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60 巡回
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馬のことに関しては、チャールズさんの考えが正しかった。
巡回に用意されたのは三頭の馬。
一頭はもちろんキルヒライル様が乗る。後の二頭にはクリスさんとレイさんが乗る。
護衛として雇われたもう一人、エリックさんは別件の用のため今日は同行しない。
巡回に必要な書類を腕に抱え、玄関先で私は立ち尽くした。
その日の朝、届けてもらったズボンを履いてネヴィルさんを訪ねると、案の定私の出で立ちに驚いた様子だった。
それでも私に巡回の際に気をつけなければならないことを丁寧に教えてくれた。
「必要なことは殿下が存じ上げています。お側で聞いたことなど書き留めていただければいいと思います」
あまり長い時間は体に負担がかかるため、今必要なことだけを聞いて部屋を出ると、ちょうど殿下たちが戻ってきたとチャールズさんが呼びに来てくれた。
「すぐに出かけられるということですが、大丈夫ですね」
私の格好を見て準備万端だと悟ったチャールズさんは、持っていた書類を私に持たせ、玄関に連れていく。
「せっかく準備されたところ、申し訳ありませんが」
チャールズさんは、ズボンを履いている私に気の毒そうな目を向ける。
玄関にたどり着くと、私の到着を待っていた殿下たちが振り向いて、私の格好を見て眉をしかめる。
それぞれ一頭ずつ手綱を握っている三人を見て、自分が乗る馬は?とキョロキョロする。
「なぜ、そのような格好をしている?」
「馬に乗るので、スカートでは不便かと……それで、私はどの馬に乗ればいいのでしょうか」
「ネヴィルが使っていた馬はまだケガが治っていない。他に余分な馬はない。そなたは私と一緒だ」
ガーン!これが漫画ならそんな擬音がつけられたような顔をしていたに違いない。私の顔色を見て殿下が「不満か?」という風に睨み付ける。
「あ、それならクリスさんかレイさんと………」
「彼らは護衛だ。二人乗りではいざというとき邪魔になる。喜べ、私と同乗など滅多にないことだぞ」
プレミア感を出されても素直に喜べない。クリスさんたちを見ると我慢しろという目で見られた。
誰かと馬に乗るなど、乗馬を始めた頃以来だ。しかもその時私はまだ子どもで、相手はお父様だった。
「ぐずぐずするな、時間が惜しい」
急かされて仕方なく殿下の馬に近づき、鞍の横に取り付けた袋に持っていた書類を放り込む。
馬上に私を引き上げるために手を差し出されたが、自分で鞍を掴み鐙に足をかけて背に跨がった。
自分で乗れるというところを主張し、どんなもんだ、という顔で見下ろすと、殿下は最初呆気にとられて、次に私のささやかな意地っ張りにクスリと笑った。
「なるほど」
そう呟いて殿下もさっと馬の背に跨がった。
「!?」
殿下は私の後ろに座ると、ぐっと私の腰を引き寄せた。
背の高さが頭一つしか違わないため、息が頭頂にかかる。折り曲げた足が私の太ももを押さえ込み、がっちりと押さえ込まれる。
「あの、大丈夫です。落ちませんから」
もう少し離れてくれも大丈夫だと言うと、頭のすぐ上でつまらなそうな声がして腕と足が緩められた。
「では、しっかり掴まっていなさい。行くぞ」
殿下は後ろのクリスさんたちに声をかけ、出発した。
そろそろシビル山脈の高い山々では初雪が降る頃だが、この辺りはまだ昼間はそれほど寒くない。
これから朝晩はもっと冷え込み、日中の寒暖差も大きくなってくるだろう。
森では猟師たちが鹿や兎などを狩り、女子どもは木の実や茸などの森の恵みを収穫している。
葡萄農家は毎日朝から暗くなるまで葡萄を摘み、摘んだ葡萄は品質を確認され、醸造所に運ばれる。
品質がいいと判断された葡萄はワイン作りにまわされ、質があまり良くないものは祭りに回される。
農家には品質に応じて設定された単価により、その重さで報酬が決まる。
そういった説明を受けながら、農場をいくつか回って行った。
馬が進む度に体も揺れ、その都度後ろの殿下の体にあたるのと、話をしてくれるのはいいが、少し俯いてしゃべられると、耳に微かに息がかかる。私はできるだけ前屈みになって接触を避けようとするが、あまりあからさまに避けると意識しているのがわかってしまう。
