かい内容は入手できなかったらしく、その話を聞いて爆笑していた。
そんなこともあり、サムタン公国では、ドラゴンの被害を受けたと言って、討伐の依頼が出されたらしく、我が領の冒険者ギルドでも依頼を出すよう話が来たらしいが、事情を理解しているため、話にならないと断ったそうだ。一応グレイルには注意しておくように伝え、万が一の場合はこちらから援護するから、そのときは遠慮なく頼ってくれと伝えておいた。
フロストの町にもドラゴン目当ての冒険者達が来たが、サムタン公国の取った行動を伝え、こっちは関係ないからこちらからは討伐依頼は出していないことをギルド員が説明していた。ドラゴン目当ての冒険者の大半はフロスト領へと来たのだが、そのことを知ると、ほとんどはサムタン公国の行動に呆れて、こっちで別の依頼を受けていったが、一部のドラゴン殺しという名声を得たい冒険者達は、サムタン公国へと移動していったようだ。
一方のサムタン公国側では、最初こそサムタン公国で依頼を受ける冒険者の数が少ないことに激怒していたが、徐々に数が増え始めると、途端に上機嫌になっていた。依頼を出したのは、ドラゴンの熱い歓迎にビビって逃げた使者だったらしく、これで自分の面目が立てると同時に、あわよくば貴重なドラゴンの素材を手にできると、訳の分からない皮算用をしていた。
結果は言うまでもなく、誰一人としてドラゴンには歯が立たなかった。何せ、あの集落のドラゴンは通常のドラゴンではなくエンシェントドラゴンである。増して、フロスト領による交流やお土産という名の食料援助で食糧事情も解決して元気いっぱいの状態である。この世界で、エンシェントドラゴンに立ち向かえる冒険者は精々数人といったところだろう。しかもその数人を持ってしても、倒せるのは精々一体が限度だろう。一対一で余裕で倒せるマーブル達が異常過ぎるのである。
結局、その依頼は果たされることなく朽ちていく結果となり、無駄に資金を失ったサムタン公国はさらに力を失う結果となった。その背後で、アバロン帝国は舌なめずりしてサムタン公国を征服する機を窺っていた。
-------------------------
トリトン陛下「そういえば、グレイルよ。お前さん達、同胞の肉って食べても大丈夫なのか?」
グレイル「お主達の感覚では、同じ龍種かもしれんが、実際は別種族であるゆえ、同じ集落の者の肉でない限りは問題ない。」
トリトン陛下「おお、そうか! ここではたまに龍肉が出てくるから楽しみにしてな!」
グレイル「うむ、それは楽しみだ。」
ドラゴン肉祭り、もとい、エンシェントドラゴンのグレイルと協定を結んでから3日が経過して、高級肉の興奮が冷めてきた頃、ガブリエルから連絡が来た。グレイル達がこちらに向かって来ているそうだ。畑用に拡張した川沿いまでは、ドラゴンの姿のままで問題ないことも伝えてあるので、川沿いの辺りで迎えのものを出すように伝えておいた。
とはいえ、正直いきなりの訪問なので、フロストの町からそこに向かえる人物は限られている、ということでウルヴ・オン・アウグストでのお出迎えが急遽決定し、アウグストに乗ったウルヴが出迎えに向かうことになり、久しぶりに全力疾走できるアウグストは大はしゃぎであった。でも、片道だけだし、帰りは徒歩だよ。後日、走り回れるように機会設けるから、今はそれだけで我慢してね。
しばらくして、ウルヴがグレイルを連れて来たと報告が来たので、アマデウス教会で面会することにした。場所は大会議室ではなく小会議室で。簡単な通商内容の話し合いなので、それで問題ない。こちらからは、トリトン陛下とリトン公爵、および、フェラー族長である。向こうはグレイルと、人化したお伴数人と、ちっちゃいドラゴンを1体連れて来ていた。
グレイルを見たトリトン陛下は、最初は何か見覚えがあるな程度の反応だったが、しばらくして思い出したらしく、グレイルに破顔を向けた。
「おお、誰かと思えば、お前さんかい! お前さんも族長になったんだなぁ!!」
「ん? お主、いえ、あなた様は、、、。我の気のせいかも知れぬが、随分と変わられた感じがするのだがそれは一体?」
「ん? ああ、そうだな。お前さんと初めて会ったときとは雰囲気が変わっただろう? 最近力が少し戻ってきたらしくてな、こっちが本来の姿だと思ってくれればいい。」
「ほう、不思議なこともあるもんだな。流石は、か「おっと、それ以上は勘弁な!」。うむ、承知した。」
何だかんだ言っても、流石は両者である、か。
それから一通り自己紹介も終わり、通商内容を詰める話し合いが設けられた。集落側から提示されたのは、やはり食料関係が圧倒的に多かったが、予想以上に少ないことに疑問を持ったのだが、やはり人化している状態の時は、基本小食なのだそうだ。とはいえ、集落には100人前後の龍族が住んでいるので、住むには最高の環境らしいが、食料関係だけは非常に厳しい状態らしいので、この話は渡りに船だったそう。
