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211 第三近衛騎士団

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第三近衛騎士団の詰所は富裕層の平民が住む区域と中流階級が住む区域との境目に位置する。

通りから二十段程の石段を上がった先に重厚な扉があり、その両脇を門番よろしく下級騎士が立っている表の扉をやり過ごし、師匠は裏手に回った。

「ここで待っていろ。中から開けてもらうよう頼んでくる」

塀と壁に挟まれた狭い通路の先に目立たないように作られた扉の前で男を下ろしてもたせかけ、師匠は先ほど通りすぎた表の扉へと消えた。

暫く待っているとガタンと扉が開き、ウィリアムさんがそこに立っていた。

「待たせたな。この男か?」

外に出て倒れこんでいる男を見下ろす。

「おい、運んでくれ」

ウィリアムの後ろからもう二人現れ、男を担いで中へと戻っていった。

「師匠は?」

ウィリアムさんに同じ扉から中に入れてもらい、師匠が一緒にいなかったので訊ねた。

「親父は騎士団のかつての部下に捕まってる。何しろ退役してからすぐアイスヴァインに隠居したから、皆が懐かしがって……裏でローリィが気を失った男と待ってるとしか言わなかったが、何があった?」

扉を閉め鍵を掛け、薄暗い廊下を歩きながら訊かれ、事情を伝えるとウィリアムさんの顔つきが変わった。

「なんだそれは!俺はてっきり倒れている男を保護したとばかり。親父、説明不足にもほどがあるぞ」

ウィリアムさんは身元不明の行き倒れを連れてきたと思っていたが、私の話を訊いて慌てて駆け出した。

「くそ!そんなことなら連れていくのは医務室じゃなくて取調室じゃないか。ちょっと待ってろ、さっきの連中に伝えてくる」

そう言ってウィリアムさんはバタバタと廊下を走っていった。

廊下に残された私は初めて訪れた場所で勝手がわからず、ウィリアムさんに言われたとおりそこで待つことにした。

騎士団員でもなく廊下に立っている見知らぬ私を皆がじろじろと見ていく。
こんな時、時間を潰す何かがあればいいが、そんなものはないので時間が過ぎるのが遅く感じられる。

「ここで何をしている?」

大抵はじろじろ見るだけだったが、初めて声をかけられ、そちらを振り向いた。

声をかけてきたのは、後ろに男性を一人従え明らかにウィリアムさんやさっきから廊下を通っていった人達より階級が上とわかる制服を着た人だった。

短く刈り込んだ角刈り頭の赤茶の髪、瞳はブラウン。体格はがっしりとしていて背筋がいい。
腕を後ろに組んで堂々とした出で立ちだ。

「娘、団長が訊いている。質問に答えろ」

後ろから肩の辺りでアッシュブロンドの髪を切り揃えた眼鏡をかけた男性が黙ったままの私にきつい言い方をする。

「セイン、彼女は騎士団員ではない。一般人だ。そのような言い方をするものではない」

団長と呼ばれた人が部下に注意する。注意されたセインという人が「申し訳ございません」と謝った。
団長?団長ってここで一番偉い人なのでは。

「それで、お嬢さんはここで何を?ここは一般の方が立ち入るところではない」

「あ、すいません。人を待ってます。その、初めて来たので勝手に動くと迷子になるかと思って……入ってはいけない所とは知りませんでした」

なぜかびしっと気を付けをしてしまう。
思わず敬礼もしかけてすんでのところで思い止まった。
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