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第70話 さてと、今日は案内人として洞窟探索です。その3

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 地下1階ではダンジョントラッパーを相手に実力を確認させてもらったけど、みんな中々のお手前。特に、クレオ君とパトラちゃんがあそこまで強いとは予想だにできなかった。では、地下2階へと進むとしましょうかね。


「これから地下2階だけど、この階層は虫さんがたくさんいらっしゃいますので、苦手な方はご注意を。」


 みんなの反応を確認すると、特に驚いた様子がなかったことに逆に驚いた。こう見えて私は虫は結構苦手でして、、、。


 地下2階に降りると、いつも通りハニービー達が出迎えてくれた、のはいいけど、何か様子が変である。一体どうしたのだろうか? と心配しているのを余所に、私達以外のメンバーは多数の蜂が一斉にこちらに来ていたので驚いて身構えていた。


「あー、この蜂さん達は仲間みたいなものだから大丈夫だよ。みんな武器を収めて。」


 そう言うと、他のメンバーはホッとして武器を収めた。それを確認してから女王蜂に話しかけた。


「やあ、今日は他の仲間と一緒に来たよ。けど、何か様子がおかしいね。どうしたの?」


「ヨウコソ。キテクレタノハウレシイケド、スコシコマッテイル。」


「困っている? 何かあったの?」


「スノチカクニ、デカイクモガアラワレタ。ワタシタチデハ、カナワナイ。」


「なるほどね。じゃあ、どうにかできるかもしれないから、案内してくれるかな?」


「ワカッタ、ツイテキテ。」


「というわけで、蜂さん達を助けるために蜘蛛をどうにかしようと思います。」


「フロスト伯爵、ここにいるハニービーの集団はBランクの魔物です。ほとんどの場合は、ハニービー達の独壇場となる状況なのですが、それが敵わない相手、しかも蜘蛛となると絞られますね。それ以上にハニービーが話せることの方が驚きましたが。」


「ああ、先日ここに来たときに、ここのハニービー達を脅かしていた、キラーホーネットを倒すのを手伝ったんだよね。そのときに、この女王蜂がキラーホーネットの女王にとどめを刺したら成長して話せるようになったんだよ。ところで、その蜘蛛の種類は特定できるの?」


「なるほど。成長すると話せるようになるのですね。それで、蜘蛛の種類についてですが、間違っているかもしれませんが、恐らくその蜘蛛はアラクネだと思います。アラクネの集団ですとAランク、もしくはSランクに該当しますので。」


 なるほど、流石はギルド長だな。こういった魔物の種類についてかなり詳しい。そのアラクネについて他に何か知っていることがあるかも知れないな。


「ところで、ギルド長。そのアラクネだけど、実は美味しかったりする?」


 美味しい、という言葉にマーブル達が反応したが、ギルド長の表情は残念でした、という表情も交えながら答えたので、マーブル達は少しがっかりしていた。君達はまず食い気だねえ。一体誰に似たのやら、、、。そんな表情でマーブル達を見ると、お前が言うな、という視線を受けとった。そうなのか! まあ、似たもの親子ということで甘んじて受け止めるよ。


「いえ、残念ながらそういった情報はありません。しかし、アラクネからは上質な糸が手に入ります。」


「ほう、糸ですか。」


 糸という言葉になぜかエルヴィンさんが反応した。


「おお、糸か。うちの職人達に渡せばいい生地ができるかもな。」


「そうか、そうすれば、領民達にいい素材の衣装が提供できるね。これは頑張って手に入れないとね。」


「カワイイ服!!」


「かっこいい服!!」


 クレオ君とパトラちゃんもそう言って目の色が変わった。確かにこの2人に良い衣装を着せれば鬼に金棒状態だな。うん、頑張って集めようか。ウサギ達やコカトリス達用のスカーフを作ってやれば彼らの可愛さも倍増するだろうし、いやが上にも気合が入るってものだ。


 たまに襲ってくる虫の魔物達を倒しながら進みつつ、ハニービー達についていくこと1時間ほど。マーブルが「シャー」と小さく威嚇するような声を出した。強敵、あるいは標的探知の合図である。女王蜂に案内のため先頭を進んでいるハニービー達を私達の後方に下げるように伝えると、ハニービー達はすぐに私達の後方へと陣取る。女王蜂が何かの合図をしたとは思うけど、合図を出した素振りはない。そう考えると女王蜂、というか蜂のネットワークって凄いね。


