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番外編 その後の二人

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熱いルイスレーンの唇が重なり、舌が口蓋を割って侵入してきて、口腔内を暴れ回った。

「ん…はあ…」

すぐに頭の芯がボォーっとなり、力が抜けて彼の体に寄りかかった。
そのまま背中を支えて寝台に横たえられる。

口づけは荒々しいが、触れる彼の手はまるで壊れ物を包み込むように優しい。

彼の手が肩から胸に降りていき、優しく外側から包み込む。

「…あ、ん…」

妊娠して私の体は色々変化してきた。
元々大きい方だった胸がひと回り大きくなった。感度も敏感になり、こんな風にしっかりと触られるとそれだけで感じてしまった。

「普段からも私の手で包み込むのも難しかったが、また少し大きくなったな。これも妊娠したから?」

訊ねられ、こくりと頷く。

「君の体はどんどん変化していく。本当に女性の体には驚かされるよ。男の私では体感することができない子どもと母親の繋がりというものはすごいな」
「でも悪阻とか…苦しいこともあるのよ」

嫉妬なのか寂しそうなルイスレーンの声音に、いいことばかりではないと伝える。

「それだって、君が苦しむ姿を見て何もできない自分がもどかしかった。いっそのこと苦しいことは全部私に回してくれれば良かったと思う」

ルイスレーンらしい言葉にクスリとなる。

「普段から鍛えて痛いこともそこそこ我慢できる」
「そんなことを言うのはルイスレーンくらいです」
「そんなことはない。選べるならそうしたいと思う男は他にもいると思う。こうして子どもができるのは、男女が体を交えたからだろう? 男女ともに責任があるのに、苦しむのは女性だけなんて、不公平だ」

初めてルイスレーンとの夜を過ごした時、破瓜の痛みを分かち合おうと言ってくれたことを思い出した。
あの時、痛みに思わす彼の肩を噛んだ。その時付いた歯型を訓練で裸になった際にあろうことか殿下たちや軍の方々に見られたことは、私にとって黒歴史になっている。

「こうして変化する君の体に触れるしか今の所私には子どもたちと繋がる手立てがない」

大きくなった胸。そして膨らんできたお腹にゆっくりと手を這わせる。

「早く生まれてくれないだろうか。姿が見られて声が聞けて触れることができるのが待ち遠しい。どうして生まれるまで十月もあるのだろう」

「でもそれくらいの時間がないと、体が出来上がらないのですから、仕方ありません。長い間人が辿ってきた進化の過程を経て、人の子の形を作って生まれてくるのです」

地球とここは世界は違っても人の体の仕組みは同じ筈。

「それに、親になるための心構えや子どもたちを迎える準備期間と思えば、時間は足らないくらいです」
「そういうものか…」
「それより、確認は済んだのですか?」

離れていた間の私の体の変化を触って確認していた彼の手が止まり、後ろから抱きしめられている体勢になっていた。
風呂上がりの彼の薫りが私を包み込む。

「これくらいにしておかないと、歯止めがきかなくなるから」

後ろから首筋に唇が押し当てられ、軽く歯が当たる。ぞわりと快感が体を走った。
ぴたりと寄り添い、お尻のあたりに当たる彼の一部が硬くなっている。
何の歯止めがきかなくなるのかがわかった。
それを隠そうともしないで私に当ててくる。

これが互いに体を許しあった夫婦の当たり前のやり取りなのだろう。誰に遠慮するでもなく、他人に知られれば恥ずかしいと思う会話を交わす。気を張らず他愛ない会話ができる人がいる。
恋しかったルイスレーンの温もりに触れ、感じていた不安も掻き消えた。

「君と本当の夫婦になるまでは、自制が出来ていたのに…いつまで経っても君を求める気持ちは収まるどころか増すばかりだ」
「我慢させてすいません。その…妻が妊娠したら浮気する男性もいると聞きます。ルイスレーンほど体力も気力もある人なら…」
「君は私に浮気を勧めているのか?」

怒りの混じった厳しい声で言って、咎めるように耳を軽く噛まれた。

「あ…ちが…」

言い方を間違えたと振り返って正面を向いた。
虹彩のオレンジが赤味を増している。気が昂っている時の色だ。

「違います。ルイスレーンがそうだとは言っていません」

両頬を手で挟んでそう言うと、オレンジ色に変わる。怒りの気持ちが消えた証拠だ。

「確かにそういう男性はいる。しかし私は君以外は欲しくない。今のこれも私が自分で対処するから、気にしなくていい」
「自分で?」

体を少しずらし、ルイスレーンの下半身に視線を落とす。
薄い夜着の生地がテントの天幕のように盛り上がっていた。

「どうやって?」
「それは…まあ…色々ある」

再びルイスレーンの顔に目を向けると、困ったように苦笑いしている。瞳も今度は緑の部分が濃くなり、オレンジは黄色に近い色になっている。
さっきは怒りで赤味が色濃かったのに、コロコロと変わる瞳の色は、実際の表情より彼の感情を如実に現している。





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