食料の交換条件として、ドラゴンの鱗や牙が定期的にこちらに渡されることが決まった。というのも、基本あの集落に住む龍族は、宝石などを蓄える習慣はないらしく、そういったものしか提供できないことを改めて伝えられたからだ。また、龍族の素材が貴重なものであり、取引に仕えることは承知していたが、悪用されるのを恐れていたので、適当に処分していたらしい。
集落での話し合いもまさにそれだったらしいが、そんなものがなくても、集落でも最強クラスの2体が、瞬時に倒されたとあっては、別に利用されようがされまいが同じだという結論にいたり、それと同時にいくら力関係がはっきりしているとはいえ、一方的にもらうのは誇りとして許されない部分もあったそう。ただ、条件として、今いる集落を襲う道具としての使用はしない、ということを念押ししてきた。そんなことで向こうの顔を立てられるのであればこれ以上面倒なことにはならなそうなので、承知することにした。こっちもそんなことに使う気は毛頭ないので問題ない。
また、それとは別に、フロストの町に襲撃に来るドラゴン、あるいは、龍族の集落を襲撃する冒険者の扱いについてだけど、私達にしても、集落を襲うメリットはないし、集落としてもフロスト領に攻め入るメリットは存在しないので、仮に来ても、それは知ったことではないので、殲滅してもかまわない、という事で一致。報復はしないということで話がついた。
このことを改めて向こうから念押ししてきた。グレイルもある程度抑えてはいるのだろうけど、どうしても抑えきれない部分もあるのだろう、そのときはゴメンナサイ無理でした、と遠回しに伝えてきている。もちろんこちらも同じようなことは起こるだろう。こういうときは、お互い様ということで承知した。一緒に立ち会った陛下や公爵も承知していた。私達の名を出して、討伐しに来るような馬鹿がいても、無視して殺して構わないという言葉も添えて、グレイルに伝えた。
話し合いが終わった後、話し合いの内容を冒険者ギルドに報告しておいた。特に、我が領、いや、我が国からは国境の山脈にドラゴンの住み処があるが、その住み処に対して討伐依頼は出すことはないので、仮に冒険者がその住み処の討伐をする際には補助する必要はない、いや、補助してはならないことも含めて。ギルド長からは、承知したという返事が届いた。
冒険者ギルドは基本的には国からの通達を拒否できる国際組織であるが、フロストの町とトリニトの町にある冒険者ギルドは別で、ここの冒険者ギルドはフロストの町の意向が思いっきり反映されている。その代わりにギルド員の生活はフロストの町でしっかりと保証されているので、ギルド長始め、各ギルド員もそれに従って動いている、というのも、ここの冒険者ギルドは、名前こそ冒険者ギルドではあるが、フロストの町での素材などの取引施設としての認識が強く、ギルド員自体もそういう考えを持って行動しているからだ。
そんな状態なので、ギルド内では一応お情け程度に依頼こそあれども、基本的には狩りや採集などで手に入れてきた素材を売買することがメインで、ある意味、併設されている食堂の方がメインかもしれない。何せ、他国から見たら高級素材になる素材を惜しげもなく使った料理や飲み物を、一般の冒険者でも毎日食べていけるほどの安価で飲み食いできるのだ。
トリトン陛下は、リトン公爵とグレイル御一行を引き連れて、その冒険者ギルドの食堂へと向かった。向かう途中でグレイルを見た領民は最初こそギョッとしていたが、すぐに慣れていたが、その領民達はグレイルが一緒に連れているちっちゃなドラゴンに興味を持っていた。
トリトン陛下達と一緒に食事をしたグレイル御一行は、出された食事に最初はビックリしたものの、その味の良さにすっかり夢中になってしまったらしいが、本当に小食だったらしく、この程度の食事でむしろあれだけの巨体を維持出来る方が驚いたと、そのとき合流して一緒に食事したアンジェリカさんが言ってた。
私はどうしていたかというと、あの後は、マーブル達と恵みのダンジョンへと行って、ハニービーのシロップに会いに行ったりして、モフモフを堪能したり、猿達とキャッチボールを楽しんだりして非常に有意義に過ごさせてもらっていた。もちろん、途中で牛乳などの必需品を手に入れるのを忘れたりはしなかった。
グレイル達は食事を堪能した後、約束通り求めていた食料を受け取った後、集落に戻ったが、数日後に再びやって来た。何でも、フロストの町で食べた食事の味が忘れられずに来たらしい。メンバーはグレイル以外は全員違うメンバーであった。グレイル曰く、通商協定とは別に、向こうで採れる素材などでギルドで気軽に買い取れそうなものを持ってきて、売れたお金で、ここの食事を食べたいとのこと。
持ってきたものを見ると、山ならではの幸が目白押しだった。・・・ぶっちゃけ、それと交換でいいのではと思ったほどで、何なら、鱗や牙ではなく、そっちと交換で構わないと伝えると、それはそれ、これはこれなんだそうだ。また、こっちはここでの食事用として用意したものだからとも言っていた。グレイルは、こうしてちょくちょくこの町に来たいとも言っていたので、了承した。
