241 / 266
239 審査の結果
しおりを挟む
ラトゥーヤは何度も光の精霊を踊っているだけあって完璧だった。
ミリアムも踊りに対する自信に関してははったりではなかったようだ。
可愛そうなのは後の二人。陛下の威圧に圧され最初から失敗していた。
それでも最後まで踊りきったのはさすが、候補に上がっただけはある。
火の精霊のソロは三番目。早くに終えて後は群舞の部分だけだ。
ラトゥーヤの光の精霊のソロが終わり、審査が終了した。
パラパラとした拍手の中、礼をして下がる。
「審査の間、舞屋の主と共に待つように」
そう言われて最初の部屋まで戻らされた。
「もうダメだわ……」
失敗した三人が戻る途中で落ち込む。
「ラトゥーヤは決まったも同然ね。完璧だもの」
毎年踊っていれば当たり前だろうが、ラトゥーヤはどや顔で微笑む。
誰も私については何も言わない。讃えてくれるとは思わなかったが、ノーコメントもひどいと思う。
「ローリィ、遅かったのね、選考は無事に終わったの?」
元の部屋に戻ると待ちくたびれたティータさんたち舞屋の主が駆け寄ってきた。
「ずいぶん時間が掛かったみたいだけど、うまくいったの?」
メレディスさんがミリアムに訊ねる。
「それが……」
「審査の方法が変わって、どんなものになったかはレリアナが話してくれたけど、ローリィはどうなったの?」
「見本の躍りを見てから他の人たちは個人指導を受けたようです。私は個室で待機するように言われました」
「じゃあ、本当に一度見せてもらっただけで踊らされたの?」
話を聴いてティータさんがレリアナさんを睨む。
「それで?」
「なぜか、その…国王陛下が審査会場にいらっしゃいまして……」
「え、へ、陛下……」
他の舞屋の主たちが騒然となった。
「ラトゥーヤ、あなた、ちゃんと踊れたのでしょうね」
「心配しないで、私を誰だと思ってるの」
「そうね……」
自信満々のラトゥーヤの様子にレリアナさんも満足して微笑む。
「前回も踊った振り付けなんだから、踊れて当たり前じゃない」
風の精霊で失敗した子が皮肉を込めて言う。
「そうね、それに比べて私たちは本当に初めてだったのよ。ずるいわ」
土の精霊を踊った子もそうだと口をだす。
「ミリアムも、あなた前回も候補には上がったんだから、その時と同じ精霊なら楽勝よね」
一緒に踊った風の精霊の子がミリアムにも矛先を向ける。
「何とでも言いなさい。陛下の前で緊張して失敗したり、覚えきれなかったのは自分のせいでしょ。私が足を引っ掻けたわけじゃないんだから、逆恨みはみっともないわ」
「なんですって、そもそも、最初の審査のとおりにしていたらもっとうまくいったのに、ラトゥーヤたちが騒ぎ立てて、審査方法を変えたのも最初からあなたたち仕組んでいたんじゃない?」
二組目に土の精霊を踊った子が、ミリアム、ラトゥーヤ、そして私を指差す。
「な、言いがかりよ、こっちは迷惑したんだから!」
私が指を差されティータさんが憤慨した。
「最初に寝ぼけたことを言ったのはティータじゃない、それで、そのことはどうだったの?」
レリアナさんがラトゥーヤに訊ねた瞬間、辺りは水をうったように静かになった。
「どうしたの?やっぱり嘘……だったのよね」
レリアナさんの表情が強張る。
「ラトゥーヤ」
「ミリアム」
「あなたたち、どうなの?」
「まさか………」
沈黙が雄弁に語る。私が失敗、もしくはティータさんの言葉が誇大妄想からくる詭弁なら、彼女たちはこぞってそのことを告げていた筈だ。
「嘘でしょ……それに陛下までそれを目の当たりにされたなんて………」
「それどころか、誰がこんな不平等な審査を提案したのだと逆にお叱りになられていたわ」
誰かが言った言葉にレリアナさんが青ざめた。
「な、なんですって…」
「今頃は審査そっちのけでそんな話になっているかも知れないわね」
「本当なの、ラトゥーヤ……こ、国王陛下が……」
「静かに!」
そこへ審査が終わったことを告げに式部の役人がやってきた。
「畏れ多くも、陛下から直々に結果の発表がある。全員で審査会場まで来るように」
全員に緊張が走った。
ミリアムも踊りに対する自信に関してははったりではなかったようだ。
可愛そうなのは後の二人。陛下の威圧に圧され最初から失敗していた。
