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26 剣術大会②
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話しているうちに剣術大会の始まる時間になった。
「国王陛下だわ」
中央の観覧席に現れた人物を見てナディアが言った。
ちょっと遠くて顔はわからない。
「国王陛下まで来られるんですか?」
「王太子殿下も参加されるし、優秀な人材がいるかもしれませんからね。それに今は王太子殿下の側近を探されているところですから」
「それは、この大会の成績もその判断に入ると言うこと?」
「そうかも知れませんね」
顔ははっきり見えない国王陛下から、闘技場に視線を移すと、そこにジュストの姿を見つけた。
「あ、兄上ですよ、母上」
二人一組で五組が同時に出てきた中に、ジュストを見つけて母に教えた。
どうやら五組一度に試合をするらしい。
「あら、本当ね」
ナディアは持ってきていたオペラグラスを使って確認する。
「兄上の黒髪は目立ちますね」
黒髪はこの国では少ないが珍しくはない。
「これより王立学園の剣術大会を開始する! 偉大なるイベルカイザ帝国、アレッサンドロ陛下万歳」
「「「「「「「万歳」」」」」」」
司会が大声で叫び、その場の全員が陛下に向かって立ち上がり、胸を手に当てて叫ぶ。
陛下が手を動かしそれに応えたのがわかった。
「始め!」
その合図で五組それぞれが互いの相手と打ち合いを始めた。
「兄上、頑張れ!」
ジュストに向かって声を張り上げ応援する。
遠くて、色々な人たちが歓声を上げているので聞こえはしないだろうも思ったけど、ちらりとジュストがこちらを見た気がした。
その後、すぐにジュストは相手に向かって剣を振り下ろし、相手もそれに応戦して受け止めたが、激しいジュストの続け様の攻撃を受け止めきれず、終には握っていた剣を取り落としてしまった。
審判が二人の側に駆け寄り、勝者であるジュストの腕を掴んで、「勝者、ジュスト=モヒナート!」と叫んだ。
「やったぁ~!」
もちろんギャレットは腕を上に突き上げ歓喜したが、「きゃー、ジュストさまぁ」「すてきぃ~ジュストさまぁ」という黄色い歓声もあちこちから上がった。
そちらを向くと、「ジュスト=モヒナート」と書かれた横断幕を張った一団が少し離れたところにたむろしていた。
「い、いつの間に…」
「まあ、すごい応援ね」
ギャレットとナディアがそれを見て感心する。
「は、母上、あれって兄上の応援団ですか?」
小説では遠巻きにされて令嬢たちからは恐れられていた筈。
隣にはいくつか別の人の名前が書かれた横断幕を持った人たちもいる。
その中にはステファンの名前も含まれている。
「まさか推し活」
こんなところでアイドルのコンサートのような光景を目にしようとは思わなかった。
「ジュストがこちらを見て手を振っているわよ」
応援団に目を奪われていると、母上が教えてくれた。
会場に目を移すと、本当にジュストがこちらを見て手を振っている。
こんなたくさんの人たちの中から、本当に此方がわかったのか。
慌てて手を振り返すと、ジュストがペコリと頭を下げた。
次の一団が入れ代わりに入ってきて、ジュストは中へと戻っていった。
「とりあえず一回戦は勝ったわね」
「これくらいで負ける兄上ではありませんよ」
「ふふ、そうね」
「あ、あれ、ステファンですよ」
次の一団の中でステファンを見つけた。
「あら応援してあげないの?」
「してもしなくても、勝つと思います」
何しろ主人公なんだから、一回戦で敗退とかはないだろう。
「それに僕は兄上専属ですから」
予想通りステファンは開始一分で勝利宣言していた。
「国王陛下だわ」
中央の観覧席に現れた人物を見てナディアが言った。
ちょっと遠くて顔はわからない。
「国王陛下まで来られるんですか?」
「王太子殿下も参加されるし、優秀な人材がいるかもしれませんからね。それに今は王太子殿下の側近を探されているところですから」
「それは、この大会の成績もその判断に入ると言うこと?」
「そうかも知れませんね」
顔ははっきり見えない国王陛下から、闘技場に視線を移すと、そこにジュストの姿を見つけた。
「あ、兄上ですよ、母上」
二人一組で五組が同時に出てきた中に、ジュストを見つけて母に教えた。
どうやら五組一度に試合をするらしい。
「あら、本当ね」
ナディアは持ってきていたオペラグラスを使って確認する。
「兄上の黒髪は目立ちますね」
黒髪はこの国では少ないが珍しくはない。
「これより王立学園の剣術大会を開始する! 偉大なるイベルカイザ帝国、アレッサンドロ陛下万歳」
「「「「「「「万歳」」」」」」」
司会が大声で叫び、その場の全員が陛下に向かって立ち上がり、胸を手に当てて叫ぶ。
陛下が手を動かしそれに応えたのがわかった。
「始め!」
その合図で五組それぞれが互いの相手と打ち合いを始めた。
「兄上、頑張れ!」
ジュストに向かって声を張り上げ応援する。
遠くて、色々な人たちが歓声を上げているので聞こえはしないだろうも思ったけど、ちらりとジュストがこちらを見た気がした。
その後、すぐにジュストは相手に向かって剣を振り下ろし、相手もそれに応戦して受け止めたが、激しいジュストの続け様の攻撃を受け止めきれず、終には握っていた剣を取り落としてしまった。
審判が二人の側に駆け寄り、勝者であるジュストの腕を掴んで、「勝者、ジュスト=モヒナート!」と叫んだ。
「やったぁ~!」
もちろんギャレットは腕を上に突き上げ歓喜したが、「きゃー、ジュストさまぁ」「すてきぃ~ジュストさまぁ」という黄色い歓声もあちこちから上がった。
そちらを向くと、「ジュスト=モヒナート」と書かれた横断幕を張った一団が少し離れたところにたむろしていた。
「い、いつの間に…」
「まあ、すごい応援ね」
ギャレットとナディアがそれを見て感心する。
「は、母上、あれって兄上の応援団ですか?」
小説では遠巻きにされて令嬢たちからは恐れられていた筈。
隣にはいくつか別の人の名前が書かれた横断幕を持った人たちもいる。
その中にはステファンの名前も含まれている。
「まさか推し活」
こんなところでアイドルのコンサートのような光景を目にしようとは思わなかった。
「ジュストがこちらを見て手を振っているわよ」
応援団に目を奪われていると、母上が教えてくれた。
会場に目を移すと、本当にジュストがこちらを見て手を振っている。
こんなたくさんの人たちの中から、本当に此方がわかったのか。
慌てて手を振り返すと、ジュストがペコリと頭を下げた。
次の一団が入れ代わりに入ってきて、ジュストは中へと戻っていった。
「とりあえず一回戦は勝ったわね」
「これくらいで負ける兄上ではありませんよ」
「ふふ、そうね」
「あ、あれ、ステファンですよ」
次の一団の中でステファンを見つけた。
「あら応援してあげないの?」
「してもしなくても、勝つと思います」
何しろ主人公なんだから、一回戦で敗退とかはないだろう。
「それに僕は兄上専属ですから」
予想通りステファンは開始一分で勝利宣言していた。
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