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6 公爵家の呪い

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階段でのことがあってからお嬢様はますます私にべったりになった。
まあ、まだ六歳だし、お嬢様の世界はまだこの公爵家の中だけ。そのうち社会生活の範囲が広がれば他の方とのお付き合いが増えれば自然と離れていくだろう。

私の額の傷はお医者の言うとおりにくっきりと真一文字に残った。大人になれば少しは薄くなるということだし、前髪で隠せば気にならない。

そうこうしているうちに奥様が産気付いた。

破水して陣痛が始まって丸ひと晩かかって女の子が産まれた。

私もお嬢様も朝起きてそのことを知らされ、面会を許可されたのはお昼を過ぎてからだった。

「まだ目が開いていないから瞳の色はわからないけど、髪の色は旦那様譲りね」

「猿みたい」

妹の顔を見てお嬢様がおっしゃった。それでも目鼻立ちもはっきりしていて、天使のようだと思った。

「女の子でよかったわ」

普通なら後継ぎのことを考えて男の子が望まれると思ったのに、不思議に思って奥様の顔を見た。

「トレディール家は男の子が産まれても成人するまでに亡くなることが多いの。なぜかはわからないけど、トレディール家の呪いと言われてるくらいに……私の兄も十歳で亡くなったわ。旦那様は養子なの」

「じゃあ、アシュリー様もいずれはご養子を?」

貴族の結婚は好き嫌いでは決められないことはわかっていたが、養子を取るとなると更に大変だろう。妹の顔を覗き込むアシュリー様を見る。

「そうね……そうなるかしら」

トレディール家にそんな暗い部分があるとは思わなかった。どうしてそんなものがあるのだろう。単なる偶然だとは思うけど、それが重なると信憑性が加わるのかもしれない。

でもお嬢様もお体が弱い。毎日飲まなければいけない薬のことを考える。飲み忘れたらどうなるのかとメイド長に訊ねたら、以前飲み忘れた時は何日も高熱が続いたらしい。

産まれた公爵家の新しいお嬢様の名前はビアンカと名付けられた。私が覚えていた乙女ゲームの設定からはこれで大きく外れたことになる。
ゲームでは存在しなかったビアンカお嬢様。
ゲームの設定にどれくらい強制力があるかわからないが、アシュリー様の性格形成にこのことが大きく関わってくるだろう。

やがて一年が過ぎ、お嬢様が王宮のお茶会に招待される時が来た。
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