その微妙な位置取りが難しい。
三ヶ所を回るうちにすっかり疲れはててしまった。
どこの農場に行っても公爵は熱烈な歓迎をされ、あれやこれやの接待を受けた。
行く先々でお茶や菓子が振る舞われ、中には自家製のワインやハム、チーズとそれこそ食べきれないくらいだった。
すぐにお腹がいっぱいになるが、好意を無駄にするわけにも行かず、少し口にして後は持ち帰るようにしてもらった。
司祭を訪ねて教会に行くつもりだったので、それらは寄進するということだった。
ネヴィルさんが落馬したことは領内に知れ渡っていたので、皆が心配して彼の容態を訊いてくるので、その度に心配ない、と殿下は答えていた。
私が殿下と同じ馬に乗ってやってくるので、当然注目を浴びたが、殿下の言うことを紙に書いたりしているのを見てネヴィルさんの代わりだとすぐに受け入れてもらった。
その日最後に立ち寄ったのは、領内で一番規模が大きくて歴史もあり、葡萄農家を束ねる農場長をやっている方の農場だった。
そこも他の農場と同じように、まず収穫しているところを見学し、葡萄の出来具合を見てまわる。
見回りながら、時折気分で選んだ葡萄の実を食べてみたり、土の具合を見る。
殿下が側に来ると、皆が収穫の手を止めて膝を突いて礼をする。どこの農場もそんな感じだ。その度に殿下は「気にしないで仕事を続けるように」と言って通りすぎる。
あんまり同じセリフが続くので、ロボットがしゃべっているんじゃないかと思って、ロボットの殿下を想像して一人で笑っていたら、何がおかしいのかと変な目で見られてしまった。
一通り畑を見て回り、農場主の家の中庭に案内され、本日何度目かのお茶会が始まった。
「どうぞ殿下、田舎のことゆえ、何のおもてなしもできませんが、お付きの方もどうぞ」
さすが領内一番の広さを持つ農場主のお茶会は、それまでと比べ物にならない程豪華だった。
案内された時には既に農場主の奥方や令嬢が待ち構えていた。
既に私たちのお腹の具合は腹八分目を超えていて、テーブルに所狭しと並べられた菓子に思わずゲップが出そうになった。
デザートは別腹とは言え、もう限界にきていた。
それでもせっかくの気遣いに報いるため、せめてお茶でも、と思い席についた。
殿下が座るとすかさず着飾った若い女性が、お茶を注ぐために近づいてきた。
「私の娘でございます、殿下」
農場主がわざとらしく紹介する。
これも今日訪れた農場で繰り返された光景だ。
年頃の娘がいないところは、姪が出てきた。
何人かは殿下の顔に走った傷を見て少し引いた感があったが、全体が男前なので、殆どがそんなことはお構い無しのようだった。
彼女も後者の部類らしく、いそいそとティーポットを持って目をパチパチさせている。
私もクリスさんたちも苦笑して互いに目配せし合う。
その様子を見た殿下が、お茶を注ごうとする令嬢に手をかざして止める。
「実は、私の共の者がお茶を入れるのが得意でね、ローリィ、是非皆さんに披露してあげなさい」
「え……」
皆に一斉に見られて、思わず声を出してしまった。
「私……ですか?」
「そうだ、いつも入れてくれるだろう?」
にこやかに笑って殿下がそう言うが、明らかに目は笑っていない。
「さあ、皆さんに披露してあげなさい」
「…………わかりました」
なんだか怒ってる?さっき笑ったのが悪かったのか。
「あら、男の方がお茶を?」
婦人が立ち上がった私を見て呟いた。
ズボンを履いているのと、殿下もあえて名前と、私がネヴィルさんの代理だとしか言わないので、殆どの人が私を男だと思い、接してきた。
「いえ、彼女は女性です。普段は王都の邸にいるのですが、今回、管財人がケガをしたので人手がいると思い連れて来ました」
殿下は今日初めて私を女性だと紹介した。
ここに来るまであえてそんなことはしなかったのに、どういう心境の変化だろう。
「まあ、女性の方、すいません、てっきり………」
自分の間違いに気づき婦人が謝った。
「お気になさらず。紛らわしい格好をしている彼女が悪いのです」
何だかひとことひとことトゲがあるような言い方だ。
「さあ、ローリィ、お茶が冷めてしまうぞ」
