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第3章 討伐依頼
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恋人同士のキス。
実はマリベルは軽く唇同士を触れ合わせるようなキスしかしたことがない。
それも今では嫌悪すら感じるエミリオと。
「ごめんなさい、やっぱり。嫌で…」
「いいえ!」
黙り込んでしまったマリベルを見て、フェルは引き下がろうとした。
「え?」
「あ、あの…いえ、その、嫌とかだからじゃなくて…」
(何言っているのよ、これじゃあキスが嫌じゃないと言ってるみたいに聞こえるわ)
「その、わたし、経験がなくて…その、所謂恋人同士の…だから、その、上手には…」
段々と小さくなっていく声に反比例して、マリベルの顔がどんどん赤くなって変な汗まで吹き出してきた。
(どうしたのわたし。嫌だと言えばいいのに。いくら感謝の気持ちを伝えたいからって、キスしてほしいという頼みなんて、だめに決まっているのに)
そう思うのに、目の前で同じ様に照れているフェルの整った顔から唇に視線が行く。
上唇はちょっと薄いけど、下唇はふっくらとしていて、柔かそうだ。食べている時にちらりと見えた白い歯と、赤い舌を思い出す。
「上手じゃなくても、俺は…マリベルさんとしたい」
「本当に…わたしと?」
「はい」
エミリオに騙され、プリシラに馬鹿にされ、女として欠陥品かも知れないと、失いかけていたマリベルの自信が、少し上向きになった。
テーブルの向かい合わせの席からフェルが立ち上がって近づいてくるのを、マリベルは座ったままじっと見つめる。フェルそっと手を取り、マリベルを椅子から立ち上がらせた。
互いの顔を見つめながら、背の高さを補うためにフェルがマリベルの腰に手を添えて屈み込む。
近づいて来るフェルの様々な色を持つ瞳がきれいだと思いながら、マリベルはそっと目を閉じた。
温かくて湿った唇の感触は、思った以上に柔らかかった。
エミリオとしたキスは押し付けるような強引なものだったが、フェルは包み込むようにそっとマリベルの唇を食む。
やがて少し開いた隙間から、ざらりとした舌が滑り込み、歯の裏を舐め、舌に絡みついてきた。
鼻がぶつからないように僅かに顔をずらして、更に口づけが深くなる。
腰と背中に添えられたフェルの大きくて力強い手に力がこもる。
マリベルがピタリと彼の体に寄せると、硬くてがっしりとした胸板を感じた。
(男の人だ)
囲い込むように彼の腕がマリベルを抱きしめる。
アッシュブロンドの髪の先端が顔に当たる。
口づけはどんどん深くなり、互いの唾液が入り混じりながらクチュクチュと音がする。
心臓が破れるのかと思う程に早く打ち、頭の芯がボーッとして目眩がしそうだ。
(気持ちいい)
何か温かいものが体を包み込み、背中をゾクゾクとした快感が駆け上がった。
「心臓が爆発しそうだ」
唇を離したフェルがそう言って、額を付けた状態で熱い吐息を吐き出した。
「ばく…はつ?」
目の前の濡れたフェルの唇をぼんやりと眺めながら、彼の言葉を繰り返す。
「そう…こんなにドキドキしたのは、久しぶりだ」
フェルがマリベルの手を掴んで自分の胸に当てると、掌にどくどくと打つ彼の心臓の鼓動が伝わってきた。
実はマリベルは軽く唇同士を触れ合わせるようなキスしかしたことがない。
それも今では嫌悪すら感じるエミリオと。
「ごめんなさい、やっぱり。嫌で…」
「いいえ!」
黙り込んでしまったマリベルを見て、フェルは引き下がろうとした。
「え?」
「あ、あの…いえ、その、嫌とかだからじゃなくて…」
(何言っているのよ、これじゃあキスが嫌じゃないと言ってるみたいに聞こえるわ)
「その、わたし、経験がなくて…その、所謂恋人同士の…だから、その、上手には…」
段々と小さくなっていく声に反比例して、マリベルの顔がどんどん赤くなって変な汗まで吹き出してきた。
(どうしたのわたし。嫌だと言えばいいのに。いくら感謝の気持ちを伝えたいからって、キスしてほしいという頼みなんて、だめに決まっているのに)
そう思うのに、目の前で同じ様に照れているフェルの整った顔から唇に視線が行く。
上唇はちょっと薄いけど、下唇はふっくらとしていて、柔かそうだ。食べている時にちらりと見えた白い歯と、赤い舌を思い出す。
「上手じゃなくても、俺は…マリベルさんとしたい」
「本当に…わたしと?」
「はい」
エミリオに騙され、プリシラに馬鹿にされ、女として欠陥品かも知れないと、失いかけていたマリベルの自信が、少し上向きになった。
テーブルの向かい合わせの席からフェルが立ち上がって近づいてくるのを、マリベルは座ったままじっと見つめる。フェルそっと手を取り、マリベルを椅子から立ち上がらせた。
互いの顔を見つめながら、背の高さを補うためにフェルがマリベルの腰に手を添えて屈み込む。
近づいて来るフェルの様々な色を持つ瞳がきれいだと思いながら、マリベルはそっと目を閉じた。
温かくて湿った唇の感触は、思った以上に柔らかかった。
エミリオとしたキスは押し付けるような強引なものだったが、フェルは包み込むようにそっとマリベルの唇を食む。
やがて少し開いた隙間から、ざらりとした舌が滑り込み、歯の裏を舐め、舌に絡みついてきた。
鼻がぶつからないように僅かに顔をずらして、更に口づけが深くなる。
腰と背中に添えられたフェルの大きくて力強い手に力がこもる。
マリベルがピタリと彼の体に寄せると、硬くてがっしりとした胸板を感じた。
(男の人だ)
囲い込むように彼の腕がマリベルを抱きしめる。
アッシュブロンドの髪の先端が顔に当たる。
口づけはどんどん深くなり、互いの唾液が入り混じりながらクチュクチュと音がする。
心臓が破れるのかと思う程に早く打ち、頭の芯がボーッとして目眩がしそうだ。
(気持ちいい)
何か温かいものが体を包み込み、背中をゾクゾクとした快感が駆け上がった。
「心臓が爆発しそうだ」
唇を離したフェルがそう言って、額を付けた状態で熱い吐息を吐き出した。
「ばく…はつ?」
目の前の濡れたフェルの唇をぼんやりと眺めながら、彼の言葉を繰り返す。
「そう…こんなにドキドキしたのは、久しぶりだ」
フェルがマリベルの手を掴んで自分の胸に当てると、掌にどくどくと打つ彼の心臓の鼓動が伝わってきた。
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