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第115話 さてと、良いことと悪いことが1つずつだね。

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前回のあらすじ:何か昇爵させられた。





 さてと、転送魔法で帝都から一気にフロストの街へと戻ってきた我々ですが、1人邪魔も、いや、お客さんが一緒に付いてきております。ええ、この国の皇帝にして、海神であるトリトン陛下です。あまり我が部屋には来て欲しくないので、転送先はアマデウス協会の司祭室です。


「アイス侯爵よ、ここは?」


「ここはアマデウス協会の司祭室です。陛下がこちらにいらっしゃった際にお使い頂く部屋となります。」


「・・・あまり言いたかねぇけどよ、ここって帝都の宮殿より豪華じゃね?」


「まあ、出来たてですからね。」


「それだけじゃねえだろ、この壁にしろ、この建物全体が「不壊」になっているじゃねえかよ、、、。」


「そうですね、アマさんが張り切ってくれましたよ。」


「・・・なるほど、そういうことか。まあ、いいや。折角ここに来たんだからついでに案内頼むわ。」


「えー、戻ったら戻ったでやることが山積みなんですけど、、、。」


「お前、皇帝を案内するのも仕事じゃねえのか? 何で面倒事のように言ってんだよ、、、。」


 そうなんだよね。皇帝陛下や国王など、国のトップがわざわざ自領にいらっしゃることはもの凄く光栄なことなんだよね、普通であればね。でもね、こんなノリで来られた日には、全てが台無しだよね、、、。しかもこれ初訪問だよ? 本来ならさ、一緒に転送魔法でついてくることはせずに、馬車とかに乗って数日掛けて来るものじゃない? それをね、、、。まあ、この領に来たら陛下ではなくトリンという一市民の扱いにしろと言われているけどさ、、、。


 そんなちょっとした不満を抱えつつも、司祭室を出てアマデウス神の像が置かれている場所へと進む。この像はジェミニ渾身の作品というくらい素晴らしい出来映えとなっている。ちなみにジェミニ本人は先日の悪魔退治で形作ったアンジェリカさんの像が最高傑作だと言っていた。アンジェリカさんには聞こえないようにね。それを見たトリトン陛下はもちろんその出来映えに驚いていた。


「ん? こりゃ、アマデウスの像じゃねえか! 凄えな、本人そっくりだぞこれ!」


「アマデウス神とは、このようなお姿をされているのですね、、、。」


 何度か見ている像ではあるが、同じ神であるトリトン陛下にそう言われて戦姫の3人が感心している。


「でしょう? これはジェミニが作った力作ですよ。」


「・・・ウサちゃん、流石。」


「ジェミニってえと、お前と一緒にいるそこのウサギか? そりゃ、凄ぇな。けどよ、何でアマデウスの像なんだ? ここの連中は全員アマデウスの信者か何かか?」


「いえ、領民それぞれ、信仰している神々は異なります。この場所は祈りとお供えをする場でして、像はアマデウス神となっておりますが、どの神に対してお祈りやお供えをしてもかまいません。何でアマデウス神の像にしているかといえば、アマデウス神しか実際に見たことがないからです。」


「なるほど、そういうことかい。アマデウスの所だけじゃなく、他の連中も何かもらっていた原因はここだったんだな。まあ、いいや。これからは俺もちょくちょくここでの食事が楽しめる、ということだからな。期待しているぞ、侯爵よ。」


 どうでも良いところで侯爵を強調するのはやめてくれ。まあ、いいや。好き勝手に移動されて居場所が把握できなくなりそうな気がするから、それなら自分で案内した方がマシかな。


 そんなことを思いつつ、アマデウス教会を出る。アマデウス教会から出るとすぐにウサギ広場があり、その近くには領主館、つまり私の現在住んでいる場所、少し離れてフロスト城(未完成)がある。フロスト城で現在使用されている場所は訓練場のみとなっているので、案内するのは最後かな。最初に見せたのは目の前にあるウサギ広場で、ウサギ達とコカトリス達が子供達と遊んでいた。一緒にいたクレオ君とパトラちゃんもそれに加わった。私の存在に気づいた領民達が手を振ってくる。私達も手を振り返す。


 次は工房だ。って、え? 工房? ゴブリンの職人の家じゃなかったのか? ジェミニに聞いてみると、普段私が職人の所へと足を運んでいるここが工房だったらしく、家は別の場所にあるようだ。そりゃ、そうか。


 工房の次は、領民達が住んでいる区域だ。この区域は、人族用、獣人族用、ゴブリン用とそれぞれ別れている。別れているのは別にいがみ合っているとかではなく、ただ単に生活習慣の違いによる摩擦を避けるために分けているだけだ。領民達の仲は非常に良くて、時たま互いの家に泊まったりして生活習慣の違いを楽しんでいるようだ。


