23 / 29
新婚旅行編
6
しおりを挟む
「温泉は普通の体を綺麗にするために入るだけでなく、お湯に溶け出した体に良い成分により、体をより温めるだけでなく、肌質を良くしたり、何日も時間をかけて入ることで、体の痛みを和らげたりする効果がありのだったな」
アレスティスが温泉について説明する。
「そうです。良くご存知ですね。温泉に入られたことがあるのですか?」
クルミナが感心して言う。
「ルーヴェンの受け売りだ。私も実際に入るのは初めてだ」
「左様でございますか。治療の目的もあり、共同の浴場もあります。先ほども申し上げましたが、必ずというものではありません」
どうするかとメリルリースがアレスティスの方を見る。
「せっかくだ。郷に入れば郷に従えと言う。試しにこれを身につけて入るとしよう。すまないが、妻の着替えを手伝ってもらえるか? 私は自分で着替える。夕食はその後でいい。今夜は部屋に運んでくれ」
「畏まりました」
アレスティスは男性用の浴衣を受け取ると、先に浴室へと向かった。
メリルリースはプリシラとクルミナに手伝ってもらい、浴衣を身に付け三人を下がらせて、浴室へ足を踏み入れた。
扉を開けると、すぐそこは薄い板の隙間を少し空けて並べた筏のようなものが置かれていて、石の床がその先にあった。
メリルリースは、バスタブのようなものを想像していたが、実際は床よりも深い穴があって、そこにたっぷりのお湯が張られている。
浴槽は深さはあまりなさそうだが、大の大人が寝転んで手足を伸ばしてもいいくらいに広い。
手前には水瓶のような大きな壺があって、そこにもお湯が入っている。
アレスティスは既に浴衣を身に付け、その壺の前に立っていた。
こちらを向いたアレスティスを見て、メリルリースはどきりとした。
きっちり浴衣の前を合わせて身を包んでいるメリルリースと違い、アレスティスの浴衣は腰から下はきちんと合わさっているが、上半身は胸がはだけ、お腹の傷の上部分が丸見えだ。
丈も太ももの中程しかないので、たくましい足が殆ど見えている。
「そこで何をするんです?」
アレスティスが手に大きな杓のようなものを持っているのが見えて訊ねた。
「これでここからお湯を汲んで、体にかけてからあちらに入るらしい。体を洗う際もこのお湯を使うみたいだ」
それも事前に知っていたのか、アレスティスが説明する。
言ったとおり、最初は気がつかなかったが、石鹸などが入った篭がそこにあった。
「体を? でも……」
体を洗うなら、この浴衣は脱がなくてはいけない。だが、確かに体を先に洗わなければお湯が汚れてしまう。
「こっちへおいで、メリルリース。体を洗ってあげよう」
まだ眼帯をしたままのアレスティスの、緑の瞳が怪しい光を湛えている。
普段は恥ずかしがるメリルリースだったが、二人きりになると、その羞恥はどこかへ吹き飛ぶ。さらに、アレスティスの欲望を込めた瞳を見ると、まるで催眠術にかけられたかのように、大胆になる。
アレスティスに一歩ずつ近づきながら、メリルリースは紐をほどき、彼の前までくると浴衣をすとんと落として生まれたままの姿を見せた。
「アレスティスも……後で私が洗ってあげるわ」
夫の腰ひもに手を伸ばし、紐を外すと手際よく彼の着ていた浴衣を剥ぎ取る。
夫の下半身がすでに臨戦態勢であるのを見て、メリルリースの顔が紅潮する。
「相変わらず、二人になると積極的だな」
妻がどこを見ているか彼もわかっている。
うつむいたメリルリースの顎に手を持っていくと、顔を上向かせその唇に唇を重ねた。
「あなたが積極的にさせるのよ」
欲望で潤んだ目を夫に向け、その首に自分の腕を絡める。
テオドールが生まれてから、メリルリースは良き母、慈愛に満ちた聖母のようになったかと思えば、時折、躾だと言っていたずらには容赦なく息子を叱りつける。
息子を叱るのはだいたいが父親のアレスティスの役割だったが、他人や自分を傷つける可能性のあるいたずらには厳しい。
そんな新しい一面を見せてくれるメリルリースだったが、最近寝室での振る舞いおいて、妖艶さに磨きがかかってきた。
愛する人との子どもを生み、女としての自信に満ち溢れてきたせいか、今でもアレスティスは彼女の仕草ひとつひとつに心を奪われる。
見つめあい抱き合ったまま、アレスティスはお湯を掬い、肩から彼女の体に流した。
緩く上に纏めた髪から溢れたひと房が、細い首筋に張り付く。
「とっても気持ちいいわ」
お湯の心地よさか擦り付けて触れあう肌の感触か、どちらを指しているのか、豊かな胸が固いアレスティスの胸板に押し付けられ、さらに密着する。
「メリルリース……そんなにひっつかれては、体が洗えない」
抗議しながらもアレスティスの下半身がさらに固く大きくなりメリルリースの腹部にその存在を知らしめた。
アレスティスが温泉について説明する。
「そうです。良くご存知ですね。温泉に入られたことがあるのですか?」
クルミナが感心して言う。
「ルーヴェンの受け売りだ。私も実際に入るのは初めてだ」
「左様でございますか。治療の目的もあり、共同の浴場もあります。先ほども申し上げましたが、必ずというものではありません」
