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第58話 さてと、ダンジョン地下3階の探索です。

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 テシテシ、テシテシ、ポンポン、いつもの朝起こし兼、朝食の催促だ。朝食については最近ほぼ毎日同じようなメニューである。押し麦のご飯と、薄く細かく切った肉類と、あと適当なスープである。そういえば、スープで思い出したのだが、ここ数日はねぐらに行っていないのに気付いた。なぜいきなりねぐらか、といえば、スガープラントの存在である。


 スガープラントは、砂糖大根が超巨大化した形をしており、白い部分が甘み、茎の部分が塩気、葉の部分が香辛料的な味をそれぞれ出してくれるほぼチート的な素材だ。ここでも栽培するのは考えたが、それ以上に他の種類の植物をここでは育てていきたいと思い、必要な分だけねぐらから回収しては加工して、自分たちで使ったり領民達に配ったりしている。ぶっちゃけ、スガープラントは領内のみの消費を考えており、販売には全く使う気はない、というのも、他の産業を一気に潰してしまう可能性のある危険な植物でもあるからだ。あと一週間分くらいは余裕で残っているので、あと数日ダンジョンに行って、数日はダンジョンに行かずに領内で何かするのもアリだろう。


 朝食も食べ終えて、マーブル達のモフモフを堪能しながらそんなことを考えていたときに女性陣がこちらに来た。4人はすっかり仲良くなっており、正直安心している。特にアンジェリカさんなんかは、本来であれば隣国タンヌ王国の王女であるはずだが、彼女は一般市民とも気さくに話したりする珍しい存在だ。一方カムイちゃんはゴブリンという魔物である。大丈夫だろうとは思っていたが、まさかここまで仲良くなるとは思っていなかった、嬉しい誤算であった。


 まあ、それはそうと、今日は地下3階探索予定だ。本来であれば、マーブルの転送魔法で一気に地下3階への階段へ転移すればいいし、実際に出来る状態ではあるが、女性陣の強い要望により、地下1階からまた進む必要がありそうだ。まあ、豆柴達は可愛いし、ハニービーの女王蜂もすばらしいモフモフを堪能できるので、こちらとしても強く言えなかった部分は大いにあった。一応転移魔法は使うには使うのだけどね。ただ、到着場所はダンジョン入り口だ。


 ダンジョンに到着し、地下1階へと進む。道中はいつも通りなので省略。モフモフを堪能したとだけ伝えることにする。地下2階へと降りると、ハニービーがいきなりいたが、彼らは私達の姿を確認すると、すぐさま後方へと飛んでいった。案内してくれる感じでは無かったのでそのまま普通に進んでいくと、親衛隊を引き連れて女王蜂がやってきた。


「マタキテクレタ、アリガトウ。」


 と、覚えたばかりの言葉をつかって挨拶してくると、私達の方へと飛んできた。私は女王蜂をキャッチするとモフモフを堪能する。女性陣の突き刺すような視線を感じたので、まずはアンジェリカさんに女王蜂を手渡すと、女性陣は次々に交代してモフモフを堪能しているようだ。親衛隊達も女王蜂ほどではないが、なかなかのモフモフだったのは初めて知った。女王蜂は、今日は蜂蜜が用意できていないことを謝っていたが、私達はモフモフ目的で来たので、全く問題ない。とはいえ、モフモフを堪能に来たとも言えなかったので、ただ会いに来ただけだから気にするなと伝えると、女王蜂は嬉しそうに周りを飛び回っていた。もちろん、それを見てホッコリしたのは言うまでもなかった。


 ハニービー達と別れて、今度は転送魔法で階段まで転移した。目的は地下3階の探索だからね。というわけで、地下3階に突入した。


 地下3階は草原だった。辺り一面見渡す限り草だらけだった。傍目から見ていると、のどかな光景が目に映る感じだが、ある程度近づくと、そののどかな光景が一気に修羅場と化してしまう。森にいる魔物の場合は相手との力量差があると、基本近づいてこない。しかし、ダンジョンの魔物は基本的に力量差関係なく襲いかかってくる場合が多い。最初に遭遇した集団は山羊の集団だった。山羊とはいえ、かなりデカかった。のどかな光景で済んでいたときは、距離がかなり離れていたのであろう。折角だから鑑定してみましょうかね、アマさんよろ。