 他には屋台を案内したり、宿屋、冒険者ギルド、商業施設がある区域を案内し、最後にフロスト城内で唯一現在使われている訓練施設へと案内した。


 一通り案内し終わった後、トリトン陛下はとんでもないことを言ってきた。


「ここって帝都より良い場所だよなあ、いっそのこと、ここを首都にしちまうか。」


「いや、それは勘弁してください。」


「でもよう、帝都と比べるとここは清潔だし、メシも美味いじゃねえか。しかもここにいる領民達、どう見ても帝都の近衛兵達より強いぜ。訓練もしっかりやってるしな。」


「それは、何もしていない陛下のせいでは?」


「前にも言ったろ? 俺ぁ、陸のことについてはさっぱりわかんねえって。」


「いや、すでに1000年ほど経っているのですから、ある程度はわかるでしょうに、、、。」


「いや、無理だな。お前らは神というものを過大評価しすぎなんだよな。いいか、俺たち神と呼ばれる存在ってのはな、専門外のことは基本的には無知なんだよ。で、あの領土だろ? 内政なんて覚えられるわけねぇだろ、、、。」


「そう開き直られると返す言葉が見つかりませんね、、、。」


「そういうことだから、あきらめろ。」


「あ、そっちではなくて、それを口実に私に変な役職付けたり、こっちに遷都されたりとかしなければ問題ありませんので。」


「そこは正直に言う場面じゃないだろ、、、。とりあえずこの町の状況は理解した。よくここまで作り上げたぜ。これからも頼むな。」


「ありがとうございます。」


「じゃあ、俺はこれから訓練所へ行って訓練に参加してくるぜ。夕飯期待しているからな!!」


 そう言ってトリトン陛下はそのまま訓練所へ行ってしまった。結局領主館へは案内することなく終わった。下手に案内すると入り浸る可能性が高いので、それは勘弁して欲しかった。


 私達は領主館へと戻ると、トリニトの町からすでに戻ってきていたらしく、フェラー族長が出迎えてくれた。フェラー族長のそばには、アッシュが控えていた。その表情は落ち込んでいた。恐らく先日での出来事に対するわびに来たのだろう。面倒になったからそのまま通過しただけであって、別にそれ以上のことは考えていなかったので正直少し驚いた。


 一応フェラー族長の帰還報告とアッシュの詫びはを受けた。まあ、私達は気にしてないけど、クレオ君とパトラちゃんはどうなのか少し心配。とはいえ、自業自得だから当人達にそれは任せるとしますか。それよりも夕食の支度に着手しないとな。


 今回は宴会にせずに私達と戦姫、あとはウルヴ、アイン、ラヒラスとあとはアッシュ達かな。それとトリトン陛下か、陛下本人はこの領にいるときはトリンという1人の住民として扱って欲しいという要望というか命令が来ているので、下手に宴会にするよりその方がよさそうだ。ということで、メニューは通常メニューでいいだろう。恐らくそっちの方を期待しているだろうし。


 ということで、 今回はオーク肉でのモツ鍋メインでいくとしましょうかね。そうと決まったら、準備開始である。ちなみにアンジェリカさん達は特に出番がないので訓練所の方へと行き、アッシュ達もそれについて行った。ウルヴ達は自分の持ち場に戻った。


 作るものは決まったけど、問題はトリトン陛下がどれだけ食べるかだ。人間界に降りてきているとはいえ、そこは神である。正直どのくらい食べるのかわからないのだ。ちなみにアマさんは食の神ではあるが、実は比較的小食だ。食の神なのに。じゃあ、味にうるさいかといえばそういうわけでもない。食の神なのに。トリトン陛下も常識の範囲内での大食漢で済むことを願いますかね。一応多めに用意して、余ったら明日の朝食にでもしますかね。


 腹も決まったところで、準備開始だ。幸いにしてモツはかなり余裕がある。しかし、オークのモツだけでは少々寂しいので、他にも数品用意しますかね。さてと、今現在在庫であるのは、と、おっ生姜があるね。リンゴは残念ながらないけど、とりあえず生姜焼きは確定かな。あとはモツの種類も増やしてみますかね。ご飯も欠かせないから、押し麦仕込んでおかないと。後はそうだな、葉っぱ系がそこそこあるかな、ということで適当にサラダ作りますかね。酢も油もあるし、塩胡椒はスガーで十分代用できるから、フレンチドレッシングでいくかな。コカトリスの卵が残っているから、ゆで卵も添えますかね。そういえば、マヨネーズの材料も揃っているから、そろそろ作っても良いかもしれないけど、今回は保留かな。


 そんなこんなでいろいろと仕込みを行っていき、ようやく完了した。調理を開始するまで時間が少しあるから職人の工房へと行き、モフ櫛の開発状況を確認しに行く。工房へと行くと、私の顔を見たゴブリンの職人は言わずともわかっていると言わんばかりに、完成したモフ櫛を手渡す。それぞれ黒鉱石とミスリル鉱石で作られた素晴らしい一品だった。


 細かい調整がしたいから、ここで少し使ってみてくれとのことだったので、早速使うことにした。ブラッシングをかけてくれることを理解したマーブルとジェミニは、いつも以上に体をこすりつけておねだりしてきた。や、やばい、理性が、、、。


 マーブルとジェミニにそれぞれ2種類の櫛でブラッシングをして、2人にそれぞれ使い心地を聞いて微調整しては、またブラッシングして、また聞いてから調整、を繰り返してついに完成した。ウサギ達やアウグストの分については、マーブルとジェミニに使った魔樹で作った試作品を元に体型や毛の堅さに後日じっくりと作っていくそうだ。


 念願のモフ櫛が手に入ったし、まだ調理するには早い時間だったので、マーブルとジェミニのブラッシングをしながら、いつも以上にモフモフを堪能していた。

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トリトン皇帝「メシはよ。」
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