11 / 22
11 王子の守護霊
しおりを挟む
アディーナの纏う魔力防御のフードはそこそこの魔法なら防ぐことができる。先日騎士団に攻撃された時もこれがあったから逃げおおせた。
だが、今声を掛けてきた男はそれを上回る実力があるとわかる。
『すごい魔力の男だぞ、アディーナ』
『こんなの見たことないわ』
フードも腕輪も明らかに反応しているが、まるで効いていない。
「魔力防御か……その程度のものでは私には通用しないぞ」
隣でハンスがオロオロとしているのがわかるが、彼にもどうすることもできない。
どんどん近づいてくるのが足音でわかる。拘束されているのは手と足だけなので、それ以外は動くため後ろを振り向こうとした。
「振り向くな、前を見ていろ」
しゃべろうとして声も封じられているとわかる。魔法を発動する詠唱を阻止するためだ。
「貴様、何者だ」
男が近づくにつれポケットの指輪が何故か熱を帯びてくるのがわかる。男の魔力に反応しているのか。
それより声を封じているのに喋れるわけがないのがわかっていないのか。
『アシェル殿下』
ハンスが驚く名前を口にした。
(どういうこと?)
こちらを覗き込むハンスに目で訴える。
『この魔力はアシェル殿下のものです。何度もお会いしたことがありますからわかります』
どうしてここに第一王子がいるのか。
『納得じゃ、噂通りの魔力じゃな』
『感心している場合ですか、アディーナは魔力がないんですよ。どうするんですか』
『暫く様子を見て、相手が怯んだ隙に逃げるしかないじゃろう』
『だからそれをどうやって』
「喉の封印を解く。余計な真似はするな」
後ろから肩越しに刃物が当てられる。余計な真似とは魔法を使うなということだろう。こくこくと頷くと喉に感じていた圧迫感が無くなった。
ケホケホと咳き込む。
「もう一度訊ねる。貴様、何者だ」
「と、通りすがりの者です」
「嘘を吐くな。簡素な魔力防御を施したものを身に付けておきながら、貴様から魔力が感じられない。この私に察知できないほど強力をする者がそうそういてたまるか。それに、そのポケットにあるものはなんだ」
魔力が感知できないのは魔力がないからです。
そう言えばどうなるだろう。
「こちらを向け」
殿下がそう言うと勝手に体が反転した。
「!」
思った以上に近くにいて、すぐ目の前に立っていたので驚いた。
自分と同じようにフードを被り、口元をマスクで覆っているが、こちらを鋭い目で睨む紫の瞳が印象的だった。
背はアディーナよりは頭ひとつ高い。
こちらを向いたアディーナの瞳が黒いことに驚いている。
「声は出せる筈だ。訊かれたことに答えろ」
『殿下、この者は怪しいものではありません。私に協力して盗まれた指輪を取り戻してくれたのです』
『そうです、アディーナは何も悪いことなどしていません』
ハンスと母親が必死で彼の耳元で叫ぶが、当然彼の耳には聞こえない。
「無理だ。彼には聞こえない」
女とばれないように声音を低くしてハンスに伝える。
「何が聞こえないというのだ」
当然自分に言われたと思った彼は聞き返す。
「ポケットの中身が気になるなら、ご自分でどうぞ。何せ手足を拘束されているので私は取り出せませんから」
相手が王子だとわかっても少しも安心できないが、正体がわかっただけ恐怖も少し和らいだ。
警戒しながらも彼はフードのポケットを探り、指輪を取り出すと、それをじっくりと観察して更に剣を突きつけてきた。
だが、今声を掛けてきた男はそれを上回る実力があるとわかる。
『すごい魔力の男だぞ、アディーナ』
『こんなの見たことないわ』
フードも腕輪も明らかに反応しているが、まるで効いていない。
「魔力防御か……その程度のものでは私には通用しないぞ」
隣でハンスがオロオロとしているのがわかるが、彼にもどうすることもできない。
どんどん近づいてくるのが足音でわかる。拘束されているのは手と足だけなので、それ以外は動くため後ろを振り向こうとした。
「振り向くな、前を見ていろ」
しゃべろうとして声も封じられているとわかる。魔法を発動する詠唱を阻止するためだ。
「貴様、何者だ」
男が近づくにつれポケットの指輪が何故か熱を帯びてくるのがわかる。男の魔力に反応しているのか。
それより声を封じているのに喋れるわけがないのがわかっていないのか。
『アシェル殿下』
ハンスが驚く名前を口にした。
(どういうこと?)