 先頭は私達に代わり、私達は関知したマーブルの指し示した方向へと進んでいく。あ、マーブルもジェミニも今は私の肩に乗っかっている。ライムは定位置の私の腰袋の中にすっぽり入っていた。ウサギ族達はそれを羨ましそうに見ていた。今度、乗せてあげるからね。でも、その前に乗る練習が先かな。好きなときに乗れるようになったら、他の領民達に乗ってあげるといいよ。恐らく君達を乗せたがっている領民はたくさんいるはずだよ。


 話が少しそれたけど、ようやく私の気配探知にも魔物の存在を確認できた。えーと、数は、と、20、いや30超えるな、、、。そして、個体の数にふさわしいモゾモゾとした感覚、こりゃ、間違いなく蜘蛛だな。その中で1体一際大きな存在がいる、ということは、あの大きな存在がアラクネか。で、その他はアラクネの兵隊達といったところかな。とりあえずもう少し進んでからだね。他のメンバーもそうだけど、蜂さん達もまだ気付いていないみたいだし。


 存在を確認するために、進む速度を落としたことにより、他のメンバー達もアラクネ達が近くにいることに気付いた。


「フロスト伯爵はすでにアラクネの存在に気付いたようですね。私も魔物探知には少しばかり自信があったのですが、、、。」


「いや、私なんかまだまだですよ。マーブルが気付いて私に教えてくれたので、こうやって確認できているのですよ。」


「マーブルちゃん、というと、猫ちゃんの方ですか、、、。」


「我が猫達は、それぞれ凄いですよ、っと、そのことは後にして、まずは相手の姿を確認しておきましょうか。」


 おっと、危ない危ない。こんなときに親馬鹿自慢を始めてしまうところだった、、、。ん? あそこに集団でいるな、鑑定は、と、よし、届くな。では、アマさんよろ。


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『ヴィエネッタ』・・・おろ? あやつはアラクネじゃが、個別の名前がついておるのう。ということはアラクネでも特殊な個体じゃな。通常のアラクネよりも手強いが、あやつから手に入る糸も恐らく特殊なものになるじゃろう。あの糸で何かできたら、ワシも欲しいのう、、、。期待しておるぞい。あ、言わなくともわかっておるかもしれんが、アラクネは兵隊としてシルクスパイダーという兵隊の蜘蛛を生み出すから気をつけるのじゃぞ。

『ローズスパイダー』・・・ふーむ、特殊な個体のアラクネは生み出す兵隊も特殊なのじゃろうか。シルクスパイダーではあるが、恐らくこやつらも特殊な個体じゃの。強い分糸も期待して良いぞ。


 念のために伝えておくが、残念ながらこやつらは食用には向かん。間違っても倒した状態のものを供物として捧げてはいかんぞ。もしそれをしたら、こちらも嫌がらせで返すからのう。

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 そんなことしねぇよ。何でそうまでして嫌がらせしなきゃならんのだ。それとも、これは期待しているのか? 前振りか? とまあ、それはさておき、特別種か。腕試しには丁度いいかもしれないな。まあ、とりあえずまずは糸を手に入れるぜ。恐らく無限に生み出すから、手に入る糸も無限だろう。まずはガンガン糸を手に入れるべく雑魚狩り祭りですな。


「では、作戦を伝える前に説明をば。鑑定したところ、敵はアラクネですが、どうやら個別に「ヴィエネッタ」という名前があり、恐らく特殊な個体と思われます。アラクネはシルクスパイダーという兵隊の蜘蛛をたくさん生み出しますが、アラクネだけでなく、このシルクスパイダーも上質な糸を落とすそうです。当然アラクネが特殊な個体なら、このシルクスパイダーも特殊な種類となっております。領民のみんなに良い服を提供できるようにたくさん糸を手に入れたいと考えております。ということで、蜂さん達には申し訳ないけど、しばらくは糸狩りに邁進します。」


「ワカッタ。ダイジョウブ。」


「ありがとう。では、これから作戦を伝えます。まずは、マーブル隊員とジェミニ隊員ですが、ひたすら兵隊の蜘蛛達を倒してください、とはいえ、本気で戦わずにアラクネが兵隊を増やす割合に合わせて倒していってください。」


「ミャア!」


「了解です!!」


 マーブルとジェミニはいつもの敬礼ポーズで応える。いつもながら可愛くてたまらない。


「アイン隊員、並びにレオ隊員達野ウサギ族は1人で1体を担当してください。」


「「「了解!」」」


「エーリッヒ隊員、エルヴィン隊員、ハインツ隊員、ユミール隊員達ゴブリン族のみんなは、集団戦で襲いかかってくる兵隊蜘蛛達の相手を頼みます。」


「「「「了解!」」」」


「野ウサギ族以外のウサギ族達は、それぞれ3体ずつの2組に分かれて、1体の兵隊蜘蛛を相手してください。」


「「「「「「ピー!」」」」」」


 野ウサギ族だけでなく、他のウサギ達も敬礼のポーズで応えている。いつの間に覚えたんだ、、、。まあ、非常に可愛らしくて結構!!


「クレオ隊員とパトラ隊員は2人で1組となって、兵隊蜘蛛を倒してください。」


「「りょーかい!!」」


 アイドル達も敬礼で応えている。やばい、これ、可愛すぎだろ、、、。


「ライム隊員は、糸の回収と、戦闘しているメンバーが攻撃を喰らいそうになったらガードしてあげて。特にウサギ族とクレオ君とパトラちゃん達の護衛を優先で。」


「ピー!」


「ギルド長は、蜂さん達の護衛です。ぶっちゃけ、私達が倒せずに漏れてきた蜘蛛達を倒してくれればいいです。」


「わかりました!」


 口調こそハッキリだったが、躊躇いながらの敬礼だった。ここフロスト領での様式美だからこれから覚えてね。ちなみにギルド長だが、名前知らん。性別もわからん。一つ言えることはエルフ族だろう、で、超美形である。鑑定すればわかると思うが正直どうでもいい。ってか、エルフ以外のギルド長見たことないんですけど、ひょっとしたら、ギルド長の資格がエルフであることかもしれない。


 そんな下らないことを考えつつ、アラクネ率いる集団へと近づいていく。蜘蛛達はこちらにようやく気付いて戦闘態勢に入る。一部の兵隊がワラワラとこちらに近づいてきているのがわかったので、こちらも迎撃と生きましょうかね。では私もアルスリを取り出して、と、あんまり距離は離れていないからドリル状の氷でいいかな。ダンジョンだからぶちまけたりはならないだろうしね。


「糸がこちらに向かって来てますので、これより戦闘開始です!!」


 マーブルとジェミニは肩から飛び降りて向かって行った。私はとりあえず、一番近くにいる蜘蛛めがけて、氷のドリルを投げ込む。ドリルは狙い通りに胴体に刺さり、氷を爆破させる。よし、一番槍と一番首はもらったね。今回は大勢のパーティだからほどほどにして、特にウサギさん達のサポートに回るのもいいかな。


 3体1組となっているウサギ族達は私の左右に控えているので、こちらに近づいてきている蜘蛛の足を水術で少し凍らせて動きを鈍くさせる。動きが鈍くなった蜘蛛達が驚いている隙をついて、ウサギ達がそれぞれ1体の蜘蛛の周り3方向に囲んで一斉に後ろ足の蹴りを食らわせた。3方向からの攻撃に力の逃げ場がなくなり強い衝撃が兵隊蜘蛛にかかるわけで、もちろんあっという間に兵隊蜘蛛は爆散した。もう1体の蜘蛛に対しても同様のことが行われて、やはりこちらも爆散した。あれって攻撃する方にも結構ダメージが来そうなんだけど大丈夫かな、と心配していたが杞憂だった。


 先陣切ってこちらに突っ込んできた蜘蛛は4体で1体が残る計算になる。では、私が、と思っていたら2人の影が素早く残り1体の蜘蛛に向かって行った。2人というのはもちろん、我が領のアイドル獣人の2人だ。2人は蜘蛛の前後に陣取ると、「とりゃー!」「たー!」の声が同時に聞こえたと思ったらこの蜘蛛も爆散していた。その後、ウサギ達とアイドル達はさらなる獲物を求めて移動していた。


