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205 親子(?)勢ぞろい
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明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
怯えたホリイさんを落ち着かせている間にウィリアムさんたちが戻ってきたため、その場は師匠からの追求は免れた。
けれど諦めていない師匠の視線に晒され、あの黒歴史についていつか話さなければならない時が来るだろうと覚悟をした。
「お久しぶりです。マシューさん」
公爵領へ行く前、これから任務のために西の方へ赴くと言っていた。
ここにいると言うことは、それが終わったということだろうか。
「元気だった?」
「マシューさんは?お仕事は終わったのですか?」
最後に会った時から何となくやつれて見えるのは気のせいだろうか。そう思って訊ねると、ウィリアムさんと二人顔を見合せる。
「ローリィは無関係じゃない。親父も色々協力してくれたしな」
ホリイさんが食事の仕度に台所へ引き上げているので、今は四人で居間にいる。
「実は、俺はナジェット卿のことを調べに行っていたんだ」
その名を聞いて私は身を強張らせた。
「君の父上のことは兄から聞いた。実は王弟殿下がナジェット卿を含むあの辺りを治める貴族の何人かが六年前のマイン国との戦を誘発しようとしていたことを突き止め、陛下や宰相閣下から命を受け、捜索に当たっていた。彼らだけで仕組んだとは思えないからね。王都にいる誰か有力な貴族が関わっていると踏んで、それを探るために騎士団の何人かで現地に向かっていた」
それがマシューさんの任務だったのかと初めて知った。
「師匠はいつまでいらっしゃるんですか?」
ホリイさんも加わり皆で夕食を取りながら訊ねる。
「まだ具体的には決めていないが、年越しはエミリと過ごすつもりだから、それほど長くはいないつもりだ。こっちにいる知り合いの何人かに会ってエミリへの土産を買いにも行きたいし。構わないかな、ホリイさん」
暫くの滞在許可をホリイさんに求める。
「家主は俺だけど」
滞在許可をホリイさんに求めたことにウィリアムさんが文句を言う。
「実際に家のことを切り盛りしているのはホリイさんだろう。それにお前は俺の息子だから父親の世話をするのは当然。ホリイさんは大事なお嫁さんなんだからきちんと礼儀は通さないとな。エミリにもその点は気を付けろと言われている」
力強く力説するが、妻に躾られていることが垣間見える発言だ。
「なんだ、結局母さんの受け売りか」
「師匠、相変わらず離れていてもエミリさんですね」
「悪いか、エミリと結婚できたことは俺の人生最大の慶事だ」
「でたよ。親父の惚気」
「ほざけ、そのおかげでお前たち息子が生まれたんだ。それにホリイという可愛い義娘もできたし、マシューの嫁のララだって」
師匠の言葉にウィリアムさんもマシューさんもホリイさんもほっこりする。
「それに、可愛い弟子もな、俺が弟子を取るなんて後にも先にもお前だけだな。本当に優秀な弟子だ」
そう言って隣に座る私の肩を叩く。
「師匠……」
叩かれた肩に手を置き、涙目で師匠を見つめる。
その場の雰囲気が更にほっこりとした。
「お酒のせいかな。ついいつもより饒舌になった。久しぶりに家族に会えて嬉しいよ」
照れて熊男が視線をあさって方向に動かす。
「私も師匠と会えてよかったです。たとえ最初はルイスに脅されて仕方なく来てくれたとしても」
「ばっ……」
ルイスの名前を出すと慌てて師匠が私の口を塞ごうとした。
(エミリと結婚するのにルイスに協力してもらったのはこいつらに話してないんだ)
耳元で師匠がボソボソと他の皆には聞こえないように囁く。
「ルイス?確か……親父の古くからの……」
「脅されたって……親父、何か弱味でも握られているのか?」
「え、そうなんですか、お義父様」
三人が前のめりに次々と訊ねた。
本年もよろしくお願いいたします。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
怯えたホリイさんを落ち着かせている間にウィリアムさんたちが戻ってきたため、その場は師匠からの追求は免れた。
けれど諦めていない師匠の視線に晒され、あの黒歴史についていつか話さなければならない時が来るだろうと覚悟をした。
「お久しぶりです。マシューさん」
公爵領へ行く前、これから任務のために西の方へ赴くと言っていた。
ここにいると言うことは、それが終わったということだろうか。
「元気だった?」
「マシューさんは?お仕事は終わったのですか?」
最後に会った時から何となくやつれて見えるのは気のせいだろうか。そう思って訊ねると、ウィリアムさんと二人顔を見合せる。
「ローリィは無関係じゃない。親父も色々協力してくれたしな」
ホリイさんが食事の仕度に台所へ引き上げているので、今は四人で居間にいる。
「実は、俺はナジェット卿のことを調べに行っていたんだ」
その名を聞いて私は身を強張らせた。
「君の父上のことは兄から聞いた。実は王弟殿下がナジェット卿を含むあの辺りを治める貴族の何人かが六年前のマイン国との戦を誘発しようとしていたことを突き止め、陛下や宰相閣下から命を受け、捜索に当たっていた。彼らだけで仕組んだとは思えないからね。王都にいる誰か有力な貴族が関わっていると踏んで、それを探るために騎士団の何人かで現地に向かっていた」
それがマシューさんの任務だったのかと初めて知った。
「師匠はいつまでいらっしゃるんですか?」
ホリイさんも加わり皆で夕食を取りながら訊ねる。
「まだ具体的には決めていないが、年越しはエミリと過ごすつもりだから、それほど長くはいないつもりだ。こっちにいる知り合いの何人かに会ってエミリへの土産を買いにも行きたいし。構わないかな、ホリイさん」
暫くの滞在許可をホリイさんに求める。
「家主は俺だけど」
滞在許可をホリイさんに求めたことにウィリアムさんが文句を言う。
「実際に家のことを切り盛りしているのはホリイさんだろう。それにお前は俺の息子だから父親の世話をするのは当然。ホリイさんは大事なお嫁さんなんだからきちんと礼儀は通さないとな。エミリにもその点は気を付けろと言われている」
力強く力説するが、妻に躾られていることが垣間見える発言だ。
「なんだ、結局母さんの受け売りか」
「師匠、相変わらず離れていてもエミリさんですね」
「悪いか、エミリと結婚できたことは俺の人生最大の慶事だ」
「でたよ。親父の惚気」
「ほざけ、そのおかげでお前たち息子が生まれたんだ。それにホリイという可愛い義娘もできたし、マシューの嫁のララだって」
師匠の言葉にウィリアムさんもマシューさんもホリイさんもほっこりする。
「それに、可愛い弟子もな、俺が弟子を取るなんて後にも先にもお前だけだな。本当に優秀な弟子だ」
そう言って隣に座る私の肩を叩く。
「師匠……」
叩かれた肩に手を置き、涙目で師匠を見つめる。
その場の雰囲気が更にほっこりとした。
「お酒のせいかな。ついいつもより饒舌になった。久しぶりに家族に会えて嬉しいよ」
照れて熊男が視線をあさって方向に動かす。
「私も師匠と会えてよかったです。たとえ最初はルイスに脅されて仕方なく来てくれたとしても」
「ばっ……」
ルイスの名前を出すと慌てて師匠が私の口を塞ごうとした。
(エミリと結婚するのにルイスに協力してもらったのはこいつらに話してないんだ)
耳元で師匠がボソボソと他の皆には聞こえないように囁く。
「ルイス?確か……親父の古くからの……」
「脅されたって……親父、何か弱味でも握られているのか?」
「え、そうなんですか、お義父様」
三人が前のめりに次々と訊ねた。
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