何が気に触ったのかわからないが、機嫌を直してもらえるならと、私は言われるままにお茶を入れた。
巡回に用意されたのは三頭の馬。
一頭はもちろんキルヒライル様が乗る。後の二頭にはクリスさんとレイさんが乗る。
護衛として雇われたもう一人、エリックさんは別件の用のため今日は同行しない。
巡回に必要な書類を腕に抱え、玄関先で私は立ち尽くした。
その日の朝、届けてもらったズボンを履いてネヴィルさんを訪ねると、案の定私の出で立ちに驚いた様子だった。
それでも私に巡回の際に気をつけなければならないことを丁寧に教えてくれた。
「必要なことは殿下が存じ上げています。お側で聞いたことなど書き留めていただければいいと思います」
あまり長い時間は体に負担がかかるため、今必要なことだけを聞いて部屋を出ると、ちょうど殿下たちが戻ってきたとチャールズさんが呼びに来てくれた。
「すぐに出かけられるということですが、大丈夫ですね」
私の格好を見て準備万端だと悟ったチャールズさんは、持っていた書類を私に持たせ、玄関に連れていく。
「せっかく準備されたところ、申し訳ありませんが」
チャールズさんは、ズボンを履いている私に気の毒そうな目を向ける。
玄関にたどり着くと、私の到着を待っていた殿下たちが振り向いて、私の格好を見て眉をしかめる。
それぞれ一頭ずつ手綱を握っている三人を見て、自分が乗る馬は?とキョロキョロする。
「なぜ、そのような格好をしている?」
「馬に乗るので、スカートでは不便かと……それで、私はどの馬に乗ればいいのでしょうか」
「ネヴィルが使っていた馬はまだケガが治っていない。他に余分な馬はない。そなたは私と一緒だ」
ガーン!これが漫画ならそんな擬音がつけられたような顔をしていたに違いない。私の顔色を見て殿下が「不満か?」という風に睨み付ける。
「あ、それならクリスさんかレイさんと………」
「彼らは護衛だ。二人乗りではいざというとき邪魔になる。喜べ、私と同乗など滅多にないことだぞ」
プレミア感を出されても素直に喜べない。クリスさんたちを見ると我慢しろという目で見られた。
誰かと馬に乗るなど、乗馬を始めた頃以来だ。しかもその時私はまだ子どもで、相手はお父様だった。
「ぐずぐずするな、時間が惜しい」
急かされて仕方なく殿下の馬に近づき、鞍の横に取り付けた袋に持っていた書類を放り込む。
馬上に私を引き上げるために手を差し出されたが、自分で鞍を掴み鐙に足をかけて背に跨がった。
自分で乗れるというところを主張し、どんなもんだ、という顔で見下ろすと、殿下は最初呆気にとられて、次に私のささやかな意地っ張りにクスリと笑った。
「なるほど」
そう呟いて殿下もさっと馬の背に跨がった。
「!?」
殿下は私の後ろに座ると、ぐっと私の腰を引き寄せた。
背の高さが頭一つしか違わないため、息が頭頂にかかる。折り曲げた足が私の太ももを押さえ込み、がっちりと押さえ込まれる。
「あの、大丈夫です。落ちませんから」
もう少し離れてくれも大丈夫だと言うと、頭のすぐ上でつまらなそうな声がして腕と足が緩められた。
「では、しっかり掴まっていなさい。行くぞ」
殿下は後ろのクリスさんたちに声をかけ、出発した。
そろそろシビル山脈の高い山々では初雪が降る頃だが、この辺りはまだ昼間はそれほど寒くない。
これから朝晩はもっと冷え込み、日中の寒暖差も大きくなってくるだろう。
森では猟師たちが鹿や兎などを狩り、女子どもは木の実や茸などの森の恵みを収穫している。
葡萄農家は毎日朝から暗くなるまで葡萄を摘み、摘んだ葡萄は品質を確認され、醸造所に運ばれる。
品質がいいと判断された葡萄はワイン作りにまわされ、質があまり良くないものは祭りに回される。
農家には品質に応じて設定された単価により、その重さで報酬が決まる。
そういった説明を受けながら、農場をいくつか回って行った。
馬が進む度に体も揺れ、その都度後ろの殿下の体にあたるのと、話をしてくれるのはいいが、少し俯いてしゃべられると、耳に微かに息がかかる。私はできるだけ前屈みになって接触を避けようとするが、あまりあからさまに避けると意識しているのがわかってしまう。
その微妙な位置取りが難しい。
三ヶ所を回るうちにすっかり疲れはててしまった。
