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262 任務完了?

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「もうあれらは捨てようと思うの」

部屋の中のガラクタ…もとい子宝グッズを指差す。

「それがいいかと思いますが…それでアンジェリーナ様はいいのですか? もしかして…」

ちらりとアンジェリーナ様の平らなお腹を見る。妊娠したことがわかったとか。

「違うわ。ミシェルはずっと帰ってこないし、帰ってきても疲れてそれどころでは…コホン、そうではなくて」

一瞬照れた顔を見せた後で、アンジェリーナ様はにこりと笑った。
妊娠したのでないなら、何があったのか。
帰宅した時は浮かない顔をしていたのに、悪いことがあったのかとも思ったが、違うのだろうか。

「では、ジベルさんにそのようにお伝えします」

「ありがとう。それから明日、ついてきてほしいところがあるのだけど、いいかしら?」

「はい。護衛ですね」

「それから行きたいところは護衛と一緒だと仰々しくなってしまうから、男装ではなく普通の服装でお願いするわ」

「それでは護衛になりません」

「いいのよ。昼間だし街中だから大丈夫よ。第一向こうも大げさなことはやめてほしいということだから」

「わかりました。それでも最低限の装備はさせていただきます」

大げさなことはするなとわざわざ言ってくるのも気になる。それに表立って帯剣できなくても一応の準備は必要だ。

「それであなたの話は何だったのかしら」

少し気が晴れたのかアンジェリーナ様はさっきより元気に見えた。

「あの、私の話は…」

ちらりとたった今アンジェリーナ様が処分を決めたガラクタを横目に見る。

「アンジェリーナ様が何か思い悩まれていたようなので気になって…でも理由がわかりましたので私の話はありません」

ジベルさんに頼まれたと言っても良かったが、アンジェリーナ様が自分で決意されたのだし、周りが変に騒ぎ立てることもないと思い何も言わないことにした。

昼前には出かけるという話になりアンジェリーナ様の部屋を出た。

ご利益商法紛いの危機から脱したみたいだが、新しく見出した方法とは何だろう。

日本なら子宝祈願に神社などに参拝するなんて方法もあった。

縁起担ぎの品物があるならそういったものもあるのだろうか。

気になるが、明日行けばわかることだ。

廊下を進んだ先でジベルさんが待ち構えていた。

「あの品々は処分なさるそうです。もう増えることもないかと思います。何のために集めていたのかはおっしゃいませんでした」

子に恵まれない悩みについては話さなかった。
それは使用人としてハリス家の執事である彼にも関心があることかも知れないが、いくら使用人と言えども主夫婦のプライベートは尊重されるべきだ。

「そうですか。ありがとうございます」

ホッとしたジベルさんを見てお礼を言われて後ろめたさを覚えた。アンジェリーナ様がすでに心に決めていたことを話してくれただけで、私は何の説得もしていない。

「私はただお話を聞いただけで、アンジェリーナ様がすでに処分を決めておられました。ですから私に感謝される必要はありません」
「そうだとしても、ローリィさんにだからお話されたのだと思います。アンジェリーナ様には使用人である私共よりローリィさんにお心を許していらっしゃると思います」
「そうでしょうか…」

私の存在がアンジェリーナ様の役に立てたのなら良かった。

「けれど、品物の処分などは決められたようですが、やはりご夫君であるミシェル様がアンジェリーナ様の悩みをお聴きになり、理解して差し上げるのが一番だと思います。お仕事がお忙しいのはわかりますが、何とかならないものでしょうか」

喧嘩しているのでもない。ただ、忙しさですれ違っているだけ。一緒に寝ただけでは子どもは出来ないが、一緒にいなければそういったことも出来ない。

後はどちらか、あるいは両方が子どもが出来ない体質だった場合はどうする事もできない。

それならそれで、また二人で話し合う必要もある。

「第一、ミシェル様も人間です。しっかり休養を取ることも仕事の効率を上げるためには必要だと思います」

疲労が溜まれば集中力も欠け、仕事も捗らなくなるしミスも増える。
ミシェル様の精神力がいかほどのものかわからないが、疲れていると精力や繁殖力も落ちると聞いたことがある。

「一度旦那様にもお話してみます」
「あ、それから明日昼間にアンジェリーナ様がお出かけになるそうです。私も付き添わせていただくことになりました。行き先はアンジェリーナ様がお決めになります」

出かける先を仰らなかったので、それだけ伝えた。

「畏まりました。そのように手配いたします」

ジベルさんと別れて私は部屋に戻り、出かける準備をした。

スカートを履いて護衛らしさを出さないようにとは言え、キルヒライル様と領地の見回りに赴いた時と同じだけの装備は用意した。
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