アイスさんの転生記 ～貴族になってしまった～

第６７話 さてと、冒険者ギルドへと報告です。

　アンジェリカさん達はタンヌ王国へと戻っていった。こちらに移住希望の人がいるようだから、今できる限りの万全の状態で野ウサギ族の護衛や馬車、そして斥候を兼ねてカムイちゃんにも同行してもらったので大丈夫だとは思うけど、無事にこちらに到着してほしいところ。


　さらに万が一に備えてアンジェリカさんとカムイちゃんにそれぞれ通信の魔導具を持たせておいた。転送ポイント設置の魔導具を使っても、マーブルはその転送装置を使うことができるため、最悪私達も救援にいけるようにはしておいたので、これでダメだったら諦めるほかない。


　いつまでも気にしていてもキリがないので、気持ちを切り替えて次の予定を消化しますか。それはギルドへの報告である。とはいえ、あのダンジョンはフロスト領で管理することは決まっているので、領主館に呼んで話すのもいいけど、ここは敢えてアマデウス教会の会議室で話すとしますかね。フロスト城（本人はその名称は認めていないけどね）は訓練所以外は完成していない、というか、あれ、いつ完成するんだろうか、、、。


　参加者は領主側として、私達はもちろんのこと、フェラー族長にカムドさん、あとはウルヴ、アイン、ラヒラスの直臣３人が参加し、ギルド側では、ギルド長とギルド職員が何人かという感じだ。ちなみにフロスト支部には副ギルド長という役職は存在しない。というのも、単純な話、そこまでの規模ではないから。


　アマデウス教会の会議室に全員が揃ったところで、報告会が始まった。堅苦しいのは嫌いなので、最初の挨拶などは省略、早速本題に入った。ダンジョンについて説明するのは私自身だ、というのも、そもそもこの面子の中で実際にダンジョンに入っているのは私達のみであり、カムドさんはカムイちゃんからある程度話は聞いているだろうけど、詳細についてわかっているわけでもないからね。


　説明の内容は、全部で７階層となっており、地下１階は洞窟状の地形で、入り口から少し進むと豆柴が５匹おり、更に奥には豆柴に化けた魔物がいることを話したら、豆柴について説明を求められたので、小さい可愛いワンコだと説明したら、特に女性職員が豆柴に凄い反応を示した。気持ちはわかるが、先に進めないといけないので、構わずに先の話をした。あ、ダンジョンマスターが私に変わったことは話していない。どうせ領内で管理するからそこまでギルドに説明する必要はないし、それがバレると後々面倒なフラグが立ってしまうだろうから、そういったものは勘弁願いたい。


　一通り説明を終え、このダンジョンはフロスト領で管理することを伝えると、ギルド長が何やら難しい顔をしていたのが気になったので聞いてみた。


「ギルド長？　何か難しい顔をしているけど、どうしました？　流石にこのダンジョンは冒険者に開放できないので我が領で管理しますが、反対意見があるの？」


「いえ、そのダンジョンですが、フロスト伯爵側で管理してもらうことには異存はありません。ただ、少し気になる点がありまして、、、。」


「気になる点？　機密事項でなければ教えてくれないかな。」


「はい、実は、フロスト伯爵が戦姫の３人と一緒にそのダンジョンに行かれている間に、何か手がかりはないかと、ギルドの書庫にある本で調べていたところ、何やら、今伯爵がおっしゃった内容のダンジョンについて記載がありまして、、、。」


「ほう、記載ですか。一体どんな内容でしたか？」


「はい、その本によると、そのダンジョンはトリトン帝国内にある、草木すらほとんど生えない荒れ地にぽつんと穴が空いている場所に存在し、うかつに入ってしまうと、猛犬どころか災厄クラスの魔犬が待ち構えており、そのダンジョンは『地獄のダンジョン』と名付けられております。地下一階の様相がフロスト伯爵の報告通りの内容であるので、可能性は高いと思います。」


　なるほど、冒険者ギルドの保管しているそういった記述のあるものは結構信憑性が高いものが揃っているらしい、アンジェリカさん達がそう言ってたな。まあ、信憑性が高くなければ、ここまで大切に記述を保管しておく理由も無いしね。あと、トリトン帝国は国土は極貧であるが、国自体は相当古くから存在しているし、あのダンジョンがあったところは、私達が開発していなければ、記述通りの所にあるのは間違いない、けど、地下一階にいたのは、超可愛い豆柴と、骨を落としてくれるダンジョントラッパーという魔物だけだった。