こちらを覗き込むハンスに目で訴える。
『この魔力はアシェル殿下のものです。何度もお会いしたことがありますからわかります』
どうしてここに第一王子がいるのか。
『納得じゃ、噂通りの魔力じゃな』
『感心している場合ですか、アディーナは魔力がないんですよ。どうするんですか』
『暫く様子を見て、相手が怯んだ隙に逃げるしかないじゃろう』
『だからそれをどうやって』
「喉の封印を解く。余計な真似はするな」
後ろから肩越しに刃物が当てられる。余計な真似とは魔法を使うなということだろう。こくこくと頷くと喉に感じていた圧迫感が無くなった。
ケホケホと咳き込む。
「もう一度訊ねる。貴様、何者だ」
「と、通りすがりの者です」
「嘘を吐くな。簡素な魔力防御を施したものを身に付けておきながら、貴様から魔力が感じられない。この私に察知できないほど強力をする者がそうそういてたまるか。それに、そのポケットにあるものはなんだ」
魔力が感知できないのは魔力がないからです。
そう言えばどうなるだろう。
「こちらを向け」
殿下がそう言うと勝手に体が反転した。
「!」
思った以上に近くにいて、すぐ目の前に立っていたので驚いた。
自分と同じようにフードを被り、口元をマスクで覆っているが、こちらを鋭い目で睨む紫の瞳が印象的だった。
背はアディーナよりは頭ひとつ高い。
こちらを向いたアディーナの瞳が黒いことに驚いている。
「声は出せる筈だ。訊かれたことに答えろ」
『殿下、この者は怪しいものではありません。私に協力して盗まれた指輪を取り戻してくれたのです』
『そうです、アディーナは何も悪いことなどしていません』
ハンスと母親が必死で彼の耳元で叫ぶが、当然彼の耳には聞こえない。
「無理だ。彼には聞こえない」
女とばれないように声音を低くしてハンスに伝える。
「何が聞こえないというのだ」
当然自分に言われたと思った彼は聞き返す。
「ポケットの中身が気になるなら、ご自分でどうぞ。何せ手足を拘束されているので私は取り出せませんから」
相手が王子だとわかっても少しも安心できないが、正体がわかっただけ恐怖も少し和らいだ。
警戒しながらも彼はフードのポケットを探り、指輪を取り出すと、それをじっくりと観察して更に剣を突きつけてきた。
10
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説
ファムファタール
仏白目
恋愛
子爵家の娘ミシェルは、叔母の口添えで遠縁の侯爵家に行儀見習いとしてお世話になっている
将来は高位貴族の侍女になり、良い縁談に恵まれれば幸いと日々を過ごしていたある日、
侍女としてお嬢様の婚約者にお茶を淹れたことから ミシェルを取り巻く世界が変わりだす、どうして?こんな事に・・・
この物語は、作者ご都合主義の世界観でのフィクションです あしからず。
あなたに本当の事が言えなくて
cyaru
恋愛
貧乏男爵家の令嬢サーシャは友人のメアリと共に夜会に参加をした。
到着が遅れてしまったが、壁の華になるのはいつものこと。
今回もお相手には恵まれなかったと帰ろうとした時、コナー伯爵家のリヒトから声がかかった。
赤いチューリップを差し出し、「名前を呼ぶ権利が欲しい」とサーシャに告げる。
美丈夫の近衛騎士でもあるリヒトはサーシャの憧れの人。サーシャは舞い上がってしまう。
サーシャの仕事は休みが少なくなかなか会えないが、リヒトはそれまでの恋人とは違うタイプのサーシャに段々と魅かれ、自分の気持ちにも気が付いてしまう。
しかしこの交際は「偽物」であり、実は‥‥。
本当の事が言えなくて苦悶するリヒト。
そんな中、サーシャは仕事先である市場長から王都ではなく副王都に新しく造られる市場に赴任して欲しいと頼まれる。副王都は王都から距離があり早馬でも1週間はかかる。
仕事をせねば食べていけないサーシャは引き受けるべきか悩み、メアリに相談をする事にした。
その相談をするのに待ち合わせ場所となったカフェでリヒトの友人であるビアンカとエルサの会話を耳にしてしまった。
★例の如く↑思いっきり省略しております。
★作者が一番苦手としている禁断の元鞘臭がしますが、気のせいです。
注意事項~この話を読む前に~
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。舞台は異世界の創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
売られていた奴隷は裏切られた元婚約者でした。
狼狼3
恋愛
私は先日婚約者に裏切られた。昔の頃から婚約者だった彼とは、心が通じ合っていると思っていたのに、裏切られた私はもの凄いショックを受けた。
「婚約者様のことでショックをお受けしているのなら、裏切ったりしない奴隷を買ってみては如何ですか?」
執事の一言で、気分転換も兼ねて奴隷が売っている市場に行ってみることに。すると、そこに居たのはーー
「マルクス?」
昔の頃からよく一緒に居た、元婚約者でした。
婚約解消しろ? 頼む相手を間違えていますよ?
風見ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢である、私、リノア・ブルーミングは元婚約者から婚約破棄をされてすぐに、ラルフ・クラーク辺境伯から求婚され、新たな婚約者が出来ました。そんなラルフ様の家族から、結婚前に彼の屋敷に滞在する様に言われ、そうさせていただく事になったのですが、初日、ラルフ様のお母様から「嫌な思いをしたくなければ婚約を解消しなさい。あと、ラルフにこの事を話したら、あなたの家がどうなるかわかってますね?」と脅されました。彼のお母様だけでなく、彼のお姉様や弟君も結婚には反対のようで、かげで嫌がらせをされる様になってしまいます。ですけど、この婚約、私はともかく、ラルフ様は解消する気はなさそうですが?
※拙作の「どうして私にこだわるんですか!?」の続編になりますが、細かいキャラ設定は気にしない!という方は未読でも大丈夫かと思います。
独自の世界観のため、ご都合主義で設定はゆるいです。
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる