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番外編 その後の二人

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新しく国の事業として奨学金制度が起ち上げられたことについて、問題点があると陛下から話を受けた。

「それで、問題とは何ですか」

「税を使うのだ。効果的に本当に必要な人材に投資されなければ意味がない」

「仰る通りです」

「もちろん、最初にそなたが言ったとおり一定の学力は必要だからそれを測るための試験は行う。それ以外にも何を学び将来どんなことをしたいのか、どんな職に就きたいのかと言った論文は書かせる。それでいくらかはふるいに掛けられるだろう」

「それで、何を心配されていらっしゃるのですか?」

「問題はその趣旨が公布だけで伝わるかどうかだ」

陛下が問題だと思われているのは、制度についての公布をしただけで、この制度について正しく必要な人に伝わるかどうかだった。

「奨学金制度についてもっと大々的に知らしめる方法はないものか思案している」

「確かに…街角にただ貼り出しただけでは注目を集めるかどうかあやしいですね」

「記念すべき第一期生になるのだ。特別優秀な者を採用したい。正しくこの制度が今後も継続されるためには大事なことだ」

「何事も最初が肝心と申しますから、陛下のご意見はもっともなことです」

「余の周りには残念ながら貧しいが故に志を諦めざるを得なかった者などおらん。官僚たちも皆良家の出ばかりだから、この制度が本当に必要なものかどうかと疑心暗鬼の者もいる」

「反対意見の方もいらっしゃるのですね」

「新しく物事を始めようとする時はそんなものだ。だが古い慣習古い考えに固執していては国は発展せぬ。良家の子息ばかりの頭でっかちの苦労知らずだけでは真に国を豊かにすることはできん。新しい風は必要だ」

国の行く末を案じ常に民を思う陛下の気持ちが伝わってくる。

「陛下は真、ご立派な聖君でいらっしゃいます。この国の民として陛下のような君主がいらっしゃることを光栄に思います」

「余のことは良い。それで、クリスティアーヌは何か良い案はあるか?」

少し照れた様子で軽く咳払いされた。

「安直だとは思いますが、フォルトナー先生なら何か伝手があるかも知れません。何しろ今も近所の子どもたちに勉強を教えているそうですから」

少し考えてフォルトナー先生を思い出した。

「フォルトナーか…」

「それから軍人遺族の中にも該当する人がいらっしゃるかもしれません」

稼ぎ手である夫や父を亡くし、未亡人や残された遺児たちが金銭面で苦労することは多い。

「うむ、そうだな。市井のことは市井にいる者が一番よく知っているだろう。街の顔役たちに該当者がいないか推薦させるのもいいかもしれんな」

「よいお考えだと思います」

「クリスティアーヌと話せて良かった」

「大したことは申し上げておりません。私の申しあげたことなど、いずれどなたかが考えついたことでしょう」

「そうかも知れんが、王宮の中で書類だけを見て仕事をしている者はとかく考えも偏りがちだ。彼らにも矜持があって他者の意見を聞き入れないところがある。まして貴族でない者に教えを乞うとか考えつかない」

少しは陛下の役に立てたのなら良かった。
陛下は早速侍従を呼んで指示を出された。

「それではこれで失礼いたします」
「健やかにな」
「ありがとうございます」

陛下との歓談を終えて部屋を出ようした時は先程の侍従が戻ってきた。

「陛下、アンドレア殿下から書状が届いております」
「アンドレアから?」

侍従が手に持つ銀のトレイに少し分厚目の封書が乗せられていた。

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