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第63話 さてと、ダンジョン地下7階です。

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 テシテシテシ、テシテシテシ、ポンポンポン、つんつんつん。あれ、いつもより速度が、、、。ってか、なぜお前もいる、、、。いつもの朝起こしだけど、何故かマーブル達の叩く回数が多い気がした。また、コカトリスがここに住んでからは当たり前のように参加してきている、解せぬ、、、。


 まあ、それはともかく気分のよい目覚めと共にマーブル達と朝の挨拶を交わす。今日のコカトリスも別の子が担当しているようだ。何か当番制? コカトリスは用意してくれた卵を置いてくれると、ここを出て行った。いつもありがとうございます。置いていってくれている卵の数は初日は45個だったが、日に日に数がふえているのが驚きだ。


 ジェミニがコカトリス達から聞いたところ、食べる用途に限れば、1体につき1日100個は余裕だそうだ。100個は余裕ということは、現在15体いるから、1日1500個余裕で生み出せる計算になる。そんなには使い切れないって、、、。牛乳も手に入る充てができたし、卵もふんだんに手に入るようになった。甘味についてはスガープラントがあるな。ゴブリンの職人に卵を濾す道具を作ってもらえばプリンができるな。よし、今度作るとしましょうか。ただ、バニラエッセンスのようなものがないと、甘い卵豆腐になってしまうけど、、、。って、卵豆腐も作れるのか! いや、実際には卵豆腐もどきか。大豆ないしね。まあ、その辺はあとでゆっくり考えるとしましょうかね。


 話は戻るけど、流石に毎日これだけの数の卵を頂いているので、領民達にも分けているが、それでもそこそこの数は余るので、それは大切に保管している。わざわざ卵用にマーブルにマジックバッグを作ってもらってある。しかもかなり気合を入れて作ってもらったため、容量は1km立方というもの凄い容量である。マーブル凄ぇ、、、。


 コカトリス達から頂いた食用卵を美味しく頂くために計画を立てるのも大事だが、今はそっちよりも昨日スローモンキー達からもらった、味噌、こちらの方が大事だ。味噌を生み出す木の実は赤っぽいのと白っぽいのが2種類、中身は見た目の通り、赤っぽいのは赤味噌で、白っぽいのは白味噌だ。昨日もらったときに私がもの凄く嬉しそうにしているのを見て、マーブル達の期待感もそれに比例しているようだ。そこまで期待されてしまうと怖い、あくまで好みの問題だからそこまで期待しないでね、、、。まだ昆布や魚は手に入っていないので、出汁が野菜や魔物の骨くらいしかないから完璧ではないのだよ、、、。


 さてと、気合を入れて作りますかね。朝食のメニューはほぼいつも通りである。押し麦のご飯に、目玉焼きと卵焼き、あとは味噌汁だ。この味噌汁が大事であり、今後、私の作る食事には無くてはならないものとなるだろう。今日は敢えて、赤味噌と白味噌を両方用意して、マーブル達の好みを確認しておきたい。合わせ味噌は後日の予定。味噌汁の具についてだが、根菜類が今の時点では限られているので、あまりバリエーションはないけど、配分を変えれば多少味も変わるから問題ないだろう。オークを使った豚汁も魅力的だ。


 いつも以上に時間がかかってしまったが、どうにか完成した。みんなの分を配り終えたので、頂くとしましょうか。マーブル達も待ちきれない様子であり、マーブルなんかはテーブルをテシテシと叩いて催促する有様だ。行儀が悪いけど、とても可愛らしいので、注意するよりも魅入ってしまう。


「では、いただきます!!」


「ミャー!!」


「いただくです!!」


「いただきますー!!」


 やはり、最初は赤と白の両方の味噌汁から頂くことにする。ちなみに味噌汁は、おかわりできるように大量に作ってある。最初は白味噌の味噌汁に手を付ける。具を少し食べながら味噌汁を飲む。ああ、これだ、この味だ。そう思いながら、今度は赤味噌の味噌汁に手を付ける。こちらも具を少し食べながら味噌汁を飲む。以前いた世界の味噌汁とは微妙に味が違っていたが、それでも味噌汁であることには変わりない。


