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レオポルド〜君に出会ってから

★レオポルドside2

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二度目に彼女を見たのはルーファスの結婚式当日だった。

その数日前、来月の予定だった海外赴任が急に前倒しになり、急遽ルーファスの結婚式翌日の出立となった。

慌てて諸々の段取りをして、トラブルもあって大幅に遅刻した。

式が執り行われている祭壇に向かう途中で、誰かにぶつかった。

泣き腫らして目を真っ赤にし、化粧が剥がれてしまった花嫁の姉。

大抵が自分に良く見せようとしてくるのに、彼女は素顔を晒している。
自分も泣き腫らしているのに、汗を掻いた自分にハンカチを差し出す気遣いもある。

家族とは言え自分のことでもないのに、他人のことでこんなに感動することが出来るのが不思議だ。

自分が感情をあまり面に出さないのはわかっている。

反対に彼女はとても感情豊かだ。

その場で別れ、主役に挨拶してヘイルズ家の披露宴に向かった。

披露宴では互いに花婿側、花嫁側に分かれて座っていることもあり、彼女と接触する機会はなかった。

話そうと思っていたわけでもないが、ひとことハンカチの礼は言うべきだと思っていたが、人に囲まれて対応している内に、元の席から彼女は居なくなっていた。

父親や弟と踊っていたように思ったが、どこに行ったのか。よもや帰ったわけではないだろうし、昨日からヘイルズ邸に泊まっているとルーファスが言っていた。

特に探そうと思っていたわけではない。

これを機に親しくなろうとする女性たちや、次はお前だと言う親戚たちから逃れる意味もあって、人気のない場所に逃げ込んだ。

朝には任務のために国外に行かなければならない。これ以上酒を飲まされるのも遠慮したい。

行き場を探して温室に入ると、そこに先客がいた。

気配だけで立ち去ろうとしたら、聞こえてきた声に立ち止まった。

コリーナ嬢がそこにいた。

「私………頑張った?」

姿は見えないが、誰かと話をしているようだ。
しかし相手の声は聞こえない。

ハンカチの礼を言っておくべきだ。

明日から国を出てしまう。時間を置いて言うほどのこともない。ひとこと言うだけだ。

近づくと、彼女は一人だった。

「私の選択、間違ってなかったよね。ちゃんといいお姉さん出来てる?」

ワインの瓶を直接口にしながら、花壇の縁に腰掛けて、宙に向かってぶつぶつと言っている。

「後悔してないよ。トレイシーもルディも可愛い。大切な家族だもん。お母様に言われたからだけじゃなくて、私が自分で選んだことだもの……ヒック。お父様だって、不器用だけど……ヒック……私たちを愛してくれてるもの……」

グビグビと酒をあおって、ぷはぁと言いながら、尚もぶつぶつ話している。

「だから、誉めて~お母様ぁ……頑張ったねって、頭撫でてぇ……」

先ほど会った時に綺麗に結い上げていた髪も乱れ、せっかく手直しした化粧も、涙でまたもや崩れまくっている。

どうやら天国の母親に向かって話しているようだ。

「あ……」

ここはそっとしておいた方がいいかと踵を返そうとしたが、人の気配に気づいた彼女がこちらを向いた。

「…………………」

何て言葉を掛けたらいいかわからず、その場に立ち尽くし、暫く見つめあった。

「あ~~冷徹貴公子だぁ~」

にへらと笑い、影で言われているあだ名を口にする。

普段は勝手に言っておけばいいと思っているのに、なぜか彼女の口からそう言われるのが気に障った。

「やっぱり男前ねぇ………もてもてでいいわねぇ。選り取り見取り……羨ましいわぁ」

グビグビとまたもや瓶を傾けて直接飲みする。

「あれぇ……もうないや」

瓶を逆さに振り、最後の一滴が滴るのを仰向けになって、小さな舌を出して受け止める。

細く白い喉元が顕になり、ごくりと飲み込む。

ドレスのスカートは膝まで捲れ上がり、靴もどこかにやったのか、白いタイツを履いた裸足の爪先をピコピコと動かしている。

「ちょっとぉ……突っ立ってないで、お酒、持ってきなさい」

ばたばたと手足をバタつかせ、抗議する。

これまでも多くの酔っぱらいを見てきたが、その中でもダントツに可愛い。

「…………?」

その瞬間、胸がざわりと動いた。
体調に異変でも起こったのかと胸を掴む。

心臓は……特に痛みはない。

だが、少しの酒で酔ったのか、どきどきと脈打つ。

どさり。

音がして彼女を見ると、手足を広げて後ろの花壇に仰向けに倒れ込んでいた。

「おい、大丈夫か!!」

驚いて駆け寄った。

花壇に倒れ込み、ガーターベルトと太ももまで見えている。

「たおれちゃったぁ」

「手を貸そう」

ケラケラと笑い転げている彼女のスカートを黙って引き下ろしてやり、手を差し伸べた。

「だっこぉ」

「は?」

「抱っこしてよぉ」

小さい子が駄々をこねるように両腕をこちらに突き出し、甘えてくる。

「酔っぱらいだな…」

とろんとした目付きに舌足らずな言動。明らか飲み過ぎだ。

「ほら、起き上がって」

手を掴み引っ張ると、小柄な彼女は簡単に起き上がり、力の加減を間違えて勢い余って引っ張り過ぎて今度はこちらに倒れかかってきた。

「すまない」

謝ったが、自分に体を密着させ倒れかかってきた彼女から何の反応もない。

肩に乗った彼女の顔を覗き込むと、目を閉じて眠りこけている。

「眠ってしまったのか」

さて、この状態からどうすればいいか。

ワインの香りと彼女自身の香りが混ざり、鼻腔を擽ると同時に、密着する彼女の体の感触に、更に胸が高鳴った。
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