それでも最後まで踊りきったのはさすが、候補に上がっただけはある。
火の精霊のソロは三番目。早くに終えて後は群舞の部分だけだ。
ラトゥーヤの光の精霊のソロが終わり、審査が終了した。
パラパラとした拍手の中、礼をして下がる。
「審査の間、舞屋の主と共に待つように」
そう言われて最初の部屋まで戻らされた。
「もうダメだわ……」
失敗した三人が戻る途中で落ち込む。
「ラトゥーヤは決まったも同然ね。完璧だもの」
毎年踊っていれば当たり前だろうが、ラトゥーヤはどや顔で微笑む。
誰も私については何も言わない。讃えてくれるとは思わなかったが、ノーコメントもひどいと思う。
「ローリィ、遅かったのね、選考は無事に終わったの?」
元の部屋に戻ると待ちくたびれたティータさんたち舞屋の主が駆け寄ってきた。
「ずいぶん時間が掛かったみたいだけど、うまくいったの?」
メレディスさんがミリアムに訊ねる。
「それが……」
「審査の方法が変わって、どんなものになったかはレリアナが話してくれたけど、ローリィはどうなったの?」
「見本の躍りを見てから他の人たちは個人指導を受けたようです。私は個室で待機するように言われました」
「じゃあ、本当に一度見せてもらっただけで踊らされたの?」
話を聴いてティータさんがレリアナさんを睨む。
「それで?」
「なぜか、その…国王陛下が審査会場にいらっしゃいまして……」
「え、へ、陛下……」
他の舞屋の主たちが騒然となった。
「ラトゥーヤ、あなた、ちゃんと踊れたのでしょうね」
「心配しないで、私を誰だと思ってるの」
「そうね……」
自信満々のラトゥーヤの様子にレリアナさんも満足して微笑む。
「前回も踊った振り付けなんだから、踊れて当たり前じゃない」
風の精霊で失敗した子が皮肉を込めて言う。
「そうね、それに比べて私たちは本当に初めてだったのよ。ずるいわ」
土の精霊を踊った子もそうだと口をだす。
「ミリアムも、あなた前回も候補には上がったんだから、その時と同じ精霊なら楽勝よね」
一緒に踊った風の精霊の子がミリアムにも矛先を向ける。
「何とでも言いなさい。陛下の前で緊張して失敗したり、覚えきれなかったのは自分のせいでしょ。私が足を引っ掻けたわけじゃないんだから、逆恨みはみっともないわ」
「なんですって、そもそも、最初の審査のとおりにしていたらもっとうまくいったのに、ラトゥーヤたちが騒ぎ立てて、審査方法を変えたのも最初からあなたたち仕組んでいたんじゃない?」
二組目に土の精霊を踊った子が、ミリアム、ラトゥーヤ、そして私を指差す。
「な、言いがかりよ、こっちは迷惑したんだから!」
私が指を差されティータさんが憤慨した。
「最初に寝ぼけたことを言ったのはティータじゃない、それで、そのことはどうだったの?」
レリアナさんがラトゥーヤに訊ねた瞬間、辺りは水をうったように静かになった。
「どうしたの?やっぱり嘘……だったのよね」
レリアナさんの表情が強張る。
「ラトゥーヤ」
「ミリアム」
「あなたたち、どうなの?」
「まさか………」
沈黙が雄弁に語る。私が失敗、もしくはティータさんの言葉が誇大妄想からくる詭弁なら、彼女たちはこぞってそのことを告げていた筈だ。
「嘘でしょ……それに陛下までそれを目の当たりにされたなんて………」
「それどころか、誰がこんな不平等な審査を提案したのだと逆にお叱りになられていたわ」
誰かが言った言葉にレリアナさんが青ざめた。
「な、なんですって…」
「今頃は審査そっちのけでそんな話になっているかも知れないわね」
「本当なの、ラトゥーヤ……こ、国王陛下が……」
「静かに!」
そこへ審査が終わったことを告げに式部の役人がやってきた。
「畏れ多くも、陛下から直々に結果の発表がある。全員で審査会場まで来るように」
全員に緊張が走った。
1
お気に入りに追加
1,935
あなたにおすすめの小説
かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました
ねむ太朗
恋愛
伯爵令嬢のアネモネは金色のネズミを見つけ、飼う事にした。
しかし、金色のネズミは第三王子のロイアン殿下だった。
「頼む! 俺にキスをしてくれ」
「えっ、無理です」
真実の愛のキスで人間に戻れるらしい……
そんなおとぎ話みたいな事ある訳ないわよね……?