 味噌汁を飲みながら、今まで生きてきた記憶が浮かんできた。以前いた世界で45年生きたが、高校生になった頃にはもう身内と呼べる存在は誰もおらず、ほぼ1人で過ごしてきた。もちろん今もそうだけど、以前いた世界でも特にイケメンという訳でもなく、自己評価では中の下か下の上程度の外見だったし、仕事ができる有能な人間かといえばそんなことはなかった上に、基本引きこもりだったので、結婚はおろか年齢=彼女無しの状況だった。楽しみといえるものはそんなに多くはなく、数少ない楽しみの1つが食事であり、その食事に欠かせないものが味噌汁だった。とはいえ、個人的にはつまらなかったかといえばそうでもなかった。そんなことを思い出していろいろな感情が湧き出ていたらしく、気がついたら涙を流していた。それを見たマーブル達は驚いていた。


「ミャッ?」


「ア、アイスさん、どうしたです?」


「あるじー、だいじょうぶ?」


「ああ、ありがとう、大丈夫だよ。ただね、以前いた世界のことを思い出していたよ。」


「アイスさん、今でも以前の世界に戻りたいと思っているですか?」


 ジェミニは私が思ってもいないことを聞いて来た。


「いや、戻りたいと思ったことはないかな。ただ、懐かしさのあまりいろいろな気持ちが出たみたいだね。正直、以前いた世界がつまらなかったとは言わないけど、今はマーブル、ジェミニ、ライム、君達がこうして私と一緒にいてくれている今の生活が楽しくて、戻りたいとは思わないよ。」


 私がこう言うと、3人はパアッと表情を明るくした。


「ところで、この味噌汁の味はどうかな? 個人的な感想でかまわないよ。」


「ミャア!」


「この味噌汁というのは美味しいですが、ワタシ個人的には、卵焼きの方が好きです。」


「これもおいしいけど、ボクはおにくのほうがすきー!」


「ははっ、そうか、思いっきり好みが別れたね。」


 まあ、ここまで味噌汁が好きだという人も珍しいだろうから、それは仕方がない。ちなみに、マーブルは目玉焼きのソースがけがこの中では一番好きだそうだ。とはいえ、味噌汁が嫌かといえばそうではなさそうだ。

作りすぎたせいで、結構残っていたので、これは空間収納にしまっておいて、後で頂くとしましょうか。


 朝食が終わって、モフモフを堪能していると、女性陣4人が来たので、挨拶を交わしてダンジョンへと出発だ。今日は地下6階である。とはいえ、いつも通りダンジョン入り口から入って、地下1階では豆柴達を、地下2階ではハニービー達をそれぞれモフモフしてから地下6階の下り階段へと転移魔法で移動する。スローモンキー達はいなかったので、階段を降りて、地下7階へと移動する。


 地下7階は石で構成されており、道はやはり一本道だった。そのまま進んでいくと、大広間に到着した。大広間には人が1人待ち構えていた。全員で進んでいくと、その待ち構えていた人が話しかけてきた。


「よう! よくここまでたどり着いてきたな、歓迎するぜ!!」


 今更だけど、何で人がここに? と思ったのは私だけではないはずだ。


「お前らの顔を見ると、何で人がここにいるんだ? って顔してるよな? そりゃそうだわな! 俺も逆の立場だったらそう思うだろう。」


 その男の発言に頷く。


「うんうん、正直なのはいいことだぜ。先に自己紹介しておくか、俺の名はポーラ・マーシィ。一応これでもSランクの冒険者だった。一応というのは、もちろん、俺はとっくの昔に死んだからな。正直誰もここに来てくれなくてずっと寂しい思いをしていたんだ。そんなところで、お前達が来てくれたってわけだ。」


 ちょっと待て、ポーラ・マーシィだと? 私が見つけて、ゴブリンのムラに預けて、今はフロスト城予定地の訓練場にいる、教官と崇められているのも同じ名前だけど、同一人物か? それにしては外見が全く異なっているんだけど、これは一体、、、。


