転生して要人警護やってます

七夜かなた

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169 ロード・アイスヴァイン

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ロード・アイスヴァイン……ロード・ハインツは私の父親。
そのことを知るのはウィリアムさんだけだと思った。

だが、驚いたのはウィリアムさんだけではなかった。
アリアーデ先生もヒュッと息を飲む。

「アイスヴァイン卿が?」

ウィリアムさんが目を見開いて私を見る。

「知っているのか?」

殿下がウィリアムさんに訊ねる。
ウィリアムさんは視線を私に残したまま殿下の方に体を向け、最後に殿下の方に向き直った。

「アイスヴァインは私の………私の父の故郷です。騎士団を引退し十年以上前に戻っております」

「ウィリアムの父親とは、モーリス・ドルグランのことか?」

「はい……アイスヴァイン領を治めるアイスヴァイン伯爵家に勤める執事が父の幼馴染みということもあり、引退後は伯爵とも懇意にしていただきました。その縁で伯爵のご令嬢の武術指南も………」

「そうか…………!?令嬢に武術指南?令息の間違いではないのか?」

ウィリアムさんの以外な言葉に殿下が問い直した。

「いえ………間違いではありません………」

「ウィリアムさん、それって………」

令嬢と令息の勘違いを否定するウィリアムさんに、今度はエリックさんが声をかけてきた。

エリックさんたちは私がウィリアムさんの父親、モーリス師匠の弟子だと知っている。護衛に雇われた時に初顔合わせでそのことは話していた。
今の話の流れから、何かに気づいたのだろう。

今度はエリックさんが私を凝視する。

「モーリスさんの弟子は……」

「エリックもドルグランの弟子だと言うアイスヴァイン卿の娘を知っているのか?」

エリックさんの様子を見て殿下が訊ねる。
令嬢がかつて騎士団でロイシュタールの猛獣と言われた男の弟子だと言うことが信じられない殿下が、さらにエリックさんが心当たりのありそうな様子を見せたことに驚いている。

「ロイシュタールの猛獣と言われた男の弟子になるくらいの令嬢だ。さぞかし腕も立つ………」

殿下も何かに気づいたのか言いかけた言葉を飲み込んだ。

全員の目が私に注がれる。

アリアーデ先生さえ何かを知っているようだ。彼女の夫はテインリヒ宰相なのだから、もしかしたら何かを聞いているのかもしれない。

「まさか………」

「ローリィ……正直に話すか?」

ウィリアムさんがいつの間にか側に来て、私の顔を見下ろした。

「……どこまで?」

私はウィリアムさんに聞き返した。

どこまで話すべきか。

私が実はカナン出身でなくアイスヴァイン出身でした。

私がロード・アイスヴァイン前伯爵の娘です。

彼らに殺されたのは私の父です。

「それはローリィに任せる。悪いのは君じゃない」

私がカナン出身だと偽ったことをウィリアムさんは言っているのだろう。

目を瞑り、一度深呼吸してから私は目の前にいる一人一人の顔を見渡し、最後に殿下の顔を見た。
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