 他の人達の様子はどうかな、と思って見てみると、マーブルは風魔法で瞬殺、ジェミニは前刃で一刀両断、レオ達野ウサギ族の2体もそれぞれ前刃で一刀両断していた。このチート達はアラクネの様子を見ながら倒す数をセーブしていた。アインは飛びかかってきた蜘蛛を下から打ち上げて天井にぶつけて爆散させていた。ってか、あれ鉄の棒? どう見ても重そうなやつなんですけど、軽い木の棒きれのように扱っているし、、、。


 やはり撃ち漏らしは少しは発生しているようで、ギルド長が双剣で切り裂いていく。蜂さん達も近づいてきた蜘蛛を針を飛ばして迎撃していた。ハニービーって、デカいけどミツバチだよね? 針無くなっても大丈夫なの? とか、いらん心配をしてしまっていた。


 一部ではやはり集団で襲いかかる蜘蛛達もいたが、集団には集団、ということでゴブリンさん達の出番だ。エルヴィンさんが弓で牽制、というか次々に命中させているんですが、、、。近づいてもエーリッヒさんが前面に立って、攻撃を防ぐ。ハインツさんが槍で攻撃して弱らせてから、ユミールさんが範囲魔法で殲滅させるといった感じで集団をつぶしていく。ちなみにユミールさんはゴブリン語で魔法詠唱しているかと思って、その詠唱内容を聞いてみると、「カワイイ服をよこしなさい、、、。」みたいな内容だった。そんなんで魔法放てるんかい、、、。


 ライムはあちこちを跳びはねては、嬉しそうに素材を拾っていた。途中で攻撃を仕掛けてきた蜘蛛もいたが、ライムには全く通じなかった。それどころかライムに取り込まれて消滅した蜘蛛もいたくらいだった。ありがとうね、ライム。あとでいっぱいモフる(?)からね。


 こうして、ボスのアラクネを無視して雑魚だけを狩ること数時間。最初こそ余裕を見せていたアラクネだったが、生み出しては倒されてを繰り返されるばかりか、アラクネ本人が近づいても無視されるどころか、アインに「邪魔だ!」と吹き飛ばされる始末。ガマンできずに、みんなのサポートに回って水術で動きを鈍らせることに邁進していた私の前に現れた。その表情は憔悴しきっていた。


「アンタがこの連中のボスね、、、。」


「そうだけど、君は言葉が話せるんだね。」


 そう、このアラクネは人語が話せるのだ。それに驚いた。


「私を無視しないで! 私を倒しに来たんじゃ無いの?」


「いや、だってさぁ、君はアラクネだよね? ということは兵隊いっぱい呼ぶじゃん。で、その兵隊達っていい糸を落とすじゃん。でもさ、君を倒すと、これ以上糸取れないじゃん? だから、できるだけ糸集めておきたいじゃん。というわけで、まだまだ倒すから、一杯生み出してね、よろしく!!」


「私も舐められたものね。」


「本当に君を舐めているのか試して見るかい?」


 そういって、戦闘態勢にはいると、アラクネの表情が青ざめる。


「ヒイッ、、、。ご、ごめんなさい、、、。ところで何が目的なの、、、?」


「最初は、ここにいるハニービー達の救援が目的だったけど、途中で増えた。」


「わかったわよ。もう、ハニービー達を襲ったりしない。それで許して!! で、増えたというのは? 何となくわかるけど、、、。」


「うん、理解が早くて助かるよ。増えたのは、糸が欲しいから、たまにでいいから提供してくれると嬉しい。」


「わかったわよ。その条件を呑むわ。」


 その言葉を聞いて、後ろで控えていた女王蜂に話しかけた。


「ということで、もう安心だよ。これでいいかな?」


「アリガトウ、コレカライッパイ、ハチミツツクルカラ、モラッテ。」


「ありがとう。毎日じゃなくていいからね。さて、君達についてだけど、ハニービー達の領域を荒らさなければこちらからは何も言わないけど、無理して他の虫達の領域を侵さないようにしてくれるとありがたい。」


「わかったわ。これ以上領域を荒らさないことを約束するわ。」


 こうして、この階層には上質なハチミツに加え糸が手に入るようになった。今回の戦闘でもかなりの量の糸が手に入ったので、我が領も更にいい暮らしが出来るようになるな。ハニービー達とアラクネの見送りを受けて地下2階の下り階段を降りていった。
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