「ん? お前さん達、よく見ると、俺の霊体とよく訓練している奴らだな。霊体がお世話になっているぜ!」


「霊体? いや、どう見ても見た目が全然違うんだけど、、、。」


「見た目? ああ、そうか、今はこんなナリしてるけど、生前はあんな姿だったからなあ。」


 って、本人かよ! 外見変わりすぎなんですが、それは、、、。他のみんなも変わりすぎた外見に唖然としていた。


「ちょっと聞きたいんだけど、何でこんなに見た目変わっているの?」


「そりゃあ、ここにずっといても誰も来てくれないし暇だったからな。たまには外見をいじりたくなるってもんだよ。」


「うーん、わかったようなわからないような。それで、なぜここにいるので?」


「そんなのはこっちが聞きたいぐらいだ。気がついたらここにいてな、何故か知らねえけど、ここから出られねぇんだよ。何か、ダンジョンマスターってやつになったみたいでな。」


「マーシィさん、ここのダンジョンマスターだったんかい!」


「おう、そうみてえだな。ダンジョンマスターはここから出られねえらしく、ずっとここで突っ立っていたんだよな。まあ、そんなことは今はいい。ちょっとお願いがあるんだけど聞いてくれねえか?」


「まあ、霊体の方にはかなりお世話になったから、できる限りは聞くよ。」


「そいつはありがてえな。で、お願いっていうのは他でもねえ、俺と1対1で勝負して倒して欲しいんだよ。」


「いや、それ難しいでしょ。今はマーシィさんの霊体って私の城予定地の訓練場で教官やってもらってるけど、まともに戦って勝てる領民っていないし。」


「ありゃあ、そういえばそうだなあ、困ったなあ、、、。いや、1人いるぞ。全力で戦って俺の霊体を倒したやつがいるじゃねえか。」


 マーシィさんの本体(?)は、そう言って私を見てきた。


「お前さん、確か格闘術の極を持っていたよな。しかも、霊体とはいえ、俺の全力に勝っているよな。リベンジマッチというわけでもないが、もう一度戦いてえが、いいか?」


「戦うのはかまわないけど、マーシィさんを倒したらどうなるの?」


「俺を倒したら、俺はここから出られるようになる。ダンジョンマスターのお役御免になるからな。」


「そうすると、ここのダンジョンマスターはどうなるの? 正直、ここメチャクチャいいダンジョンだから無くしたくないんだけど。」


「まあ、それは何とかなるんじゃねぇの? 今までここら辺って何も無かったんだろ? お前さんが領主になっていろいろと作ってくれたから、ムリしてダンジョンマスター置く必要もなくなってきたそうだし。」


「置く必要なくなってきたんなら、解除しても良さそうなんだけどね。」


「まあ、それを言ってやるなよ。向こうには向こうの都合ってもんがあるんだろ。」


「そんなもんかな、、、。最悪当てはあるか。お世話になっているマーシィさんのお願いを無碍にはできないしね。」


「おお、そうか、戦ってくれるか。じゃあ、気が変わらないうちに始めようぜ!! これから戦闘を開始するから、他の連中は少し離れていてくれ。」


 マーシィさんがそう言うと、他のメンバーは少し下がった。


「よし、巻き込まないように結界を張るぜ。」


 私とマーシィさんの周りに結界が張られる。一応戦闘の様子が見られるように透明になっている。


「さてと、それじゃあ、戦闘開始だ。」


 マーシィさんはそう言うと、背中に下げていた大剣を取り出した。対して私はそのまま。普通に考えたら大いにこちらが不利な状況であるといえるが、私はそうは思わなかった。マーシィさんは私に格闘術極を伝授した人物だ(霊体の方だけどね)。マーシィさんが生前メチャクチャ強かったであろう事は容易に想像できたが2つも3つも極の技能を持っていることはない、つまり、私に言わせると大剣を使うことでマーシィさんは弱体化しているともいえた。


 私の予想通りに、さほど手こずること無く攻撃する前に懐に潜り込んでボディブローを鳩尾に当てて、動きが止まった隙に背後に回り込んでフルネルソンの状態に持っていく。そのまま後方に投げ、ドラゴンスープレックスを喰らわせ、フックを外さないまま今度は両腕を抱え込んだ状態でへその辺りに腕を回してまたもや後方に投げる、いわゆるダルマ式ジャーマンというやつだ。相手を倒すことを優先しているため、できるだけ高角度に落とすと、マーシィさんが消え、一振りの大剣が残った。
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