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番外編 その後の二人

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私とルイスレーンのことから話題を変えたくて、体の調子が良くなったのでまた保育園に顔を出したいと申し出た。

「おお、そうしてくれ。子どもたちも喜ぶ」
「保育園…先程も耳にしましたが、それはどういう場所なのですか? 何やら子どもがたくさんいる場所のようですが」

初めて保育園という言葉を聞いたラジークさんが訊ねたので、ニコラス先生が簡単に説明した。

「それもクリスティアーヌ様の発案とは…お優しいだけでなく事業家でもあるのですね」
「事業家なんて…採算など取れていません。保育園の利用に対する費用はあくまで利用される方の収入によります。過度な負担をしてまで預けたいと思う人はおりませんし、生活のために働く必要がある人たちが利用する場所ですから」
「それでは慈善事業ということですか。それでも実際に人の役に立つことをされているのですから、誇るべきです」
「そ、そうでしょうか…」
「それにクリスティアーヌ様のそういった行動を侯爵も容認して後押しされていらっしゃる。理解のある方です」
「はい。私の考えを理解して色々と協力してくれています」

ルイスレーンのことを言われて嬉しくなる。

「何だかご自分のことを言われているときより嬉しそうですね」
「それは…自分を褒められるのは恥ずかしいですが、彼のことは本当に凄いと思っていますから。他の人にも彼の素晴らしさをもっと知ってほしいです」

ルイスレーンに会ったことがない人から彼のことを褒められて自分のことのように誇らしく思う。

「はあ、一緒にいてもいなくても惚気とは…」

ニコラス先生が呆れてスベン先生と顔を見合わせる。

「そんな、惚気なんて…」
「ルイスレーン様のことを褒められて自分のことのように喜んだりして惚気でなくて何なのです」
「自覚なしですね」
「スベン先生まで…ルイスレーンがどれほど立派な人か先生たちよくご存知でしょ。私は当たり前のことを言っているだけです」
「よい雇い主であり頼りになる方とは思います」
「そうですよね」

思わず前のめりになってスベン先生に食いつく。

「わかっていますが、クリスティアーヌ様ほどではありません」

味方を得たと思ったが、あっさりと流されてしまった。

「それでいいではありませんか。侯爵の奥様はクリスティアーヌ様だけです。夫として愛することができるのも。そしてクリスティアーヌ様を妻として大事にするのもルイスレーン様だけ。他の誰かと思いを共有する必要はありません」
「ベイル氏の言うとおりです。思いの種類は人それぞれ。共通しているのはお二人の仲睦まじい姿を見守りたいということです」
「それからお子様たちのことも」
「ありがとうございます」

私達のことを温かく見守っていてくれる人たちの存在はわかっていたが、一人で亡くなった愛理の孤独が嘘のようだ。
この幸せな気持ちを今すぐルイスレーンに伝えたかったが、それも叶わない。

「また侯爵のことを考えておられますな」
「え、まあ…」

今度は素直に認めた。どう言っても惚気だと取られるなら開き直るしかない。

「私はまだ独身で結婚は考えたことがありませんでしたが、クリスティアーヌ様を見ていると結婚というものも素敵だと思いました」

「まあ…」

私の周りには私より前からすでに結婚している人が多く、誰かの結婚観に影響を与えるとは思わなかった。

「侯爵殿が羨ましいです。私にもクリスティアーヌ様のような方が見つかるでしょうか」
「私のようでなくても、ラジークさんならいい人が見つかります」
「まずはクリスティアーヌ様の出産を無事に見届けること。すべてはそれからです」
「これからもよろしくお願いいたします」

ラジークさんとの最初の出会いはこうして終わった。

ほぼ雑談のような診察だったが、思い悩んでいた気持ちも少し上向きになった。
ここにルイスレーンがいないことだけが残念だったが、心置きなくルイスレーンが仕事に励めるように私が元気でいなければと思った。




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