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番外編 その後の二人
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知らせは受けたものの、そのことに対して私が行動できることはなかった。
希望はルイスレーンが一人ではないこと。
付近の様子に明るい者が同行しているということ。
それから山小屋から煙が立ち昇っていたこと。
山へ下る道が分断されただけで、道が開通すれば何とかなる。
獣などはいるかも知れないが、ルイスレーンたちは訓練を積んだ兵士なのだから、恐れるに足らないだろう。戦争と違い敵がいるわけでもない。
そして凍てつくような寒い季節でもない。
だた山の天気は変わりやすく、平地よりもいくらか気温は寒くなる。
希望を見出しては悪い方に考えてしまう。
「王宮に行こうと思うのだけど、どう思う?」
「ご心配はわかりますが、何かあれば知らせを出すと陛下も仰ってくれているのであれば、今は動かず知らせを待つ方が…」
「そうです。無理に動き回ってお子様たちに何かあれば、どうされますか」
わかっていたが、ダレクもマリアンヌも誰もいい顔をしない。
「若い者を王宮に毎日交代で向かわせ、待機させます。それでご理解ください」
そう言われれば黙って待つよりほかなかった。
「現場も混乱しているようです。捜索の人を増やせば復興に遅れが生じます。アンドレア殿下お一人で両方を指揮するのは難しいとの判断で、王都から新たに部隊を派遣するということです」
急遽応援部隊が編成されることになったと聞いたのは知らせを受けてから二日後のことだった。
けれど何もルイスレーンのことについて新しい情報は得られなかった。
「王都と彼の地では往復にもかなり時間がかかります。今入った情報もすでに五日ほど前のこと。もしかしたら次の早馬で無事がわかるかも知れませんよ」
皆が出来るだけ良い方に取れるよう気遣ってくれる。
それなのに私だけが悲観しているわけにもいかない。
「皆ありがとう。大丈夫よ。応援部隊が出るなら、必要な物資など出来るだけリンドバルク家からも出しましょう」
「お妃様たちの掛け声で支援を申し出る貴族が増えてきているそうです」
「エレノア様たちが?」
「はい。発端は筆頭侯爵家からですが、直接グルジーラ地方と縁のない貴族も次々と名乗りあげているそうです」
筆頭侯爵家とはイヴァンジェリン様の生家のマルセル侯爵家のこと。
と言うことは間違いなくイヴァンジェリン様が働きかけて下さったのだとわかる。
「これを、イヴァンジェリン様からです」
王宮に様子を見に行っていた使用人のミュランが手紙を預かってきた。
この前私が王宮に行った時に話したことをエレノア様と二人で話し合い、それをフランチェスカ様に伝えたところ、是非と言うことで有志でグルジーラへの支援をすることにしたという。
その輪が少しずつ広まりつつあり、今後のために基金を創設することが決まり、エレノア様が総裁となる話がまとまりつつあった。
併せて軍人遺族の支援も国が後押ししていくことになったと書いてあった。
奨学金制度に始まり、保育所のこともニコラス先生の診療所へ視察に来る人が増えたと言う。
ただやはり人材不足が否めないらしく、本格的に教育機関を作るという話が持ち上がっている。
私が思いつきで始めたことがどんどん広がっていく。
私一人の力では出来なかっただろうことも、理解ある人たちの手助けで次々と現実になっていく。
目頭が熱くなり早くこのことをルイスレーンに話したいと思った。
「………!」
「どうされましたか」
手紙に目を通していた私が不意に身を強張らせたのをマディソンが気づいた。
「クリスティアーヌ様?」
下腹部に手を伸ばす。気のせいかも知れない。
お腹に意識を向ける。
ドクン
「………たわ」
ドクンドクン
「クリスティアーヌ様…だ」
「動いた!」
「え!」
一瞬私の言葉の意味がわからず、小首を傾げたマディソンがお腹に視線を向けた。
「え、うご…」
ドクンドクンドクン