ちょくちょくグレイル達龍族がフロストの町に来るようになり、最初は驚いていた領民達も今ではすっかり慣れており、特に一緒に来ているチビドラゴンに領民達はメロメロとなっていた。チビドラゴンも今では子供達はおろか、ウサギ達やコカトリス達と一緒に遊んでいるくらいだ。
また、来る度にお土産と称して、ある程度の食料を持たせるようにしたら、しばらくしてグレイルからお礼を言われた。何でも、食糧事情がかなり改善されたようで、集落のみんなも元気を取り戻してきているらしいのだ。今まで来ていたのは、ここの来られる程度の比較的元気な者を連れてきていたようで、今後はローテーションでこっちに遊びに来られると、嬉しそうに言っていた。その笑顔を見ると、お土産を渡してよかったと心から思った。
集落の龍族達もすっかり元気になり、グレイルの言葉通りに、フロストの町へと龍族の住民が来るようになってから数ヶ月後、ガブリエルからとある報告が届いた。サムタン公国が起死回生の策だといわんばかりに、その龍族をけしかけて今度はフロスト領を攻撃せんと画策してきたそうだ。正直、グレイル達がフロストの町を襲うことは考えられないし、仮に襲ってきたとしても別に問題はないからどうでもいいけど、一連の流れと顛末が気になるので、無理をしない程度にその件についての情報を集めるように指示しておいた。
最初は腕利きの冒険者を雇って、集落を探そうとしたのだが、もちろん賢明な冒険者はそんな馬鹿な依頼は受けないので、報酬に目がくらんだ三流以下の自称一流冒険者に頼んでいたが、悉く返り討ちに遭い、そのうち引き受ける者はいなくなったらしい。
次は、大量の金銀財宝を用意して龍族の縄張りに向かったらしい。自然の国境になるくらいだから、相当険しい山のはずだが、頭は大丈夫なんだろうか? しかも賠償金やら何やらで火の車の公国が、そんなことをしていて問題はないのか? アバロン帝国が虎視眈々と狙っている状況を理解しているのだろうか? まあ、そんなことに気付くくらいなら、こんな馬鹿なことはしてないよね。
結果はというと、龍化して取り囲むという、最上級の龍族の歓迎を受けて、一応口上は何とか伝えたようだが、フロスト領を攻撃してくれという内容に、取り囲んだ龍族達はかなり怒ったらしく、用意した金銀財宝を置いて逃げてしまったらしい。龍族達はお詫びの印としてそれをこっちに持ってきたので、それは龍族への貢ぎ物だろうから、そっちで好きに使って構わないことを伝えて治めてもらった。
後日、大勢の龍族の者達がやって来て、そのお金で食事やらお土産やらを買って帰ったのは笑えた。ガブリエルも流石に龍族の細かい内容は入手できなかったらしく、その話を聞いて爆笑していた。
そんなこともあり、サムタン公国では、ドラゴンの被害を受けたと言って、討伐の依頼が出されたらしく、我が領の冒険者ギルドでも依頼を出すよう話が来たらしいが、事情を理解しているため、話にならないと断ったそうだ。一応グレイルには注意しておくように伝え、万が一の場合はこちらから援護するから、そのときは遠慮なく頼ってくれと伝えておいた。
フロストの町にもドラゴン目当ての冒険者達が来たが、サムタン公国の取った行動を伝え、こっちは関係ないからこちらからは討伐依頼は出していないことをギルド員が説明していた。ドラゴン目当ての冒険者の大半はフロスト領へと来たのだが、そのことを知ると、ほとんどはサムタン公国の行動に呆れて、こっちで別の依頼を受けていったが、一部のドラゴン殺しという名声を得たい冒険者達は、サムタン公国へと移動していったようだ。
一方のサムタン公国側では、最初こそサムタン公国で依頼を受ける冒険者の数が少ないことに激怒していたが、徐々に数が増え始めると、途端に上機嫌になっていた。依頼を出したのは、ドラゴンの熱い歓迎にビビって逃げた使者だったらしく、これで自分の面目が立てると同時に、あわよくば貴重なドラゴンの素材を手にできると、訳の分からない皮算用をしていた。
結果は言うまでもなく、誰一人としてドラゴンには歯が立たなかった。何せ、あの集落のドラゴンは通常のドラゴンではなくエンシェントドラゴンである。増して、フロスト領による交流やお土産という名の食料援助で食糧事情も解決して元気いっぱいの状態である。この世界で、エンシェントドラゴンに立ち向かえる冒険者は精々数人といったところだろう。しかもその数人を持ってしても、倒せるのは精々一体が限度だろう。一対一で余裕で倒せるマーブル達が異常過ぎるのである。
結局、その依頼は果たされることなく朽ちていく結果となり、無駄に資金を失ったサムタン公国はさらに力を失う結果となった。その背後で、アバロン帝国は舌なめずりしてサムタン公国を征服する機を窺っていた。
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トリトン陛下「そういえば、グレイルよ。お前さん達、同胞の肉って食べても大丈夫なのか?」
グレイル「お主達の感覚では、同じ龍種かもしれんが、実際は別種族であるゆえ、同じ集落の者の肉でない限りは問題ない。」
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