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アニエス編
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「カーラ、どうしたの? 首筋に赤い痕が…何かに刺された?」
更衣室で着替えている時、最近結婚したばかりの女性騎士の首筋に、赤い虫刺されのようなものを見つけ、どうしたのかと尋ねた。
「え? あ、こ、これは」
彼女はアニエスに指摘され、真っ赤になって慌ててその部分を髪で隠した。
「ベルフ卿、新婚の彼女にそんなこと聞くなんて、野暮ですよ」
「そうです。私達だって気づいていたけど、黙っていたのに」
同じ部屋にいた他の女性たちが、アニエスに注意する。何か聞いてはいけないことを聞いてしまったようだ。
「申し訳ない」
「いえ。その、これは昨夜夫と…少し盛り上がってしまって…いつもは見えない所に…わ、私ったら…」
カーラは更に赤くなり、周りが微笑ましい目でそれを見る。独身の者は「うらやましい」だの、既婚者は「うちもそうだった」「懐かしい」とか、色々感想を呟いている。
「夫君と喧嘩でもしたの?」
「夜の夫婦生活のことですよ」
キョトンとするアニエスに、他の者たちが付け加える。
「夜の…」
ようやく合点がいき、アニエスも仄かに頬を染める。
「もう、ベルフ卿だって、まだ結婚して一年とちょっとですから、まだ新婚ですよね」
「そうですよ。それもすっごく美男の旦那様なんて、うらやましいです」
「ずっと気になっていたのですが、旦那様はあっちの方はどうなのですか?」
この中で一番年嵩のマーリンが発言した。
「どう…とは?」
「意外に激しいとか、淡白とか。ひと晩で何回?」
「え?」
聞かれた意味がわからず、アニエスは目を丸くする。他の者たちも、興味津々で彼女を見る。
「ちなみに、うちはひと晩で最高五回です」
「五回!」
「もう三年ほど前ですけど。今は三回かしら。もう身体中真っ赤になるくらいの印を付けられました」
「真っ赤に」
彼女たちの話を要約すると、男性は一度精を放っても、すぐに復活する者もいて、何度もすることがあるそうだ。そしてその際に唇で肌に吸い付き、所有痕のように体に薔薇の花びらのような痕を残すらしい。
カーラのもそのひとつで、恥ずかしいと言って胸やお腹、背中や足の内側に付いたものを見せてくれた。
女性騎士は全体の一割にも満たず、そのような話をしたのはその時が初めてだったアニエスは、大きな衝撃を受けた。
ラファエルはいつも一回しかしない。
それが普通だと思っていた。
男女の夜の生活について、これまでアニエスは誰かとこんなふうに話をしたことがなく、一回が当たり前だと思っていたのだが、そうではなかったことをその日知ったのだった。
「仕方が無いよな。私と彼はカーラ達のような普通の夫婦じゃないから」
一人になった寝室で、カーテンの隙間から見える月を見上げながらアニエスは呟いた。
更衣室で着替えている時、最近結婚したばかりの女性騎士の首筋に、赤い虫刺されのようなものを見つけ、どうしたのかと尋ねた。
「え? あ、こ、これは」
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「そうです。私達だって気づいていたけど、黙っていたのに」
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「申し訳ない」
「いえ。その、これは昨夜夫と…少し盛り上がってしまって…いつもは見えない所に…わ、私ったら…」
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「夫君と喧嘩でもしたの?」
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「夜の…」
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「どう…とは?」
「意外に激しいとか、淡白とか。ひと晩で何回?」
「え?」
聞かれた意味がわからず、アニエスは目を丸くする。他の者たちも、興味津々で彼女を見る。
「ちなみに、うちはひと晩で最高五回です」
「五回!」
「もう三年ほど前ですけど。今は三回かしら。もう身体中真っ赤になるくらいの印を付けられました」
「真っ赤に」
彼女たちの話を要約すると、男性は一度精を放っても、すぐに復活する者もいて、何度もすることがあるそうだ。そしてその際に唇で肌に吸い付き、所有痕のように体に薔薇の花びらのような痕を残すらしい。
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それが普通だと思っていた。
男女の夜の生活について、これまでアニエスは誰かとこんなふうに話をしたことがなく、一回が当たり前だと思っていたのだが、そうではなかったことをその日知ったのだった。
「仕方が無いよな。私と彼はカーラ達のような普通の夫婦じゃないから」
一人になった寝室で、カーテンの隙間から見える月を見上げながらアニエスは呟いた。
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