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31 勝負の行方①
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ジュストの次の相手は上級生らしく、相手の方にも応援団がいた。
白銀の長髪を三つ編みにしていて、遠くから一瞬女性に見えた。
「ナタリアお姉さまぁ~」
「すてきぃ~」
と思っていたら本当に女性だった。
「あれはパスケル伯爵家のご令嬢ね。あそこは女性でも幼い頃から剣を習うと聞くわ」
ナディアがジュストの対戦相手について知っている情報を教えてくれる。
所謂「○○○○のばら」の主人公。その熱狂ぶりは○○ラジェンヌのファンのようだ。
ジュストの応援団とは嗜好が異なるため、そのファン層にダブリはないからか、応援団の間にも火花が散っている気がする。
凛々しいお姉さまに憧れる女子。男性がいるのも見える。
あんな登場人物は小説には出てこなかった。多分モブなんだろうけど、別の小説の主人公に成りうる感じだ。
「兄上~頑張れぇ~」
ともすれば応援団の声に掻き消されてしまいそうな中で、声を張り上げると、ジュストが相変わらずの笑顔でこちらに手を振ってくれた。
それから彼女がジュストに向かって何か言ったように見えたが、すぐに試合が始まった。
今度の相手はこれまでの相手とは違い強敵だった。
女性だから力では負けないだろうが、その分相手はすばしこく技術もかなりのものだ。
けれど彼女もジュストの敵ではなかった。
女性相手でもジュストは忖度などしない。
最後には彼女はジュストに振り回されて尻もちをついた。
「きゃ~」
悲鳴が響き渡り、審判がジュストの勝利を宣言する声もよく聞こえなかったが、ジュストが手を伸ばして彼女を立たせたのが見えた。
彼女とお互いに礼をして、ジュストはこちらに手を振った。それに対して両手で手を振り返した。
「あの子もああいうことをするくらいの気遣いはあったのね」
「兄上は優しいです。負けた相手を気遣うくらいできます」
「私が言っているのは女性に対してよ」
「あれはどうみても、対戦相手に対する礼儀にしか見えないですけど」
「あなた、お兄様の婚約者を見つけたいのでしょ。さっきオハイエ伯爵令嬢のことを話していたじゃない」
「それは、彼女だからで」
きとんとした主人公のレーヌ=オハイエだから、ジュストを任せてもいいと思った。
モブキャラは違う。
大事なジュストを任せるのだ。相手もそれなりのクラスでないと。
その後、もう一度ステファンとジュストがそれぞれ対戦を勝利で終え、王太子殿下もようやく登場し、勝利を収めた。
剣術大会は大詰めを迎え、準々決勝となった。
「いよいよ準々決勝ね」
次の試合でそれぞれ勝てば、ジュストとステファンが対決する。
「こっちが緊張してきたわ」
ジュストの相手は同じ特進の現騎士団長の息子メリビルだ。さっきの対戦相手はそのイトコだった。
「王太子殿下以外で最も強敵なのは彼でしょうね」
ここで大番狂わせがあった。
ステファンが負けたのだ。
まさか主人公補正が効かなかった。
「負けてしまいました」
敗退したステファンがこちらへ合流した。
「頑張りましたね」
ナディアが彼の健闘を讃えた。
「ここからはジュストの応援に専念します」
「でも、兄上の相手も強敵らしいですね」
「ああ、だが、練習では三本に一本はジュストも勝てていたから、どうなるかわからない」
「『勝負は時の運』というヤツ?」
「そんな不確かなものじゃなく、勝つという気概だ。ジュストの場合は『勝つ』ことより、ギャレットに良いところを見せたいという気持ちが大きい。対して対戦相手のメリビルは家名を背負ってるから必死だ」
弟に良いところを見せたいだけのジュストと、家のために負けられないメリビル。どっちが勝つか。
準々決勝、ジュストの対戦が始まった。
白銀の長髪を三つ編みにしていて、遠くから一瞬女性に見えた。
「ナタリアお姉さまぁ~」
「すてきぃ~」
と思っていたら本当に女性だった。
「あれはパスケル伯爵家のご令嬢ね。あそこは女性でも幼い頃から剣を習うと聞くわ」
ナディアがジュストの対戦相手について知っている情報を教えてくれる。
所謂「○○○○のばら」の主人公。その熱狂ぶりは○○ラジェンヌのファンのようだ。
ジュストの応援団とは嗜好が異なるため、そのファン層にダブリはないからか、応援団の間にも火花が散っている気がする。
凛々しいお姉さまに憧れる女子。男性がいるのも見える。
あんな登場人物は小説には出てこなかった。多分モブなんだろうけど、別の小説の主人公に成りうる感じだ。
「兄上~頑張れぇ~」
ともすれば応援団の声に掻き消されてしまいそうな中で、声を張り上げると、ジュストが相変わらずの笑顔でこちらに手を振ってくれた。
それから彼女がジュストに向かって何か言ったように見えたが、すぐに試合が始まった。
今度の相手はこれまでの相手とは違い強敵だった。
女性だから力では負けないだろうが、その分相手はすばしこく技術もかなりのものだ。
けれど彼女もジュストの敵ではなかった。
女性相手でもジュストは忖度などしない。
最後には彼女はジュストに振り回されて尻もちをついた。
「きゃ~」
悲鳴が響き渡り、審判がジュストの勝利を宣言する声もよく聞こえなかったが、ジュストが手を伸ばして彼女を立たせたのが見えた。
彼女とお互いに礼をして、ジュストはこちらに手を振った。それに対して両手で手を振り返した。
「あの子もああいうことをするくらいの気遣いはあったのね」
「兄上は優しいです。負けた相手を気遣うくらいできます」
「私が言っているのは女性に対してよ」
「あれはどうみても、対戦相手に対する礼儀にしか見えないですけど」
「あなた、お兄様の婚約者を見つけたいのでしょ。さっきオハイエ伯爵令嬢のことを話していたじゃない」
「それは、彼女だからで」
きとんとした主人公のレーヌ=オハイエだから、ジュストを任せてもいいと思った。
モブキャラは違う。
大事なジュストを任せるのだ。相手もそれなりのクラスでないと。
その後、もう一度ステファンとジュストがそれぞれ対戦を勝利で終え、王太子殿下もようやく登場し、勝利を収めた。
剣術大会は大詰めを迎え、準々決勝となった。
「いよいよ準々決勝ね」
次の試合でそれぞれ勝てば、ジュストとステファンが対決する。
「こっちが緊張してきたわ」
ジュストの相手は同じ特進の現騎士団長の息子メリビルだ。さっきの対戦相手はそのイトコだった。
「王太子殿下以外で最も強敵なのは彼でしょうね」
ここで大番狂わせがあった。
ステファンが負けたのだ。
まさか主人公補正が効かなかった。
「負けてしまいました」
敗退したステファンがこちらへ合流した。
「頑張りましたね」
ナディアが彼の健闘を讃えた。
「ここからはジュストの応援に専念します」
「でも、兄上の相手も強敵らしいですね」
「ああ、だが、練習では三本に一本はジュストも勝てていたから、どうなるかわからない」
「『勝負は時の運』というヤツ?」
「そんな不確かなものじゃなく、勝つという気概だ。ジュストの場合は『勝つ』ことより、ギャレットに良いところを見せたいという気持ちが大きい。対して対戦相手のメリビルは家名を背負ってるから必死だ」
弟に良いところを見せたいだけのジュストと、家のために負けられないメリビル。どっちが勝つか。
準々決勝、ジュストの対戦が始まった。
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