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14 モーリスの息子
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ロイシュタール国の近衛騎士団は大きく分けて三つに分けられている。
王族に付き添い、王族を守護する第一近衛騎士団
王宮や離宮の治安に勤める第二近衛騎士団
王都や王都周辺を護る第三近衛騎士団
第一近衛騎士団は王族に付き従い、その身の安全を護るだけでなく、文官として公務を補佐している。
王族と接するため、多くが貴族出身である。
第二近衛騎士団は王宮や離宮の警備の他、公爵、外国からの賓客の警護に就く。特に身分というよりは騎士学校で成績優秀だった者が多く登用される。
第三近衛騎士団は騎士学校でひととおりの履修を受け、騎士学校の教師からのお墨付きがあれば就くことができる。このお墨付きは、別に特別優秀であるとかの評価は必要なく、学生の間、大きな問題もおこさず、騎士としての心構えがきちんとあるという程度の評価でもらえる。
もちろん、入団してからの行いや功績、上司からの推薦があればそれぞれの所属を変えることも可能だ。
ウィリアム・ドルグランは今年で三十歳、第三近衛騎士団に所属し、五年前から三個隊を指揮する総長に昇進した。
父のモーリス・ドルグランは熊のような体格で鬼のような面相の持ち主だったが、自分も二つ下で第二近衛騎士団に所属する弟のマシューも体は大きいが、母親に似ている。
第三近衛騎士団は一から二十までの隊があり、隊ごと交代で勤務している。所属する騎士の数は一番多い。
その日、ウィリアムは日勤となっていて、もうすぐ今日の勤務が終わろうとしていた。
父のモーリスが騎士団を退職するとすぐに生まれ故郷のアイスヴァインに母とともに移り住んだ。
それ自体、特段気にすることもない。
両親がアイスヴァインに移り住んでからこれまで、一度も会っていない。
父は筆不精のため、便りもほとんど母からで、こちらからの便りは読んでいるみたいだと、母からの便りからうかがえる。
そんな父から、父直筆の便りが二週間ほど前に届いた時には、天変地異の前触れかと恐れおののいた。
そしてその内容に再び驚いた。
「弟子が今度王都に行くので、面倒をみてやってくれ」という内容だったからだ。
父が弟子を取っていたことも知らされておらず、父の手紙には弟子のことを誉める内容が書かれていたのも驚いた。
「あの親父どのが、誰かを誉めるなど…」
父として息子たちを指導はしてくれたが、それはあくまでも息子で、そこそこ武術の腕前もあったからだ。赤の他人をそこまで懐にいれるのは初めてではないどろうか。
俄然興味がわいたが、父の手紙には弟子が優秀であることは書かれていたが、どのような経緯で弟子にしたのか、弟子の素性も何も書かれていなかった。
自分の興味のあることにしか頓着しない、筆不精の父らしいと思ったが、そのうち弟子という人物が自分を訪ねて来るのであれば、その者に聞けばいいだろう。
件の人物が自分を訪ねて来たと家にいる妻から詰所に連絡が来たのは今日の昼過ぎのことだった。
ついに来た、とウィリアムは沸き上がった期待に胸をわくわくさせた。今日は何がなんでも定時に帰宅せねばなるまい。そう思っていたのだが、もうすぐ今日の勤務という頃、隊長級以上に会議の召集がかかった。
事前に予定されていない会議。ウィリアムは嫌な予感がした。
王族に付き添い、王族を守護する第一近衛騎士団
王宮や離宮の治安に勤める第二近衛騎士団
王都や王都周辺を護る第三近衛騎士団
第一近衛騎士団は王族に付き従い、その身の安全を護るだけでなく、文官として公務を補佐している。
王族と接するため、多くが貴族出身である。
第二近衛騎士団は王宮や離宮の警備の他、公爵、外国からの賓客の警護に就く。特に身分というよりは騎士学校で成績優秀だった者が多く登用される。
第三近衛騎士団は騎士学校でひととおりの履修を受け、騎士学校の教師からのお墨付きがあれば就くことができる。このお墨付きは、別に特別優秀であるとかの評価は必要なく、学生の間、大きな問題もおこさず、騎士としての心構えがきちんとあるという程度の評価でもらえる。
もちろん、入団してからの行いや功績、上司からの推薦があればそれぞれの所属を変えることも可能だ。
ウィリアム・ドルグランは今年で三十歳、第三近衛騎士団に所属し、五年前から三個隊を指揮する総長に昇進した。
父のモーリス・ドルグランは熊のような体格で鬼のような面相の持ち主だったが、自分も二つ下で第二近衛騎士団に所属する弟のマシューも体は大きいが、母親に似ている。
第三近衛騎士団は一から二十までの隊があり、隊ごと交代で勤務している。所属する騎士の数は一番多い。
その日、ウィリアムは日勤となっていて、もうすぐ今日の勤務が終わろうとしていた。
父のモーリスが騎士団を退職するとすぐに生まれ故郷のアイスヴァインに母とともに移り住んだ。
それ自体、特段気にすることもない。
両親がアイスヴァインに移り住んでからこれまで、一度も会っていない。
父は筆不精のため、便りもほとんど母からで、こちらからの便りは読んでいるみたいだと、母からの便りからうかがえる。
そんな父から、父直筆の便りが二週間ほど前に届いた時には、天変地異の前触れかと恐れおののいた。
そしてその内容に再び驚いた。
「弟子が今度王都に行くので、面倒をみてやってくれ」という内容だったからだ。
父が弟子を取っていたことも知らされておらず、父の手紙には弟子のことを誉める内容が書かれていたのも驚いた。
「あの親父どのが、誰かを誉めるなど…」
父として息子たちを指導はしてくれたが、それはあくまでも息子で、そこそこ武術の腕前もあったからだ。赤の他人をそこまで懐にいれるのは初めてではないどろうか。
俄然興味がわいたが、父の手紙には弟子が優秀であることは書かれていたが、どのような経緯で弟子にしたのか、弟子の素性も何も書かれていなかった。
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ついに来た、とウィリアムは沸き上がった期待に胸をわくわくさせた。今日は何がなんでも定時に帰宅せねばなるまい。そう思っていたのだが、もうすぐ今日の勤務という頃、隊長級以上に会議の召集がかかった。
事前に予定されていない会議。ウィリアムは嫌な予感がした。
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