どこの農場に行っても公爵は熱烈な歓迎をされ、あれやこれやの接待を受けた。
行く先々でお茶や菓子が振る舞われ、中には自家製のワインやハム、チーズとそれこそ食べきれないくらいだった。
すぐにお腹がいっぱいになるが、好意を無駄にするわけにも行かず、少し口にして後は持ち帰るようにしてもらった。
司祭を訪ねて教会に行くつもりだったので、それらは寄進するということだった。
ネヴィルさんが落馬したことは領内に知れ渡っていたので、皆が心配して彼の容態を訊いてくるので、その度に心配ない、と殿下は答えていた。
私が殿下と同じ馬に乗ってやってくるので、当然注目を浴びたが、殿下の言うことを紙に書いたりしているのを見てネヴィルさんの代わりだとすぐに受け入れてもらった。
その日最後に立ち寄ったのは、領内で一番規模が大きくて歴史もあり、葡萄農家を束ねる農場長をやっている方の農場だった。
そこも他の農場と同じように、まず収穫しているところを見学し、葡萄の出来具合を見てまわる。
見回りながら、時折気分で選んだ葡萄の実を食べてみたり、土の具合を見る。
殿下が側に来ると、皆が収穫の手を止めて膝を突いて礼をする。どこの農場もそんな感じだ。その度に殿下は「気にしないで仕事を続けるように」と言って通りすぎる。
あんまり同じセリフが続くので、ロボットがしゃべっているんじゃないかと思って、ロボットの殿下を想像して一人で笑っていたら、何がおかしいのかと変な目で見られてしまった。
一通り畑を見て回り、農場主の家の中庭に案内され、本日何度目かのお茶会が始まった。
「どうぞ殿下、田舎のことゆえ、何のおもてなしもできませんが、お付きの方もどうぞ」
さすが領内一番の広さを持つ農場主のお茶会は、それまでと比べ物にならない程豪華だった。
案内された時には既に農場主の奥方や令嬢が待ち構えていた。
既に私たちのお腹の具合は腹八分目を超えていて、テーブルに所狭しと並べられた菓子に思わずゲップが出そうになった。
デザートは別腹とは言え、もう限界にきていた。
それでもせっかくの気遣いに報いるため、せめてお茶でも、と思い席についた。
殿下が座るとすかさず着飾った若い女性が、お茶を注ぐために近づいてきた。
「私の娘でございます、殿下」
農場主がわざとらしく紹介する。
これも今日訪れた農場で繰り返された光景だ。
年頃の娘がいないところは、姪が出てきた。
何人かは殿下の顔に走った傷を見て少し引いた感があったが、全体が男前なので、殆どがそんなことはお構い無しのようだった。
彼女も後者の部類らしく、いそいそとティーポットを持って目をパチパチさせている。
私もクリスさんたちも苦笑して互いに目配せし合う。
その様子を見た殿下が、お茶を注ごうとする令嬢に手をかざして止める。
「実は、私の共の者がお茶を入れるのが得意でね、ローリィ、是非皆さんに披露してあげなさい」
「え……」
皆に一斉に見られて、思わず声を出してしまった。
「私……ですか?」
「そうだ、いつも入れてくれるだろう?」
にこやかに笑って殿下がそう言うが、明らかに目は笑っていない。
「さあ、皆さんに披露してあげなさい」
「…………わかりました」
なんだか怒ってる?さっき笑ったのが悪かったのか。
「あら、男の方がお茶を?」
婦人が立ち上がった私を見て呟いた。
ズボンを履いているのと、殿下もあえて名前と、私がネヴィルさんの代理だとしか言わないので、殆どの人が私を男だと思い、接してきた。
「いえ、彼女は女性です。普段は王都の邸にいるのですが、今回、管財人がケガをしたので人手がいると思い連れて来ました」
殿下は今日初めて私を女性だと紹介した。
ここに来るまであえてそんなことはしなかったのに、どういう心境の変化だろう。
「まあ、女性の方、すいません、てっきり………」
自分の間違いに気づき婦人が謝った。
「お気になさらず。紛らわしい格好をしている彼女が悪いのです」
何だかひとことひとことトゲがあるような言い方だ。
「さあ、ローリィ、お茶が冷めてしまうぞ」
何が気に触ったのかわからないが、機嫌を直してもらえるならと、私は言われるままにお茶を入れた。
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