作者おばかの為、設定ゆるめです。
結婚前日に友人と入れ替わってしまった・・・!
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
伯爵令嬢キャンディスは、愛する婚約者パトリックとの挙式を明日に控えた朝、目覚めると同級生のキムに入れ替わっていた。屋敷に戻っても門すら入れてもらえず、なすすべなく結婚式を迎えてしまう。このままではパトリックも自分の人生も奪われてしまう! そこでキャンディスは藁にも縋る思いである場所へ向かう。
「残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました」に出てくる魔法使いゼインのシリーズですが、この話だけでも読めます。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
男装王女の逆転劇 ~暴君である父に無理やり婚約破棄させられた私が、幸せな結婚と帝国の平和をつかむまで~
綾森れん
恋愛
ヴァルツェンシュタイン帝国の皇女ルシールは、皇帝である父により勝手に婚約破棄された上、男装して双子の兄セザリオのふりをしろと言われる。セザリオは、アルムハルト国王の一人娘ミシェルとの重要な政略結婚の前日に落馬して、意識が戻らないのだという。
翌日ルシールは兄セザリオの姿で、美しいピンクブロンドの髪を持つ姫君ミシェルと婚礼の儀をあげる。だが、しとやかな美少女に見えたミシェルは大きな秘密を抱えていた……
※R15は保険です。
婚前交渉はありませんが結婚後、相思相愛になった二人がベッドの上で愛し合うシーンが少しだけ出てくるのでつけておきました。たいしたことはしません。健全です♥
愛する人を護る為、男の娘な王子はゴリマッチョになりました。が・・・
白雪の雫
恋愛
ベルガモット王国のガブリエルは第二王子である。
可愛い顔立ちに華奢で小さな身体、声に言葉遣い、仕種に加えて常にドレスを着てお姫様のように振る舞うのだから、家族をはじめ臣下にとってガブリエルの事は悩みの種だった。
息子の将来を案じた父王は優秀で武芸にも秀でている男勝りなグリーンローズ公爵家の令嬢・ヒルデガルトを婚約者に据える事にした。
彼女と接する事で自分も男らしくなるだろうと父王は思っていたのだが・・・皮肉にもヒルデガルトという存在はガブリエルの女の子化を加速させていく。
ヒルデガルトに護られて平穏な日々を送っていたガブリエルであったが、ある日彼女が自分を助ける為に傷を負った事で彼は生まれ変わる。
ゴリマッチョとして──・・・。
果たしてガブリエルはヒルデガルトと結ばれるだろうか?
この話は『男の娘って華奢で女性ものの服が似合うし、どこからどう見ても女の子だわ。BLでは右側が固定となっているからナニも小さく描かれているよな。第二次性徴が過ぎた男の娘がゴリマッチョになったら?』という考えから生まれた話です。
ご都合主義でバックグラウンドなど深く考えずに書いた、例によって例の如くゆるふわ設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる