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235 新しい審査方法
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どれくらいの時間が経っただろうか。
あれからすぐにレリアナさんは戻ってきて、ラトゥーヤと何やら耳打ちしあいクスクスと笑っていた。
「いやねぇ、こそこそと。気分が悪いわ」
誰かが彼女たちに聞こえるように言ったが、彼女たちは全く意に介していないのか、何も言わずその後も二人で笑いあっている。
いい加減その場の雰囲気に皆がうんざりした頃、ガチャリと扉が開いて、先ほどの二人が入ってきた。
「これより審査を開始する」
その言葉にレリアナさんたち以外の全員がほっとした顔をした。
「先ほど伝えた審査方法が少し変わった。会場に着いてから説明するので、踊り子は全員ついてきなさい。舞屋の主はここで待つように」
その言葉にざわめきが起こった。
「時間が押している。早くついてきない」
「は~い」
ラトゥーヤだけが勢いよく返事をして一番に部屋を飛び出した。
他の踊り子もずらずらと後をついていく。
最後に私も続く。
踊り子が全員部屋を出ると、前に年配の後ろに年若の役人がついてぞろぞろと歩きだした。
そうして連れていかれたのは同じ建物内にある広間だった。
中に入るとそこには椅子がいくつか向かい合わせに並べられていて、その間が広く空いている。
「そこに掛けなさい」
手前側の椅子を示され順番に座ると横の扉から踊り子らしき人物が五人入ってきた。
五人は前に二人、後ろに三人に別れて等間隔に並ぶ。
「今から祝賀の舞の躍りを見せる。そこから後に五人の躍りをそれぞれ振り分けて指導するので、同じように踊ってもらう。何か質問は?」
「誰がどの立ち位置の人が踊った分を踊るのかは選べるのですか?」
ミリアムが質問した。
「希望があればきくが、同じ立ち位置に集中するようならこちらで振り分けさせてもらう。他には?」
「踊りの指導はどれくらいしていただけるのでしょうか」
別の誰かが訊ねる。
「夕の鐘がなる頃まで時間は割くつもりだが、それでは不足か?そなたらも躍りを生業にしているのだから、それなりの実力は見せてもらわねばならん」
「少しよろしいですか?」
ラトゥーヤが手を上げた。
「質問か?」
「いえ、この中に一度見たら振り付けを覚えてしまうと言っている者がおります。同じように指導を受けて審査を受けるのは少しずるいと思います。それにこの中で私だけが経験者ですので、私も皆さんと同じように指導を受けたのでは不公平です。私とその者は指導から外していただけませんか?」
みんなの視線が私に集中し、それからラトゥーヤを見る。
「そんな者がいるのか?それは誰だ」
「ここにいるクレアです」
ラトゥーヤが私を指差す。
「ラトゥーヤの言っていることは事実か?」
「……はい」
「これは王室の公式行事だ。嘘偽りは許されん。万が一嘘だとわかれば罰は免れないぞ。本当に一見で覚えられるのだな」
「間違いございません」
嘘ではないので正直に答える。
「……わかった。それならばラトゥーヤが申したことは聞き入れよう。見本の躍りを見た後は二人はここから立ち去り、それぞれ別室で待機しなさい。他の者が指導を受けている間は誰とも接触しないように。皆が指導を終了した時点で呼び寄せる。どの立ち位置で踊るかはその時に指示する。他の者も依存はないな」
「ありません」
ミリアムが人一倍元気に答える。
「お聞きいれ頂き、ありがとうございます」
ラトゥーヤが軽く頭を下げて礼を述べる。
その際にちらりとこちらに視線を送り、口角を上げるのが見えた。
「そなたもそれでいいか?」
これはレリアナが実力のある誰かに申し出たことに違いない。ならば私にはかなり不利だろう。
ラトゥーヤも私と同じように指導を受けないことになったが、ラトゥーヤが私と本当に同じかどうか怪しいものだ。