「災厄クラスの魔犬、ね、昨日まで潜った経験からいわせてもらうと、確かにある意味災厄クラスの魔犬であることは間違いないね。ただ、それは可愛さでの災厄クラスかな。」


　私がそう言うと、マーブル達も頷く。個人的にはマーブル達の可愛さが突き抜けてはいるが、あの豆柴達の可愛さもかなりのものである。いや、親馬鹿補正がつくと、同等クラスといえるかもしれない。正直、今日もあのダンジョンに行って豆柴達をモフりに行きたいくらいだから。


「そうなんですか？　地獄のダンジョンと名付けられたくらいですから、かなり強力な魔物が存在しているような気がします。また、書物には命からがら逃げてきたという記述もありますので、可愛さでの災厄ではないと思います。」


「なるほど。もし、探索したダンジョンが書物通りの地獄のダンジョンであるなら、ひょっとしたら入る人達によって敵の配置が換わるのかもしれないね。」


「その可能性も否定できません。といっても、私はあくまで書物の内容から判断しているにすぎません。信憑性であれば、実際に潜られたフロスト伯爵の証言の方が正しいと思います。」


　そうギルド長が言ってくれるが、ギルドに保管されている書物の内容も無視できるものではないと思う。


「まあ、そこは実際に行って確かめるのが一番いいと思う。というわけで、ダンジョンツアーを開催したいと思います。参加者はどうしようかな、、、。あまり大人数で行くのも何だし、隊長クラスが何人か参加すればいいかな。ギルド側では、ギルド長に来て欲しいけど大丈夫かな？」


「はい、ギルド側として参加します。早めに確認しておきたいですし、明日しか余裕のある日程がないので、明日でかまいませんか？」


「私は明日で構わないよ。では、明日行くということで、よろしく。」


　報告会はこれで終わり、ギルド長とギルド職員の皆さんは冒険者ギルドへと戻っていった。残った私達で選抜を行う。


「ゴブリン族からは、エーリッヒ、エルヴィン、ハインツの３人に行かせます。ダンジョンに行くにしても、恐らく彼ら３人の誰かが引率することになるでしょうから。」


「そうですね。ゴブリン族の方はカムドさんに一任します。ウルヴ、アイン、ラヒラス、君達はどうかな？」


「私は騎乗訓練が最近始まったので、その調練をしなければなりません。」


「俺は、木騎馬のメンテなどで余裕がないかな。」


「俺は大丈夫だな。」


「じゃあ、アインが参加決定ということで。一般の領民達にはまだあのダンジョンは厳しいかなぁ。それとウサギ族には何体か一緒に行ってもらいますか、その選出はフェラー族長にお願いしたいと思います。」


「承知しました。レオ殿と相談して２、３人来てもらいますよ。」


「じゃあ、その方向でお願いしますね。」


　報告会も終了して、明日ダンジョンへと潜る人選も決まった。さてと、これからどうしようかな、、、。あ、そうだ、姿が変わった訓練所に行ってみるとしますか。


　訓練所に到着すると、みんな一生懸命訓練していた。いや、一生懸命なのは今までと同じだけど、今まで以上に熱気が、、、。よく見てみると、マーシィさんが、訓練所内で直に鍛えていた。動き自体は霊体の時と特に変わらないが、違っているのは戦闘中でもアドバイス、というか怒号が響いていた。


　一通りの戦闘が終わると、マーシィさんはこちらに気付いて声をかけてきた。


「おう、伯爵、よく来たな！」


「マーシィさん、早速やってるね。調子はどう？」


「おう、かなり調子は良いな。ここに来る連中は、やる気に満ちているから鍛え甲斐があるぜ！　霊体の時でもそれはある程度感じていたが、直に接してみると余計にそれがわかるな。ここに連れてきてもらえて本当に感謝しているぜ！！」


「ところで、あの部屋は使っていないの？」


「いや、あの部屋はあの部屋で今まで通り霊体が頑張っているぜ。俺は広いところで戦いたいから、こうして部屋の外で戦っている、ってところだな。」


「結局、霊体と別になっているね、、、。」


「ああ、霊体と合流しなくても問題ないようだしな。まあ、実際は俺自身、あの部屋は窮屈だから試しに霊体と別れてみて問題なかったから結果そうなっただけだがな。」


「なるほど。喜んでくれているようで何よりかな。あと、何か要望があったら言って。それでこちらの希望だけど、領民達を更に強くして欲しいな。」


「おう、もちろん喜んで強くしてやるぜ！　楽しみに待ってな！！」


　これ以上いると、鍛錬の邪魔になりそうだから、この場を出ましょうかね、って、よく見るとクレオ君とパトラちゃんが一緒に参加していた。強くなるのは歓迎するけど、ムキムキマッチョになるのだけはやめてね。君達は我が領のアイドルなんだからね、、、。