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『グレイトカシミール』・・・大型のヤギじゃのう、こやつらは基本的にはダンジョンにしか生息しておらんから比較的珍しい魔物じゃの。倒して手に入るのは肉と角くらいかのう。角は装飾品が主な使われ方じゃな。しかし、角は真っ直ぐな形をしておるから、それで『バンカー』を作るのも手じゃぞ。ただ、以前のウサギほど頑丈ではないから、以前と同じ使い方はできないがの。あ、それと、こやつらからは乳と毛が手に入るかもしれんぞい。乳は普通の味じゃが、毛は最高級品じゃぞ。果たしてお主は手に入れることができるかの?

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 なるほど、ヤギ肉か、悪くないな。って、何で名前がカシミールなんだよ! こういう場合は普通はゴートとかじゃないのか? カシミールの名前がついている時点で毛織物製品は最高級ってわかるじゃねえか。

とはいえ、一年中温かい我が領土で、毛織物が流行るか? これは交易用だな。ということは、毛については後回しでいいな。さてと、鑑定結果がわかったところでこちらも攻撃しますかね。


 結果から言うと、いくら巨大とはいえ、相手が悪かった。こちらとしては全く相手にならなかった。20体くらいの集団が一気に角と肉だけを残して消えていった。もちろん有り難く回収させて頂きましたとも。


 基本的には真っ直ぐ進むだけの簡単な仕事です、本当にありがとうございました、という感じでひたすら前進を続ける私達。次ののどかな光景が視界に入る。今度は羊か? 恐らくこいつらも巨大なんだろうな。鑑定しようとしても、『遠すぎてムリじゃ』、って返事が来たくらいだからね。しばらく進んでようやく鑑定が出来る距離になったらしいので、鑑定してみる。


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『グレイトメリル』・・・こちらは大型の羊じゃな。こやつら、というか、この階層におる魔物共は基本的にダンジョンにしか生息しておらんな。他に共通しておるのは、縄張りに踏み込むと問答無用で襲ってくることじゃな。倒したら肉と腸が手に入るぞい。しかし、肉はわかるが、腸は一体何に使うのかのう? もし知っていたら教えてくれると嬉しいぞい。あるいは、教会で供えてくれてもいいのじゃぞ? チラッ、チラッ、、、。あ、忘れておったが、こやつも高級品の毛が手に入るぞい。果たして、、、以下略じゃ。

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 今度は羊か、って、おいジジイ! 何が「供えてくれてもいいのじゃぞ? チラッ」だ! 遠回しに供えろってことかい! 素直に言えばいいだろう、何だよ「チラッ」て! 神様、しかもジジイの神様が使う言葉じゃないだろ!! まあいいや、確か腸が手に入るって言ってたよな、ということは、アレが作れるということか! これはテンションが上がるねえ。しかも先程の山羊よりも数は多いな。よし、ここは張り切らざるを得ないな。マーブル達のみならず女性陣達も肉が手に入るので張り切っているし、丁度いいな。


 みんなの思惑が一致したので、躊躇うことなく縄張りに侵入していく、まあ、肉とか関係なく先を進むのなら避けては通れないというのもあるけどね。


 こちらに気付いたグレイトメリル達は、一斉にこちらに向かって来た。こちらも作戦もくそもなくひたすら倒していくだけだ。ドロップの吟味こそできないけど、逆に言うと解体の手間がはぶける、というか血抜きしなくて済むのはありがたい。こちらもあっさりと倒して肉と腸ゲットだぜ。


 しばらくは山羊と羊とそれぞれいくつかの集団と遭遇して、素晴らしいくらい大量の肉と腸を手に入れることができホクホク顔だったが、先に進んでいくと、今度は肉牛の集団を発見。今度はどんな名前だろうかと期待しながら鑑定をかけていく。