「それが公正な審査であるなら、決定に従います」
私の言葉を聞いて、ラトゥーヤがこちらを睨み返した。
あれからすぐにレリアナさんは戻ってきて、ラトゥーヤと何やら耳打ちしあいクスクスと笑っていた。
「いやねぇ、こそこそと。気分が悪いわ」
誰かが彼女たちに聞こえるように言ったが、彼女たちは全く意に介していないのか、何も言わずその後も二人で笑いあっている。
いい加減その場の雰囲気に皆がうんざりした頃、ガチャリと扉が開いて、先ほどの二人が入ってきた。
「これより審査を開始する」
その言葉にレリアナさんたち以外の全員がほっとした顔をした。
「先ほど伝えた審査方法が少し変わった。会場に着いてから説明するので、踊り子は全員ついてきなさい。舞屋の主はここで待つように」
その言葉にざわめきが起こった。
「時間が押している。早くついてきない」
「は~い」
ラトゥーヤだけが勢いよく返事をして一番に部屋を飛び出した。
他の踊り子もずらずらと後をついていく。
最後に私も続く。
踊り子が全員部屋を出ると、前に年配の後ろに年若の役人がついてぞろぞろと歩きだした。
そうして連れていかれたのは同じ建物内にある広間だった。
中に入るとそこには椅子がいくつか向かい合わせに並べられていて、その間が広く空いている。
「そこに掛けなさい」
手前側の椅子を示され順番に座ると横の扉から踊り子らしき人物が五人入ってきた。
五人は前に二人、後ろに三人に別れて等間隔に並ぶ。
「今から祝賀の舞の躍りを見せる。そこから後に五人の躍りをそれぞれ振り分けて指導するので、同じように踊ってもらう。何か質問は?」
「誰がどの立ち位置の人が踊った分を踊るのかは選べるのですか?」
ミリアムが質問した。
「希望があればきくが、同じ立ち位置に集中するようならこちらで振り分けさせてもらう。他には?」
「踊りの指導はどれくらいしていただけるのでしょうか」
別の誰かが訊ねる。
「夕の鐘がなる頃まで時間は割くつもりだが、それでは不足か?そなたらも躍りを生業にしているのだから、それなりの実力は見せてもらわねばならん」
「少しよろしいですか?」
ラトゥーヤが手を上げた。
「質問か?」
「いえ、この中に一度見たら振り付けを覚えてしまうと言っている者がおります。同じように指導を受けて審査を受けるのは少しずるいと思います。それにこの中で私だけが経験者ですので、私も皆さんと同じように指導を受けたのでは不公平です。私とその者は指導から外していただけませんか?」
みんなの視線が私に集中し、それからラトゥーヤを見る。
「そんな者がいるのか?それは誰だ」
「ここにいるクレアです」
ラトゥーヤが私を指差す。
「ラトゥーヤの言っていることは事実か?」
「……はい」
「これは王室の公式行事だ。嘘偽りは許されん。万が一嘘だとわかれば罰は免れないぞ。本当に一見で覚えられるのだな」
「間違いございません」
嘘ではないので正直に答える。
「……わかった。それならばラトゥーヤが申したことは聞き入れよう。見本の躍りを見た後は二人はここから立ち去り、それぞれ別室で待機しなさい。他の者が指導を受けている間は誰とも接触しないように。皆が指導を終了した時点で呼び寄せる。どの立ち位置で踊るかはその時に指示する。他の者も依存はないな」
「ありません」
ミリアムが人一倍元気に答える。
「お聞きいれ頂き、ありがとうございます」
ラトゥーヤが軽く頭を下げて礼を述べる。
その際にちらりとこちらに視線を送り、口角を上げるのが見えた。
「そなたもそれでいいか?」
これはレリアナが実力のある誰かに申し出たことに違いない。ならば私にはかなり不利だろう。
ラトゥーヤも私と同じように指導を受けないことになったが、ラトゥーヤが私と本当に同じかどうか怪しいものだ。
「それが公正な審査であるなら、決定に従います」
私の言葉を聞いて、ラトゥーヤがこちらを睨み返した。
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