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拐われた私。 一度目
頑張る事にきめたから。
しおりを挟むこの世界には瘴気という悪い魔力が濃縮された物が存在している。
少量であれば高位神官で瘴気を払う事が出来るが、浄化するスピードど瘴気が生まれるスピードに大きな差がある為、過酷な修行を経て力を身に着けた高位神官がどんなに浄化してももう追いつかないのだそう。
広範囲浄化が出来るのは聖女だけ、そして瘴気が生まれる魔の吹き溜まりに結界を張って外に漏れ出ない処置が出来るのも聖女だけということ。
そして聖女はこの世界からは産まれず、召喚によって異なる世界から迎えるしか方法がないとの事だった。
そして今回ルシアスさんに呼び出されたのは、私である。
「瘴気を払わなければこの世界はどうなるんですか?」
「瘴気が払われなければ、この世界は瘴気に呑まれます。そして…魔物だけが生存する世界になるでしょう…」
苦しそうに語るルシアスさん。
そっか、そうだよね。
国だけの問題ではなく世界の問題なんだもんね。
国だけなら周辺諸国と力を合わせてどうにか封じ込めれないか考えそうだけど、世界中でもどうにもならないなら、もう別の世界の力を借りるしかなかったんだね。
その別の世界から誘拐されるように連れて来られた私からしたら……
黒いモヤモヤしたものが胸に灯るけれど、けれど…
もう起こってしまった事はしょうがない。
「わかりました。私は、聖女? という存在なんですから、その瘴気を綺麗にして、最後は瘴気がたくさん生まれる所に結界というものを張ればいいんですね」
あっけらかんと語るサクラ。
ジメジメした気持ちは全てを終えてからと決めた。
「……サクラ、有難うございます」
「まだ何もしていませんよ? 全てが無事に終わったらたくさん褒めてくださいね」
にこっといい笑顔でサクラは笑ったのだった。
翌日からサクラはルシアスを師として、魔力に慣れる勉強が始まった。
聖女だからか魔力コントロール以外は全属性の魔法を発現させる事が出来たのは僥倖だった。
魔素の吹き溜まりを浄化しに行くといっても、その場所へ行く為に魔物だって大型の獣だって存在している。
勿論聖女の浄化はたくさんの実力派の騎士が同行し、その身は厳重に守護されるとしても、戦う力を聖女本人も有してる方がいい。
浄化の旅で何が起こるか分からないのだから。
ルシアスの為に、この世界の人たちの為に――――
サクラは熱心に学んだ。
聖女として立つからには行儀作法も…との事で、魔法以外にも学ぶ事は次々と増えた。
その事に不満を漏らす事なく熱心に学ぶサクラに周囲の者たち大きな好感や崇拝の念を持つようになった。
学びの合間にルシアスと設けられるお茶の時間が一番の楽しみになった。
時折、ルシアスの魔法術師騎士団同行で高位神官達と共に魔素を浄化する事もあった。
あちらこちらの国へ転移門を使用して浄化に行くのは時期尚早との事で、まずは自国の浄化を優先したのだった。
サクラの浄化の力は想定よりもはるかに強く、サクラが浄化した場から魔素が再度生まれる事はなかった。
そんな日々を過ごして三年。
自国の魔素は小規模で高位神官で事足りる状態までになった。
その事を受けて、サクラが十五歳の年に、浄化の旅に行く事が決定した。
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