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『グレイトマツサカ』・・・巨大な牛の魔物じゃ。こやつらもダンジョンのみ生息、且つ脳筋じゃ。落とすものは肉の他には各種内臓じゃな。あとは舌も落とすみたいじゃ、って舌? 食べられるのかのう、、、。ちなみに肉は最高級品じゃ。これに匹敵するのはミノタウロスの特別種くらいのものかのう。とはいえ、向こうは赤身が中心みたいじゃがの。お主のリクエスト通り、遠回しにねだるのはやめにするわい。手に入れたら少し供えてくれると嬉しいぞい。ああ、それと、こやつらも乳手に入るぞい。お主、乳牛じゃないのになんで乳が出るのか? と、思っておるじゃろう? それについては突っ込まない方向で頼むぞ。

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 チッ、先手を打ってきたか。まあ、それはいいか。でも、先程の山羊といい羊といい今回の牛といい、なんであんな名前がついているのだろうか。まあ、私的には明らかに高級品だということがわかって助かるのは事実かな。どちらにせよ、山羊や羊、牛からは乳が手に入ると。ただ、倒す場合は手に入らないということか。

まあ、手に入れる方法は考えてあるから問題なし。今は乳を入れる容器は用意していないので、どちらにせよ今回は普通に倒しますかね。倒しすぎて次回出てこなかったらどうしようとも思うけど、その時は素直に諦めるとしましょうかね。


 グレイトマツサカの集団に対しても私達のやることは同じだ。ズカズカと進んで向かって来たところを迎撃してお肉達を手に入れるだけの簡単な仕事です。


 しかし、山羊と羊とは違った部分があった。それは、ドロップ品がまばらだったのだ。肉や内臓や舌をドロップすることはするのだけど、山羊は肉と角を、羊は肉と腸をそれぞれ必ず落としていたのだが、こいつらは1体で全部落とすことはなく、それぞれ落とすものが異なっていた。ただ、舌は必ず落としてくれたので正直なところそこは助かった。とはいえ、数が数なだけに肉も内臓もそれなりの数は手に入ったけど。


 その後、この巨大な牛たちにちょくちょく遭遇したのだが、よく見ると、先程のグレイトマツサカとは微妙に見た目が違っていたりしたので、気になってこちらも鑑定をかけると、それぞれ「グレイトコウベ」だの、「グレイトミシマ」だの、「グレイトオウミ」だの、どう考えてもどこかの国のブランド牛の銘柄ばかりだった。これらの牛たちも肉牛のくせに牛乳が入手可能なのだ。まあ、肉牛でも牛乳は出るし、乳牛でも牛肉にはできる。美味しいかどうかは別にするとね、、、。今回はこれらの乳はスルーだけど、乳目的で集めたときに美味いものであると願いたい。


 これらのブランド牛の名前がついた魔牛たちも同じように倒して肉などを手に入れたが、正直肉について種類がわからない。以前いた世界ではほとんど食べたことのない逸品だからわかるはずもない。


 ドンドン進んでいき、たくさんのお肉達を手に入れつつ進んでいくと、ようやく次の下り階段にたどりついたので、マーブルに転送ポイントを設置してもらい戻ることにした。念のためマーブルにはこれだけ転送ポイントを設置しているけど大丈夫かどうか聞いたのだけど、余裕らしく、あと最低でも1000個くらいは戦闘力を落とすことなく設置できるとのこと。凄ぇなマーブル。流石は私の自慢の猫。


 転送ポイントを使ってアマデウス教会に戻って解散した。これらの肉については後日発表したときに盛大にこれらを使って宴会をする予定だというと、みんな納得してくれた。ただ、腸だけはすぐに使うから、ということも言っておいた。


 腸が手にはいたということは、もちろん例のアレを作る予定だけど、本心では少し塩漬けにしたかったが、そもそも塩は手に入っていないので、どうしようもない。スガープラントの茎は確かに思いっきり塩に近い味ではあるが、実際には塩ではない。とりあえずいつでも使えるように殺菌だけはしておきましょうかね、ということで、水術で高温で洗浄しながら使いやすい感じにまとめてから、改めて空間収納にいれておいた。


 さてと、明日はどうしようかな。このまま先を進んでおくか、この腸を使ってアレを作ろうか考えているうちに、いつの間にか意識が途絶えそうになり、必死で堪えていたのだけど、マーブル達の可愛い声でのおやすみの挨拶を聞いてしまってはそれに逆らうことができずに夢の世界へと旅立っていった。
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