「間違いないわ。赤ちゃん、動いた」
「え、ええええ、う、動いたのですか」
マディソンの大声が響き渡った。
希望はルイスレーンが一人ではないこと。
付近の様子に明るい者が同行しているということ。
それから山小屋から煙が立ち昇っていたこと。
山へ下る道が分断されただけで、道が開通すれば何とかなる。
獣などはいるかも知れないが、ルイスレーンたちは訓練を積んだ兵士なのだから、恐れるに足らないだろう。戦争と違い敵がいるわけでもない。
そして凍てつくような寒い季節でもない。
だた山の天気は変わりやすく、平地よりもいくらか気温は寒くなる。
希望を見出しては悪い方に考えてしまう。
「王宮に行こうと思うのだけど、どう思う?」
「ご心配はわかりますが、何かあれば知らせを出すと陛下も仰ってくれているのであれば、今は動かず知らせを待つ方が…」
「そうです。無理に動き回ってお子様たちに何かあれば、どうされますか」
わかっていたが、ダレクもマリアンヌも誰もいい顔をしない。
「若い者を王宮に毎日交代で向かわせ、待機させます。それでご理解ください」
そう言われれば黙って待つよりほかなかった。
「現場も混乱しているようです。捜索の人を増やせば復興に遅れが生じます。アンドレア殿下お一人で両方を指揮するのは難しいとの判断で、王都から新たに部隊を派遣するということです」
急遽応援部隊が編成されることになったと聞いたのは知らせを受けてから二日後のことだった。
けれど何もルイスレーンのことについて新しい情報は得られなかった。
「王都と彼の地では往復にもかなり時間がかかります。今入った情報もすでに五日ほど前のこと。もしかしたら次の早馬で無事がわかるかも知れませんよ」
皆が出来るだけ良い方に取れるよう気遣ってくれる。
それなのに私だけが悲観しているわけにもいかない。
「皆ありがとう。大丈夫よ。応援部隊が出るなら、必要な物資など出来るだけリンドバルク家からも出しましょう」
「お妃様たちの掛け声で支援を申し出る貴族が増えてきているそうです」
「エレノア様たちが?」
「はい。発端は筆頭侯爵家からですが、直接グルジーラ地方と縁のない貴族も次々と名乗りあげているそうです」
筆頭侯爵家とはイヴァンジェリン様の生家のマルセル侯爵家のこと。
と言うことは間違いなくイヴァンジェリン様が働きかけて下さったのだとわかる。
「これを、イヴァンジェリン様からです」
王宮に様子を見に行っていた使用人のミュランが手紙を預かってきた。
この前私が王宮に行った時に話したことをエレノア様と二人で話し合い、それをフランチェスカ様に伝えたところ、是非と言うことで有志でグルジーラへの支援をすることにしたという。
その輪が少しずつ広まりつつあり、今後のために基金を創設することが決まり、エレノア様が総裁となる話がまとまりつつあった。
併せて軍人遺族の支援も国が後押ししていくことになったと書いてあった。
奨学金制度に始まり、保育所のこともニコラス先生の診療所へ視察に来る人が増えたと言う。
ただやはり人材不足が否めないらしく、本格的に教育機関を作るという話が持ち上がっている。
私が思いつきで始めたことがどんどん広がっていく。
私一人の力では出来なかっただろうことも、理解ある人たちの手助けで次々と現実になっていく。
目頭が熱くなり早くこのことをルイスレーンに話したいと思った。
「………!」
「どうされましたか」
手紙に目を通していた私が不意に身を強張らせたのをマディソンが気づいた。
「クリスティアーヌ様?」
下腹部に手を伸ばす。気のせいかも知れない。
お腹に意識を向ける。
ドクン
「………たわ」
ドクンドクン
「クリスティアーヌ様…だ」
「動いた!」
「え!」
一瞬私の言葉の意味がわからず、小首を傾げたマディソンがお腹に視線を向けた。
「え、うご…」
ドクンドクンドクン
「間違いないわ。赤ちゃん、動いた」
「え、ええええ、う、動いたのですか」
マディソンの大声が響き渡った。
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