　訓練所を出た私達は、ダンジョンに顔を出すことにした。モフモフを堪能するのが第一の目的ではあるが、今日は他にも目的がある。それは、ギルド長と話していたときに聞いた、災厄クラスの魔犬という存在だ。少し気になることがあったので、それを確認することだ。


　マーブルの転送魔法でダンジョン入り口へと移動する。それから地下一階に入って進んでいくと、いつも通り豆柴達が尻尾を振りながらこちらに突撃してきたので、しっかりと受け止めてモフモフを堪能する。モフモフを堪能しながら、豆柴を鑑定する。


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『ミニマム・グラスドッグ』・・・お主のいた世界でいうところの豆柴じゃの。それ以上でもそれ以下でもないぞ。ちなみに、子犬の大きさではあるが、これでも大人の大きさじゃぞ。あと注意事項じゃが、こやつらはこのダンジョンでしか生きられないから、間違っても地上に連れて行こうなぞ考えてはいかんぞ。それと、こやつらはこのダンジョンの魔素が食事みたいなものじゃから、餌については心配しなくてもよい。見かけたら少し遊んでやるとよいぞ。また、こう見えてこやつらは賢いので、こちらの言葉が通じるから大いに話しかけて上げるとよいぞ。

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　ありゃ、前回の鑑定結果と同じか、、、。いや、アマさん印の鑑定は、全く同じという結果は起こらない。基本面倒臭がりな面があるので、同じであれば、「以下略」みたいなもので省略してくるが、今回はそうではなかった。ん？　何か矢印というか、某ＲＰＧに出てくる続きアリみたいなマークがあるな。続けて見てみようかな。


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　お、ようやく気付いたかの。基本、豆柴は弱い存在じゃから、こやつらには合体能力を授けておいたぞい。実際に頼んでみれば合体してくれるじゃろう。ただ、驚いても知らんからの。

　まあ、印は先程付けたばかりじゃから、気付くもくそもないのだがの。

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　今付けたんかい、、、。だったら、ようやく気付いたとか言うなっての、、、。まあ、それはいいか。なるほど、合体ね。どうなることやら楽しみだねえ。そう考えながらしっかりとナデナデしながら豆柴に聞いてみる。


「君達合体できるんだってね？」


「オン！」


「ちょっと、合体した姿を見せてくれないかな？」


「オン！」


　私がモフっていた豆柴がそう答えると、じゃれついていた豆柴達は私達から離れて並ぶように整列した。真ん中にいた豆柴が、「オオーーーン！！」と吠えると、豆柴達は３匹と２匹に別れると、３匹の方は２段ピラミッドの感じで２匹の上に１匹が乗り、２匹の方は、１匹の上に１匹が乗った。それぞれが光に包まれて、その光が消えたと思ったら、２首の犬と３首の巨大な犬が目の前にいた。さて、鑑定鑑定。


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『ケルベロス』・・・３つの首を持つ地獄の番犬と呼ばれる魔物じゃな。

『オルトロス』・・・２つの首を持つ以下同文じゃ。

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　ほう、そう来ましたか。なるほど、それでここには５匹いたのか。そうなると、ギルドにあった文献も私達の実際に見た報告も両方とも正しかったということだ。ただ、巨大な魔犬になっているとはいえ、目は先程の豆柴と同じくクリッとしていて非常に愛らしかった。行動も豆柴の時と全く同じで、嬉しそうにこちらに突進してきた。いや、流石にそれだけ大きいと飛ばされるから、危ないから、と思っていたら、かなり加減をしてくれたらしく、しっかりと抱き留めることができた。


「「「オオーーン！」」」


「「オオーーン！」」


　もの凄いモフモフ感だ。豆柴のときもよかったが、こっちの姿でのモフモフ感も素晴らしかった。でも、体が大きい分、声も太くなっており、しかもサラウンドで来ているのは勘弁して欲しいかな。


　マーブル達も大喜びで、しばらく一緒に遊んでいた。ひとしきり楽しんだ後、元に戻ってもらい、骨をあげてから、また来ることを約束して別れた。今度は違う人達を連れてくると言ったら喜んでいた。


　豆柴達の部屋を後にして、豆柴に化けたダンジョントラッパー達を倒してからいつも通り骨を手に入れておいてから、地下二階へと行った。地下二階ではハニービー達が待ち構えており、私達の姿を見るなり突撃してきた。代わる代わる受け止めてはモフモフを堪能した。女王蜂からは、「ハチミツ、モウスコシマッテ」と言われたが、ハチミツ目的で来ているわけでは無いので、もらえるなら欲しいけど、慌てずゆっくり丁寧に作って欲しいと頼んで、ハニービー達と別れて領主館へと転送魔法で戻った。


　その後はいつも通り過ごして今日は終了。さて、明日は再びダンジョンです。今回は牛乳をたくさん手に入れるとしますかね。