どうするかとメリルリースがアレスティスの方を見る。
「せっかくだ。郷に入れば郷に従えと言う。試しにこれを身につけて入るとしよう。すまないが、妻の着替えを手伝ってもらえるか? 私は自分で着替える。夕食はその後でいい。今夜は部屋に運んでくれ」
「畏まりました」
アレスティスは男性用の浴衣を受け取ると、先に浴室へと向かった。
メリルリースはプリシラとクルミナに手伝ってもらい、浴衣を身に付け三人を下がらせて、浴室へ足を踏み入れた。
扉を開けると、すぐそこは薄い板の隙間を少し空けて並べた筏のようなものが置かれていて、石の床がその先にあった。
メリルリースは、バスタブのようなものを想像していたが、実際は床よりも深い穴があって、そこにたっぷりのお湯が張られている。
浴槽は深さはあまりなさそうだが、大の大人が寝転んで手足を伸ばしてもいいくらいに広い。
手前には水瓶のような大きな壺があって、そこにもお湯が入っている。
アレスティスは既に浴衣を身に付け、その壺の前に立っていた。
こちらを向いたアレスティスを見て、メリルリースはどきりとした。
きっちり浴衣の前を合わせて身を包んでいるメリルリースと違い、アレスティスの浴衣は腰から下はきちんと合わさっているが、上半身は胸がはだけ、お腹の傷の上部分が丸見えだ。
丈も太ももの中程しかないので、たくましい足が殆ど見えている。
「そこで何をするんです?」
アレスティスが手に大きな杓のようなものを持っているのが見えて訊ねた。
「これでここからお湯を汲んで、体にかけてからあちらに入るらしい。体を洗う際もこのお湯を使うみたいだ」
それも事前に知っていたのか、アレスティスが説明する。
言ったとおり、最初は気がつかなかったが、石鹸などが入った篭がそこにあった。
「体を? でも……」
体を洗うなら、この浴衣は脱がなくてはいけない。だが、確かに体を先に洗わなければお湯が汚れてしまう。
「こっちへおいで、メリルリース。体を洗ってあげよう」
まだ眼帯をしたままのアレスティスの、緑の瞳が怪しい光を湛えている。
普段は恥ずかしがるメリルリースだったが、二人きりになると、その羞恥はどこかへ吹き飛ぶ。さらに、アレスティスの欲望を込めた瞳を見ると、まるで催眠術にかけられたかのように、大胆になる。
アレスティスに一歩ずつ近づきながら、メリルリースは紐をほどき、彼の前までくると浴衣をすとんと落として生まれたままの姿を見せた。
「アレスティスも……後で私が洗ってあげるわ」
夫の腰ひもに手を伸ばし、紐を外すと手際よく彼の着ていた浴衣を剥ぎ取る。
夫の下半身がすでに臨戦態勢であるのを見て、メリルリースの顔が紅潮する。
「相変わらず、二人になると積極的だな」
妻がどこを見ているか彼もわかっている。
うつむいたメリルリースの顎に手を持っていくと、顔を上向かせその唇に唇を重ねた。
「あなたが積極的にさせるのよ」
欲望で潤んだ目を夫に向け、その首に自分の腕を絡める。
テオドールが生まれてから、メリルリースは良き母、慈愛に満ちた聖母のようになったかと思えば、時折、躾だと言っていたずらには容赦なく息子を叱りつける。
息子を叱るのはだいたいが父親のアレスティスの役割だったが、他人や自分を傷つける可能性のあるいたずらには厳しい。
そんな新しい一面を見せてくれるメリルリースだったが、最近寝室での振る舞いおいて、妖艶さに磨きがかかってきた。
愛する人との子どもを生み、女としての自信に満ち溢れてきたせいか、今でもアレスティスは彼女の仕草ひとつひとつに心を奪われる。
見つめあい抱き合ったまま、アレスティスはお湯を掬い、肩から彼女の体に流した。
緩く上に纏めた髪から溢れたひと房が、細い首筋に張り付く。
「とっても気持ちいいわ」
お湯の心地よさか擦り付けて触れあう肌の感触か、どちらを指しているのか、豊かな胸が固いアレスティスの胸板に押し付けられ、さらに密着する。
「メリルリース……そんなにひっつかれては、体が洗えない」
抗議しながらもアレスティスの下半身がさらに固く大きくなりメリルリースの腹部にその存在を知らしめた。
0
お気に入りに追加
3,047
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
竜人の王である夫に運命の番が見つかったので離婚されました。結局再婚いたしますが。
重田いの
恋愛
竜人族は少子化に焦っていた。彼らは卵で産まれるのだが、その卵はなかなか孵化しないのだ。
少子化を食い止める鍵はたったひとつ! 運命の番様である!
番様と番うと、竜人族であっても卵ではなく子供が産まれる。悲劇を回避できるのだ……。
そして今日、王妃ファニアミリアの夫、王レヴニールに運命の番が見つかった。
離婚された王妃が、結局元サヤ再婚するまでのすったもんだのお話。
翼と角としっぽが生えてるタイプの竜人なので苦手な方はお気をつけて~。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。