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73 明らかになる真実②

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「ところで、ミーシャはお前に何の話をしていたんだ?」

そう父に尋ねられ、作者発言について以外のことを、ギャレットは話した。
レーヌに対するエナンナたちがしたことについて、レーヌの虚言で自作自演だとは思わないのかと言っていたことを話すと、一堂は呆れていた。

「その件についても、オハイエ家の使用人たちから証言を得ている。すでに彼女たちに理不尽に解雇された者もいて、証拠は十分にある」

アベリー侯爵が言った。

「あなたのことについては、私に任せてくれるかしら? これは私が解決すべきことでもあるの。それに、彼女たちは父にも手を出していたの」
「オハイエ伯爵に?」
「エナンナと再婚した当初は、父はまだ私のことを気にかけてくれていたの。でも、次第に私を避けるようになって、どうやらエナンナが何か薬を飲ませて父を自分のいいように操っているのかも。彼女が体に良いからと、ある日から父に毎晩飲ませている薬があって、それをこっそり持ち出してもらったら、この国では珍しい幻覚剤だとわかったの」

小説では出てこなかった新たな事実に、ギャレットは目を見開いた。

「最近は部屋から一歩も出なくなって、エナンナ以外は誰も姿を見ていないそうなの。もしかしたらもう手遅れかも…でも、今からでも助けたい。オハイエ家のことは、私が何とかしないと」
「お腹の子のこともあるから、私やナディアも彼女を助けるつもり」

キャロラインとナディアが力強く頷きあう。

「それから、私の双子の兄のことも…」
「お兄さん、生死のわかっていない?」
「ギャレット、その子は多分、ジュストだ」

父が深呼吸してから、ギャレットに言った。
一瞬ギャレットは意味が理解できなかった。

「え、えええええ!」

部屋中にギャレットの声が響き渡った。

「驚くのも無理はない。だが、事実だ」

父がギャレットを落ち着かせようと、肩を叩く。

「私の家系に赤い瞳の者が生まれることは以前にもお話したと思いますが、私の双子の兄…オーランドもそれは見事な赤い瞳をしていました。そして、ジュスト様は、亡くなった祖父の若い頃に生き写しなのです」
「で、でも…え?」

小説ではジュストが孤児だったことしか書かれていなかったし、ギャレットもジュストも死亡エンドを迎えてしまったので、そこまでのことは深く考えたことはなかった。
でも、そう言われて、レーヌがジュストに深い関心を寄せていたことも、ジュストもレーヌに男女間のそれとは違う関心を持っていたことも、双子の兄妹だと言う事なら、納得がいく。

「ジュストは、知っていたの?」
「卒業パーティーでパートナーになった時に伝えました。彼も時折見覚えのない人物のことを夢に見ていたようです。それが自分の本当の家族ではないかとも思っていたそうです」
「しかし、両親は自分を捨てたか、既に亡くなっていると思っていたようだ。だから、敢えて口にはしなかったらしい」
「そんな…」

ずっと近くにいて、まったく気づかなかった。
ジュストとこのまま一緒にいられれば。
そんな浮かれ気分でいた。
実はそんな事実が隠されていたなんて。
事実は小説よりも奇なりとは、このことだ。

「私は、ジュスト…オーランドのことを公にして、彼をオハイエ家の当主に推そうと思っています。亡くなった母方の親族にも後押しを頼んでいます」
「王家もそのつもりだ。アベリー侯爵家もモヒナート家も、他にも味方は大勢いる」

王家の後押しに二つの侯爵家が味方になれば、誰もジュストの後継に異議を唱えることはないだろう。

「でも、じゃあ、エナンナやミーシャたちはどうなるの?」
「父のことが明らかになれば、罪に問われるのは確実です。それに、エナンナも、きっと祖父の肖像画を見て気づいてい筈です。だからギャレット様やモヒナート家を押さえ込むためにも今回のことを仕組んだのでしょう」
「ベルンの息子がジュストに対し敵意を持っていることは誰もが知っている。エナンナが彼を利用しようとしてもおかしくない。今のところ直接ベルン辺境伯とエナンナが接触した証拠はないが、他人を介して連絡を取る方法はいくらでもある」
「ジュストの件とギャレットの件、同時期に起ったのも我々の動きを封じるためだろう」
「我々の動き? あ、そう言えば、彼女、ジュストのことも何か知っている口ぶりでした」

このタイミングで起こったジュストの失踪事件。
まさか…

「学園にいる彼女がジュストのことを知るはずもない。今度のこと、やはり裏でつながっているようだ」

「ことはベルン辺境伯の領地近くで起こった。彼の息子とジュストは因縁がある。実は今回、私がシェルテーレに直接救援物資を届けることになったのも、以前からシェルテーレへ届ける我が国の物資のいくつかが、粗悪品とすり替わっているのがわかったからだ」
「それって…辺境伯が?」

王太子殿下が頷く。

「積み荷を運ぶ一行は、いつも彼の領地を通る。疑いはほぼ確信に近かった。それゆえ、視察と称して回ることを伝え、揺さぶりをかけた」
「表向きの視察に隠れて裏から密かに探るつもりだった。ステファンがその任の責任者で、後から合流する手筈だった」
「ステファンが居残りになったのって…」
「妊娠は本当だけど、ちょうどそれを口実にして、ステファンも向かったの」
「しかし、ベルンも何かを察して先手を打ってきた。襲撃は予想できたが、こちらの予想より遥かに多い人数を使ってきた。しかも、殆どが騎士などではなく、農民などだったため、私達も躊躇してしまった」

鍛えられた騎士なら王太子殿下たちも戦う覚悟はできていたが、相手が素人同然の農民ともなると、勝手が違ったようだ。

「農民…」

ギャレットの頭の中で、例のカルト教団のことが過った。


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